とはいえ、あまりにもひどい内容だと私でさえ本を途中で
投げ出してしまうこともある。この2冊は、そういう意味
では、私にとっては、許容の限界ぎりぎりの作品であった。
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『超・殺人事件~推理作家の苦悩』図書館を利用(文庫本)
著者:東野圭吾 出版:新潮社 発行:2004.04
出版社の内容紹介:新刊小説の書評に悩む書評家のもとに
届けられた奇妙な機械「ショヒョックス」~どんな小説に
対しても、たちどころに書評を作成するこの機械が、推理
小説界を一変させる。発表時、現実の出版界を震撼させた
「超読書機械殺人事件」をはじめ、推理小説誕生の舞台裏
をブラックに描いた、あぶない小説8連発。意表を衝いた
トリック冴えるギャグ怖すぎる結末。激辛クールな作品集。
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楽屋落ちの短編ばかり。故に本来なら尚さら、いい作品に
すべきところである~作家の良心と責任において。しかし
この本は愚作である。この作家のファンならよろこぶかも
しれない。私は特定の作家を熱烈に~好きだからといって
作品の印象を歪めるほどには~支持は出来ない人種である。
好きな作家はいるが、作品を全部、読みたいわけではない。
作品の善し悪しのみが問題である。東野圭吾は『白夜行』
はいい作品だった。『秘密』『手紙』『容疑者Xの献身』
は期待している~近いうちに読むことになるだろう。
作家の税金対策、老いへの恐怖、ページ数の水増し、締め
切りに追われる、プロットがままならないなど、読者には
どうでもいいことである。どうしても書きたかったのなら、
読むに耐える作品にすべきではないか? 最後まで読んだ
ことに腹が立つ私である。せっかく手にした本は、ラスト
まで読まないと、もったいないという間違った貧乏意識が
あるからかもしれない。貪欲さも善し悪しである。
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『猿の証言』図書館を利用(文庫本)
著者:北川歩実 出版:新潮社 発行:2000.04
出版社の内容紹介:類人猿の言語能力を研究して、チンパ
ンジーと人間を同列に扱うことを主張する学者が、大学を
辞めた。チンパンジーと隠遁生活を送っていた彼が失踪を。
残されたチンパンジーが示唆したのは、残酷な結末だった。
ヒトとサルの境界はどこにあるのか、聖域を越えた研究の
果てに真理はあるのか。哀切かつ危険なラストへ二転三転、
人類のアイデンティティをゆるがす、新世紀への問題作。
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ストーカーのごときありさまで、登場人物たちが、犯罪を
推理するのである。また人物たちは、まったく魅力がない。
反感をおぼえるばかり。類人猿と人間に関するウンチクの
部分は、私も好きな、気になる分野なので、唯一?の救い
であった。後半の1/3は、斜め読みした。速読した。
読んでいても退屈で、嫌な人物ばかりが~単に描ききれて
いないという理由? 話も面白くない。どんな結末なのか
だけが気がかりで、最後まで読んでしまった。反省である。
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この記事のトップに使った図版は、私が敬愛する女性作家、
米原万里の最後の著作~『打ちのめされるようなすごい本』
の表紙を加工した。絶筆となった闘病記「私の読書日記」
を収録した彼女の最初で最後の書評集。そんなすごい本と、
もっとたくさん私もめぐり会いたい~読者側のクエストの
問題、その熱意の大きさ、でもあるだろうが。