blueな日々

( Art で逢いましょう)

なつかしい作家

2009年03月06日 | 読書メモ

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『恐怖』 筒井康隆・文芸春秋・文春文庫(2004.2)
地方都市で起きた連続殺人事件。犯人の狙いは町に住む文化人を皆殺しにする
ことらしい。「次に殺されるのは俺だ」作家の村田は次第に半狂乱に追いつめ
られていく。犯人は何者なのか? 謎解きのサスペンスに加え「恐怖とは何か」
という人間心理の奥底にせまる異色の傑作ミステリー。
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じつにひさしぶりの筒井康隆である。昔、『虚構船団』だったと思うが、ある
海外の作家の本の構成に似過ぎていたので、筒井康隆という作家に私は違和感
をおぼえた。以来、遠ざかっていた。しかし気になる作家ではあるので、おり
にふれ、年ごとに新刊が出て、次第にふえてゆく彼の未読の作品を、そろそろ
読んでみようかと考えていた。図書館にあった薄い文庫本。読んでみよう。
とくに感想のないミステリィ。円熟した作家の味である。まともな作品だった。
中高年の登場人物たちも、それなりに生きている。恐怖については、よく描け
てはいるが、私は消化不良である。彼ならもっと書けるはずだが。ここ10年?
ほどの彼の作品を読もうと思う。ネットで調べてみたら、知らない作品が大量
にあった。新装版や自選傑作集などの古い作品の復刊も多かった。青春時代の
私の読書遍歴の中で、けっこう大きな部分も占めていた作家である。

『サラマンダー殲滅』梶尾真治・ 光文社・文庫(2006.9)
非道なテロ組織の爆弾テロにより、彼女は夫と愛娘を一瞬にうしなってしまった。
そのショックから彼女を立ち直らせたのは、復讐という執念だった。戦士となる
ことを決意して壮絶な訓練を積む彼女だったが、真の戦士となるには、思い出と
いうかけがえのない対価を払わなければならなかった。第12回日本SF大賞受賞。
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推敲の跡を感じられない構成や文体など。登場人物が描ききれていない。破綻し
ている物語のプロローグ。いろいろと不満がある。もっとよくなる作品のはずな
のに残念だとの思いで読み進めた。決してSF大賞を受賞するような作品ではない。
小説に限らず多くの作品のいいところだけを集めて、ニュアンスだけが詰め込ま
れたもの。日本のSFはこの程度ではないはずだが。私の中でSF大賞というものが
色あせてしまった感がある。選考委員のセンスやプライドまでも疑ってしまう。




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