不来庵書房 裏庭倉庫

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雑記・雑感も少々。

背景世界は誰のもの(1)

2021-06-03 | RPG
先ごろ、TRAVELLER(トラベラー)について書いたことがありますが。

トラベラーは1977年の発表以来、膨大な量の背景世界についての設定が積み上げられています。
恐らく、TRPG界でも随一と言って良い質量兼ね備えた緻密な設定ではないでしょうか。

さてこれだけの膨大な設定があると、アウトラインだけでも抑えておかないと・・・・・・という焦りがレフェリーにもプレイヤーにも生じてくるのは否めません。
実際、Web上にはトラベラー宇宙の銀河星図(地図帳)サイトがあって、大部分の星系については既設のデータが存在していますし、異星人や巨大恒星間企業についてはかなり詳細な設定が公開されています(有志による日本語訳もかなりの分量です)。

この辺はトラベラーに及ばずとも、例えば往年の学園物PBM/TRPG、蓬莱学園シリーズでもあったことですね。
ネットゲーム90からの最古参プレイヤー、Sネット94からのプレイヤー、それ以降のネットゲーム経験者と、運営サイドでプレイヤー間の情報格差に悩んでいるであろうシーンが散見されました。

『クトゥルフの呼び声』シリーズあたりはこの辺の処理が上手、というか、背景世界は古今東西の時代と場所の違いこそあれ、現実世界そのものであるとしているので、改めて全くの異世界について勉強し直す手間が省けることも、80年代に製作された古参TRPGでありながら現代でもルール改定を経て頻繁にプレイされている理由の一つではないかと存じます。
「実は・・・・・」の部分、すなわちゲーム自体の独自要素はラヴクラフトの世界に相当する部分だけ、詳細は人間には窺い知れない、という世界ですから、キーパーが作成したシナリオに多少の矛盾や知識不足があってもさして気にならないのも利点です。
(確か、80年代に遊ばれていたバージョンですと、正気度(SAN値)=POW(精神力)×5ー<クトルゥフ神話>技能値、最大99だったかと。SAN値の最大値が0になると永久に発狂=キャラロスト(NPC化)。すなわち、この世の真理(クトゥルフ神話体系)に精通すればするほど、破滅へと近づいていくという皮肉な設定をシンプルに表現した秀逸なルールだと思います)
何なら、クトゥルフ神話など蹴っ飛ばして単に現実世界(あるいは時代劇・歴史ドラマ)を舞台としたTRPGとしても遊べますし。

まあ、『クトゥルフの呼び声』がTRPGとしては広く遊ばれているのは、『這い寄れ!ニャル子さん』とか、他のメディアでの展開も大いに影響しているとは思いますが、やはり絶版サプリメントをヤフオクで落とさないと、とか、絶望的な量の英文テキストに取り組まなきゃならないとか、ヘタをするとPBMのリアクションシートを好事家から見せてもらわなきゃとか、そういう手間がいらない点、参入障壁が低くなっている点にあると思います。
もしがっつりラヴクラフトの世界やクトゥルフ神話に浸るシナリオを作りたくなった場合でも、ルールブック以外に読まねばならないテキストは(読書家なら)そこまで多くありませんしね。

とはいえ、凝り始めたら無尽蔵の参考文献を読み込む羽目になる点、他のTRPGとさして変わりはないのですが、それでも必要な資料は大抵の場合無料で入手できるのは利点です。
その意味では、『クトゥルフの呼び声』の背景世界はデザイナーのものでも、ファンのものでも、その他誰のものでもないと言えるでしょう。


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