高レベル放射性廃棄物処分場
対馬市
賛成議決の可能性も
高レベル放射性廃棄物処分場問題が全国各地で急展開し始めている。理由は明快だ。本紙も危惧したように、候補地として名乗りを上げるだけで出る補助金(文献調査段階補助)の額が、来年度以降、従来の2億円強から一挙に10数億円にアップするということで、この町と同様に財政難にあえぐ自治体が、競って誘致に色目を使い始めたからだ。建設を担いながらも候補地が出ずに焦っていた原子力発電環境整備機構(NUMO)の思うつぼで、高知県の数町、滋賀県の余呉町など急に誘致運動が活発化した。しかし高知の東洋町を除いて、住民の反対で撤回に追い込まれている。といっても、同じ高知・津野町などではまだ六か所ツアーが続くなど巻き返しの可能性は消えていない。
そんな中で、今度は対馬市で動きが始まった。議員主導で二度勉強会がもたれ(西日本新聞など)、議会に正式に議案として上程される可能性が出てきた。NUMOの精力的な説得工作がなされているのは間違いない。というのも、国によってかつて極秘になされてきた候補地としての調査で、適地と判定がなされていたからだ(本問題に関し情報公開で調査資料を手に入れて精読された岡山・「核に反対する津山市民会議」石尾禎佑氏による)。市の現況について、内部事情に詳しい複数の市民へ取材したところ、議会に上程されれば確実に通るという。議員に反対を表明している者はおらず、かつて原子力船「むつ」寄港問題のとき反対した漁協も、候補地と目されているのが上対馬の山中で、静観の態度という。 高レベル廃棄物問題は当該地だけの問題では済まない。漁業県長崎全体に影響は及ぶし、漁場をともにするこの島にとってはもっと深刻だ。同じ問題を抱えるものとして、連携して反対運動を進めていく必要がある。
ちなみに、本紙読者からの情報によれば、東京五島会(上下五島全体の会)で宮健三氏が誘致すべしとの話をしたという。会長の又野寛氏(五島市出身)に確認したら「全体会ではスケジュールに入ってなかったから地区会での話だろう」とのことであった。地区レベルだとしても、性懲りもなく画策を続けているのなら、対馬の動向によっては拍車がかかる可能性もあろう。県議選の動向と併せ目が離せない。