上五島の数少ない地場産業である五島うどんに新規参入が相次いでいる。それも少なくない生産量。それだけ五島うどんのブランド力が高まり、供給が追いつかない状況だとすれば吉報だが、関係者に聞くとそれほど楽観的な話ではないようだ。
認証制度
五島うどんの生産額は92年度の5億6千万円から04年度には8億1千万円に伸びている。年率にすれば平均3%弱。不況期の12年間という経済環境を考慮すれば確かに健闘しているとはいえよう。ただいくつかの製麺業者の話をまとめてみると、ここ数年は勢いはなくなり横ばい傾向が続いているという。そこに他業種からの新規参入があるのだから、うまくいくのだろうかといぶかる既存業者も少なくない。
参入の理由は五島うどんにはまだ将来性があるという判断だ。公共事業減に人口減で町の内需が極端に冷え込む中、島外に出せる産物としてのうどんは魅力的に映るだろうことは容易に想像できる。
そこにはもうひとつの背景がある。いま県の積極的な特産物開発助成という後押しを受けて、五島うどんを全国ブランドにしようという動きがあるからだ。05年度は800万円(五島うどん単独)、06年度は壱岐焼酎、島原素麺などと共に長崎5産品のひとつとして、新聞雑誌広告・テレビの企画番組などで首都圏を中心に重点PR。そのために2800万円余が予定されている。
この県の後押しを受けて、いま進行しているのが「認証制度」。これは五島うどんの品質を標準化する作業で、たとえば麺の太さや長さ、色、含有水分などに一定の基準を求めると同時に、工場内の衛生・安全面に関する細かいチェック項目が設定され、これをクリアしたうどん(工場)にのみ、五島手延うどんとして認証を与えようというもの。実際の認定判定作業にはいましばらくの時間がかかりそうだが、県の販売促進に乗るためには一定の認証基準を満たす必要があり、いわば認定制度の前段階に当たると考えてよい。
標準化の問題
ブランド化と認証制度は確かに8億円を売り上げている五島手延うどんの、もう一段階の成長にとって不可欠なものかもしれない。でも気になるのはこうした標準化がもたらす弊害だ。認証制度の基準項目をみると、これは設備が充実した規模の大きな工場しか対応できないほどきめ細かで厳しいものになっている。これだとたとえば手延うどん発祥とされる船崎うどんの多くの手づくり業者は対応できずに認定申請をしない可能性が高いのではないか。
もうひとつ、これは標準化につきものの難題である「個性の喪失」。つまり各業者それなりの手づくりの秘訣部分を大なり小なり持っているはずで、これを保持しながらの標準化は現実には無理。そうなれば標準化製品と自己ブランドを二つもつ必要に迫られるわけで、この側面からも規模の大きい業者にしか対応が難しいことになる。
ブランド化のための標準化という意味ではすでに五島手延うどん組合の「波の絲」が先行事例としてあり、いろいろ苦労しながらも年間1億2千万円」を売る商品に育っている。今回の認証制度はこれとは別個の動き(五島手延うどん振興協議会)になっているのも気になる点だ。
販売会社構想
こうした流れの中、いま町の提案で五島うどんの販売会社を作る構想が議論されている。まだ議論は始まったばかりのようだが、これも標準化・認証制度を前提としているのであれば、混乱を招くだけではないか。
販売会社はうどんに限らず検討されていい。対馬でも物産販売の専門会社を作り一定の成果を収めているが、五島には対馬以上に“輸出物品”は多い。そろそろ「上五島商事」のような専門商社ができてもいい。販路さえ切り拓けば、地場産業にはまだまだ活路を開く余地は大きい。そうした性格の販売会社なら、うどんにしても統一ブランドにする必要はなく、これまでの商品をそのまま流せるのではないだろうか。関係者への提案として追記しておきたい。
認証制度
五島うどんの生産額は92年度の5億6千万円から04年度には8億1千万円に伸びている。年率にすれば平均3%弱。不況期の12年間という経済環境を考慮すれば確かに健闘しているとはいえよう。ただいくつかの製麺業者の話をまとめてみると、ここ数年は勢いはなくなり横ばい傾向が続いているという。そこに他業種からの新規参入があるのだから、うまくいくのだろうかといぶかる既存業者も少なくない。
参入の理由は五島うどんにはまだ将来性があるという判断だ。公共事業減に人口減で町の内需が極端に冷え込む中、島外に出せる産物としてのうどんは魅力的に映るだろうことは容易に想像できる。
そこにはもうひとつの背景がある。いま県の積極的な特産物開発助成という後押しを受けて、五島うどんを全国ブランドにしようという動きがあるからだ。05年度は800万円(五島うどん単独)、06年度は壱岐焼酎、島原素麺などと共に長崎5産品のひとつとして、新聞雑誌広告・テレビの企画番組などで首都圏を中心に重点PR。そのために2800万円余が予定されている。
この県の後押しを受けて、いま進行しているのが「認証制度」。これは五島うどんの品質を標準化する作業で、たとえば麺の太さや長さ、色、含有水分などに一定の基準を求めると同時に、工場内の衛生・安全面に関する細かいチェック項目が設定され、これをクリアしたうどん(工場)にのみ、五島手延うどんとして認証を与えようというもの。実際の認定判定作業にはいましばらくの時間がかかりそうだが、県の販売促進に乗るためには一定の認証基準を満たす必要があり、いわば認定制度の前段階に当たると考えてよい。
標準化の問題
ブランド化と認証制度は確かに8億円を売り上げている五島手延うどんの、もう一段階の成長にとって不可欠なものかもしれない。でも気になるのはこうした標準化がもたらす弊害だ。認証制度の基準項目をみると、これは設備が充実した規模の大きな工場しか対応できないほどきめ細かで厳しいものになっている。これだとたとえば手延うどん発祥とされる船崎うどんの多くの手づくり業者は対応できずに認定申請をしない可能性が高いのではないか。
もうひとつ、これは標準化につきものの難題である「個性の喪失」。つまり各業者それなりの手づくりの秘訣部分を大なり小なり持っているはずで、これを保持しながらの標準化は現実には無理。そうなれば標準化製品と自己ブランドを二つもつ必要に迫られるわけで、この側面からも規模の大きい業者にしか対応が難しいことになる。
ブランド化のための標準化という意味ではすでに五島手延うどん組合の「波の絲」が先行事例としてあり、いろいろ苦労しながらも年間1億2千万円」を売る商品に育っている。今回の認証制度はこれとは別個の動き(五島手延うどん振興協議会)になっているのも気になる点だ。
販売会社構想
こうした流れの中、いま町の提案で五島うどんの販売会社を作る構想が議論されている。まだ議論は始まったばかりのようだが、これも標準化・認証制度を前提としているのであれば、混乱を招くだけではないか。
販売会社はうどんに限らず検討されていい。対馬でも物産販売の専門会社を作り一定の成果を収めているが、五島には対馬以上に“輸出物品”は多い。そろそろ「上五島商事」のような専門商社ができてもいい。販路さえ切り拓けば、地場産業にはまだまだ活路を開く余地は大きい。そうした性格の販売会社なら、うどんにしても統一ブランドにする必要はなく、これまでの商品をそのまま流せるのではないだろうか。関係者への提案として追記しておきたい。