《ダイレクトソーリング》
ソール素材そのものを接着剤を使わずに熱で溶かして直接甲部に接着させる製法のこと。主にウレタンソールなどで使用される。ソールに使われる素材自体に接着力が必要だが、底剥がれの可能性が低く、接着剤不使用のため屈曲性も高くなる。接着面からの浸水に対しても強くなる。
《出縫い 》
靴の底付けの製法の一つであるステッチダウンで使用される縫い方。甲革と底材をコバに沿って直接縫い合わせる。外から縫い糸が見えるので出縫いと言う。
《タック釘》
甲部のつり込み作業(甲部を袋状に形成すること)時に主に使われる非常に小さい釘で、普通は「タック」といわれる。比較的柔らかい材質で出来ており、打ち込むと木型にぶつかった時にねじれながら曲がるか、先が潰れるようになっている。甲革と中底を合わせて固定する時に底から上に向けて打ち込むため、通常の釘だと上に突き抜けてしまい足に刺さるのでこのような特殊な性質を持つ部品を使う。
また、よく踵上部に1箇所穴が開いている靴があるが、同じく釣り込み作業を行う時に甲革が木型からずれないよう踵をタックで固定する。穴はその釘を抜いた痕である。
プライスカードをその穴につける事が多いが、そのための穴ではなく、単にソコを利用しているだけである
《タッセル》
靴の甲に付いた房飾りのこと。靴のアクセサリーとしては、長方形の革の一辺に細かい切込みを入れて取り付けるための革紐を挟んで丸める。靴以外にも様々な工芸品や建築物などのアクセサリーとして古くから使われている。起源には「とうもろこしの房」「縄をほぐしたもの」など諸説ありハッキリしない。
《ダブラー》
カーフなど薄手の革の裏に貼る補強用の布。合成繊維の不織布が一般的。革素材は均等には伸びず、繊維の走り方で大きく違うので裏に当て布を貼り伸び方をコントロールするためにも使われる。
《短靴》
靴を形状で大まかに分類した時の一つ。トップライン(一番上の縁周り)が踝(くるぶし)より下にあるもの。一般的に「長靴」であるブーツと分けて呼ぶ時の古い言い方。いわゆるシュー(shoe)。たんぐつ、と呼ぶが地方によっては「たんか」と言う。因みにアメリカではブーツも「ハイカットシュー」と呼ぶことがある。
《中ヒール》
パンプスやサンダルをヒールの高さで分類した時の便宜上の呼び名で、だいたい4cm~6.5cmくらいまでの範囲の高さの製品を指す。3.5cm以下が「ローヒール」、7cm以上が「ハイヒール」と分けるのが一般的。「中ヒール」だと語呂が良いのか、なぜか本来の英語の呼び名である「ミッドヒール」とはあまり言われない。ローヒールはシルエットが太く、ハイヒールは細い、などそれぞれの範囲でヒール部品のデザイン形状が異なってくるところから分類されたようだ。
《タンニン》
「原皮」を鞣して「革」にするための作業時に使われる鞣剤に含まれている成分の名前。いわゆる「木の渋」で、これを液状にしたものに原皮を浸漬して徐々に化学変化を起こさせる。その後仕上げ作業を経て「革」が出来上がる。
鞣した直後の革はタンニンが染み込んだせいで茶褐色をしている。
《チロリアン 》
元はアルプスのチロル地方で履かれていた浅めのブーツのこと。ガッチリとした溝を施したソールで山岳路を歩くのに適していた。温かみのあるモカシンのデザインだったので子供靴に転用されて日本でも人気になった。チロリアンシューズ。
《月型》
靴の踵部の甲革と裏材の間に入れて補強するためのパーツ。三日月のような形をしているためこう呼ばれる。ヒールカウンターの古い呼称。
《積み上げ》
かかと専用の厚い革を何枚も積み重ね圧縮して形成したヒール部品のこと。または使用する革そのものを指す。ウエスタンブーツやパンプスなど様々な靴に見られる。
等間隔の縞模様になった外観で、高級感と天然素材の温かみを持つデザインとなる。英語表示の「スタック・stack(スタックド)ヒール」と呼ぶ方が多い。
意外と靴業界でも「スタッグ」と間違えて覚えている人間が多い。スタッグ(stag)は鹿のこと。
《TQ枠》
「タリフ・クウォータ」と読む。関税割り当て枠システム。革靴に関係する関税の仕組みで、ある一定の足数に限り輸入時の関税を下げるという2段階課税方式のこと。ある一定の足数、ということは限られた枠が国内の輸入業者、問屋などに配分され割り当てられることになり、各業者はその枠内で輸入を行なうことが多い。非常に複雑な制度で輸入する革靴の定義についてや素材に対する規定など不可思議な面も多い。
《テープ》
甲部の縁部分、ストラップなどに使われる補強素材で、「芯テープ」を縮めて呼んだもの。おもにナイロンなどの布製で、幅2~3mm程度の薄い紐状になっている。
製品の型崩れや伸びの防止、補強のために使用される。
ストラップに使う場合、テープを芯材としてこの周りに表素材を巻きつけベルト状にし、ミシンで芯ごと縫い付けて製品とする。
《デシ》
革生地を売買する時の単位で、100平方センチメートルという面積で「1デシ」という呼び方をする。表記は「ds」。一般的な牛革で1デシ当たり数十円から百数十円。婦人用パンプスを例に取ると、1枚の革から複雑な紙型を切り抜いて甲革として利用された後の残り(ロス分)がかなりあり、1足の靴を造るには本来の靴そのものの面積より大きい十数デシの革が必要になる。
《デッキシューズ》
船の甲板で履くことに特化された靴のこと。現在では素足用のファッションアイテムとしての用途が多い。底意匠も独特で、滑り易いデッキに対応した底溝のパターンが施されている。普通の靴との一番の違いは、水に濡れる事が前提のため、濡れると機能が低下する「芯材」が使われていないことにある。(キャンバス素材のデッキシューズは踵に芯材を持つ物も有る)そのため型崩れの影響が少ないモカシンタイプの構造になっている。
《手縫い》
靴のパーツを縫う時にミシンを使わず手で1本1本縫い合わせることだが、主に底付け作業をハンドメイドで行なう事を指す場合が多い。時間と熟練した技術が必要なので当然高級品しかできない。
《デリケートクリーム》
靴クリームの一種で普通の乳化性クリームに比べて油分、蝋が少ない。その代わり水分が多く含まれている。一般的な仕上げの革の保湿剤として使う他、文字通りデリケートな仕上げの革や牛革以外の素材にも比較的使い易い。
《トゥ・キャップ》
靴の爪先を衝撃や摩擦から守るためにアッパー素材の上から重ねて貼られた補強材のこと。トゥ・ガードともいう。スニーカーや登山靴などでは採用されていることがほとんどである。
《トゥ・スプリング》
日本語で「爪先上がり」とも言う。靴の底部の爪先は先端までまっ平らというこはほとんど無く、先端に近づくに従ってごく少しずつ上に反り上がっている。歩行時に底がまっ平らだと爪先を引っ掛けて躓くのと、指先に余計な力が加わり非常に疲れる。それを防止するために底材を上に曲げ、板バネ状の構造にして蹴り出し時にたわみ、足先の負担を和らげる機能を持つ。
《床革》
鞣し作業を行なう前の「皮」は普段靴などとして触りなれている「革」の2~3倍の厚みを持っている。厚いものでは10ミリメートルにもなる革を水平に割いて(漉いて)材料として使用するが、そのうち表皮に近い「銀面」と中側の「肉面」に分けられることが多い。肉面側の部分を床革と呼ぶ。繊維が銀面に比べて荒く、見た目が悪いので樹脂などを塗布したりして質感を上げて使用する。革工芸品などに使う場合はそのまま使用することもある。
《トップライン》
主にパンプスなどで参照される言葉で、履き口の上端をぐるっと1周したラインのこと。「履き口周り」「トップエッジ」とも言う。パンプスのシルエットの美しさはここで決まると言っても過言ではないほど重要な部分。それだけ履いた時に目立つラインである。
《トップリフト》
ヒール先端に取り付けられるチップのこと。主にゴムや合成樹脂、革も使われる。略して「リフト」と言われる方が多い。業界用語的には「化粧」と言う。この部品がないとヒール本体がそのまま磨耗してしまうので、必需消耗パーツである。硬くコツコツ音を出すものからソフトな消音タイプ、装飾を施したものなど様々な種類がある。自分で修理できるようにホームセンターなどでパーツが販売されているが、緻密な設計がされている部分なので出来ることなら専門の修理業者などに依頼することをお勧めする。
《トドラー》
直訳するとよちよち歩きの子供、幼児の事でファッション業界では一般に2歳~4歳くらいのサイズ範囲を指すが、靴では大体15cm~19cmまでのサイズレンジのことを言う。日本独自のサイズ区分である。
ほぼ幼稚園児サイズが当てはまる。一つの靴を製造する時にこの範囲で生産されることが多い。児童に人気のキャラクターシューズはほとんどトドラーサイズ用に企画される。
《ドレス・シュー(ズ)》
本来は正装時、ドレスコードが有る時に履く靴だが、業界用語としては甲部に装飾が施されたりエナメルなどの素材を使ったりした、ビジネス用途ではない、御洒落をして外出する時の革靴のデザイン群のことを指していう呼び方。いわゆる「フォーマルシューズ」もこの中に含まれるが趣が異なるため分けて扱われる事が多い。
《とら》
動物の皮の内、首周りなど元から皺になっている部分は鞣した後でも完全には消えずに皺として残ってしまう。この皺の痕のことを指して呼ぶ言葉。まれにその皺を風合いとして利用する製品もある。
《ドルセイ 》
パンプスのデザインのひとつで、爪先部の革と踵部の革がセパレートになっていて中央で合わさっているもの。完全なセパレートであるサイドオープンとは違い、微妙に真ん中で重なりあっていて、横から見るとカットの開き方が浅いV字型になる。それぞれのパーツのトップラインが優雅な曲線を描くためドレッシーな雰囲気になる。非常にクラシカルなデザインだがエレガントパンプスの代表的なデザインである。