blueな日々

( Art で逢いましょう)

独善の果てに

2006年11月30日 | 読書メモ

F90bp1_1

アルコール依存症とは薬物依存症の一種で、飲酒など
によって得られる、精神的・肉体的な薬理作用に強く
囚われ、自らの意思では飲酒行動をコントロールでき
なくなり強迫的に飲酒行為を繰り返す精神疾患である。

………
『テロリストのパラソル』 古書を購入(文庫本)
著者:藤原伊織 出版:講談社 発行:1998.07

出版社の内容紹介:アル中バーテンダーは過去を隠し
20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園
の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザや
爆発で死んだ昔の恋人の娘らが次々と店を訪れ、知ら
ぬ間に事件に巻き込まれる。犯人を捜すことになった
彼が見た事実とは。史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作。

F90bp2

………
この本も二度買い。かなり以前から『私が殺した少女』
の次に読もうと決めていた作品である。ようやく昨夜
になって10年来?に実現した。記憶に残る作品だった。

物語がはじまり、まず感じたのは文章の幼さだったが、
徐々に、その印象は薄れていった。私の勘違いだった
のかもしれない~すぐに違和感はなくなった。事件の
発生から後の展開に、急激に引き込まれる自分がいた。

だが主人公のアルコール依存症という設定には、私は
最後まで馴染めないものがあった。常時、酒を手放せ
ない主人公の状況が理解しがたい。依存度は、中期の
ようらしいが、その精神疾患の様子が伝わってこない。
彼の頭脳はあくまでも明晰である。彼の内面と飲酒と
の関連が表現しきれていない。この作品では唯一?の
浮いた部分。アル中の現実はもっと悲惨で醜悪なはず。

多くの人に読まれた本だけあって、さまざまな感想が
あるようだ。書評の中には~本作は全共闘世代の自慰
とも言える、全共闘世代の願望充足小説めいている~
などといった批判もあるが、私はそうは読めなかった。
主人公が終盤で犯人と対峙して語るように「私たちは
世代で生きてきたんじゃない、個人で生きてきたんだ」
という言葉に、作者の真意?があるように思うのだが。
私はこの世代よりもわずかに年下である。学生運動?
全共闘世代?~よくわからない。

………
テロリズムとは、一般的に心理的恐怖心を引き起こす
ことにより特定の政治的目的を達成しようとする組織
的暴力行為のこと。またはその手段を指す。現代では、
文明・社会や国家権力に対する、過激派の暴力行為や
冒険主義をさす事例が多い。最近では動機が多様化し、
攻撃目標も要人から一般市民に変わってきている。

………
私は、問題はすべて個人に還元されるものだと考える。
ゆえに主人公も犯人も、自分の意志で、行動を起こす。
主義主張の顛末を、その結果その責任を、自己の他に
求めるべきではない。自身が引き受けるしかないのだ。
ゆえに私は、どんな理由があれ、犯人を許せない。

チャンドラーの影響が大きいのか、物語のその展開は、
想像どおりだった。他にはありえないのだ。この手の
作品で、いつも思うのだが、奇妙で不可解な男たちの
友情と嫉妬である。現実世界もそうなのかもしれない。

高橋和巳の『孤立無援の思想』に収録された『暗殺の
哲学』と、カミユの『反抗的人間』を読みたくなった。
『テロリストのパラソル』の解説で紹介されていた。

パラソルの写真は、傘の専門店サイトから転載・加工。
モネの作品『パラソルをさす女』をプリントした商品。
本の内容とは直接は関係ないが、テロリストも人間の
ひとりであるということである~私の認識。怪物でも
変人でもない。歪んだ彼の強固な恣意があるのである。

アルコール依存症とテロリズム、に関する説明部分は、
いつものように「Wikipedia」から転載・編集したもの。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。