blueな日々

( Art で逢いましょう)

ホラーもさまざまに2

2009年03月22日 | 読書メモ

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『アウグスティヌスの聖杯』 桜沢 順・ 角川書店(2000.4)
これは神がもたらした奇跡なのか。水を注ぐと映像が浮かび上がる「杯」、
泥から砂金を生み出す「虫」、別世界への扉を開く「鍵」。人知を超えた
摩訶不思議な品々を蒐集する男の運命は。
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イメージは豊かだが、表現がついてゆかない。私には、そんな印象の作品。
たくさん書けば、もっとうまくなる作家だと思う。先日読んだ『ブルキナ
ファソの夜』とおなじ流れの作品だった。さまざまな異様な品が登場する。
オカルトだ。そしてまた主人公がはっきりしない。なんだかぼやけている。
最後まですっきりしない話。連作を考えているのだろうか。尻切れに。

『サンマイ崩れ』 吉岡 暁・ 角川書店・角川ホラー文庫(2008.7)
熊野本宮に近い山村が大水害で多くの死傷者を出したと聞き、僕は精神科
の病院を抜け出した。消防団員ふたりと老人とともに熊野古道を。崖崩れ
で崩壊した隣村の墓地にたどりついた僕が見たものとは。日本ホラー小説
大賞短編賞を受賞した表題作と書き下ろし中編「ウスサマ明王」を収録。
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いい味の作品だった。『サンマイ崩れ』は、なかばで先の展開がわかって
しまったことも、それほど気にならなかった。登場人物たちがうまく描け
ていて、文体もよく、熊野の山奥の雰囲気もうまい。『ウスサマ明王』は
アクションホラーとでもいえる作品だが、奇妙で不思議な作風だ。あまり
経験のない面白さだった。作家には他の作品がないようだ。読みたいが。

他に『鼻』(角川ホラー文庫)と『殺戮にいたる病い』(講談社文庫)を
出だしのみ読んだ。私には合わない作品だった。商業主義の悪癖で大量に
書きなぐられて、ただ消費されるばかりの作品。推敲も何もあったもので
はなく安易に書かれたもの。作家のプライドはどこにやら。そんな印象。




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