blueな日々

( Art で逢いましょう)

奇妙な作品

2009年03月13日 | 読書メモ

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『電話男』 小林恭二・ 角川春樹事務所・ハルキ文庫(2000.6)
電話こそ知恵の根源であり、電話コードこそ人間の連帯の具現である。
電話を通し、現在の閉塞感を打破し、絶対的なコミニュケーションを
実現しようと企てる電話男たち。到来したインターネット時代を予見。
その果てにある光と暗黒を斬新な文体と秀れた想像力で描き出す。

『短篇小説』 小林恭二・ 集英社(1994.5)
歴史入門書のスタイルで隠された日本史の意外な真実を探索。怪獣神
との息をのむ戦闘物語を再現。亡父へのレクイエムでもある私小説風。
小説の面白さをとことん追求した興味津々の作品集。

『邪悪なる小説集』 小林恭二・ 岩波書店(1996.6)
人はなぜ邪悪な心に魅せられてゆくのだろうか.突然訪れた少女に銃
で撃たれゆく男の意識を描く「銃をもつ少女」、世を震撼させる芝居
に挑みつづけ、ついには自らの身体を消滅させる役者を描く「再臨」、
現代社会の不条理を人間意識の不条理に溶かし込み,邪悪をモチーフ
にして鮮烈に描く問題作群。力作短編8本を収める.

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『電話男』は処女作なのに作家の顔が見えない。安易な手法も目立つ。
表現の方法が違えば、受け入れられたと思うが、私には理解のおよば
ない作品だった。途中で読むのをやめた。短編は楽しむことができた。
よくもここまでへんな話をこしらえるものだと感心している。まさに
奇妙な味の小説たち。じわじわと現実が浸食されてゆく。どんなこと
でも起こりえる。異世界と奇妙な人間の姿と内面など。違和感もなく。
自分自身もいつの間にかまぎれ込んでしまいそうな。先日読み終えて、
いいと思った『父』とはまるで違う作風。俳句や歌舞伎などにも手を
染めているらしい。酒飲みでも。とらえどころがなく多彩すぎる作家
なのかもしれない。私は他の作品も読むだろうか。中堅の職業作家の
手抜き仕事のような、処女作の印象。そんな感想が離れないので。




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