blueな日々

( Art で逢いましょう)

すべては君の自由だ

2009年03月13日 | 読書メモ

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『半島を出よ』 村上 龍・ 幻冬舎・文庫(2007.8)
2011年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが開幕ゲーム中の福岡ドームを
占拠した。さらに二時間後に約五百名の特殊部隊が来襲して市中心部を
制圧。彼らは北朝鮮の反乱軍を名乗った。慌てる日本政府を尻目に福岡
に潜伏する若者たちが動き出す。国際的な孤立を深める日本に起こった
奇蹟。話題をさらったベストセラー。さらなるテロの危険に日本政府は
福岡を封鎖する。いまや九州は、反乱軍の占領下となった。逮捕、拷問、
粛清、裏切り、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋。絶望と希望
が交錯する中、若者たちの決死の抵抗が始まる。現実を凌駕する想像力。
緻密な描写で迫る聖戦のすべて。野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作品。
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何年ぶりだろうか。他のことは忘れてしまい読書に集中することできた。
千百ページもの大作を二日で読み終えた。私の病いを作家のエネルギー
がおおいつくす。うつ状態を粉砕する活字のパワー。そんなことも体感
しながら。作品の舞台が知らない場所ではないので、さらなる臨場感も。
北朝鮮の特殊部隊も、日本人の奇妙な集団も、政府や各国の対応なども、
私には理解しがたいものではあるが、それなりに、それぞれが思考して
行動する。あるいは何もしない。ひどい世界のありよう。ありえる現実
かもしれない。などとも。いや考えるべきなのは、社会からはみだして
しまった、若者たちの存在なのではないのか。破産状態の日本で。世界
から孤立してしまいそうな。閉塞感や戦争の危機。そんな近未来の世界。
若者たちの壊れた行動こそが、状況を変えるのかもしれない。

この作家には多くの作品がある。他の小説では、どんな世界が描かれて
いるのか、非常に楽しみ。次はやはり『コインロッカー・ベイビーズ』
だろうか。20年ほども前に文庫本を買って、読まないままになっている。
我が家の書棚を見たら『共生虫』という文庫もあった。いつ買ったのか
記憶にない。ネットで作家の作品リストを調べてみよう。




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