フランス当局ANSES: 新型コロナ; 食事からビタミンD、免疫反応低下サプリメント
フランス食品・環境・労働衛生安全庁ANSESが、新型コロナ対策として、食事からのビタミンD摂取、免疫を低下させるサプリメントに関して情報を公開しました。
出典
食品安全情報(化学物質)No. 10/ 2020(2020. 05. 13)
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202010c.pdf
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部
(http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/index.html)
p.17
フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES:Agence Nationale de Sécurité Sanitaire de L’alimentation, de L’environnement et du Travail)
1.ロックダウン中に食事から十分なビタミンDを摂るように
Ensuring sufficient vitamin D intake through diet during lockdown
News of 17/04/2020
https://www.anses.fr/en/content/ensuring-sufficient-vitamin-d-intake-through-diet-during-lockdown
ビタミンDは骨と筋肉組織の維持や免疫系を高めるという重要な役割を果たしている。現在COVID-19が流行する中で、私たちの免疫の防御力は特に強力に機能する必要がある。私たちは脂肪の多い魚、チーズ、卵黄などの食品からビタミンDを摂取している。ANSESは現在のロックダウン中だけでなく、一年中、特に高齢者、褐色人種や黒色人種、更年期の女性が十分な量を確保する重要性を繰り返し述べている。これらの集団では、長期間にわたり摂取が不十分だと、骨が弱く骨折のリスクが高くなり、免疫防御力の低下につながる。
ANSESは既に食品棚にありそうな、あるいは次に買い物に行く時に買い物かごに追加できそうなビタミンDの豊富な食品リストを作成した。
ビタミンD欠乏症は骨折のリスクを高める
ビタミンDは私たちの身体が効果的に機能するために必要である。私たちは毎日のビタミンDの必要性を、日光に肌をさらす、ビタミンDの豊富な食品を食べる、の2通りの方法で担っている。ビタミンD摂取量が不十分だと、骨量が低下し、それにより骨折のリスクが高まる。ロックダウン中のように特に身体活動量が少ないと、これらのリスクは高い。
1週間に魚2切れ、そのうちの1切れは脂肪の多い魚を食べるとビタミンD摂取量に大きく貢献する
ビタミンDは多くの脂肪の多い食品に含まれている。ロックダウン中でなくても、体の需要を満たすために定期的にこれらの食品を食べることが重要である。
<ビタミンDが多いのはどの食品?>
ビタミンDは主に次のものに含まれている。
・脂っこい魚:ニシン、イワシ、サケ、サバ
・内臓(特に肝臓)
・卵黄
・ビタミンDを強化した乳製品
・バターとマーガリン
・チーズ
・肉
ANSESはビタミン源を忘れずに一年中多様な食事を食べる重要性を繰り返し述べている。できる限り新鮮な魚を食べよう。これは食品棚を片付けるのにもよい機会である。イワシ、ニシン、サバなどの缶詰の魚はビタミンDが豊富である。
高齢者、褐色人種・黒色人種、更年期の女性は骨の健康不良と免疫力低下のリスクが高い
ビタミンD摂取量が不十分でリスクの高い人もいる。ロックダウンは骨密度を下げ、骨折のリスクを高めて骨の健康に影響を与える恐れがある。ANSESはリスクのある人々に食事を通して十分なビタミンDを摂取することの重要性を繰り返し述べている。すなわち、高齢者、日光を浴びてもビタミンDの合成効率が低い褐色人種や黒色人種、ホルモンの乱れが骨の脱灰を促進する更年期の女性は骨折のリスクが高い。
だが、ビタミンDを含むフードサプリメントの摂取は、血中のカルシウムを増大させる高カルシウム血症になるほどの過剰な摂取量になる可能性がある。これは組織を石灰化する可能性があり、その結果、心臓と腎臓に影響する。
ANSESは、ビタミンD摂取量が不十分になる可能性を埋め合わせるフードサプリメントは、食事療法か医学的助言に関してのみ服用する必要があり、特に多くの場合では、食事から、あるいは日光を浴びることで必要なすべてのビタミンDを得られると繰り返し述べた。これらの2つの方法で必要量を満たしていることを確認するだけでいい。
庭、テラス、バルコニー、窓から毎日15分間、肌に日光を当てよう。
ロックダウン中に家にいて、庭がなければ、日光を浴びることでビタミンDを合成するのはさらに難しい。健康な成人の必要量を満たすのに必要なビタミンDの一日摂取量が得られなくても、春には、15~20分間、毎日、手、前腕、顔を日光に当てよう。庭、テラス、バルコニーがないなら、有害影響(日焼け)への予防策を取りながら、開けた窓から肌を日光に当てよう。
*追加情報
・CIQUAL:フランス食品成分表
CIQUAL : french food composition table
・ビタミンDに関する記事
Our article Vitamin D
https://www.anses.fr/en/content/vitamin-d
・魚を食べよう:なぜ?どのくらい?魚を食べるためのANSESの推奨
Eat Fish: Why? How? The Agency’s recommendations for eating fish
https://www.anses.fr/en/content/eat-fish-why-how-0
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2.ANSESは身体の免疫反応を低下させる可能性のあるフードサプリメントを使用しないよう警告
ANSES warns against taking food supplements that could lower the body’s immune response
News of 17/04/2020
フードサプリメントに含まれる植物のいくつかは、主に感染、特にCOVID-19と戦う炎症防御メカニズムに干渉して身体本来の防御力を弱める可能性がある。このANSESの意見で懸念されている植物には、ヤナギ、セイヨウナツユキソウ(meadowsweet)、ハルパゴフィツム(harpagophytum)、ターメリック、エキナセア、カバノキ、ポプラ、甘草(liquorice)が含まれる。
抗炎症作用のある植物を含むフードサプリメント
フードサプリメントには非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)として作用する可能性のある抗炎症作用のある植物を含むものもある。これらの植物は、感染、特にCOVID-19と戦う力を低下させ、身体本来の防御力に干渉する可能性がある。そのため、COVID-19の流行を考慮して、ANSESはコロナウイルスSARS-CoV-2による感染症と戦う身体の免疫及び炎症反応に干渉する可能性のある植物を含むフードサプリメントを使用するリスクに関する内部要請を行った。
植物の免疫調節と抗炎症メカニズムに関する最新の科学的データや、感染の際の免疫反応に干渉する力をレビューするために、緊急集団専門家評価グループが設置された。同時にフランス保健製品安全庁(ANSM)は、パラセタモールや非ステロイド性抗炎症薬を含む薬の安全な使用を確保するために、主に薬局のセルフサービスの棚からなくすという対策を取っている。
免疫反応に干渉する植物
多くの植物がコロナウイルスに対する身体本来の防御力に逆効果があることが確認されている。ヤナギ、セイヨウナツユキソウ、カバノキ、ポプラ、アキノキリンソウ、ヒメハギなど、アスピリンに似たサリチル酸誘導体を含む植物、ハルパゴフィツム、エキナセア、ターメリック、キャッツクロー (ペルーの癒しのつるとも呼ばれる)など他のハーブ系抗炎症薬、ボスウェリア属とコンミフォラ属の植物(ガム樹脂油剤で知られていて、それぞれフランキンセンスやミルラと呼ばれる)が含まれる。
すべてこれらの植物の入手可能な知識量は同じではないが、ANSESの専門家は、これらはすべて、感染が発生した時の身体の免疫反応や炎症反応に干渉する可能性があると信じている。専門家は、炎症は過剰になった時にだけ抑える必要があると指摘している。
これらの専門家の研究を考慮して、ANSESは次のことを推奨している。
- 予防目的のためにフードサプリメントを使用する場合、COVID-19の最初の症状が現れたらすぐにこれらの植物を含むあらゆるサプリメントの使用をやめなければならない。
- 慢性炎症性疾患のためにこれらのフードサプリメントを使用する人は、医師にこれらの使用を続けるかやめるかの助言を求めなければならない。
*SARS-CoV-2による感染に関連する免疫及び炎症反応に干渉する可能性がある植物成分を含むフードサプリメント摂取のリスク評価に関するANSESの意見(フランス語)
ANSES OPINION on risk assessment of consumption of food supplements containing plant substances that may interfere with the immune and inflammatory response associated with infection by SARS-CoV-2 (in French)
https://www.anses.fr/en/system/files/NUT2020SA0045.pdf