No.81 パダンってどこ？（2016.02.05）

　前回は、インドネシア全体についての大まかな話を書きました。今回はもう少しローカルな話です。
　前回書いたように、日本でインドネシアと言えばバリ島ですから、パダンの前に、スマトラ島について書いておきたいと思います。パダンはもちろん、スマトラ島といっても知っている人は少ないでしょうから。

　スマトラ島に関して日本で最も知られていることは、おそらく2004年12月に起きた、スマトラ島沖地震でしょう。
　スマトラ島の北端、アチェのインド洋側を震源とするマグニチュード9.3という巨大地震によって、インド洋沿岸各地で合計20数万人もの被害を出したのでした。

　アルプス・ヒマラヤ造山帯に属するスマトラ島は、島のインド洋側にバリサン山脈が走り、島内最高峰のクリンチ山（3805m）をはじめ、火山が点在しています。
　火山地形としては、島の北部に世界最大のカルデラ湖であるトバ湖があります。
　地形に関しては、前号の地図の方がわかり易いかもしれません。

　スマトラ島の面積は約52万平方キロ。日本全土で約38万平方キロですから、スマトラ島だけで日本の約1.4倍の広さがあります。
　島のほぼ中央を赤道が通っていて、スマトラ島のほぼ全島が、ケッペンの気候区分ではAf（熱帯雨林気候）となります。
　パダンはスマトラ島の中央のインド洋側、西スマトラ州の州都で、南緯0度57分、東経100度21分に位置します。
　地理の教科書なんかでは、赤道直下でAf気候の例として、よくシンガポールが載っているのですが、シンガポールは北緯1度17分。パダンの方がシンガポールより赤道に近いのです。

　weatherbaseによると、パダンの各月の平均最高気温は28～30℃。平均最低気温は23～24℃です。
　降水量は250～510mmで、年間4290mm。同じAf気候のシンガポールと比べても、2倍近い降水量です。
　神戸の7、8月の平均最高気温が30.0℃と31.8℃、平均最低気温が24.4℃と25.8℃ですから大差はありませんし、ヒートアイランドの大阪などよりは、むしろパダンの方が涼しいと感じるかもしれません。
　観測記録としては40℃を超えた記録があるようですけれども、沖縄と同じように、極端に暑くなることは少ないようです。
　
　パダンでは誰に聞いても、「（日本の四季に対して）季節は雨季と乾季の2つだけだ」って言うんですけれど、上記の通りAfですから、パダンに乾季はありません。1年中季節の変化がないのです。日本の7、8月がエンドレスで続くようなものです。
　首都ジャカルタのあるジャワ島は、Am（熱帯モンスーン）になりますから、弱い乾季があります。教育ではジャカルタが基準になるんでしょうから、混同が起こっているのでしょう。
　日本では夏季に日が長くなりますが、赤道直下のパダンでは、これもほとんど変化がありません。一年中、朝6時過ぎに日が昇って、夕方6時半ごろに日が沈みます。
　唯一、季節の変化を感じることができるのは、北半球の夏季には日がやや北向きになり、冬季は南向きになる事ぐらいでしょうか。日本の家や建物は南向きが基本ですが、パダンでは、建物の向きが気にされることはほとんどないようで、バラバラです。
　常夏ですから、コメの三期作ができるようです。パダンでは、田植えから稲刈りまで全ての段階の田んぼを、1日で見ることができます。

　パダンは、スマトラ島ではメダン、パレンバンに次ぐ第3位の人口規模の都市です。
　2010年のデータでは約83万人で、日本の堺市や浜松市と同じ程度ですが、2014年のデータでは100万人を超えています。
　と言っても、市域としてどこまでの人口をカウントしているのか定かではありませんし、パダンは市の中心地区でも高層の建物は少ないですから、そんな大都市という印象は受けないと思います。
　イスラムはスマトラ島西端のアチェを起点に、島伝いにインドネシア各地へ伝播しましたから、スマトラ島は概してムスリムの割合が高いようです。パダンも人口のおよそ9割がムスリムです。

　パダンはインド洋に面していて、港もあるし砂浜もあります。上記のように、バリサン山脈がありますから、山もすぐ近くです。
　“padang”はインドネシア語で「平野」という意味なんですけど、海と山が近くて平野部はそんなに広くないのです。
　山もあるし海もあるということろが、神戸っ子としては親近感を覚えます。ですが、神戸では山が北、海が南と刷り込まれていますけれども、パダンでは山が東で海が西。
　頭ではわかっていても、よく間違えてしまいます。