GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 JIRO、夜行列車で上京

2009-09-22 | アマチュア時代




 上京したGLAYが、函館でライブをするために帰って来た。『ピエロ』とのジョイントである。

 GLAYにとっては久々の地元でのステージということも手伝って、ライブ自体はかなり盛り上がった。打ち上げ会場で、JIROは『ピエロ』のボーカルのツカサにTAKUROを紹介された。

 『セラヴィ』に在籍していた時に対パンをしたこともあったが、言葉を交わすのは初めてだ。

 <なんだ、結構いい人なんだ> 軽く挨拶を交わしただけだったが、まわりの状況をよく見ていると、TAKUROが相談役でみんなが頼っているのがすぐに理解できた。

 「……で、東京はね」 話はもっぱら、GLAYの東京での活動のことに終始した。JIROはその話題にいちばん興味をそそられた。

 「とりあえず、何があってもバンドの活動だけは絶対に止めちゃだめだ。お互いやりたいことは違っても、それを成功させるにはまず続けることがいちばん大事なんだ」 TAKUROのその言葉は、JIROの心に深く残った。

 TAKUROがそれを自分自身にも言い聞かせているのだということは、JIROには知る由もなかったが――。


●東京に行って自分を試したい

 学校で探した就職先の面接日が近づいてきていた。

 だがJIROは、どうせ卒業までだからと思って懸命にやっていた『ピエロ』から、かえって離れられなくなっている自分に気がついていた。ライブを重ねるごとに手応えもあり、バンドの状態もいい。

 「ひょっとすると、このバンドでプロになれるかもしれない」 それは漠然とした期待だったが、JIROの心を激しく揺り動かしていた。東京で頑張っているGLAYのことを思った。

 夢を夢のまま終わらせずに現実に追い続けている彼らが、JIROを刺激していた。それにツカサやイコマが東京に行くのに、自分だけが函館に残って就職すると、絶対に後悔するはずだ。

 <どうしても東京に行きたい> 淡い想いは、やがて強い願望へと変わった。

 母親はJIROのその決意を感じ取ったのか、その話をすると、「あなたの好きなようにやりなさい」と言ってくれた。しかし、高校に入ってからまともに面と向かって深い話などしたことのなかった父親には、なかなか言い出せないでいた。

 そんなある日、見かねた母親が父親と話す機会を作ってくれた。

 「東京に行って、自分を試してみたいんだ」 どれだけ真剣であるか、そしてどれだけ音楽が好きか、JIROは父親に理解してもらおうとできるだけストレートに告げた。

 「ああ、いいぞ」 「え?」 あまりにあっさりとした父の返事に、JIROはあっけにとられた。

 「お前が後で後悔して俺が恨まれるのも嫌だからな、やりたいようにやってみろ。だけど、絶対に手は貸さないからな」 突き放すような口調だったが、JIROには父親がわざとそうしているように思えた。

 <俺のことをちゃんと考えてくれていたんだ――> この瞬間、父親と自分との間にある距離の質が、ほんの少し変わったような気がした。


●夜行列車で上京

 東京での就職先はすぐに見つかった。だいぶ前から東京でバンドをやることを決めていたツカサやイコマは、JIROが一緒に行くことを告げると、素直に喜んでくれた。

 「もう、自分たちで枠を作ってるようなライブをやっても、動員は増えないよ」 一時期、ライブの本数が減少していた『ピエロ』だったが、JIROの提案でどんなブッキングでもいいからステージに立つようになった。

 <このままの勢いで東京でもやれたらいいな> メンバーの誰もがそう思っていた。

 東京へ行くと話したあの日から、父親は一切、口をきかなくなった。「きっと、寂しいのよ」 母親がいつもの柔和な笑みを浮かべながら言った。姉もJIROより先に東京に就職していたので、余計に寂しい思いをしていたのかもしれない。

 「だからかもしれないけど、本当はあなたと一緒に仕事をしたかったのよ。でも、それは誰が悪いっていうわけじゃないことだから」 ずっと父親との調整役をしてくれていた母親は、そう言って頷いた。

 そういえば小さな頃に感じていた、あの圧倒的な威圧感が最近は伝わってこない。

 自分が大きくなったからだろうか、父親の背中は小さくなったような気がした。くもう、俺はひとりで生活しなくちゃいけないんだ> バンドが失敗したからといって、簡単には帰って来られない。

 JIROは、そう自分に言い聞かせた。「じゃ、行ってくるから」 出発の日、玄関から声をかけた。「おお」 父親はテレビを観たまま、ふり返りもせずにそう答えた。

 JIROは卒業文集に、「がんばって東京ドーム10daysをやってみせる。みんな見に来い。その後はロンドンに進出して伝説を残します」と書き残し、『ピエロ』のメンバーとして、夜行列車で上京した。





【記事引用】 「GLAY STORY-永遠の1/4
         「GLAYイヤーズブック 読む年表/GROUP REVIEW・著/コアラブックス


最新の画像もっと見る