二塊の花園
2011-06-20 | 本
数ヶ月前に古本屋で見つけ購入した吉田精一著『芥川龍之介』(新潮文庫)を、昨日から読み始めている。この本は復刊本で、装丁は新しいのだけれども中身は昔のまま。つまり文字は小さく、行間は狭く、おまけに旧字旧かな遣いもちらほらある。読みづらいことこの上ないのだが、今の文庫本や新聞よりはるかに文字が頭にスラスラ入ってくるから不思議だ。正確に言うと、今の文庫本よりも読むペースが速くなるのだが。

一体なぜ? 自分でもよくわからない。しかし敢えて分析するならば、文章が頁の真ん中に凝縮された様子、文字のフォントや旧字旧かなのフォルムに魅せられているのだろう。字面を追っているだけで、胸躍る気分になる。文章の内容とは関係なく!!! これをノスタルジイと片付けてしまうのは少々乱暴な話で、【ノスタルジイ+古書マニア】であるとすれば、実像により近づくか。もっとも古書マニアと書いたけれども、わたしのそれは大したことはない。稀覯本やそれのコレクションにはとんと興味がない。あるのは頁を繰った時に眼下に広がる【二塊の花園】ばかりである。