日焼け？

２０１５年３月２９日（日）晴→曇り→雨

…くたびれても捨てられない（ますます体になじむ）お気に入りのコート、ジャケット、セーター、シャツ。それもついに限界。この春はすっきり大処分…かな。
▼桜咲いた。かなり咲いた。ぽってりとした枝垂れ桃の満開にハーモニーする勢いで。あちこちでうぐいす鳴いた。ホー　ホケキョが「ホケキヨ」と字余り風の４音になるのはご愛嬌の異。雪柳と木蓮が白の競演。ロマとエレガントは離れていて見ごたえのある華。古い大きな家が解体されていく。
▼「赤い電車に白い線～^^♪」なんてテーマソングがあった我が京急に、いつからか洗練されたブルートレインが加わり、最近はこのハッピーイエロー（写真）がアクセントのように走る。黄といっても、ややクリームがかった辛子色でドアは白。その色味が映えるよう、大きな１枚ガラスの窓ですっきりしたデザインだ。でも中にいると多少事情が異なる。この大窓にはブラインドも大１枚。８人掛けの席は一斉に開けるか閉めるかの選択を強制される。誰が決めるのか…。最近はスマホの画面を見つめる人が９割だから無意識にも閉めたがる？　日光を浴びたり風景の変化を見たいという人は少数派だ。…さてぼくはどっちだ。
▼真南の空にクリアな🌓（ハーフムーン）。今は日に日に太っていく（満月に向かう）ＷＡＸという期間だ。何か蓄積が必要なものには、いいタイミングだ。
▼短い映画を見てきた。「ヴァチカン美術館　天国への入口」。ずいぶん昔に行ったときの記憶がよみがえった。ミケランジェロの彫刻ピエタの迫力…正直に言うとマリアのたくましさ、大きさに首をかしげたっけ。天井画「アダムの創造」はその後いくつもの本歌取りのビジュアルに出会った。触れるか触れないかの指先にオーラ！　”伝わる”ことの力の比喩。映画ＥＴからクレジットカードなど様々に。断絶、拒絶ばかりが目立つ今、もっとも必要な原初の価値は、そういう（絶対の）調和なんだよな。
★まだ声のかすれが取れない不具合はあるがスギ花粉症は終わり。「ずいぶん日焼けして元気そうですね」と言われて思わずニンマリ。実は日の出とともに東の窓辺で読んだり書いたり、…たり…たり。ひたすら机の前にいるだけで黒光り、が実態。早起きが習慣化した結果だ。シミ、シワ、キズ、あらゆる皮膚の負の条件が個性や味になるかどうか。最後の造形（人間形成？）に着手したところです。

素材の力

２０１５年３月２２日（日）晴

…春分の日を過ぎてやっと太陽が出た。誰しも考えることは同じらしく今日の墓参りは大盛況。日当りのいい霊園墓地で墓石に彫られた言葉（絆、ありがとう、永遠に、〇〇家などさまざま）をぼんやり見ながら、尻尾の青いトカゲの子一匹、カラスの少年級？１羽に気づき、交通整理のオーバーめアクションに「ご苦労様」の視線送り、ラジオから聞こえる高校野球の「あ！（デッドボール）」に一瞬緊張し、直後ぬるいあくびをしてしまった。
▼ここ数日で新聞に美容師ネタ２件。取材されている一人は既に雑誌で読んでいたもの。話題の拡張。
▼コラージュの実践セミナーを午前と午後に。メインの素材はちょうど百年前のイギリスの雑誌、「ストランドマガジン」の広告。靴、タイプライターから家庭用サウナ、車いすまで。小さな細密版画は額装されたハガキ大の作品にいい味を出してくれる。参加者全員、店にかけて楽しむのに十分なデキ映えだった。古いもの、役目を終えたものが別の秩序でよみがえる楽しさ。きっとお客様にも伝わります。次は髪型を意識した主役、ポートレート風にチャレンジ。
▼脈絡のない雑もの、半端品を入れておく木箱（写真）を久しぶりに開いた。これはコレクションじゃない。出会い、組み合わせ次第では詩的立体のコラージュ（アサンブラージュ＝寄せ集め）になる？と、もうずいぶん寝かせてある素材だ。まあ、子供の頃からの習性のようなものだけど、今は自分の発想がある程度予測できてしまう＝ピュアな感動に結びつかない悲しさと付き合いながら、待っている。突然の天啓、もしくは偶然の出会いを。
▼類似と対比が錯綜する感覚から何かひとつ形になるんじゃないか？　そんな予感を抱いて文庫と新書だけの複数一斉読書をしていた。「母なる自然のおっぱい」「マルジナリア」「春の数え方」「そして文明は歩む」「デュッシャンは語る」「ボルヘスエッセイ集」「私家版・ユダヤ文化論」「隅田川の向う側」「居酒屋百名山」「美の脇役」「絵草子源氏物語」。頭の中でシンクロしたり異を極めたり大揺れの一週間だった。でもおもしろい体験だった。箱の中身に言葉のバリアが重なって、実は今日かすかに動いたんだ。カチッと。きっかけはリアルな春の空気とトカゲとカラスだ。
★不穏、不安、期待、諦め、負の空気が熱い今のような時代状況下、平和産業そのものの美容は社会の大事な「素材」の筆頭だ。

散歩の途中

２０１５年３月１５日（日）曇り

…昔、植草甚一という粋なジイサンの本に「散歩の途中で～」というような本があった。趣味の雑誌、古本を買って喫茶店でチェックする。必要なページだけ破いて残りは捨てるなんて方法を知った。気が付けば今自分のライフスタイルになっている。そういう年回りになった。でも違うのは時代。どこにでも古書店がある時代じゃなくなった。本格的な古書店街に行けば別だろうけど、都心に住んでいないぼくに古書店街はない。あちこちのめぼしい店をめぐるのは散歩にはならず、広範囲長距離本格探訪になってしまう。あくまでも散歩の途中感覚がいいのだ。だから新古書店も必須のポイントと位置づけ、そこでは何を探すかを探すことがキーになる。また古書店以外にも飲食店他引っかかる店、場所がないとひとつながりのよい散歩タイムにならない。チェーン店を敬遠しつつ、かといって無視もしない。ま、現状を必須の条件として組み込み、それでもまだ「こんなところに！」という偶然も味方につけ、時代の定点観測をしている。面白い雑や、有益な無駄がプラス思考の「気」持ちを高めてくれる。そういう精神の贅沢が散歩だ。現役バリバリの多忙な時期には不要な、また望むべくもない特権だろう。でも今そんなライフスタイルを取り込もうとする若い世代が増えている。「拡張型」美容師の出現もその延長線上にあると思う。とりあえずこのブログには、散歩の途中に見つけたあれこれ＝危機意識や元気の素、思考と視覚のネタがあるはず。それを共有したいと思う。極力白紙のココロと頭で見に来てください。何か一つ、ン？がありますよう。
▼森永がキャラメルの種類を一気に増やした！　サントリーとアサヒがアルコール度数１％のフルーツ味チュウハイを発売。確実に飲み切れるよう量も減らし、缶も軽量化。コンビニ３位と４位が合併して生き残りをかけて１位規模に。「カジュアル」の質的競争はまだまだ続く。安い×上質＝当たり前時代に、なお差をつけられる条件は何か。誰が…に決まっている。そこに美容の明日が。いや、あなたの明日があるはずだ。
▼コペルニクスが地動説を唱える前、地球を中心に９の同心円があり惑星や恒星がめぐっていた（１番内側は月。太陽は何番目か？）。古代の天文学は幾何学的完璧を求めて絵空事に堕したけれど、それでも幾何学の結晶、球体の完全性は神の比喩など、聖なるものの象徴として今でも有効のようだ。このところ立て続けに出た土星と、木星の衛星（月）に地下の海があるという発見のニュース。…のせいでしばし宇宙の球形、球体に思いをはせた。
▼含意（がんい）＝英語でいうコノーテーション、仏語のコノタシオン。表面上の意味とは異なる裏の意味。イメージ用語に付きまとう意味の二重性もこれに近い。例えばナイーブｎａｉｖｅ。素朴な、無邪気ななど一般に知られた意味の裏に、（世間知らずの）無知な、（すぐに信じ込む）愚直な、洗練されていない…などの意味がある。価値の二重性は洒落、パロディ、本歌取りにも共通する原理だし、そもそも比喩、見立ての本質だ。今朝ある書評を読んでいて、植民地で発展する現地語風宗主国言語＝クレオール語の特徴から、そんなことを考えた。Ａ×Ｂ＝Ａｂか、ａＢか、Ａ’Ｂ’か。全く異質なＣにはならない。それをＡ×Ｂ＝Ａに、逆にＢにしようという思想や情念が、ジェノサイド（民族浄化）という忌まわしい悪を引き起こす。異と共存できない感性はなんとしても危険だ。異との共存を楽しいものにするのがアート。特にコラージュの魅力だと思う。あるいは接客の面白さだ。
★定期検診を終え、病院の売店で何気なく買ったカレーパンとアンパン。これも異質な出会いの産物だったけ。そういえばトルコのイスタンブールに行く人が増えたせいか、最近サバサンドが認知されてきたみたいだ。文明の交差点的逸品だけど、今の日本にはちっとも違和感がない。ただしあのパンのドライ具合がミソだと思うけど。

想像力＋

２０１５年３月８日（日）曇り

…今週は春の満月のはずだが、出が遅いのと曇り空のせいでほとんど見ていない。
▼横浜ＳＯＧＯ内の書店でＦ雑誌をチェックしていた。たった数種類の輸入版を比較検討するだけなのに、ずいぶん困難になった。第一、街の中堅優良書店では取り扱い中止が増えている。配本がない？　買い取りの輸入物に手が出ない？　となると、どうしても品揃え豊富なチェーンのメガ書店に足が向く。そこでもいろいろ変化がある。一番単価の高い伊Ｖだけがビニールに包まれて中身が見えない。そしてカジュアルな（薄く安価なという意味）米国版が増えた。ぼくは編集ページ以上に広告が目当てなので、そのクオリティが下がって新規が混じる米国版は、まあ１～２冊あればいい。本格的なＦ雑誌は別格の伊を除いて、英・仏・独・他はうち２冊あれば用が足りる…けど、必ず売り切れの版がある。結局満足感のない５冊を嫌い、賭けに出た３冊を買う。４冊じゃないところが無意識のシバリだね。雑誌でこれだから小部数発行のひと癖ある新刊などは、とても中小零細書店には並ばない。応援のつもりでずいぶん地元の書店で註文したけど、２～３週間待たされて当たり前だったし、返品待ちのあげくに「ありませんでした」なんて。「そりゃないだろ、おばさん」。その書店も今はない。美容室を遠景に書店の今日、明日を考えた。
▼ＳＯＧＯ上階の市民フロアに「夢絵コンテスト」入賞作品を見に行った（写真）。ＮＰＯ法人主催の小学生対象絵画コンクールで、第１９回というから結構な歴史だ。のびのび、子供の想像力に刺激されたいと思った。でも、多くは空を飛ぶ、宇宙での生活、海の中、そしてエコ意識を表現したもので、ベタな欲望・欲求に根差した面白い夢が少なかった。上品？で理想主義的？　案外昔と変わってない無垢な夢…？　どうも…大人のディレクションというか、夢とは＝みたいな大人の思い込み（教育の気配）を感じたな。ま、それでも色彩感豊かな絵や、デフォルメの中にも個性ほとばしる絵を見ると、すごい才能かも！と驚きはあった。ついでに……黒服・赤い花の来賓集団と「△△賞、○○××殿」「以下同文」「（…欠席のため）代読」など、授賞式は延々の大人のための儀式が気になった。もっと楽しく子供の想像力を活かす方法があるんじゃないの？と、コート姿のジジイがひとくさり言ってた。この授賞式シーンをライフスタイル・ゾーン（マトリクス）で考えてみよう。
▼馬緯度……まいど？「ホース・ラティチュード」＝大西洋の亜熱帯にある無風地帯。凪（なぎ）の海のこと。昔帆船が進まずに積み荷の馬が死んでそこに捨てたから…という命名の説。ホウ。
▼ｋｉｎｋｙ……キンキー。意味は①ねじれた、（髪が）ちじれた。②風変わりな、奇妙な＝エキセントリック。Ｆ用語としてはキンキーブーツ（黒革のロングブーツ）が。イメージはビザールとほぼ同じだが「変態の」「性的に異常な」なんて意味もあり、ほぼＳＭのボンデージに直結。ブラックレザーやラテックス素材のピッタリボディスーツのイメージだ。キャットウーマンみたいな強い超セクシーイメージを言う。６０年代Ｆ×現代アニメ風Ｆが、今また浮上の背景か。
★８ページで中断していた鹿島茂の『モンフォーコンの鼠』を一気に読む。フーリエの情念引力、七月王政それにモンフォーコン。よくわかんないフランスの一時期とパリの隠れ名所を物語で解説してもらったようなもの。超面白かった。ぼくには関連書１０冊の価値。バルザックの堂々たる彫刻はいくつか見たけど、これで少し身近な存在に。想像力＋愛着の人物像にまったく違和感がなかった。

石ころの変身

２０１５年3月1日（日）雨

…今日は久しぶりに朝寝坊。目が覚めたら9時半だった。この一両日中の疲れでブログは今日まで延期。さて窓から見える風景は…やや灰色。しかし三月一日！に、コチッと小さな針が動いた気がした。
▼原稿書きはアナログ。メール送信は一つずれるとデジタルの異世界。写真の加工もアナログ。写真の取り込みはバージョンが変われば時に未知のデジタル世界。ＰＣも性善説ならワープロ並みの牧歌的世界。でも性悪説に立つウィルス対策が必要になれば種々様々な選択肢があり、デジタルの雲の中。この行ったり来たりが疲れの素だった。
▼思いっきりアナログの世界にすり寄って感覚のシェイプアップ。数枚の３Ｐ、５Ｐ（断片のコラージュ葉書）を作成し、手書きメッセージを送る。ぼろ屑の錬金術でスマホに勝てるか？　間違いなくいえることは、負けない、ということ。
▼蟻の巣のサロンクラスＢは久しぶりに「キャッチ＆コピー」。俳句や短歌の定型詩と広告コピーの魅力の構造分析→ヘアデザインのコツ。「異」は限りなくディテールを意識し、「堂々」は対照の調和を目指す。Ｈ＆Ｃの魅力の△構造だ。秩序と、歪みや崩れの均衡が心地いいアートと共通する美意識。異との共存は世界のテーマだもの。
▼首から上のどこかがちょっとづつ、いまいち。痛いもかゆいもしびれるも、シワシワもカサカサも年相応として受け入れるが、感性のみずみずしさだけは少年のようでありたい。…とうそぶいてみる。石ころ（写真）を眺める。握る。感じる。ああ、想像力の鉱脈はまだ健在だ。（ま、日課のようなまじない）
★「美意識の芽」の注文がちょこちょこ入ってきている。サロン単位の勉強会で使ってくれているのはうれしい。ネットのどこかでは絶版だの在庫切れだのいらぬデマが書き込まれているらしい。どうぞ気のある方は、こちらへ直接お申し込みください。美容師の価値を高めて感動のメカニズムを共有したい。明日を信じるたくさんの美容師と美意識のアライアンス（連合）を。