第二十首
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わびぬれば 今はた同じ 難波なる
みをつくしても あはむとぞ思ふ
元良親王
(890-943) 陽成天皇の第一皇子。色好みの貴公子で、『大和物語』などに女性との贈答歌が多く残る。
部位 恋 出典 後撰集
主題
身を滅ぼしてでも会いたいという激しい恋心
歌意
うわさが立ち、逢うこともままならない今は、もはや身を捨てたのも同じこと。それならばいっそ難波潟の「みをつくし」ではありませんが、この身を捨ててもあなたにお逢いしたい。
「わぶ」は思いわずらう。今はたの「はた」は「また」に同じ意味。
「みをつくし」は、「水脈(みを)つ串」の意。往来する船に水脈を知らせるために立ててある杭。和歌では、多くは「身を尽くす」(身をほろぼす)意をかける。
京極御息所(宇多天皇の后。藤原時平の女)との密事が露顕して、世のうわさと罪の深さに苦しみながら、なおも逢いたいという情熱を一気にうたいあげた強い調べの歌。
弟元平親王とともに純文芸的な歌合を催し、『後撰』以下に二十首入集。