blueな日々

( Art で逢いましょう)

燃える?壊れる?消える?

2006年11月27日 | 読書メモ

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私にとっての「キリン」といえば、サルバトール・ダリ
の『燃える麒麟 GirafeEnFeu』である。 第二次世界大戦
を避けるためにアメリカへ渡ったダリが、自ら提唱した
非合理性の有形化、を目的とする「偏執狂的批判的方法」
によって描かれた代表的な作品~1936年制作~スイスの
バーゼル美術館に所蔵。あるいは中国の古代の想像上の
けもの『麒麟』のことでもある。翼で飛び生草は踏まず
生物は喰わないという。この世に聖人が出て王道が行な
われた時に出現する、と伝えられる一角獣である。
        (Wikipediaなどから一部転載・編集)
………
『ガラスの麒麟』 古書を購入(文庫本)
著者:加納朋子  出版:講談社 発行:2000.06

出版社の内容紹介:「あたし殺されたの。もっと生きて
いたかったのに」~通り魔に襲われ殺された17歳の女子
高校生。美しく聡明で幸せそうに見えた、彼女の内面に
隠されていた心の闇から紡ぎ出される6つの物語。少女
たちの危ういまでに繊細な心のふるえを、温かな視線で
描く感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。

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………
ひとりの殺された少女をめぐり、生徒たちが教師たちが
親たちが、自らの内面を見つめ直すことになる。そして
犯罪の推理をすることになる。連作の中で徐々に少女の
死に至までの姿も浮かびあがる。「ガラスの麒麟」とは
殺された少女が書いた童話。孤独な魂の遍歴のお話。

したたかな内面を秘めたミステリィである。愛と成長の、
そして挫折感の物語でもある。静かな展開のそこここに、
作者の技巧が見え隠れしている。評価が分かれる~読者
を選んでしまう作家かもしれない。私は嫌いではない。

殺された少女は、アンニュイで傲慢で、才能に目覚めた、
美しい17歳である。死に取り憑かれていたのだろうか?
重要な登場人物~高校の保健室で勤務に就く養護教師の、
哀しくも出来すぎた?その精神が、私は気持ち悪かった。
犯人と少女の奇妙な関係と犯行。そんなことも充分に?
ありえることではあるが、生き急いで、死を想うことが
どれほどのものを人にもたらすというのか。他の人々は
その後も生きつづける。喪失感はいつまでも消えない。

………
言葉の連想からか私は『ガラスのうさぎ』を思い出した。
その作品も、少女の苦悩と成長を描いた~作者の実体験
をもとにした、戦時中の物語である。


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