今回は「障害と個性に応じた適切な介護」を展開していくための「知的機能の把握」について、以下に列記した3つのポイントを説明していきます。
(1)「かなひろいテスト」を実施する
(2) 今日の「日付(年月日)」を確認する
(3) 知的機能の「障害の進行度」に応じた介護を展開する
(1)「かなひろいテスト」を実施する
「かなひろいテスト」は「前頭葉機能」を簡便かつ的確に評価することのできる神経心理検査です。具体的な検査方法や判定などの詳しい内容については、このブログの「05 知的機能(4)」〔2018/05/15〕を参照していただきたいと思います。
(2) 今日の「日付(年月日)」を確認する
老人性認知症の診断に用いられる簡易知能検査法として「長谷川式」や「MMS」などが良く知られていますが、これらは主に「左脳が担う認知機能」を評価する神経心理検査です。しかし、介護や医療の現場で活用するには、様々な理由で、簡便ではなく、的確ではなく、また実用的ではない、と考えています。
認知症高齢者における認知機能の「障害;欠落機能」と「残存機能」を評価するためには「MMS」が必要不可欠であり、具体的な検査方法や判定などの詳しい内容については、このブログの「05 知的機能(4)」〔2018/05/15〕を参照していただきたいと思います。そして、介護や医療の現場で左脳が担う認知機能を簡便かつ的確に評価する方法として「今日の日付(年月日)の確認」が大変有用であることを是非知っておいていただきたいと思います。また、その理由や根拠に興味のある読者の方々は、このブログの「38 日付の確認(難解)」〔2018/10/17〕を熟読していただければ幸いですが、ここでは「今日の日付(年月日)の確認」によってMMS得点を推測する方法(超簡略法)を再掲しておきます。
(超簡略法から得られる「MMS」の判定;評価点)
(1)「日」「年」「月」の全てが正答できる場合
→ MMS得点(評価点)は「20点以上」
(2)「日」「年」「月」のどれかが正答できない場合
→ MMS得点(評価点)は「20点未満」
(3)「月」のみ正答できる場合
→ MMS得点(評価点)は「18点前後」
(4)「月」も正答できない場合
→ MMS得点(評価点)は「14点以下」
(3) 知的機能の「障害の進行度」に応じた介護を展開する
前述した「かなひろいテスト」と「今日の日付(年月日)の確認」の2つのポイントを理解し実践していただくことが、「障害と個性に応じた適切な介護」を展開する際の最も重要なポイントである「知的機能の障害の進行度に応じた介護を展開する」大前提になります。つまり、「かなひろいテスト」と「今日の日付(年月日)の確認」によって、老人性認知症の大多数を占めている「老化廃用型認知症の進行度」を判定することが「障害と個性に応じた適切な介護」の出発点になるのです。
老化廃用型認知症における知的機能の障害の進行については、まず「前頭葉機能」が病的に低下し、次いで「左脳が担う認知機能」が障害されていくことを、このブログでは繰り返し述べてきました。そして、老化廃用型認知症の進行度は「正常」(年齢相応)、「初発期」(小ボケ)、「境界期」(中ボケ)、「進行期」(大ボケ)の4段階に分類され、認知症の症状ではなく「かなひろいテスト」と「MMS」の成績によって判定されることを、何度も説明してきました。



老化廃用型認知症の進行度を把握することによって、下図に示されるように、社会生活や家庭生活における日常生活能力の判断や成年後見制度における「補助人」「保佐人」「成年後見人」の選定の判断など、様々な領域で活用することができます。ちなみに、要介護認定における「認知症高齢者の日常生活自立度」の判断に際しては、「初発期」が「Ⅰ」、「初発期~境界期」が「Ⅱa」、「境界期」が「Ⅱb」、「進行期」が「Ⅲa」と推定することができます。


老人性認知症(老化廃用型認知症)における知的機能の「障害」は、身体機能の「障害」のような「見える麻痺」ではなく、「見えないマヒ」です。したがって、認知症高齢者の介護に際して「障害に応じた適切な介護」を実践するためには、「見えないマヒを見ようとする意識」や「見えないマヒを見るための尺度(物差し)を持つこと」が必要不可欠なのです。

最後に、このブログの読者の方々には、老人性認知症(老化廃用型認知症)における知能(知的機能)の「障害」とは単なる「記憶障害」や「認知障害(左脳が担う)」ではないこと、「個性」とは「統合機能」(前頭葉)を中心とした「認知機能」(左脳・右脳)、「情動機能」(大脳辺縁系)のネットワークによって育まれていることを十分理解していただきたいと思っています。
そして、下図に示される知的機能の構成や把握方法を再確認していただき、医療や介護の現場で「障害と個性に応じた適切なケア(介護)」を実践していただければ幸いです。


・・・ プロならば 見えないマヒを 見る介護 ・・・