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上五島住民新聞ブログ版

みんなで町政と自分たちの町を考えるインターネットスペース。新上五島町より発信。

焦点 五島うどんに変化の波(6号2面)

2006年03月08日 | 新聞記事(一部公開)
上五島の数少ない地場産業である五島うどんに新規参入が相次いでいる。それも少なくない生産量。それだけ五島うどんのブランド力が高まり、供給が追いつかない状況だとすれば吉報だが、関係者に聞くとそれほど楽観的な話ではないようだ。

認証制度
 五島うどんの生産額は92年度の5億6千万円から04年度には8億1千万円に伸びている。年率にすれば平均3%弱。不況期の12年間という経済環境を考慮すれば確かに健闘しているとはいえよう。ただいくつかの製麺業者の話をまとめてみると、ここ数年は勢いはなくなり横ばい傾向が続いているという。そこに他業種からの新規参入があるのだから、うまくいくのだろうかといぶかる既存業者も少なくない。
 参入の理由は五島うどんにはまだ将来性があるという判断だ。公共事業減に人口減で町の内需が極端に冷え込む中、島外に出せる産物としてのうどんは魅力的に映るだろうことは容易に想像できる。
 そこにはもうひとつの背景がある。いま県の積極的な特産物開発助成という後押しを受けて、五島うどんを全国ブランドにしようという動きがあるからだ。05年度は800万円(五島うどん単独)、06年度は壱岐焼酎、島原素麺などと共に長崎5産品のひとつとして、新聞雑誌広告・テレビの企画番組などで首都圏を中心に重点PR。そのために2800万円余が予定されている。
 この県の後押しを受けて、いま進行しているのが「認証制度」。これは五島うどんの品質を標準化する作業で、たとえば麺の太さや長さ、色、含有水分などに一定の基準を求めると同時に、工場内の衛生・安全面に関する細かいチェック項目が設定され、これをクリアしたうどん(工場)にのみ、五島手延うどんとして認証を与えようというもの。実際の認定判定作業にはいましばらくの時間がかかりそうだが、県の販売促進に乗るためには一定の認証基準を満たす必要があり、いわば認定制度の前段階に当たると考えてよい。

標準化の問題
 ブランド化と認証制度は確かに8億円を売り上げている五島手延うどんの、もう一段階の成長にとって不可欠なものかもしれない。でも気になるのはこうした標準化がもたらす弊害だ。認証制度の基準項目をみると、これは設備が充実した規模の大きな工場しか対応できないほどきめ細かで厳しいものになっている。これだとたとえば手延うどん発祥とされる船崎うどんの多くの手づくり業者は対応できずに認定申請をしない可能性が高いのではないか。
 もうひとつ、これは標準化につきものの難題である「個性の喪失」。つまり各業者それなりの手づくりの秘訣部分を大なり小なり持っているはずで、これを保持しながらの標準化は現実には無理。そうなれば標準化製品と自己ブランドを二つもつ必要に迫られるわけで、この側面からも規模の大きい業者にしか対応が難しいことになる。
 ブランド化のための標準化という意味ではすでに五島手延うどん組合の「波の絲」が先行事例としてあり、いろいろ苦労しながらも年間1億2千万円」を売る商品に育っている。今回の認証制度はこれとは別個の動き(五島手延うどん振興協議会)になっているのも気になる点だ。

販売会社構想
 こうした流れの中、いま町の提案で五島うどんの販売会社を作る構想が議論されている。まだ議論は始まったばかりのようだが、これも標準化・認証制度を前提としているのであれば、混乱を招くだけではないか。
 販売会社はうどんに限らず検討されていい。対馬でも物産販売の専門会社を作り一定の成果を収めているが、五島には対馬以上に“輸出物品”は多い。そろそろ「上五島商事」のような専門商社ができてもいい。販路さえ切り拓けば、地場産業にはまだまだ活路を開く余地は大きい。そうした性格の販売会社なら、うどんにしても統一ブランドにする必要はなく、これまでの商品をそのまま流せるのではないだろうか。関係者への提案として追記しておきたい。

再特集 町の行財政改革(新聞6号1面)

2006年03月08日 | 新聞記事(一部公開)
どう変わる 私たちの暮らし
 町の「行財政改革改革大綱」並びに「財政健全化計画」が策定、公表された。昨年11月の「行財政改革推進委員会答申」(本紙3号で既報)に基本的に沿った内容になっているが、ここでは主に町民の暮らしに直結する部分に焦点を当てて概要を紹介したい。

 行財政改革のうち、行政改革の部分は主に役場組織のスリム化・効率化であり、本紙3号で概要と問題点は取り上げたので、ここでは詳述は避ける。支所の統廃合、前号で検証したアクアブルーの民営化(もしくは休止)など住民に密接な問題も少なくないが、より暮らしに直結する問題を多く含むのは財政改革の方だ。
 財政改革を考えるに当たり、前提は、このまま放置すれば町は、会社の倒産と同じ財政再建団体への転落が必至であること。別掲の中野理事の記事にあるように、国の管理下になると自治権はほとんど奪われるし、同時に国の財政的余裕がない中で再建団体にはこれまでにない厳しい条件を付加されるはずで、国に頼るという方向はやはり避けるべきだろう。町民・職員の中には、職員給与の格差是正や適正化には早道、という意見も少なくないが、町民や職員のモラル・秩序崩壊のリスクのほうを考えるべきではないか。

住民負担20億円 
 ではどうするか。
 今回提出された財政健全化計画では、残り少ない貯金(財政調整基金)をあらかた使い補填しても(約5億円)、今後4年間で約60億円の収支改善が不可欠。内訳は、①役場内部の改革・改善で39億円、②住民負担で20億円、③その他町有地売却などで1億円となっている。大まかには役場の人件費抑制や管理費けちけち作戦による削減が2/3を占め、残り1/3が住民に課せられる負担ということになる。
 住民にとって気になるのはもちろん後者。ここはさらに大きく三つの領域に分けられる。
(a)使用料・手数料の見直し(目標効果額4億9千万円)
 大きいのは07年(平成19年)以降に予定されているし尿処理手数料の見直し。これは現在回収業者が持ち込む無料のし尿処理費用を有料化し、処理センターの維持管理費に当てるというもの。年間2億円が見込まれているから、回収業者がこれをそのまま利用者に転嫁すれば、世帯当たり平均で年間2万円程度の負担と推定される。今後、関係機関との調整、業者への聞き取りなどで具体的な詰めがなされる予定で、このままの額が認められることはないとしても、相応の負担増は覚悟しなければならないだろう。
 その他は額としては小さいものの積み重ねで、例えば火葬場、青少年の家から体育館にいたるまで公共施設の使用料が対象。ただこれは値上げとばかりは限らず、原価との差が大きいものの是正、あるいは合併に伴う旧町間の格差是正だから逆に値下げになるケースもありうるようだ。
(b)補助金、負担金、扶助費の見直し(同4億5千万円)
 ここは細目があまりわからないが、膨大な支給対象がありそう。基本的に一律カットではなく、ゼロベースでの見直しが強調されている。「行政寄りかかり」の構造から脱皮するためには、この領域の切開はむしろ必要と考えたい。少し気になるのは「老人福祉支給対象者の精査及び給付単価の見直し」。老人に対する扶助などが対象になるのだろうが、老人福祉、保護の領域まで及ばないことを望みたい。

暮らし直撃
(c)他会計繰出金の抑制(同10億8千万円)
 これは上水道や診療所、しんうおのめ温泉荘を中心とした施設をを管理する振興公社、港ターミナル管理などは一般会計から独立して特別会計で運営されているがほとんど赤字で一般会計から補填されている(繰出金)。なかで一番暮らしに直結する上水道関係は、井上町長が精力的に各郷を巡回し実施されている「町づくり懇談会」でも重要テーマとして報告されており、現在審議会で審議中。計画では06年度(平成18年度)から年間1億2千万円が予定されている。世帯当たり平均年間1万円程度のアップになる計算だが、旧町によってかなりばらつきがあり、上がるところ下がるところ悲喜こもごもだ。上げ幅が大きいところは段階的な値上げが望まれる。
 水道に次いで額が大きいのは診療所会計で1億1千万円強。若松と北魚目の場合、採算性が悪化している入院部門の廃止が検討されている。上五島病院の拡充が進んでいるから総体としての医療サービスは維持されるとしても、診療所は辺地の住民にとって暮らしに安心を保つ重要な機能を持つ。何とか影響を極小にすべきだろう。
 一方削減額はさほどでないものの気になるのは若松の町営旅客船・バス、スクールボートなどへの補填。07年度以降、民間委託・民営化を実施し、1300万円程度の削減が見込まれている。民営化は採算性の面で困難が予測されるから、現実的には委託の可能性が高いと推定されるが、運行体系、料金形態の見直しで一部改善されても一定の料金値上げは避けられまい。集落が散在する若松の交通網は生活の生命線。負担増が大きいようなら、白タク特区でも申請して自家用車の共用システムが検討できないだろうか。
 特別会計は以前から金食い虫との指摘があった部門、大鉈は不可避なのだろうが、生活密着型の部門については英知を集めた合理化を期待したい。

長期化の可能性も
 以上、厳しい財政事情を反映した健全化計画をみてきた。中野理事は計画具体化に当たっては、町民の意見を聞きながら慎重に進めていくとのことだが、かなり短期間での大胆な改善策という印象が強い。それだけ合併に伴う諸矛盾が一挙に噴出したということだろうし、ゆえに手術も大掛かりにならざるをえない。
 さらに蛇足ながら不安を付け加えておけば、昨年3月段階の財政シミュレーションと比較すると、収支不均衡の幅が拡大している。05年度の改善が当初見込みより少なかったと推定されるが、その分だけ07・08年度に無理がかかっている感をぬぐえない。この種の手術の先送りが今後も繰り返されるとすれば、負担はさらに増え、改善は長期化する。その悪循環だけは何としても阻止しなければならない。

依存心を捨てよう(5号・「もうひとつの選択肢5」

2006年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
町の財政危機の深刻化は本紙でも繰り返し取り上げられている。旧若松町時代から職員また議員として町政に関わり、合併に際しても当然協議会に参加し青写真を描いてきた一人として、自戒の意味を込めて以下のことを記しておきたい。
 漁業以外に真の地場産業に乏しいこの島は、旧5か町いずこも脆弱な財政基盤しかなかった。道路建設、箱物行政と揶揄(やゆ)されるが、公共事業に依存せざるを得なかった事情は間違いなくあった。私自身、本紙で非難された若松の運動公園を企画した当事者で、ほとんど使われずに草に覆われた施設であることを事実として認めるものの、残念ながらそうした社会資本投資がなければ島経済を維持することはやはり困難だった。その結果、公債費は拡大し、合併による特例債などが飴玉にみえたことは確か。合併しなければ各町は遅かれ早かれ財政再建団体に転落しただろう。
 現時点の財政危機に関していえば、協議会当時の財政シミュレーション段階では上がっていた各町の基金(将来のために積み立てられていた貯金)が2年間の間に激減。つまり駆け込み事業をやって過半を取り崩してしまった。もちろん苦労して積み立ててきた基金を、合併によって他町のために使われたくないというのは人情として理解できるが、これについては歯止めの策を講じておくべきだった。基金の取り崩しだけならともかく、町債として借金が膨らんだのだからシミュレーションが二重に狂ってしまったことになる。加えて合併特例債は特別債でなく、通常の町債と同じように自己負担分が必要とは知らず(これは本町のみならず多くの町がそのように誤解していた)、期待の特例債も発行できない状況になるとは想像の外だった。不明を正直に詫びなければならないと思う。
 この危機に際して、町は全力で可能な対策を取っていると評価したい。正直いって解決の決定打はなく、団塊世代がリタイアして人件費負担が軽減されるまでのここ6~7年はじっと我慢するしかないと思う。
 その際に重要なのは、職員も町民も等しく、依存心を捨てること。町は国や県に対し、町民は町に対して「何かしてくれる」という期待を持たないこと。自分たちで地道に道を切り拓いていく覚悟を持つこと。地場産業のてこ入れはもちろん、小規模でもいいから自分たちで始めたりの努力を積み上げていくしかない。話が出ている焼酎工場もぜひ地元資本で実現して欲しいと思うし、本紙で提言されていた町民債=過去の退職職員による自発的な投資なども必要なら真剣に検討されていいと思う。(道下陽章/若松郷在住)

「町づくり もうひとつの選択肢」は創刊号よりの連載。どうすれば活気ある町づくりをしていけるかについて考えるコラムです。皆さんの寄稿を歓迎します。 

集落活性化の一助に(5号2面記事)

2006年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
上五島うまかもん倶楽部

①会員は上五島に何らかの縁がある人々、または五島の風土や産物に関心ある人によって構成され、限定された会員に、上五島の季節の味覚を味わってもらう。
②入会金3000円。入会お礼として三千円相当の魚介(送料込)送付。
③以降は毎月の提供可能な産品で定額セットを構成し(3000円セット、5000円セット等)、メールその他で会員に告知。通常の注文を取る形式。
④商品はスタート時は以下のようなものを検討中。
 鮮魚・加工品(すりみ、アジ・イカの一夜干、あごみりん干、なまこわたの塩辛、魚肉ソーセージ)、あごふりかけ、カンコロ餅、手延べうどん、切り干し大根……。それらは地元の逸品を必ず揃える。


 前号で紹介した「上五島うまかもん倶楽部」が正式に始動した。これは直接的には本紙で何度も取り上げている高レベル放射性廃棄物処分場誘致問題に関連して、この種の危険施設を誘致しなくとも経済的に自立していく方策の細やかな第一歩として、「処分場拒否・住民の会」で検討してきたもの。
 具体的には、全国に会員制の「上五島ファンクラブ」を組織して地元の産品を直販していこうというもの。それも既存のうどんや海産物・加工品だけではない。主眼は新規の掘り起こし。その趣旨を、すでに送付した会員募集のダイレクトメールから一部引用すると
「……いま町は正念場を迎えています。かつてのように離島振興法の手厚い保護下でぬるま湯政策を取っていれば良かった時代に別れを告げて、真に自立していく方策を模索していかなければならない。困難な茨の道を辿ることは必至であっても、何とか切り開いていくしかないのです。
 島の自立といっても武器は清澄な海と自然のみ。町はいま農林漁業と観光の振興を旗頭に動いていますが、肝心の漁業は魚価の低迷と輸入魚攻勢で青息吐息、観光も素通りが多くぱっとしません。そこをどう突破するか。
私たちはひとつの方向として、地域振興の基本に立ち返って、この島に残る伝統の味覚をもう一度掘り起こし、“うまかもん”を特産品化していこう、地域経済を地元の力で回復させていこう、と考えました。むろんこうした取り組みはこれまでもなされなかったわけではありませんが、補助金を前提とした行政主導だとどうしても町民に依存心が生まれるし、それなりの規模が要求されますから、なかなか実を結んでこなかったのが実情です。
一方、島の活力停滞のもうひとつの背景に集落の急速な崩壊現象があります。ただでさえ島全体の人口減少・高齢化が進む中、島の中心から外れた集落の過半は、放置すれば10年以内で崩壊する危機的状況にあります。ここを何とかしなければ、町の活性化と経済再生は不可能。
標題に掲げた「一集落一品運動」はいうまでもなく大分一村一品運動の盗用ですが、崩壊寸前にあるこうした集落の中にこそ、実は伝統の味覚がちゃんと残っているのです。これを再発掘し、小規模ではあっても商品として供給する体制を作れないか。いまならまだ間に合う。集落の古老にいま一度奮起してもらい、知恵を残してもらいかつ産品の販売を通じて、集落の人に僅かではあれお小遣いを稼いでもらう。そこから差し当たり開始しようと考えたわけです……」
 会員募集の趣意書の第一便(350通余)をすでに送付。連日の申込で100名に迫る勢い(2月1日段階)。当面は4月までに200人規模の目標設定をしている。

町民皆様のご協力を
 そこで町民の方々にお願いが二つ。
(1)会員拡大にご協力を
 倶楽部の趣意書(ダイレクトメール)を送ってもいい方をご紹介下さい。基本的には島外にいる方が対象になります。五島出身の方でももちろん構いませんが、出身者は親戚などから送られているようで、それ以外の方々のほうが当たりがいいようです。以前都会で暮らした方があればそのお知り合いの方、島出身者なら周辺に広めて紹介してくれそうな方を歓迎です。
(2)産品発掘にご協力を
 自慢の味覚、伝統の味覚の品々をご紹介下さい。自薦・他薦いずれも歓迎。農産物・海産物・それらの加工品など。生産量は少量でも構いません。ともかく思い付いたらなんでもご一報を。

うまかもん倶楽部の連絡先はこちら
「上五島うまかもん倶楽部」事務局(立花)
Eメール s-tachibana1948@celery.ocn.ne.jp


オープン3年で閉鎖の危機(5号1面記事)

2006年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
検証 アクアブルー
2002年11月にオープン、この島には破格ともいえる温水プールを備えたスポーツ・健康の複合施設アクアブルーは、わずか3年で閉鎖の危機に直面している。赤字幅は想像をはるかに超える規模。その存廃問題は直接的には町の財政改革のあおりを食った結果かもしれないが、財政危機下でなくとも存続が疑われる状態といっても過言ではない。なぜこんな状態が現出してしまったのだろうか。

欲張りの施設 
 平日の夕刻、水泳クラブの幼児クラスに来ている十数名が、プールで伸び伸びと泳いでいる。専従のインストラクターがときおり声をかけているが、気楽な水泳教室といった風情で、泳ぎ疲れた子供の一人はジェットバス(本当はエステ用)にドボンと飛び込んでゆらゆら体を任せている。階上のフロアには、ガラス越しに我が子の泳ぎっぷりに目を細めている幼い子を連れた母親の顔。流水プールに目を移すと、老婦人が一人、温湯でリラックスしながら足腰を鍛えているのだろう、流れに抗して歩いている。奥まったところにあるサウナ室では、同じく高齢の男性が汗を流している。疎らな客数ながら、いかにもレジャー施設の光景である。
 一方、階下のトレーニング室では、動くベルト上を走るトレッドミル4台、自転車漕ぎ2台をはじめ、各種の筋力強化の機器がずらりと並び、男性数名がトレーニングに励んでいた。施設にはこのほか、ダンススタジオ(壁面が鏡になっている)、体を休めるリラクゼーション室、研修室、屋上を利用してのゲートボール(自由広場)を備えている。健康増進、体力強化、レジャーなどの要素を兼ね備えた、ちょっと欲張りの多目的施設といえよう。

年1億円の赤字 
 まず数字を押さえておきたい

●事業費概要(単位:千円)
 本工事費
  (鉄筋コンクリート造3階建・4383㎡)   763、922
 設計・管理委託料                 32、025
 備品購入費                    13、795
 事務費                       1、282
                    計    811、025
●財源内訳
 町債                      659、300
 文教施設整備基金からの繰り入れ         148、000
 一般財源                     3、725
                   計    811、025

 財源のうち町債は借金だが、償還金返済の一部は交付税で還元される。ただし三位一体改革の俎上に上っている交付税、以前なら3割程度は見込めたはずだが、これは確実に削減されよう。現に03年度18%,04年度3%(これは合併に伴う結果か)、05年度15%で、収支表にある通り額としては最大の05年度で1100万円程度だ。
 ところでアクアブルーの問題はその運営状況。これも収支の概要を掲げる。

●事業収支(単位:千円)
           03年度      04年度     05年度(予算)
 歳  入      13、664   11、509   12、584 
 歳  出      85、690  114、875  112、098 
 (内訳)経常経費  55、412   48、373   45、993
   起債償還金   37、105   68、758   77、875
   うち交付税措置額 6、827    2、256   11、770
     収支   ▼72、026 ▼103、366  ▼99、514

 06年1月段階での予測として、利用者数が前年比10%以上ダウンする見込みということなので、05年度も1億円以上の赤字になることは必至。たしかに04年12月議会で浜田議員の質問に対する町長の答弁のように「住民福祉のための公共施設という捉え方をすれば、建設時の借入金は初期投資であって運営には含める必要はない」のも事実。つまり起債償還金は歳出項目から除外する視点も理解はできる。だとしても毎年の経常収支が3千万円をはるかに越える赤字という数字を「町民サービスの経費」(同答弁)とみなすことはやはり無理があるのではないか。
 施設建設時に企画に当たった旧上五島町当時の課長の話では「温水プールをという町民の声が多くあった」とのことだが、公共施設とはいえ、たとえば図書館とか体育館とは性格が大いに異なる。スポーツジムとかフィットネスクラブとか温水プールなどは通常は民間の事業領域と考えられ、しかもそこそこの都会でしか成立しない。たとえば佐世保市には温水プールの民間施設すらない。公共施設として提供されるケースは全国的にも稀だと推定される。
 もちろん、不釣合とはいえ、町民にこの種のサービスが提供されることはそれ自体、悪いことではない。しかし、主体の温水プールの利用者が03年度52281人、04年度42938人、05年度が10%減として38000人(いずれも延人数)で、町の人口を考えれば健闘しているといえるものの漸減傾向を示しているし、安定運営の基礎である月間会員数(転勤族の中高年が主流という)にいたっては平均180人という寂しい数字で、危機の表面化以来これがさらに減少しているという。したがって放置すればじり貧は免れそうにない。

問題は価格設定 
 ではなぜこれ程の収支悪化になったのか。オープン以来、ずっと運営を担当してきた方にこの質問を投げたら即座に回答があった。「規模が大きすぎたんです。それに料金設定が余りに安すぎた」と。前者については判断材料がない。ただ燃料・水光熱費だけでも使用料収入を上回っている事実は、過剰設備といえるかもしれない。後者に関しては、大人2時間300円というのは格安料金であろう。「ランニングコストからすれば3倍程度が妥当」というのはうなずける。300円は冷水プールの価格だろう。それでも利用者が定着していかないとなると、これは町民のニーズそのものと乖離していると判断せざるをえないのではないか。
 実質的に町の直営であるこの施設について、昨年12月議会で指定管理者への移行を議決した。管理運営を民間に委託することになり募集を開始。2月下旬締切り、3月末までに決定とされている。1月下旬段階で問い合わせが2件来ていると聞くが、まとまるかどうかは「どれだけ町の補助が出せるかでしょう」。つまり償還金を補填する賃貸収入は期待できないのはもちろん、運営費の一部補助なしではやれないということだろう。
 年間1億円の血税投入をどれくらい減らせるか、年間の運営費を委託会社に補助してまで維持するような施設かどうか、閉鎖してもなお毎年7千万以上(総残額5億円以上)の償還金は残るのだが、そうした基本的問題が問われているのである。

発想の転換を 
 難題である。閉鎖が最もリスクが少ない選択肢と結論付けられる可能性も十分にある。しかし青方の中心部に幽霊ビルが放置されて残るような忌まわしい光景はやはり見たくはない。
 ではどうするか。妙案はないが、少なくともいえることは欲張り施設のスリム化は必至ではないか。プールのみを委託し、トレーニング室やダンススタジオ、リラクゼーション室などは閉鎖し空き室としてテナント公募をするとか、可能かどうか不明だが、思い切ってスーパー銭湯にする案が検討できないかとか、ともかく財源がないところで知恵を絞るしかない。
 それにしても、何とも厄介な施設を抱え込んでしまったものである。これも合併に伴う駆け込み事業という疑念をぬぐえないが、それをいっても仕方がない。どなたか画期的な妙案を!

東京大学体験学習問題(4号2面)

2006年01月23日 | 新聞記事(一部公開)
住民の会
町長・教育長に要望書を提出
 前号で報じたように、高レベル放射性廃棄物処分場誘致活動を行っているNPO法人「日本の将来を考える会」(IOJ)主催で、昨年度から実施されている「東京大学体験学習事業」(町内中学生14名選抜)に今年度も町は共催=補助金を付けて実施予定、応募要項を学校を通じて配布した。その中身は原子力技術PR一色であり、計画そのものが極めてずさん。法人代表宮健三氏(奈良尾出身の元東大教授)による電力会社の意向を汲んだ事業であることが、取材を通じて明らかになった。
 そこで、昨12月22日に処分場拒否住民の会では町長・教育長宛に質問・要望書を提出。要旨は、町の共催について、①事業への助成認定段階でIOJが高レベル放射性廃棄物処分場誘致の運動主体であることをを認識していたか ②募集要項配布時には当然認識されていたはずで、処分場誘致に反対を明言している町長の立場からも事業の一定の距離を置く配慮が必要ではなかったか ③教育の公平性・中立性からみて問題はないか(以上質問事項)、④間に合うなら今年度から、無理としても次年度以降は共催を中止する(要望)。
 回答は年末ぎりぎりにあった。故意かどうか回答主体は教育委員会だが、教育長・町長の判断であると解釈している。以下、回答の要約を掲載

【回答】
(はじめに) 日本の中心である東京での見聞(東京の生徒との交流・東大教授の講義)の意義、人材育成効果、学力育成、文化交流などの面を考慮し、本町の教育方針に沿うと判断
(質問1について)
 公募主体はNPO。教育委員会は募集要項の学校送付、申込書回収をやっただけ。IOJが誘致運動主体との認識はなかったし、純粋に人材育成事業と判断
(質問2・3について)
 事業の具体的内容に関しては一切非関与。公平性・中立性については、子供たちが原子力利用の可能性とすばらしさを知ることは非常に有意義。前回も「原子力利用の夢を抱き、廃棄物処分場の正当性を解く内容はなかった」と聞いている
※要望についてはコメントなし

行政の対応
判断責任の放棄 誘致活動を黙認か
 回答に一貫している姿勢は、建て前としての事業の意義を評価し、内容については主催者に一任。IOJの誘致活動と本事業は無関係と認識。これは子供でも分かる「無責任な逃げの論理」だ。IOJの動きがテレビ・新聞で報道、町民に動揺を与えたことに目をつぶって、「東京という知名度、先進の科学、子供たちの夢を育む」という脳天気な言葉でごまかしつつ、「原子力利用のすばらしさを知る」ことが「原子力利用の夢を抱く」ことにはつながらないというのだ。教育者の言辞とはとてもいえまい。それ以前に教育方針に沿った建て前だけで補助金を付け、内容は知らんというのは無責任かつ怠慢以外ではない。
 でもそれは誤りを認めたくない官吏の性癖の表現と受け止めるとして、提出時に道津教育長の「昨年の講義は偏りがあったとNPOも判断したと思う」との発言があったことを付記しておく。
 それ以上に問題なのは、誘致運動と本事業を切り離す姿勢だ。これは誘致の意思なしと明言した町長も繰り返し言及し教育長も同意しているが、彼らの活動を「理解促進活動」とみなす立場を一貫して表明する。「五島の将来を考える選択肢として最終処分地を考えることについて」というカラー冊子を発行し、「最終処分地に手を挙げるのに今ほど最適な時期はない」「世界の上五島として町民の大きな誇りとなる」などと記した文書を配って商工会、漁協など各団体に説明している活動を「誘致活動と思わない」と判断するのはいかがなものだろうか。こうした発言を繰り返すようであれば、次年度も事業補助を続ける意志ありと判断せざるをえないし、ひいては誘致を選択肢のひとつと自ら認めていると疑われても仕方あるまい。

希望者わずか6名
町民の賢明な判断
 ところで、町長・教育長のこうした町民を愚弄する態度とは裏腹に、町民は賢明な判断をしている。というのはすでに11月末で申し込みは締め切ったが、14人定員に対し希望者はわずか6名だったという。昨年は30余名希望があり、選抜試験を実施している。これでは実施すら危ぶまれると考えられるが「まだIOJから連絡はない」らしい。IOJ(奈良尾の支部)は速やかに事業を中止し、補助金を返還すべきだろう。どんな美辞麗句で飾ろうと、誘致運動と本事業がつながっている、少なくともその可能性を否定できないと町民が判断したとみなせるのだから。


本町に風力発電「ウインドファーム建設計画(4号2面)

2006年01月23日 | 新聞記事(一部公開)
実現すれば島の8割世帯分
 先の12月議会において、井上町長から「町で風力発電施設の建設計画が進行中」との報告があった。風力発電は下五島の旧岐宿町や宇久町でも設置・稼働しているが、それらは一基のみの実験的要素が強い設備。それに対して今回は一挙に八基設置の計画。数十基の風車が並ぶ本格的なウインドファームには及ばないものの、五島列島の規模からすれば立派なウインドファームといっていい。自然エネルギーの有効活用が世界的な課題になっているいま、計画の実現が期待される。

 計画しているのは長崎市に本社がある九州風力発電という環境ベンチャー企業で、名前の通り風力発電での事業化を目指して昨05年4月に発足した新しい会社。2000年の電力自由化以降、全国で民間会社の新規参入が相次いだが、採算性の面で難題が多く停止に追い込まれるケースが少なくなかった。しかしその後「発電機効率がずいぶん向上し、また大型機の開発が進んで事業化ベースに乗ることが分かってきた。風況調査(風力発電に適しているかどうかの調査)の精度も各段に良くなって、これも促進する背景になっている」(同社・山内正子社長)という。
 今回の計画で設置予定場所になっているのは、旧有川町の丹那山(麓が空港線)南方で、ここを拓いて八基を設置。一基の出力は2000KW、八基で16000KWになり、風況調査に基づく計画風量が得られれば、約8000世帯の電力をまかなうことができると試算している。高さ60メートルの支柱に40メートルの長さ。この風車が八基並ぶ光景は、観光的景観としても注目されそうだ。

完全な民間型
 ところで、今回の風力発電は完全な民間型。宇久町も旧岐宿町も行政とNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)などが出資する第三セクター方式で、宇久町の場合はランニングコストも当初計画の2倍かかったり、3年目にして発電機にトラブルが発生、休止状態になっているなど問題山積。いずれ血税でカバーされる事態も想定される。今回は九州風力発電が全責任を負うことになるわけでその心配は皆無だが、お節介ながら気になるのは採算性。事業は発電した分を九州電力に売電、これが通常の売り上げになる。設備費は約35億円を見込み、NEDOから4分の1の補助が出る予定としても、ファームの場合の九州電力の買取り価格は1KWHあたり宇久の場合より低く、厳しい経営環境が予想される。
 現在、九州電力有川火力発電所は下五島を含めて電力を供給している。一方、本土と海底ケーブルで結ぶ大がかりな系統連結工事が最近完成して、有川発電所は縮小されていくと想定されるが、代わって風力発電が計画通りに稼働し、本町の家庭に電力が供給されるのは想像するだけで楽しい。何しろ2000KW一基当たりで年間1000KLの重油削減、CO2排出量も3000KM3の削減に当たるクリーンな電気なのだ。

町(民)の積極的協力を
 現在同社は九州電力と最終的な詰めの作業に入っており、1月末には公表される予定。認可が下りれば今秋にも工事開始、来年末に完成予定だ。工事期間中はもとより、稼働後もメンテナンスなどで雇用が見込まれ、また固定資産税などの税収にも寄与することでもあり、町でも積極的な支援協力がなされても良い。丹那山の保護生物上難点もあるとの一部町民の声もあるようだから、ここは例えば閉鎖が決まっている上五島空港の敷地を提供するとか(これは空港職員の提案でもある)、工事経費の軽減策などを検討してほしい。一方で高レベル放射性廃棄物処分場誘致が発覚し、風力発電はこの施設とまったく相入れないもの。処分場については井上町長は受入れ意思なしを明言しているから、その意味でも協力態勢が期待される。町民においても、例えば工事道路建設などを人手を要するときにはボランティア支援なども組織したいものだ。

議会を町民のために(新聞1面記事)

2006年01月23日 | 新聞記事(一部公開)
新町議会のこの一年 -傍聴席より
 住民にとって議会とは何だろうか。自分たちの生活にどう関わる機関なのか。「みえない」「わからない」「意識しない」……そう感じている人のほうが圧倒的に多いのではないか。議会は町民の声を町政に反映させる機関であり、かつ町政のさまざまな施策を事前に審査し、結果をチェックする役割を担う。その意味ではもっとも住民の利害に直結する重要な仕事を担っている。しかしこの一年傍聴した限りでは、議会と現実の住民との距離はあまりに遠い。ここでは議会の仕組みや機能について考える前に、なぜそうなっているかという素朴な問題を考えてみたい。

●議会 情報公開の現状
 議会で審議された事柄は議事録として残される。この議事録は図書館などでみることができるほか、議会便りでも概要が紹介されている。しかし議事録ができるのは早くて1か月半後、議会便りも年4回なので、町民が議会で審議・決定されることをリアルタイムで知るには傍聴にいくしかない。
 ところがその傍聴、まずその審議内容(議案)が事前には公開されていないので、町民は前もって検討した上で審議を聞く時間が与えられていないし、関心ある議題を選択することすらできない。せめて事前にイントラネットでも構わないので議案を公開すべきではないか。それも「議案○○○条例の一部を改正する条例について」などというような何のことか分からない表現ではなく、具体的に分かる言葉で告知しなければ意味がない。「在任特例」の例をひくまでもなく、議員の【お手盛り】条例議決の前例もある。町民がナマの情報を得られるようにしなければ、町民のための議会にはならない。
 もうひとつ、議会に審議に上るまでに、各種常任委員会で審議され、議会にかけるかどうかは全員協議会での討議を経ているという。前者は事前に申請すれば傍聴可能のはずだが、日程が告知されていない。後者は傍聴不可能で、これでは議会が形式化するのは当たり前。これは廃止するか公開制にしなければならない。

●誰のための傍聴席
 傍聴が許されているとはいえ、議会は平日10時から4時。日時は1週間前に本庁・支所内に掲示され、最近はイントラネット端末で同時に閲覧できるようになっているらしいが、まず知られていない。ほとんどの人は有線放送での告知だが、こちらは早くて3日前。それやこれやで「予定も立たんし忙しくて全部はみられんよ」ということになる。繰り返しになるが、長時間の傍聴は無理でも興味あるテーマに絞って聞きに行くことが可能になれば傍聴者は増えるのではないか。合併で議会が開催される本庁に行くのが困難な地域が多いことを考えると、この条件下で現実問題として有権者2万人中何人の人が傍聴にいけるのだろうか。
 議会事務局の話では日曜議会や夜間議会も議長裁量で可能とのこと。職員の時間外手当て分の経費が上がるとのことだが、その気になれば代休やフレックスタイム制導入で対応は可能だろう。結果としてすぐにも傍聴者が急増することはないかもしれないとしても、「開かれた議会」にするために、町民・有識者を交えた検討委員会の設置を要望したい。

●町民からの働きかけ
 議会周辺に接触して常に感じるのは、事務局を含め議会の中に町民が不在であること。議会側だけが悪いとは言わない。規則や慣例に縛られて内部から変えようとするにはかなりの労力、忍耐力が必要なのだろう。でも「日曜なら傍聴に行けるのに」という声が集まれば、すぐには実現しないとしても、少なくとも検討課題として取り上げさせることは可能だ。議案の事前告知にしても本庁総務課が取りまとめるということなので、これも声を上げれば可能な道を探れよう。
 要は今まで町民が要望してこなかったという要因もある。事務局の人が奇しくも漏らしたように「みんなもっと議会に興味を持たんと」ということだ。年間1億3千万円余りの予算をかけている町議会である。議会が自分たちの生活にいったいどう役立っているか、あるいはどうすればより役立つ議会にできるか、町民には考える権利と義務があると思う。

東大体験学習 今年も町の共催で実施(住民新聞2面)

2005年12月19日 | 新聞記事(一部公開)
募集要項は学校を通じて配布
 地元の中学生の中から、選抜で東京大学へ3泊4日の体験学習。この事業が昨年から実施されている。主催者は処分場の問題で本紙でも何度も登場したNPO法人「日本の将来を考える会」(以下IOJ。代表は奈良尾出身の東大名誉教授・宮健三氏)、町は共催で、派遣中学生14名の交通費・宿泊費実費の90%、約58万円を補助。募集要項が学校を通じて配布されている。

偏向・ずさんな講義内容
 事業内容だけを取り出せば、子供の教育の一環として貴重な機会を提供する場、といえるが問題は中身。本紙創刊号でも触れたように、昨年の講義内容を調べてみたらどう考えても原発のPRとしかみなせない、ここまでやるか、という代物であった。今回の募集要項によると以下の講義が予定されている。※は編集部注

3/26
10:00~10:50 宇宙に輝く星の秘密 岡野邦彦 東大教授 ※電力中央研究所研究員
11:00~11:50 宙に浮かぶ磁石・超伝導実験 出町和之 東大助教授 宮健三氏の弟子
13:00~13:50 逆に考えよう-視えないものを診る 山本昌宏 東大助教授 ※宮氏との関係不明(問合せに回答なし)
3/27
10:00~10:50 エネルギー利用における原子力発電の役割 小川順子win会長 ※日本原子力発電(株)広報室
11:00~11:50 脳の秘密を解く 上野照剛 東大教授 ※宮氏の友人

テーマをみれば露骨なPR色は出ていないので、批判を受け止めて改善されたかに思えたが、念のため講師の方々と設定テーマの確認を行ったところ、結果はやはり「?!」であった。
 5名の講師のうち3人は昨年に引き続いての登壇。まず小川順子氏だが、肩書のwinとはWoman In Nuclearの略で、要は原子力関連の仕事に携わる女性の集まり。本職は日本原子力発電(株)の広報室所属である。日本原電といえばこの国の原発のパイオニアの国策会社。東海村や敦賀などに原発をもち、何度もトラブルを起こして世間を騒がせた会社だ。その広報担当なのだから内容は推して知るべしだろう。
 次に岡野邦彦氏。この人の肩書の東大教授はほとんど詐称に近い。本職は電力会社が共同で作っている電力中央研究所(以下電中研)の研究員で、電中研がスポンサーになって東大で開講している講座(冠講座という)に講師として出ているだけ。つまり電中研がお金を出して買っている講座の講師だから、東大教授とは言えず、単なる出張講師である。テーマは前回同様核融合の話。かつての原子力と同じく夢のエネルギーとされ、巨額の研究予算がつくため研究者が群がるテーマだ。
 もう一人の超伝導を講義する出町和之氏は原発のメッカ東海村にある東大大学院原子力工学専攻室に所属。宮氏の弟子。
 残りの二人は今回初登場。昨年は「医療放射線」と「宇宙放射線」をテーマとした講義で、これではあまりに露骨と考えたのだろう、テーマが変更されている。
 ところが、まず上野照剛教授に問い合わせたところ「宮先生から五島の子供に話をしてくれ、というメールはもらいましたが、具体的には何も聞いていません」という答。別掲の内容と時間・場所を教えてあげたら「そんな話をすればいいんですか?、でも3月27日は卒業式だなあ」。ついでに、宮氏が故郷の島に処分場の誘致活動を行っているという背景説明をしたら、「え! 六か所村が断った処分場を島に持っていこうというのですか。そりゃいかん」。まるで茶番である。
 最後の山本昌宏氏については、確認のメールを送っているが現在(12・8)まで回答は来ていない。なお、募集要項の講義について「講義内容、時刻については調整中で、変更の可能性あり」と注が付いている。
 さて、以上の事実を客観的にみて、本講座は紛れもなく原発PRを定款に掲げるIOJ(恐らく電力会社から資金が出ている)の活動の一環である。故郷の子供を東大で学ばせるというようなきれいごとではない。したがって本命は小川・岡野両氏の講義で、後は声が掛けやすい弟子、友人を取って付けたように講師に並べたにすぎない。東大という虚構の権威を利用して。

町共催の是非
 でもそれは許そう。NPO法人が何をしようと勝手だからだ。しかしこれを町が共催し補助金を出す、あるいは広報を学校を通じてやるというのは、公平性、中立性の観点から許されることだろうか。道津教育長にその辺りを質すと「オーライ上五島事業の中に都市との交流というテーマがあり、これに則していると判断した」という。講師陣については主催のIOJを信用していて、具体的に調査はしていない、と。でも、前回はともあれ今回は処分場の問題が発覚しているし、その主体がIOJであることは周知ではないかと突っ込んだが返答はなかった。原子力の有効な利用について子供に語るのは良い。でも負の側面を同時に伝えないと片手落ちの知識しか身につかない。これは子供にとって不幸な事態である。そんな配慮がなされた講義とはとても思えない。
 とはいえ、助成金は交付され、来春には予定通り実施されるだろう。最終的にどんな講義がなされたか、またチェックしていきたい。同時に、第3回も同じく町の共催を考えているとしたら(来年度予算を注視する)、もう一度行政に再考を促しておきたい。
 蛇足ながら、派遣する中学生は応募多数の場合「コンピュータを用いた英単語テスト―単語の木」で選抜とあるが、この「単語の木」なるものは宮氏が代表を務める(株)普遍学国際研究所の開発になる教育ソフトで、この会社は電力会社の委託を受けてさまざまな調査・解析などを行う純然たる営利会社である

提言 過去の行政責任の明確化が不可欠(住民新聞1面)

2005年12月19日 | 新聞記事(一部公開)
行財政改革推進委員会答申を読み込む
 今春5月の諮問を受け審議してきた「新上五島町行財政改革推進委員会」は、半年にわたる議論と解決策の模索の結果をこのほど答申。11月16日付で町長宛に提出された。各方面に目配りの効いた答申で委員諸氏のご苦労を多とするものの、根本的な疑念が残るので、提言の意味を込めて記しておきたい。
 答申は行財政改革の基本姿勢を「町民生活を常に念頭に置いた」ものと規定している。にもかかわらず、答申の中身は実は役場組織にかかわる対策が過半を占める。例えば財政健全化の主策は人件費の抑制、内部管理費の抑制、職員削減、任用問題(職員の6割が6給職―課長補佐レベルという民間では考えられない評価制度)、給与適正化(退職時特別昇級、諸手当、給与格差)など、役場組織の肥大化と非効率化に伴う乱費を改善するごく当たり前ともいえる対策があげられる。恐らく削減絶対額のほとんどを占めている。それ以外の健全化策は町民に負担・不便を強いる対策――保育所・幼稚園・小中学校の統廃合、アクアブルー・新上五島振興公社(温泉荘、ふれ愛らんど)の廃止を含めた検討、水道値上、診療所の入院廃止、若松地区バス・旅客船の民営化(これは運賃値上もしくは廃止を意味する)、公共施設利用料値上……といった具合だ。
 後者については町財政危機の中で、役場職員の負担(遅まきの“是正”に過ぎないが)を前提としているし、相応の町民の負担を覚悟するのにやぶさかでないから具体化内容を注視しながらみていくとして、前者の組織維持費用の削減については、これを保証する組織の能率・効率化・スリム化が不明瞭かつ不足していると思う。
 具体的にいえば、職員定数適正化に関し、平成29年度までに職員数を591人から400人にするという計画のスピードアップを提言しているが、他方の組織改革策で、適切な人員配置、支所・出張所の統廃合などを掲げ、行政評価制度の導入・事業の民間委託を提案している。これらは組織のスリム化を意味する。つまり余剰人員はさらに増えるわけで、400人以下の削減を念頭に置いていると想像される。しかしではどうやって削減するかについては、勧奨退職制度の拡充(これは人件費削減と対立する)とか、現業不補充、職種転換などを提言しているものの、その程度では400人への削減という目標も達成できないのではないか。
 要は余剰人員をどうするかが最大の問題。ここを大胆に切開しないととても行財政改革はおぼつかないし、この提言すら絵に書いた餅に終わる。前提として公務員法で職員の地位は保護されている。民間のように乱暴なリストラはできないから、ここは発想を変えなければならない。
 二つのことを提案したい。
 第一は職員の有効活用だ。答申でもっとも注目したのは「地域自治区」導入の提言で、地域自治の支援をしていくという部分だが、これをもっと強力な形にできないか。いま町の活力喪失は高齢化による集落(とくに端、中心部も一部を除いて)の崩壊現象だ。ここを立ち直らせないと活力の快復は望めないと思う。ではどうするかの対策は難しいけれど、ここに職員を集落規模に応じて1~数名常駐させ、地域自治のサポートを行う。イントラネット端末は公民館に設置されているからここを拠点とし、各種窓口サービスのかなりのものを移管でき、それだけでも住民サービスの向上になるが、加えて道路や公共施設などの維持管理を地元に下ろしたり、廃校など遊休施設を利用した介護・給食サービスなども可能だろうからその実行部隊として先頭に立つ。余力があれば集落に残る伝統の食べ物などの産品開発にも取り組む。行政サービス向上と地元への経済効果という二兎を追うことになるが、その際の要点は、優秀な職員を優先的に配置すること。窓際の仕事でなく現場という第一線で能力を発揮する場という認識を徹底させることが肝要だ。
 職員活用の方策はもうひとつ。職員による起業を検討すること。公募形式で職員の自発的プランを引き出しても良いし、民間の英知を集めて起業テーマを発掘し、実行職員を募集する方法もある。この町には幸か不幸か遊休箱ものは多いから創業の場所に困らない。職員の地位保全は特別の人事制度(出向など)を策定して担保する。
 問題は財政難の中で前向きの予算を確保できないこと、自治サポートについては経費増にはならないと思うが、起業となると資本がいる。そこで第二の提案。
現在の行財政の危機は過去の失政のつけである。そしてその責は現職員ももちろん負うべきであろうが、過去の職員は免責されるのか。今回の答申に欠落しているのはこの肝心な点である。溯っての責任を明確化し、けじめをつけた上で現職員や住民への負担をお願いするというのが前提ではないか。(リスクが多い債券だが)。
 現職員の沈滞、やる気の無さの一部は過去の責任の不明確化に起因していると思う。答申に盛り込まれている行政評価制度の内実も、この観点抜きにはできないはずだ。職員のモラルを高めるためにも、真剣な検討を切に望む。