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乞食訓のはなし

2007-04-28 18:04:43 | 心に刻む大切な事
 昭和二十年代のころ、詩人の高木譲さんは職を転々と変える生活で、
長崎で一人の乞食に出会います。
無一文の高木さんは、その乞食からパン屑と残り飯をわけてもらい、
その日から一週間ほど行動を共にする。
 その乞食はシャッポという名で、乞食を四十年やったという人物でした。
シャッポ氏は高木さんにいいました。
「君、乞食も一つの職業だよ。もっとも誰でもがなれる職業じゃない。
人の一生分を五、六年で経験した人間でないと資格はない。世の中のことは
すべて判って、しかも人格円満、つまり神様に一番近い存在、それが乞食
だよ。」

さらに、四十年の経験から割り出した乞食訓を講じたのでした。
「その一、あくまで服装は百年一日の如くあるべし。
その二、ことばは常に不明瞭な発言を旨とすべし。
その三、名前は他人がつけてくれたものにする事。名前は自然に他人が
つけてくれる。
その四、人間を信用すべからず。物を呉れたから、あの人はいいひとだ
なんて思ってはいけない。
その五、あくまでも顔に喜怒哀楽の表情を表さない事。
その六、今日は何月何日だとかいう事を一切気にしない。乞食には
元日も祭日もない。」

「いいかね、面倒でも、残飯、野菜、魚とそれぞれに分けて、別々の
袋に清潔にしまっておく事。
それから一度に沢山仕入れてはならない。それは怠け者のする事で、
悪徳だからだ。
また、衛生の見地からいっても好ましくない。
乞食には、清潔さと几帳面さ、それに勤勉さが必要なのだ。」

 シャッポ氏はさらに、
「ゴミ箱をあさるなんて、あさましい事だと君は思うだろう?だが、
いったい我々は誰の迷惑になっている?誰にもお世話になっていない。
その上、誰とも競争せず、
誰にも嘘をつかず、
争わず、
生活の具を得る。
これは最高の生活態度だ。最も紳士的態度だ。」

 ついで、「おもらい」について次のように伝授されました。
「人さまの勝手口に立つ。ただ、それはこちらから要求して何かを
貰うのでもなければ、人さまも我々に何かを恵むのでもない。
何か呉れというような物欲しそうな顔をしてはいけない。
そのような態度は、相手に気持ちの上である強制をしている事になる。
ただ、ぼやーっとしている。
相手の顔も視ないように。
神様のような顔をして立っている。
それから物を貰うときは、すぐ貰ってはいけない。
まず手を服でぬぐう。
レストランでおしぼりを使うような気持ちでだね。
そして貰うときに、『ありがとう』なんて明瞭にいってはならない。
フニャムニャ・・・・と、こういうふうに、語意不明にやる。
というのは、相手に物を恵んだという感情を起こさせてはいかん
という事だ。
ちょうど神様に物を供えたような気にさせる、これが望ましい。」
と。


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