家を出る頃はまだ雨混じりの雪でしたから、歩いて早々靴の中に水が入りこみ、駅に着いた時には靴下がビチョビチョグチョグチョ、もう気持ち悪いったらありゃしない。電車に乗っていてもグチョグチョに神経がいってしまい、会社に着くまでグチョグチョとの神経戦でした。もし長靴とかロンドンブーツを履いていたらこんな不快な思いをせず、「楽しいロンドン、愉快なロンドン」って具合に調子にノッて片足アゲて、いつまでも雨空の中を歩いていたいと思うんだろうな・・・会社に着いて、濡れた足を足元ヒーターで暖めつつ、さきほどまでの不快さはどこへやら、愚にもつかないことをあれやこれや。
ときに。先日、定期健診で妹を動物病院へ連れていきました。
およそ猫にとって病院行きは最も恐怖なイベントで、特に家から一歩も外へ出ない家猫の恐怖たるや想像を絶するもののようです。我が家で一等小柄ながら鼻っ柱が強いさしもの妹も、一歩外へ出ると借りてきた猫、カゴの中で身を低くし落ち着かぬ様子で聞いたことのないような弱々しげな声をあげるくらいですから。
そんな妹ではありますが、病院に入ると次第に自分を取り戻します。検診の番になり、まず体重を測りそれから体温計測、触診と続くのですが、比較的大人しくしています。ところが、爪を切ろうとお医者が手か足を掴んだ瞬間から、あらん限りの力でもって抵抗するやら、引っかくやら、噛み付くやらと手がつけられなくなり。このいきなりの剣幕にお医者たまりかねて、
「エリザベス、していいですか?」
断る理由なんて一つもなく、むしろ初めからそうしてもらったほうがよいと思っていたから、「どうぞそうしてください」とわたし。エリザベスとはエリザベスカラーのことで、怪我をした犬や猫が患部を舐めたりしないように首に巻く道具です。いやがる妹をよそにエリザベスを装着し、噛まれる心配はこれでなくなったものの、逆にいつもと勝手が違うことから余計に暴れ出す妹。結局はアシスタントさんとわたしが妹を羽交い絞め(押えるよりも的確なのでこの言葉を使いました)にして、なんとか爪切りを済ますことができました。
ちなみに病院でエリザベスを装着されるのは妹だけ。「元気があっていいですよ」とお医者は褒めてくれますが、彼の腕に妹が施した噛み跡、引っかき跡を見ると、その言葉を素直に受け取ってよいものかどうか。恐縮してしまいます。
追記 妹が過ぎたことをすると決まって「エリザベスしちゃうぞ!」と脅しますが、妹はまったく聞く耳を持ちません。