blueな日々

( Art で逢いましょう)

生きること死ぬこと

2006年11月21日 | 読書メモ

F78bp1

偶然かどうか、2冊ともに自殺に関連した内容の小説。
神と霊が自殺者を救助しようとする物語。そして国が
自殺を法的に幇助する物語。まるで正反対の内容での
自殺問題への作家のアプローチだ。このビジュアルは、
国の機関~自殺予防総合対策センターが提供している
ポスターである。読んだ本とは、何の関連もないが。

………
『幽霊人命救助隊』図書館を利用(単行本)
著者:高野和明  出版:文藝春秋 発行:2004.04

出版社の内容紹介:「夕方までは死なないでください。
僕たちが必ず助けてあげます」 大学受験に失敗して
首吊り自殺をして幽霊となった主人公は、同じ立場の
三人とともに、天国行きと引きかえに「自殺者の救助」
を神に命じられる。浮かばれない霊たちが人命救助隊
を結成して地上に舞い降りた。救うべきは100人の命。
怒涛の人命救助エンタテインメント。

F78bp2

………
この作家の作品を読むのは短期間に、はやくも4冊目。
気になりそうな新作が、今後出なければ、これでそろ
そろさよならを。読むごとに、けっして悪くない作品
たちなのだが、徐々に印象が弱くなってきているのだ。
この作品では軽い乗り~まさに現代的な設定になって
いるので、表面的な自殺者の内面描写や救助方法など、
たぶん読者には~少なくとも私には、迫ってこない。

サラリーマン、主婦、子供、老人、犯罪者などの自殺
を阻止しようと、神から選ばれた霊たち~自殺者自身
の死後のあやふやな存在?が、天国行きを約束されて、
現世に戻って、悪銭苦闘するのだが、映画「ゴースト
バスターズ」の真似事が、悪のりぎみで、自殺という
重い問題から、時に目をそらしているような印象も。

次は『夢のカルテ』という、刑事と女性の心理カウン
セラー~心理療法による愛の物語?を、この作家との
つきあいの~読書の最後に、しようかと思う。

………
『自殺自由法』図書館を利用(単行本)
著者:戸梶圭太  出版:中央公論新社 発行:2004.08

出版社の内容紹介:君は死ねないから生きているのか?
1億2千万人の生と死の風景が。ある日突然、日本に
「自殺自由法」が施行された。しかし日本国民はあい
変わらずの無関心である。次々と公共の自殺幇助施設
「自逝センター」に向かう人の群れ。人間心理の闇を
えぐる衝撃の問題作。

F78bp3

………
先日読んだ『未確認家族』が、切れがよくて面白くて、
すぐにつづけて読みたかった作品。ブラックな味わい。
自殺に向かう人々の群像。メディアのありえない沈黙。
そして国の積極的すぎる自殺の幇助行政。内部が不明
なままの不気味な自殺センター。自殺をめぐる、国を
あげての狂乱ぶりが、あくまでも下品にスプラッター
ぎみに描かれている。私はこの作品に、いったい何を
期待していたのか自分でもよくかわからないが、別の
意味?で、考えさせられる物語だった。

ある日突然、15歳以上の日本国民は自由に自殺できる
という法律が施行される。国の各地に設置された自殺
センターで、実に簡単に、誰も彼もが死ぬことができ
るようになる。さまざまな理由で、人は自殺センター
に消えてゆく。ナチスドイツが犯した、強制収容所の
歴史的存在~事実が、下敷きにある作品。国も人々も
愚かでシュールな見事なうねりに、飲み込まれてゆく。
我々は実に、たちの悪い生き物でもある。

………
日本の国の機関~自殺予防総合対策センターは、個人
を対象に、自殺に関する相談を受け付けているわけで
はないらしい。自殺予防のために地方自治体や事業所、
NPOなどと連携した、活動・啓蒙を行っているらしい。
各都道府県や教育機関、医療機関、NPOなどが、個人
に向けて、窓口を開いている~相談を受け付けている。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あのマスコミそのもの正義の味方、いつも見解がふ... (j)
2006-11-21 12:28:48
あのマスコミそのもの正義の味方、いつも見解がふらふらの筑紫哲也のニュース番組で、あの自殺した校長がいかに誠実だったかを、特集していたが
保護者たちが、マスコミと教育委員会に校長は殺されたと言っていたことを、筑紫はどう受け留めているのか?もちろん、あの番組は基本的に絶対見ない(あほらしい正義感に辟易)が、自殺前にはその校長の姿勢をどう報道していたか?などなど、やはりマスコミの、大衆が皆自分は正義だと思いたいという欲望を満たすための偏向報道を続けている以上、またもや、新聞でイーデスハンソンが書いていたが、報道を冷静に受け止める力が必要だが、少なくとも政治ショーは救いようがない、もちろん、テレビがある以上それは避けられないし、校長が亡くなった理由はなにもテレビだけではなく新聞にもあるのだ、それにしても今度はいかに校長が誠実であったか報道とは、なんともいいようがない、それはそれでまたまた一つの見方を作ってしまう、それでまた数多くの人たちがその価値観でまた一連の話しを見てしまう
返信する
私にとって、彼らの自殺は~大人たちの~もちろん... (blueroad)
2006-11-21 21:49:36
私にとって、彼らの自殺は~大人たちの~もちろん校長も、
究極の責任放棄である。あの番組~あのキャスターがいう
ところの誠実さは、そういう側面があったかもしれないが、
まったく別次元の話である。筑紫哲也などのことで友人と、
ちょっとやりあった?ことがある。いつかきちんと彼らを
批判する理由を、私は書かなければならないはずであるが。
彼や、週間金曜日に関係する人物たちが~ジャーナリスト
たちが、私はたいへん怖いのだ。作家でいえば大江健三郎
のような、確信的に日本をとことん貶す人物も怖い~嫌い。
とはいえ、あの報道番組の影響力は、相当なものだと思う。
私は、敵を知る、という意味で最近よく見ている。他局の
報道姿勢の情けなさも、際立つ思いがしている。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。