コーヒーブレイクⅧ

おもに、国際政治経済情勢を論じます。宗教論、音楽、歴史(古代史が主)についても論じます。

スイフト排除が切り開く貨幣の歴史的改革

2022-03-03 19:53:00 | 国際政治経済
ロシアのウクライナ侵攻により、西側諸国は、国際金融決済からのルーブルの締め出しを決定した。そこで、ロシアで仮想通貨が注目されているという。当然の流れだろう。ただ、投機マネーとしての性格を脱しない限り、不安定、不完全通貨として、本来の機能を充実できない。それは、急落急騰を繰り返す段階。言わば、恐慌が当たり前の時代の市場の化身であるからである。
この西側の政策は、ロシアを屈服させるのではなく、閉鎖経済へもっていくという指摘がある。
ロソアは社会主義経済の行き詰まりから、極端な、粗野な資本主義移行を経験し、その過程で起きた凄惨な経験は、西欧型の資本主義が必ずしも自分たちの経済生活を向上させないということを認識させたと考えられる。
しかし、社会主義経済への逆戻りは、さらに想定されにくい。
ロシアは何か違う方向性を探し出すと考えた方がいいのではないだろうか。

この論考は、私が若い頃に漠然と考えていた方向性が、現実の中で実践されるのではないかという問題意識を書き留めたものである。そして、これは、世界経済社会全体がその方向を結局目指すということを念頭に置いている。


経済学の歴史を概観した先の論考で、労働価値論が、恐慌現象を説明できなかったことによって、2つに分かれ、それを捨てた近代経済学と、そのことから資本主義は崩壊するというマルクス主義に分かれたことを簡単に示した。しかし、両者に共通していることは、恐慌を説明できないし、恐慌を克服する経済体制も示すことができなかったという事実である。
私の若い頃からの主張は、資本主義経済の矛盾である、資本の有機的構成は、不変資本、可変資本、剰余価値の形態が進化して、3つの価値形態に分化していくだろうという見方である。(価値形態分化の仮説)そして、その分化が、資本の有機的構成の矛盾を解決するという見方である。

それは、マルクスの資本論からも論理上は想定することができる。
生産手段(ここでは機械設備など)と資源からなる固定資本、労働力からなる可変資本(社会経済的には、この部分は、労働者の再生産、つまり、人間の消費需要を構成する部分)、そして利潤の総体としての剰余価値(この分捕り合戦が資本主義経済の本質)。それらの部分が独自の価値形態をとるという論理である。また、資本主義は、資本の有機的構成の矛盾というものを原動力にして、発展する、どこかを目指すという考え方である。
そして、私のみるところ、資本主義が決定的に変わる可能性を示しているのが、グローバルマネーと、デジタルマネー(ここではクレジットマネー)の並立である。

ロシアに戻ると、
まず、スイフト排除だから、外的経済と遮断された経済になるとすると、ロシアは資源をルーブルでしか売れないことになる。なぜなら、ルーブルは国内通貨だから、その資源と引き換えに国内経済に外国産物を取り入れるしかなくなる。
しかし、もともと、貨幣とはそういうものである。
以前の論考で、
私は、貨幣は、共同体の経済循環の手段として誕生したと考えている。つまり、古代ユダヤ共同体が、共同体内経済循環を促し、ユダヤ共同体に無いものを手に入れるため他所の人と貨幣を与える。そして、他所の人は貨幣をユダヤ共同体の中で使うことにしたと考える。しかし、価値が安定しないという不都合が生じて、価値を安定させる方法が重要ということになった。安定の基盤は貴金属だった。貴金属貨幣の登場である。

さて、デジタル通貨は、現金の発展形態と考えられる。投資資金が債券形態を取るのとは貨幣の動態が違う。つまり、現金と債券は、別のマーケットを形成する。

ところで、資源はどういう形態を取るだろうか。資源は、渡り歩くのを基本にする。つまり、為替形態である。結局、この、渡り歩く動態が通貨として下化される。要するに、資源により担保されたものが貨幣になる。

いわゆる仮想通貨が本来の役割を果たせないのは、この基本法則に基づかないからだ。投機性を排したクレジットマネーが実践されなければならない。
つまり、資源(ここでは石油)との交換性を担保した通貨が、ルーブルの向かうべき姿となる。
西側は、通貨を舐めている。通貨は、ユダヤ共同体の域内交換手段、需要充足のため発明された人類の友。
大きな改革は、現実の国際情勢が答えとなる。気づいて実践すれば手答えがあるだろうが、そうでない場合は、野垂れ死するだけだろう。

ウクライナ紛争を機に、世界はデジタル通貨決済が進むだろう。デジタル通貨が現実化する。対外決済がデジタル決済になるのは必然になる。

不換紙幣が管理通貨であるのは、金の代わりが見つからないからである。つまり、現在のドル体制は過渡期の国際通貨制度と考えられる

この方向は進まないかもしれない。しかい、喉元にナイフを突きつけられたのだから、ロシアも目覚めるだろう。
貴金属が貨幣になったのは、貨幣が金持ちの資産から生まれたという理由による。交換経済が初期の段階では、交換の対象物は、権力者、金持ちの富が主なものだったことによる。例えば、食糧は、強制的徴収により移転される。金持ちというのは、富の持ち主の俗語。

マルクス経済学で言えば、金貨幣というのは剰余価値の貨幣。デジタル通貨は、固定資本のうちの資源部分が貨幣に転化したもの。つまり、その性格が全然異なるのである。経済の発展が貨幣を本質的に変えるということになる。

私の推論が正しいならば、アメリカも同じことをするだろう。しかし、この通貨、固定資本起源の貨幣の覇権争いは、金本位制での経済支配力と同じで、そもそも、貨幣制度を経済制裁の手段には出来なくなる。だから、安心安全の制度なのだ。さて、その方向に行くだろうか。

最後に、スイスの銀行が経済制裁を打ち出したことに驚きと失望を隠せない。資本主義が変わろうとするときは、そういうことかもしれない。

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