blueな日々

( Art で逢いましょう)

家族の本当と嘘

2006年11月28日 | 読書メモ

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日本での誘拐事件は、吉展ちゃん誘拐殺人事件~1963年
に東京都台東区で起きた~で、はじめて社会的な注目が
集まることになった。犯人は供述で、同時期に公開され
ていた黒澤明監督の映画『天国と地獄』に言及。犯行の
ヒントにしたといわれる。警察庁によれば戦後に起きた
身代金目的の誘拐事件は288件~2006年6月現在。この
うち被害者が殺害された事件は34件。容疑者が逮捕され
ずに未解決のままなのは8件で、それ以外はすべて解決。
そのうち58件では捜査当局と報道機関で報道協定が締結
された。また近年は、他国家によるものや異常性の見ら
れるものなどは、拉致と呼ばれることが多い~北朝鮮に
よる日本人拉致問題など。(Wikipediaより転載・編集)

………
『私が殺した少女』 古書を購入(文庫本)
著者:原 寮 出版:早川書房 発行:1996.04

出版社の内容紹介:まるで拾った宝くじが当たったよう
に不運な一日は、一本の電話ではじまった。私立探偵の
事務所に電話をかけてきた依頼人は、面会場所に自宅を
指定していた。探偵はブルーバードを走らせ、依頼人の
邸宅へ向かう。だがそこで彼は自分が思いもかけぬ誘拐
事件に巻き込まれたことを知る。緻密なストーリー展開
と強烈なサスペンスで独自のハードボイルド世界を確立。
日本の読書界を瞠目させた直木賞・ファルコン賞受賞作。

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………
日本では、探偵家業は現実味がない~実態を知りたいが。
少なくとも私にはうさん臭いのぞき屋のイメージが強い。
しかしこの作品の探偵は、実にしっかりと本場のハード
ボイルドの系譜を身につけている。つまり決して諦める
ことを知らない、ある意味では、不自由な男なのである。
彼なりの正義感に、たえず突き動かされているからだ。

アイロニーを唇に浮かべながらストイックな心で生きる。
あるいはアフォリズムを楽しみながら。そんな男たちの
孤独感と、残酷で非情な犯罪の世界を描いた作品である。
私はこの本も二度買いした~10年前、読む日を楽しみに
していた私は、当然だが今よりも、ひと世代?若かった。
もうハードボイルドできそうもない~初老の年代である。
老人なりの美学~生き方はあるはずだが。

やはり、誘拐され殺された少女を探偵が発見する場面で、
私は泣いた。幼い命が、その未来の可能性が、無惨にも
摘み取られたことが~フィクションであっても、腹立た
しくて仕方ないのだ。この作品のタイトルが強い緊張感
を読者にもたらすはず。私とは誰なのか。どんな意味や
意図があるのか。隠されているのか。示唆しているのか。

家族。親と子供。人々の闇。現実を焙りだす探偵は最後
まで妥協を許さない。見いだしたものを自己のすべてで
受け止める。自分の孤独がさらに深まろうとも。追いつ
めるのは何も犯人の姿だけではない。

この探偵のシリーズは数作品が書かれている。近いうち
図書館へリクエストするつもりでいる。プロットよりも
~結構オーソドックスである、文体~台詞やモノローグ
が素晴らしい。ハードボイルドの命である。

………
吉展ちゃんは当時4歳で、誘拐の直後に殺害されていた。
初動捜査の失態などがあり捜査は長引き、犯人逮捕まで
2年もの歳月を要した。裁判では控訴・上告ともに棄却
されて犯人の死刑が確定。4年後の1971年に執行された。

この事件をもとに書かれた、本田靖春の小説『誘拐』を
再読するつもりでいる。偶然?だが先日『誘拐の誤差』
という戸梶圭太の作品は図書館へリクエスト済みである。

………
書いた記事~読書の感想文、が増えすぎたので、
ブログのカテゴリィに『読書メモ3』を追加した。


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