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上五島住民新聞ブログ版

みんなで町政と自分たちの町を考えるインターネットスペース。新上五島町より発信。

焦点 3年目の漁業再生支援事業(21号1面)

2007年08月24日 | 新聞記事(一部公開)
藻場再生に注力を
急がれる全町的取り組み

 離島漁業再生支援交付金の事業が3年目を迎えた。この事業は①漁業集落単位への直接支払い②磯の回復などソフト事業に特化③5年間の事業で繰り越しが可能、というこれまでの事業とは大きく性格が異なるものだっただけに、当初は受益者である漁業者に戸惑いがあったものの、ここにきてようやくその有効性を認識し、活用策に知恵を絞るムードが生まれてきたようだ。
 これまでの助成や補助は、港湾整備とか魚礁設置とかのハード事業が中心で、語弊を恐れずにいえば上からの押しつけといった趣が強かったのに対し、今回は衰退しつつある漁村の再生を、当事者の住民が自ら考えて計画し、実情に応じた施策を行えること。かつ単年度決算ではなく5年間を通して計画実行できるだけに、じっくりと腰を据えた再生プランが実行できる仕組みになっていた。
 しかし、主体性が問われる制度だけに、最初は「何をやっていいか分からない」というのが正直な受け止めだったようで、手掛けた事業といえば浜の定期的な清掃だけ、といわざるを得ない状況が1年以上続いた。もちろん浜の清掃も重要な再生策の一つには違いないが、焦眉の課題は別のところにあることを漁業者自身知らなかったはずはない。
 例えば漁業集落の一番の悩みは磯焼けで、浜の生産力が極度に落ち込み、ワカメやヒジキをはじめとした海草が激減して、ミナやサザエ・アワビが取れなくなり、小魚も育たなくなるから勢いこれを食べる魚が寄り付かない、という悪循環に見舞われていた。
 とはいえ磯焼けは原因に諸説があり、防止あるいは回復の対策に決め手がなかったのも事実。したがって問題は分かっていても対応策が見つからず手をこまねいていたと推定される。
 そんな中で、先進的な漁業集落は手探りながら様々な取り組みを行ってきている。そしてその取り組みが他の集落にも波及し、町全体として漁業再生プランの底上げが始まっている段階にあるようだ。
     *
 本紙昨年5月号で紹介した日島地区の藻場再生への取り組みを見てみよう。
 ここでは初年度からどんな海草がどの場所に適しているかを調査すべく、カジメやアラメなど各種の海草を管内各所に試験的に植えつける実験を重ねてきた。結果は確かに育つことが確認された。しかし「植え付けてもそのまま放置すれば魚や貝にすぐ食べられてしまう。ですから食害防止に網で囲ったりする必要があり、それほどの植え付け量が確保できません。したがって手間の割には効果を実証できるまでに至っていない」(大村忠美若松漁協組合長)。
 海草養殖には海底に植え付ける方法と、海中にロープを張りそこに吊るして付着させる方法とがあり、食害の面では後者が優れ、かつ胞子を飛ばして海底に着床する効果もある。しかし海中だと「船航行との兼ね合い、漁業権の問題などがあり、かなり厄介」という。
 もうひとつ、30年前に比べ最近海水温が年平均1・5~2℃上昇しており、とくにこの冬の高温では、ワカメやアオサが激減した。それだけ海の異変が日常化していて、磯焼けもその影響とする説も有力だ。海水温上昇は間違いなく温暖化の影響で、元に戻る可能性は少ない。「つまり、この温度に適した海草を新たに導入していく必要があるのではないか。たとえば南の島の海域に育つ海草を持ってくるとか、真剣に検討しなければならない時期にきていると思います」。
 日島の取り組みは二つのことを教えてくれる。一つは藻場の再生の可能性を証明したこと。もう一つは、問題点も発見され、広範な再生に向けて何がなされなければならないかの見極めがつけられつつあること。とくに後者は今後の再生プランに貴重なデータを提供してくれている。
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 日島では3年目の今年、県や町、メーカーの協力を得て海草バンク事業に乗り出している。海草バンクとはいわば海草のプラットホームの役割を果たすもので、コンクリートの構造体に海草を繁茂させ魚礁効果も狙うもので、新しい磯再生の武器として注目を集めている手法だ。メーカー開発品の実験も兼ねるため、直接的費用は発生しないという。
 大村組合長はこの海草バンクに海中藻場を組み合わせ、一挙に海草を増やす方法が採れないかを検討中。まとまったエリアで効率的かつ重層的に藻場を再生させる可能性を持っている。
 そのためには個別日島だけでなく、周辺を含めた集落の広範な共同作業が必要になる。そうした連係プレーを今後は真剣に模索するべきだろう。また有川や魚目のように、旧町全体が一つの集落として事業を展開しているが、こうした地区に相応しい事業として検討されていいのではなかろうか。
 もうひとつ、若松と奈留島の境にある滝ケ原瀬戸の若松側はダイバーや漁師にとって最高のポイントとして知られているが、これは滝ケ原の山林が格好の魚付き林として機能しているからだという。山の有機質に富んだ栄養分が水と共に供給され、海草繁茂、プランクトン発生、キビナなどの小魚の繁殖、そしてこうした小魚を求めて魚たちが集まってくる。
 こうした魚付き林の育成が中期的には大きな課題になってくる。となれば、全町的な取り組みが要求されよう。この町の過去から将来にわたる基幹産業は農林漁業をおいてない。残る2年の漁業再生支援事業は、ぜひこの観点から取り組んでほしいし、であればそれ以降の漁業再生の確たる手掛かりが得られるはずだ。関係者の努力に期待したい。


特集 世界遺産(21号1面)

2007年08月24日 | 新聞記事(一部公開)
地道な地域づくりの一助に
過剰な期待は禁物

頭ヶ島教会と青砂ヶ浦教会を含む「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が、登録候補として世界遺産暫定一覧表に追加記載されることが決定した。正式に登録されるまでにはまだまだ幾つかの関門を潜らなければならないものの、ゴールまでの貴重なパスポートを得たことは間違いない。沈滞を続ける町にあっては明るい話題であることをまずは喜びたいが、手放しで浮かれるような事態でもない。以下、世界遺産の紹介を兼ねて実情を考えてみる。

暫定リストとは

 エジプトのアスワン・ハイ・ダム建設によるヌビア遺跡水没の危機を契機に、ユネスコが1972年に制定した世界遺産条約は20か国の批准をもって75年に発効。この国は20年後の92年になってようやく批准、126番目の加盟国となった(現在は183か国加盟)。世界遺産登録によって観光産業に寄与することが分かったきたから、という理由だけでもあるまいが、姫路城、法隆寺、古都京都、古都奈良、原爆ドーム、厳島神社…と登録地を並べていくと、すでに観光地として成熟し、登録による開発抑制などのデメリットが少ない場所が優先的に選ばれている感を否めない。というのも、最近までは申請すれば登録されてきたため、安易に申請がなされてきたと推定される。 
 ところがここ数年、暫定リストに記載する候補地が急増する中で、管理するユネスコの能力に限界があり、登録数を極端に制限する方向に変わってきている。すでに世界遺産登録数は850件に達し、登録を待つ暫定リスト記載数はアメリカ72、イタリア41、フランス37などいわば目白押しの状態。これではユネスコが悲鳴を上げるのもうなずける。ちなみにこの国の暫定リストは別表(ウェブ版では割愛します)のように4件で、うち2件は登録の正式申請を実施し(石見銀山が却下されたニュースは記憶に新しい)、暫定候補は2件だけになっていたので、今回リストへの追加を4件決めたものだ。
 でその暫定リストだが、これは冒頭で述べたように、正式に世界遺産登録の予備軍的性格を持ち、正式申請(登録推薦書を国が提出)に先立つ1年以上前に暫定リストに記載することが義務付けられている。加盟国が候補地を選定するに当たり、各国の候補地を参照することができるようにとの配慮からである。

観光活性化への寄与

 ユネスコの最近の登録抑制策は①正式申請を年間2件以内に限定(1件は自然遺産)②未登録国を優先認定③過去の類似登録のない分野を優先、という厳しいもので、これを受けて最近は単純な遺跡や建築物などより、広域で構成される遺産群の様な特徴を打ち出したものが認定される傾向が濃い。「琉球王国のグスク群(99年)」「紀伊山地の霊場と参詣道(04年)」などがその例で、後者などは和歌山県の半分近い面積が対象地域だ。今回の教会群とキリスト教関連遺産もそうした類型のひとつで、追加リストから外れた「継続審査」20件の中にも、「出羽三山と最上川が織りなす文化的景観」「四国八十八か所霊場と遍路道」「九州山口の近代化産業遺跡群(長崎県も入る)」など半分近くを占めている。
 それはともかくとして、以上の世界遺産をめぐる状況を考えると、この国におけるカトリック文化の有為転変の歴史と特異な信仰の在り様を伝える本県の教会・関連遺産は、登録の可能性が比較的高いのではないかと想像される。でも正式申請はといえば、審査から外れた石見銀山も再審査申請をするというし、暫定リストの順番からいっても申請は3~4年先に。また審査には3年程度かかるとされるから、登録されるとしてもまだ時間がかかる。とはいえ申請そのものは実施されるし、ユネスコから委託を受けた国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が現地調査に訪れることも既定だろう。
 それを踏まえた上で、では登録されれば、観光への波及効果は大きいか。
 県の資料によれば、観光促進策として幾つか目玉を設定している。たとえば「ながさき巡礼」と銘打ったエリア観光の創設。長崎市・西彼、島原・雲仙、大村、平戸・生月田平、佐世保・上五島、五島・福江と周遊するコース設定で、キリスト教版八十八か所というべきもの。マップ作りはもとより、公認ガイドの配置、手引書の作成、統一的な案内版などの設置や、関連して首都圏・福岡圏での「キリシタン文化講座」の開催、シニア向け短期留学プログラムの企画を含む多層的なイベントプランが練られるという。
 その意欲は買うとして、たとえば五島まで足を向けてくれる人がどれくらい増えるか予測は難しい。参考までに類似の先行事例として、広域かつ信仰をテーマとした「紀伊山地の霊場と参詣道」の観光効果について和歌山県に問い合わせたところ「初年度は各種イベントPR効果で5%ほどの入り込み客増があったものの翌年度以降は減少」とのこと、これはどこの世界遺産地でも同じという。一過性の効果しか期待できないというのが実情のようだ。法隆寺と並んで認定第一号の姫路城に至っては「格別の効果は出ていません。最近、世界遺産を訪ねるツアーのせいか、外人客が少し増えたような気がしますが」と心もとない返事だった。
「ながさき巡礼」のコンセプトは良しとして、はたして五島まで足を伸ばす人がそれほどいるだろうか。再び和歌山の例をとれば、ここでも参詣道の散策コースが整備され、ガイドなども付くようにしているが、熊野古道を中心とした一帯は人気が高いものの、外れた場所はさっぱりという状況。そこまで足を延ばそうとすると、2~3日かかってしまうからだろう。海を隔てる五島も同じポジションだから、とても楽観できる状況にはない。

まず足元を
 
 さて、やや悲観的に世界遺産登録後の予測をみてきた。登録に注力してきた関係者に敬意は表するものの、少なくとも観光促進という側面のみでの過剰な期待は禁物であることを確認しておきたい。
 では世界遺産指定に意味がないかといえばもちろんNOである。キリシタン信仰の敬虔さ、暮らしに根差したその深さにおいて、本町の文化風土は誇るに値する内実を持っていると思う。そのことを改めて認識し、後世に伝え残す格好の機会を与えられたというべきだ。仮に登録されなくても良い。世界遺産の候補になった事実だけでも十分だ。それは以下の理由による。
 今後、申請に向けた諸作業の中で、バッファゾーンの設定やまちづくり景観条例の制定、保存管理計画の策定などが実施予定になっている。バッファゾーンとは登録される施設に関係するエリアを定め、一括して管理対象とするもの。本町では頭ヶ島教会と青砂ヶ浦教会が指定を受けるとすれば、少なくとも地区集落一帯は対象になろうし、場合によっては町のすべての教会が関連施設として認定されることも十分に考えられよう。あるいは「町全体が対象になるという考えもあります」(県学芸課)。いずれにしても、対象地域の施設・景観などの保護管理対策が必須の課題となる。どんな具体的な保護管理策を講じていくか、そうした議論を開始するだけでも十分に意味がある。
 加えていえば、草茫々の荒んだ風景、テトラポットの異様な配置など、この島の第一印象を壊している、基本的な景観改善だけでも、議論の対象にしてもらいたい。申請を機会に、この島に誇りが持てる環境にもっていくような、足元をみつめた議論を切に願う。

ひとりごつ(20号)

2007年06月13日 | 新聞記事(一部公開)
「国民投票法案」が今国会で成立する可能性が濃厚になった。教育基本法改悪で子供に愛国心を強要し、そして次なるテーマの憲法改悪、すなわち九条の見直し、戦争のできる国への本格的脱皮である▼司馬遼太郎がエッセイで何度か触れているエピソードがある。よほど強烈だったのだろう。戦争末期、戦車隊の小隊長であった氏は、米軍の本土上陸に備える作戦会議において質問した。海岸線防衛のために部隊を移動させる必要があるが、避難して来る民で戦車が身動きできなくなる可能性が考えられる。その際どうするか。瞬時考えた上官はこう言い放った。「蹴散らして進め!」▼いまの安倍政権を支える閣僚・自民党幹部(両中川や尾身など)は同じような局面なら間違いなく同質の指令を出すだろう。核武装を公言したり、侵略戦争責任を無視したりする思考回路の裏には“国家主義者”の思想が隅々まではびこっている▼何度強調してもし足りないが、民あってこその国であって、民より国が優先する思考は論理矛盾、本末転倒以外ではない。しかし国家主義者は違う。国家の存続と体面維持の前には民の生命など虫けら同然なのだ▼憲法九条については様々な議論や考え方があろう。自前の憲法ではないいわゆる押し付け論、戦争を放棄しているのに世界でも有数の軍事力を持つ自衛隊の合法化を謳う人、交戦権の放棄など夢物語と切って捨てる人‥改憲派の主たる論理だ▼他方、戦争の放棄は人類史の終局的課題であり、むしろ積極的に他国にアピールしていくべき、と考えるのが護憲派。理想論は承知の上で私もこの立場に立つ。現実の自衛隊は藤原帰一東大教授が力作「平和のリアリズム」(岩波書店)で提案しているように、国連軍にそのまま移行する。これこそ平和国家のとる道であろう▼改憲論争が今後ますます盛んになる事が予想される中にあって、私たち一人一人はこの問題から逃げられない。改憲して誰が得するか、戦争で悲惨な目に遭うのは庶民である事を今一度思い起こそう

「ひとりごつ」は紙面ではコラム枠で、町の時事に焦点を当てる本文に比べていつもやや自由なテーマ選択となっています。(ブログ管理者)

(株)五島うどん 設立(20号2面)

2007年06月13日 | 新聞記事(一部公開)
「海援隊」役、果たせるか

 以前から計画されてきた五島うどんの販売会社が正式に発足。県(300万円)と町(500万円)に町内のうどん製造18業者を含む36件の出資者により、資本金3000万円の企業が生まれた。代表には井上町長が就任。常勤職員は販売2、経理1、統括事務1の4名で、販売担当の1人(三越百貨店で40年の販売経験者)は東京事務所で販売を担当する。本社は旧有川港ターミナルビル1階。
 発足に当たり社の独自ブランド「五島手延べうどん」を開発。五島の塩を使い、粉も統一して参加業者が製造する。品質面でも「五島手延うどん振興協議会」が進めてきた認証制度に基づいて安定性・安全性を確保。初年度1億円の売上を目指す。
 ところで、本紙は昨年3月1号(6号)でもこの問題を取り上げ、いくつかの問題点を指摘したが、その視点から改めてこの会社を見てみる。
 まず、今回のうどん販売会社設立の背景や目的そのものは理解できる。日本三大うどん(これについては諸説があり、五島うどんがそのひとつというのはご愛嬌としても)を標榜する以上、いまだ脆弱なブランド力と販売力をカバーし、五島うどん全体の底上げを計ることは肝要だろう。島経済が極度に低迷する中で、数少ない産業である手延べうどんが経済浮揚の牽引力になれば、何よりも町民に対する勇気づけになろう。
 それを踏まえた上で、提案の意味を込めてやはりいくつかの問題点を指摘しなけれならない。
 まずは市場性の問題。五島うどんそのものはここ数年横ばいまたは減少傾向を示している。個人消費の力は依然として弱いし、しかも讃岐の手打ち冷凍麺のような手軽で質の高い麺が幅を利かせている現状にあって、調理の手間がかかる乾麺の需要の伸びを予測することは難しい。これに関して経営統括担当の山崎泉代表取締役専務は「確かに容易ではない。しかし手作りの良さを生かし、地元の塩や油・出汁あごを使うことで健康・本物志向の消費者を獲得できる」と語る。その心意気は買うとしても、手作りうどんの元祖である船崎うどん関係者の話では、今回の独自ブランドうどんの品質・価格基準では五島うどんとは呼べないのではないかという。したがって船崎の業者は不参加。これは製品の標準化と個性の問題であり、市場を一ケタ増やそうとすれば、個性だけにこだわるわけにはいかないだろうが、健康・本物志向で勝負するなら、商品性の多様化と独自性はもっと考慮すべきだろう。
 もう一点。仮にうどん販売が好調だったとしても、従業員4名の会社を販売マージンだけで維持していくのは至難。「もちろん自前ブランド商品だけでなく、各業者のうどんも別個に売っていくし、海産物を含め他の特産品販売も視野にいれている」とのこと。それならうどんを冠した会社名ではなく、「上五島物産」のように最初からコンセプトを決めてスタートすべきではなかったか。会社に参加しているのは町の33業者のうち半数ほど。うどん業者すら一丸となる態勢を取れないで、他の産品の販路を拓いていけるのか、との疑問は拭えない。
 ともあれ県・町の肝煎りで進められてきたこのプロジェクト。すでに舵は切られた。龍馬の海援隊のように、未来を開く商社として成長することを祈りつつ、今後の動きに注目したい。

07(H19)年度予算

2007年06月13日 | 新聞記事(一部公開)
難路は越えたか?
苦しい中のやり繰り予算

 07年度の予算が先の議会で成立した。総額170億円(一般会計)、特別会計27・5億円。この町を取り巻く環境の厳しさは改めて指摘するまでもない。国の地方切り捨て策による経済悪化、合併効果どころか異常に膨らんでいた借金財政、高齢化は進み人口流出は止まらない。まさに内憂外患、八方塞がりと言ってよい。そんな中での予算編成は誰がやっても困難を究めることは容易に想像がつく。予算の全体像は町広報誌5月号に公表されるから、ここでは主に行財政改革、地域経済打開策の視点に絞って中身を概括してみたい。


 一般会計170億円は前年(借金の借り換え分を除く実質)比6・2%増、額にして10億円の増額だが、これは「まちづくり基金」(後述)の起債額に見合うので、ほぼ前年並といえる。費目別に額として増減幅が大きい費目と理由を掲げる。
・商工費7250万円増産業支援センター(旧有川港ターミナルビル)改修2300万円、ビジネスサポート社「コンタクトセンター」への人件費助成1000万円など
・教育費6700万円増津和崎小学校体育館改修8800万円
・農林水産業1億8900万円減
漁場・魚礁事業減5900万円など
・土木費7500万円減 道路工事事業減1億1 600万円
・民生費7250万円減(障害者)自立支援事業等扶助費減6290万円

予算細目の注目点

①まちづくり基金積立金 これは合併特例債を発行して基金とすることが認められているもので、借金(債券発行)して貯金(基金積立)すると考えたらよい。ただし借金返済の約2/3は国が交付税で面倒をみてくれる。債券の発行枠は決められており、本町の場合は約17億円。今年度10億円を起債予定で、うち5%は一般財源からの支出になるから5000万円を今期計上。基金の使途は「地域振興関連のソフト事業を対象」(財政課―以下同)で「各種イベントなど」との説明。もっともこの基金はあくまで貯金であり、利息(運用益)を当てるというから、現段階では微々たるもの。他の類似自治体に比べ、この町は極端に貯金が少ないゆえのやむをえない措置と考えられる。
②焼酎工場貸し付け
「ふるさと財団融資事業」から五島灘酒造(株)が無利子融資を受けるが、資金は町が起債して調達し貸し付け、しかし町は連帯保証責任を負わないという不思議な仕組み。起債利子は町が負担(75%は交付税で返る)。3月議会で議決・実行済の400万円の出資と併せ、町の事業という側面を持つことは前号でも指摘した。裏面の(株)長崎五島うどんとともに、町が直接出資する企業であることに留意して今後を見守りたい。

財政健全化

 このほか観光物産関連で、幾つかの積極策がうかがえ、限られた予算のなかで、なんとか経済浮揚の対策を練っている努力は評価すべきだろう。 一方、懸案の財政健全化の面では「緊縮予算と借換え債効果で起債制限比率が14%を切る見込み」。財政的に危険ラインの指標である14%をここ数年越えていたが、今年辛うじて脱却できるということだ。しかし、昨年比1・2%減ったとはいえ、一般会計に占める借金(公債費)は依然として23・3%の約40億円。一昨年策定の財政健全化計画は達成されているとしても、薄氷を踏む内実であることに変わりはない。例えば微増と予定されている収入(歳入)の町税が、人口流出などにより達成できない可能性だって十分にある。収入の柱である地方交付税の見通しも不透明なのだ。しかも来年・再来年は公債償還のピークを迎え、さらに硬直化は進む。「頼みは団塊世代の退職」という本音もつい漏れる。水道やし尿汲み取り・各種手数料など公共料金値上げで暮しの圧迫が進んでいてもこの現実なのだ。

総括的感想

 以上、簡単に予算の見所を概括したが(特別会計は割愛)、膨大な予算書を前に昨年同様の感慨を持ってしまう。住民の暮らしや社会活動・経済行為の隅々まで町は関与しており、補助金や各種手当ての幅広さにめまいがしそうだ。住民と町の関係を大胆に切開し、切るべき部分は思い切ってカットし、予算の「戦略的集中」に本気になって取り組むべきだろう。
 産業振興といっても個別の対策は多くは数十万円の規模。行政の公平性の面では難しいことは百も承知の上で、効果的な予算配分が望まれる。
 そのためには町民もあれこれ町への依存心を極力避ける心構えが肝心であることをあらためて銘記しておきたい

焼酎問題第4報(3月25日号)

2007年03月23日 | 新聞記事(一部公開)
五島灘酒造(株)設立
早ければ来春初荷
 焼酎プロジェクトが本格始動した。2月6日付で「五島灘酒造株式会社」が設立され、代表に田本建設工業(株)の田本修一氏が就任。資本金は550万円(代表と親族で500万円、ほか50万円))でのスタート。町の出資予定400万円に関してはまだ議会での了解が得られていないようで(議決は不要)、最終的には2000万円の資本金を目指す。
 工場は有川~太田線の中間付近にある荒地ですでに造成が始まっており、10月末に竣工予定。建設資金は建屋3000万、設備に5000万円、一般管理費を含めて初期投資額は1億円を越える見通し。町を通じて「ふるさと財団」から2000万円の融資を受け(利子は町が補助)、不足分は国民金融公庫からの借り入れになるようだ。かくして「3年間は社長給与は無しです」と田本社長は苦笑する。
 計画では初年度40KL、以降20KLずつ増やし、4年後に上限枠である100KL製造態勢に入る見込み。最新設備を提携先の鹿児島・錦灘酒造(株)から購入し、杜氏の育成も同社の協力があるようだから製造はできるとして、「課題は販売」(田本社長)に尽きる。今回緩和された酒税法の条件では県内の販売に限定されるし、上限枠一杯に作れても、4号瓶1200円(予定)という小売価格で売れるかという不安は拭えない。「町の焼酎党の方々に大いに飲んで欲しいし、島外の島出身者の市場も何らかの方法で拓いていきます」(同)。
 本紙は何度か後発の困難さと販売の制約で軌道に乗せるのは難しいと主張してきた。そんな懸念をぶつけると「うちで経営している民宿とペンション<四季>で、四合瓶で年間4000本(約3KL)の消費があり、小規模でも自分で作ることを考えていた」ということ。「それがいつの間にか大きな話になってしまって」とこれも苦笑気味の田本氏だが、「今は何かわくわくするものを感じています」。
 事務、杜氏候補の二人の社員も確保。4月から有川郷の田本建設社屋2階を事務所に正式に稼働する。出資金もそうだが、ふるさと財団からの融資は町が担保しているという意味で、町の事業という側面を持つ。「資本金の残り1000万円は町民の小口出資を期待して」一口5万円の出資を町民にいま呼び掛けているところ。問い合わせは4月2日以降は42-0002(事務担当川崎さん)。それまでは直接田本建設へ。

読者投稿(3月号2面)

2007年03月23日 | 新聞記事(一部公開)
●意見

「上五島住民新聞」の発行以来、住民として、知りたいこと、関心のあることなど充実した内容などで楽しみに毎回読ませていただいております。前号の県議選候補者の紹介は、とくに町内全家庭の方に読んでもらいたいと思いました。
 実は、私、もう一つ気になることがあります。町会議員の人数を減らすような動きがあるということですが(編集部注:すでに次回選挙から定数26を20にすることが昨年3月議会で議決されています)、今でさえ地域から1名やっと選出されている状況で、これ以上人数を減らすということは、ますます地域の声が届かないことになるのでは……人員より給料を減らしたほうがよいと思うのです。町の広報誌で月の予定表を見ると、この一月、2月と議会は一日もなく「相当の給与・ボーナス」まで与えられているようで、町財政が苦しい中のむだ使いになっているように思います。紙上の都合の良いときに、こんな意見もあるということを紹介してほしいと思います。(一愛読者より)

高レベル廃棄物処分場問題(3月号2面)

2007年03月23日 | 新聞記事(一部公開)
4島連携して反対を
相次ぐNUMOの攻勢
高レベル放射性廃棄物問題が急展開を開始している。この町も予断を許さない状況になることが十分予想される。現地取材を試みた緊迫状況下の対馬市の動向と、先行している東洋町(高知県)のその後の動きとを併せて報告し、町民の皆さんに警告を促したい。

攻勢進む現状  ―対馬市

 2月14日 (厳原)、15日(上対馬)で行われた小出裕章氏(京大・原子炉研究所)を招いての「『高レベル放射性廃棄物』地層処分を考える講演会」は、来場者が厳原600名、上対馬300名を越え、両会場とも席を埋め尽くす盛況の中で実施。対馬では昨年11月にこの問題が表面化。しかし1年前から深く潜航して誘致活動がなされてきたことが分かったため、市民の不安も一挙に高まり、学習会など草の根の反対活動がこの日の講演会に結実した。
 小出氏の講演は、放射能の怖さを分かりやすく説明し、高レベルのごみが「廃棄物」ではなく「廃物」、つまり「棄てることができないもの」であり、地層処分の危険性をさまざまなデータや知見で訴えたもの。来場者アンケートでも「目を覚まされた」という声が圧倒的であった。しかし、講演後の質疑が対馬における誘致運動の現状を物語るもので、会場の一角を占めた誘致派と思しき人からの執拗な質問が繰り返され、進行係が何度も制止する場面も。会の性格上反対派が多数を占めたものの、誘致派の浸透も予想以上であることが実感された。
 前号でも報告したように11月に表面化した対馬の誘致活動は、1年間で延べ140名参加した六ヶ所村見学ツアー、10数回に及ぶNUMOの現地説明会、地権者向けの説明会など、具体的な作業は着々と進められてきた(前回報じた市議14名のスウェーデンツアーは確証を得られず)。今回、市議会議員の方や二つの漁協長に話を伺ったが、議会は賛否と不明者が1/3ずつで誘致の多数派工作が進んでいること。漁協長も反対派が多いというものの、実際に誘致反対の議決をしようとしたが全体ムードで静観することになったなど、明るい材料は少ない。しかも上対馬の漁業者には「獲れた魚を全量買い上げる」とNUMOが明言したと伝えられている。何しろNUMOの担当者が現地に張り付いて各所で説明会の開催日程を精力的にこなしているとも聞く。NUMOの力の入れようが分かるというものだ。
 2月23日、講演会を主催した市民グループは「核のゴミと対馬を考える会」を正式に発足させ、講演会ビデオの各所での放映会・学習会を進めることが決定されている。一応松村市長は「現段階では応募しない」と表明している。つまり潜在的反対者を掘り起こす時間はまだあるから、ぜひ精力的な動きを期待したい。

誘致組織が正式発足  ―高知県東洋町

 一方、議会と2/3の町民の意思を踏みにじって町長独断で応募するという、前代未聞の事態が進行する東洋町では、応募後2週間しか経っていない2月16日、NUMOが「地質上は問題ない」旨の回答を東洋町に送っている(毎日新聞)。そして3日後の19日には、資源エネルギー庁廃棄物対策室長やNUMOの関係者5名も参加して、地元漁協長を会長とする推進組織「東洋町の明日を考える会」が正式に発足。「補助金の使い方なども検討していく」という、すでに文献調査決定を前提とするスピードだ。
「地質上問題はない」という回答は、火山帯であるかどうかとか、活断層の有無などすでに国がチェック済みのもので、これで正式の文献調査に入れるわけではないにせよ、条件は揃ったと考えてよい。
 東洋町が応募表明した当日、橋本高知県知事は緊急記者会見を開き「NUMOは応募書を受理するべきではない」と表明。また、隣接する室戸市長や北川村長、徳島県側の3町や徳島県知事も相次いで反対決議と申し入れを行っている。こんな反対一色の中でも、町長の独断でことを進めることができる現在の公募方式そのものに、重大な欠陥があるといわざるを得ないが、現に正式手続きとして進んでいるのだ。

壱岐で反対の動き
 
 実はこの東洋町の動きは単なるモデル作りという側面が強い。第一段階の文献調査での補助金を一挙に10倍にした結果、各地で浮き足立った動きがみられ、NUMOはこれに乗じて応募自治体を10か所程確保する予定といわれている。概要調査から精密調査に至るステップをクリアして、ともかく処分場を作るためにフリーハンドを得たいという目論見だろう。客観的に考えて、東洋町より対馬や上五島などが候補条件を満たしていることは明白。海上輸送の容易さ、処分地候補地区の港からのアクセス、地震の可能性、仮に漏れ出した場合の影響などから対馬のほうが適していることは素人でも分かる。同じように当町も東洋町よりは適地に間違いない。
 つまりNUMOは東洋町で先行モデルを作り、本命の他地区で誘致活動がしやすい条件作りをやっていると考えるべきなのだ。そう考えなければ、言語を絶する東洋町長の行動は理解できない。
 対馬で処分場が仮にできれば、壱岐も上・下五島も、福岡北部も、同じ海域を生活の場とすることにおいて共通の利害を持つ。この危機感から壱岐市でも市民の動きが本格化。議会などに働きかけて反対決議を出すように促している。壱岐で問題が発覚しているわけではない段階でのこの動きに注視したい。
 翻ってわが町はどうか。表立って反対を表明しよういう話は聞かない。この間の一連の動きから憶測すれば、NUMOが裏で攻勢をはじめているのではないか。国はこの厄介施設をどこかに押しつけるべく、民主主義の基本すら平気で踏みにじることを肝に銘じ、微かな動きにも目を光らせる必要がある。ぜひ壱岐や対馬と連携し、反対の声を強くしていくべきだろう。

検証 行財政改革のいま②しんうおのめ温泉荘整備計画(1月号1面)

2007年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
採算性疑問の中で

 老朽化・赤字体質に悩むしんうおのめ温泉荘について、建て替えを前提に検討が進められていることは前号で報じた。「整備方針について」という町の素案と、素案のもとになったコンサルタント会社の報告書(改築基本構想・計画策定報告書)を素材に、建て替え計画の成否を検討してみる。

 町の計画では07年度に設計、09年秋にはオープン。本館建て替えを基本とし、総工費10億円を見込む。建て替えの理由は、老朽化に加え、バリアフリー対応不備、狭くバストイレのない客室などの欠陥から客室稼働率が低く、慢性的赤字の因となっている。さらに競合地域と比べ、核となる宿泊施設がないことでツアーが組みにくい環境にあることをあげ、「本町の良さを内外に発信でき」「既存事業者との共存共栄・相乗効果を計れ」「費用対効果の高い」施設づくりを目指すとされている。
 能書きはいいとしよう。毎年千数百万円の赤字で一般会計から補填している現状だから、何とか手を打たなければならないのは事実。しかし、コンサルの資料では10億円の投資規模ならせいぜい二階建、収容人数も現在と同じ80名程度の施設に止まる。利用度が極端に悪い保養センターを、レストランまたは家族風呂や離れ客室などに改装する費用も含まれるが、いずれにしろ、「修学旅行など大型ツアーを誘致できる」ような「核施設」とはいえまい。
 誤解ないよう断っておくが、本紙はもっと規模を大きく、豪華なものにしろといっているわけではない。素案によれば、この財政危機のなかで決めた町債発行の上限枠(7億円/年)を越え、特別枠を設定し、合併特例債を発行して資金を調達するという。そこまで無理をして新たに借金してもこの程度なら、やる価値があるかどうかだ。
 この疑念は別の面からも指摘できる。コンサルの報告書によれば、町は計画策定の条件として、合併特例債を利用しない、起債を行わない、民間資金を活用し支出を抑えるなど示し、これを受けコンサルはリース方式の導入を勧めた。リース会社に計画から建設まで任せ、これを借り受ける形で運営する方式だ。町はリース料を払うことになるが、その原資は事業収益から捻出しなければならない。これは土台無理な話で、結局、町はコンサルの提案を反古にして、資金調達は町が行い、建設や運営を民間でやるという現在の形を踏襲する素案にした。合併特例債は70%が交付税として国から返ってくるからだ。

 しかしこの選択は、要するに事業収益が見込みにくいことを町は認めたことになる。付け加えれば、国はいまこうした施設建設には厳しい制約を課しており、PFI方式を取るように指導している。PFIは資金調達も含め民間に委託するもので、コスト削減効果が大きいとされるが、コンサルがリサーチした限りでは、これを受ける民間業者はいなかったようだ。それだけ採算性に問題ありということだろう。
 以上、少なくとも現在手にしている資料で判断する限り、建て替えの意味と効果はみえてこない。伝え聞くところではPFIでの再検討の案も浮上しているようだが、どちらにせよ新規投資は必至。ここは地元旅館組合の提案、「場合によっては売却という選択肢」も視野にいれ、「組合と連携して運営していく方向」を探るとかの案も真剣に検討されて良い。それ以前に、ふれ愛らんどを含めた一帯の位置付けを見直すべく地元住民の意見を聞く場の設置が何よりも先ではないだろうか。

町の現状 再考(1月号1面)

2007年02月11日 | 新聞記事(一部公開)
夕張市を教訓に
いま早急に取り組むべきこと

 このテーマを取り上げる必要を感じたのは、11月末に出た夕張市の再建策のニュースからだ。「職員数2年間で半減」という見出しの記事で、270人の職員を09年までに半減させる再建策を総務省が「不十分」と指摘。60~70人程度が適性と指導し、70人に修正したという。夕張市の人口は13600人と本町の約半分。とすれば、本町の職員適性規模はせいぜい140人ということになる。その本町の職員数は591人。何だこれは!と誰しも思うに違いない。

職員を1/4に!

 そこで夕張市の借金額や再建計画案の中身を調べてみた。その結果分かったことは、確かに赤字の構造や借金額は夕張市のほうが悪質かつひどい。しかしこと「住民へのしわ寄せ」の面だけを取り出せばさほど変わらない。施設使用料50%値上げ、ごみ有料化、保育料を国の基準額に、学校・公共施設の統廃合…何ら変わらない。あおりを食ったのは職員たちだ。給与3割カット、ボーナス半減、職員を1/4に減らす手法として退職金を段階的に下げ、3年後には1/4に(この結果85%の職員が今年退職希望)…これはほとんど自治体の崩壊促進策同然である。
 これだけ過激な再建策を講じなければならなくなったのは赤字の構造問題だろう。一般会計と特別会計などの他会計間の経理操作で赤字を隠しつつ、一時借入の繰り返しでしのぐという「脱法行為」、その額360億円。これに地方債などの借金を加えれば600億円を越え、標準財政規模の13倍という。

どこまで改革できるか

 一方、本町の借金は420億円、標準財政規模は100億円強だからざっと4倍で、まだ救われている。しかし既述のように県内では最悪、全国的にみても当然最下位グループに属す。これに対し町は行財政改革大綱を定め、100を越える改革テーマを設定して取り組んでおり、本紙は前号から情報公開を元にその途中経過を検証している。
 なかで本稿のテーマに沿っていえば、何度も提案してきた職員組織の改革と給与是正にやはり触れなくてはならない。
 まず職員定数適正化は10年後の17年までに400人にするとしている。これは団塊世代を中心とした自然減を見越して補充を抑制するというのが基本。これに早期退職者への退職金上乗せを図り、退職者促進策が加えられている。これは基本的に無策としかいいようがない。公務員は民間のように解雇はできないが、出向や移籍の制度を作って職員の有効活用を図りつつ定数是正していく方法はあろう(本紙3号参照)。。
 他方の給与問題。旧町間の格差是正はもっとも高い旧若松町のレベルに合わせていく方向だし、官民格差はまったくの手付かずだ。この聖域を思い切り切開しないとモラル、財政双方の面で町は保たないと思う。折しも最近の新聞報道によると、山口県岩国市で周辺町村が合併直前に職員を一律に昇級。67%が係長職以上となっていたのを元に戻す措置を取った。同様の昇級を旧町時代のこの町は行っている。この町はまず少なくとも民間の平均給与レベルまで落とした上で、岩国市と同様の歪な職位構造を改善する。そのための人事評価制度を作り降級・降格もフリーとし、減給補償つまり給与の維持はしない。夕張市を教訓にするなら、これくらいの切開は前提ではないだろうか。

自治・自立のために

 要は自治の内実がいま問われている。減給補償など国の人事院勧告に沿ったもの、という言い訳がいつもなされるが、であれば官民格差是正も国の方針だから同様になされるべき。都合のよい部分だけ国の指針を援用するなど、自治精神のかけらもないというべきだ。
 12月議会で使用料・手数料見直しの細目が議決された。住民へのこうした転嫁をする前に自ら正すべきことをしない。これでは住民の理解は得られないと銘記すべきであろう。