Feel Free ! アナログ・フォト・ライフ Diary

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Nカメラその後&コニカミノルタにて

2006-03-28 10:29:46 | 写真集・写真展
 昨日は再びNカメラへ。

 結局、写真が掲載されるのは6月号ではなく7月号だということだったので、預けてあったブックを一旦返却して貰うことにしたのだ。掲載枚数はまだ未定だが、ブックにはめぼしい写真に10枚ほど付箋が貼られていて、その中から多くて5枚程度掲載されるとの由。5月は丸一ヶ月日本にいないので、今月中にブックを返却しなければならない。その間にプリントを仕上げたり、DMの製作依頼をしたり、掲載写真用のコメントを書いたりとやることは山ほどある。よっぽど5月のモンゴル行きを延期しようかとも思ったけれど、夏が短く、しかも夏休みが長い(つまりその間は仕事ができない)モンゴルでは調査に行ける次期が限られているのでこの辺は頭の痛いところだ。

 さて、Nカメラを出た後は新宿に出て、コニカミノルタプラザへ。ワークショップ仲間の内藤さんが個展をやっている。昨年に開かれたグループ展と同じくHolgaで撮られたカラー作品だが、グループ展の時より遙かにグレードアップしている。

 Holgaというのは独特なドリーミィな描写が人気のトーイカメラでこのカメラで撮られた写真はインターネット上で山ほど見ることが出来る。その意味では他人が撮ったHolga写真とどう差別化を図るのかという辺りが難しいところだが、その点、内藤さんの写真の中でもできるだけ情緒を排除した作品は出色の出来だった。特に現在発売中のNカメラに掲載されている二作品(子供たちの黄色い帽子を少し距離を置いて捉えた作品とサッカーゴールらしきものを写した何気ない風景写真)はどことなく、アンドレアス・グルスキー風で購入欲をそそられた。彼女には花を写した情緒的な作品よりも、ぜひこの路線を歩んで欲しいような気がする。Holga版グルスキーの誕生、なんてちょっと凄いではないか(笑)。

 この他にも児玉姫子写真展「Passers─by」と南野慶太写真展「Across」をやっていてそれぞれに面白かった。ポートレート作品で構成された児玉姫子写真展ではご本人とも少しお話させて頂いたが、実は人間はむしろ苦手だったおっしゃっていたのが興味深い。ポートレートやスナップを撮る人でこういう人は実は結構多いのだけれど、そうした苦手意識を持ちながらあえてそれに挑戦してゆこうとするところにいつもリスペクトを感じてしまう。苦手だから撮らないというのと、苦手だがあえてそれに挑戦するのとでは全く意味は違うのだ。

 個性の違う三つの写真展。いずれも作品作りに向ける作者の情熱が伝わってきてとても勉強になった。まあ、6月の個展でここまで自分の作品を持って行けるかというのがとても不安にはなったけどね(笑)。実質あと一ヶ月、とにかく頑張ってみようと思いを新たにした次第だ。

旅の技術

2006-03-24 21:17:26 | もろもろ
 このブログにはモンゴルやらチェコやらロシアやらスペインやらとまあ色々な国について書いてきたけれど、それを読んでくれた人からよく、「海野さんは言葉ができるからいいですね」なんて言われることがある。

 しかし、これはとんでもない誤解で、少なくとも「話す」ということに関してはできると自信を持って言えるのはモンゴル語くらいで、英語については話せますときっぱり言えるにはほど遠いし、仮に百歩譲って英語ができるのだとしても、ロシアやスペインなんかでは英語なんてほとんど通じないのが普通である。

 じゃあ、どうやってバスや電車で旅行するんですか、と言われるかも知れないが、率直に言って、東京でごく普通に電車やバスに乗れる人なら、海外に行ってもごく普通に電車やバスに乗れるはずなのだ。

 何しろ東京という国は世界的に見ても交通網が異様に複雑にできている。東京都内だけでも鉄道にはJRを始めとして多種多様な私鉄が走り、その上メトロの路線数ときたらとても外国の比ではない。ぼくも世界中の大都市と言われるところはだいぶ歩き回ったが、鉄道やメトロの路線図の複雑怪奇さでは東京の右に出るところはないと思う。要するに、東京が旅できる人なら、海外のどんな大都市に行っても楽に旅が出来て当然なのである。

 では具体的にどうやって海外で鉄道を利用しているかと言えば、一番早く、かつ間違いないのが筆談である。日本では「地球の歩き方」という大変便利なガイドブックが出ているので(もっとも頭から信用していると時々痛い目にあうから注意が必要だが)、あらかじめそれでどこ行きの電車に乗れば自分の行きたい場所へ行けるのかを調べておく。そして、大抵の駅ではタイム・テーブルが出ていてそこにどこ行きであるかが記載されているので、それで時刻とプラットホームを確認し、いざ窓口へ。あとは目的地と時間を紙に書いて渡すだけでいい。

 えっ、そんなに簡単なことでいいの? と言うかも知れないけれど、いいんである。もちろん、時には自分の乗りたい電車の時刻が何らかの事情で記載されていなかったり、間違っていたり、なんてこともあるけれど、そこはそれ、向こうもプロである。もしこちらで書いて渡した情報に間違いがあれば、ちゃんと紙に書いて訂正してくれるので心配はいらない(たぶん)。

 もちろん、こうした旅にはリスクはつきものではある。しかし、何度も言うように東京が歩ける人ならまず間違いなく海外でも自由に旅ができるはずで、後は気持ちの持ちようなのだと思う。気持ちひとつで旅の自由度がぐっと広がり、そしてツアーでは決して味わえないような新鮮な体験ができるのだ。travelの元々の意味は「苦労して旅をする」ということらしいが、ほんのわずかな苦労が結果的には何倍にも報われるのである。皆さんが勇気を出して自由な旅にどんどん出かけて行ってくれることを願っている。

小国の魅力・チェコ(3)

2006-03-23 00:46:02 | チェコ
唐突にチェコ編三日目(やっと……苦笑)。

2月27日(月)

 今日からプラハを離れ、チェコの東部周遊に出発する。まずは鉄道を使い、三時間かけてオロモウツという小都市へ。

 列車に乗りこんでまず驚かされたのが、窓がとてつもなく汚いということだった(笑)。それも汚れ方が半端でなく、どうみても結構な長期間洗車をしていないと思われるのだ。その後何度も鉄道を使ったが、そのことごとくが汚れていたから、ひょっとしてチェコ人には車両を洗うという習慣がないのかも(ホントか?)。これじゃ電車から撮影なんてできたもんじゃないし、今度チェコに来るときにはマイペット持参で来た方が良いかもね、などと本気で思ったほどだった。

 さて、オロモウツへ着いてから市内バスを使って旧市街へ。ホテルの予約はプラハのみだったから、とりあえずホテルを探さなければならない。が、オフ・シーズンなのでホテル探しは比較的楽なはず。その予想通り、「地球の歩き方」で目星をつけておいた「ホテル・ナロードニー・ドゥーム」に無事投宿した。

 ところがこのホテル、ある意味で実に「当たり」であった。何しろ、ランプやら電話機やら椅子やら、とにかく部屋の調度品がすべからくどこかの古道具屋から買ってきたようなレトロでチープな品々で占められているのだ。おまけにベッドの反対側の壁には冬の荒野を描いたやたらに暗~い絵が掛けられている。そうそう(旧)社会主義国ってのはこうじゃなくちゃね、などと密かに心弾ませたぼくだったが、何気にテレビをつけてみてさらに驚いた。何とそれは白黒テレビだったのである!!

 事ここに到ってぼくは自問した。これはオーナーのポリシーでわざわざ集めてきた結果なのか、それともホテルの歴史が相当古く、長い歳月の間に自然にこうなってしまったのか。そう考えてくると、意味深なのがホテル名だ。「ナロードニー・ドゥーム」とはロシア語であり、直訳すると「人民の家」という意味である。「人民の家」とは公共文化施設につけられた社会主義国特有の呼称で、実を言えば1930年代のモンゴルにもその名もずばり「ナロードニー・ドゥーム」という名のドーム型ホールが存在していたくらいだった(後に焼失)。

 そう考えてゆくと、ホテルの古さからして社会主義時代からのたたずまいを今に伝えているかに見えるが、それはともかく、ホテル代がダブルで4000円(シャワー、トイレ付き、朝食なし)という安さだから文句は言えない。というか、わずか4000円で社会主義時代のレトロな雰囲気が楽しめるのだからこれは考えようによっては実にお得である。思わず、エグルストンよろしくレトロな部屋の写真を数枚撮ってしまったことは言うまでもない。

 ……というわけで、またまた些末なことを書いているうちに紙面(?)が尽きてしまった。本当はレストランで出会った魅力的なチェコ娘のことなど書きたかったんだけどねえ。まあ、それはまた今度ということで。些末なチェコ日記、不定期でまだまだ続きます。

売り込み続報……!!

2006-03-17 11:21:13 | 写真全般
昨日、Nカメラに売り込みに行ったと書いたが、その後新展開が!!

なんと、6月号に掲載されることが決まったというのだ。

えっ、ほんとにいいの!? というのが正直な気持ちである(笑)。聞き間違いじゃないよね。いやー、売り込みというのはやはりしてみるもんである。

というわけで、掲載枚数とか詳細は来週決まるらしい。

とりあえずは報告まで。詳細はまた改めて……。

売り込み

2006-03-16 16:32:26 | 写真全般
 個展が決まって改めて気がついたのが、展示のためのプリント作業はもちろんだが、その他にも準備段階で色々やらなければならないことが出てくるということだった。グループ展でもむろん準備作業はあるけれど、個展の場合、すべてを自分の手で行わなければならないのだ。そしてその準備作業の中でも結構重要なのが出版社への売り込みなのである。

 実は個展が決まるまで、個展をやるために売り込みが必要だとは考えてもみなかった。個展は一つの目標ではあったが個展即写真家デビューとは考えていなかったし、何よりも、編集部が個展開催者にいちいち対応してくれるんだろうか、という疑問があったからである。

 ところが、田村さんから頂いた手紙には「もし口絵に掲載してもらうのであれば自分で売り込みをするように」と書かれ、また師匠にもお伺いを立てたところ「もう二ヶ月前じゃん。やった方がいいよ」とあっさり言われてしまった。

 というわけで本日、ブック持参でNカメラに行って参りました。

 「売り込み」というのはフリーで物を書いていた時にも実はちょくちょくしていたことがあるのだが、はっきり言って苦手である。できればしないで済ませたいのが売り込みだが、売り込まねば自分の存在を知って貰えないのもこの世界。口絵に掲載して貰えるか否かが重要なのではなく、編集者に自分の存在を認知して貰えるか否かが重要なのだと思う。

 ちなみにNカメラは、師匠がフォトコンの審査員を務めているところだけれど、反則になるだろうと思って師匠の名前は出さなかった(プロフィールには書いたが)。しかし、快く会ってくれ(Nカメラの場合、火曜日と木曜日が写真を見る日になっているのだそうな)、結果、編集部預かりということに。一週間以内に行われる編集会議を経て結果は分かるそうだが、困ったのが、手元にブックがなくなってしまったということだった。やっぱり、ブックは自分用と売り込み用と、二種類作った方が良さそうだということが良く分かった。

 何せ始めての個展である。まだまだ学ぶことがありそうだ。

小国の魅力・チェコ(2)

2006-03-13 14:22:31 | チェコ
 というわけでチェコ二日目。

 2月26日(日) プラハ泊

 時差ぼけのせいか、朝5時くらいには目が覚めてしまった。早めの朝食をホテルで済まし、さっそくプラハ散策に出かける。まずは最寄りのI.P.パブロワ駅からメトロを使ってヴァルダヴァ河近くのスタロメスツカ駅まで移動。朝から雪がちらつく生憎の天気だが、その少し陰鬱とした空気感が、森に囲まれた古都プラハには絶妙にマッチしているのだ。冬は寒いとはいえ、せいぜいが-5度くらい。モンゴルと比べればいかほどのこともない。やはり冬にチェコに来たのは正解だったと胸を弾ませた。今日はストラホフ修道院やプラハ城周辺を散策する予定にしていたので、30体の聖人像が並んでいることで有名なカレル橋を遠くに望みながら、マネスフ橋を渡って対岸に出る。

ところがである。プラハ城の手前に広がる小さな公園を抜けて階段を登って行くと、ぼくより少し前を歩いていた妻が、何やら驚いた顔をして盛んに手招きしているではないか。何事だと思って急いで飛んで行くと、何の変哲もないアパートの片隅にそれはいた。

孔雀であった。それもつがいの立派な孔雀が、さも当然という顔をして、そこらを徘徊しているのだ。もちろん、柵囲いなどあるはずもない。しかも、ぼくらの前を歩いていたおばさんは、こちらもさも当然という顔をして、持参していたらしい袋から餌をとりだし、孔雀の前にばらまき始めたのだ。孔雀の方も、澄ました顔をして餌をくれるのをおとなしく待っている。

お前はハトか、と一瞬思ったが、雄の孔雀は餌を横取りしようとしたハトに向かって立派な羽根をいっぱいに広げて威嚇していたから、本人はハトより格上のつもりでいるらしい。でも、たかがハトに向かってあんなにでっかい羽を広げて見せるなんてちょっと大人げないんじゃないか、孔雀(笑)。

しかしそれにしても、あれはいったい誰の孔雀だったんだか。ひょっとして、いまプラハでは孔雀を放し飼いにするのが密かなマイ・ブームとか。まさかね。まあ、よく誘拐されずにすんでいるものだと妙なところに感心してしまった。

何だか孔雀の話だけで終わってしまったけれど、その日は予定通り散策を終えて、午後にはマリオネット劇を見るなど、フツーに観光客っぽいことも結構してました。写真も結構撮ったし、(旧社会主義国にしては)意外とサービスが良く、みな親切で二日目にしてチェコはすでに満足度がだいぶ高い。明日からはプラハを離れ、チェコ東部周遊に出発する予定だ。

写真を撮ることの意味

2006-03-12 23:51:23 | 写真全般
土曜日、2Bにて暗室作業。午前と午後各三時間ずつ計六時間ぶっ通しで、しかもたった一人での作業だったから結構疲れた。が、ベタ23枚とチェコ編プリント22枚、個展用プリント4枚を仕上げる。さすがに結構な量だ。

終わってから例によって師匠にチェコ編を見てもらったのだが、「ここまで来たらもう写真を撮ること自体には何も意味がなくなってくるよねえ」という意味深な反応にとまどう。一瞬、お前はもう写真を撮らんでよろしい、と言われたのかと焦ったが、そうではなくて安心した(笑)。つまり、ぼくのように決定的瞬間を捉えたものでもなければ、何か特別意味のある被写体を捉えたものでもない写真を撮る人にとっては、撮影行為それ自体には格別重要な意味がなくなってくるのだと言うのだ。その代わり、大事になってくるのがセレクトで、何気ない被写体(例えばただのテレビとか)であっても、セレクト次第では俄然生きてくるというわけである。もちろん、それを生かすためのセレクトというのはすごく難しいと脅されたが。

そうした理由からか、野口里佳寄りになっているというようなことも言われたけれど、まあいつかも言ったように原風景という意味では共感できる部分が多いので、そう言われるのは別段嫌いなことではない。もっとも、自分としてはカラーを始めて一番影響を受けているのはエグルストンなんだけどね。誰も指摘してはくれないのだけれど(笑)。

チェコ編カラープリント、次回暗室開放でまた二十枚程度焼いた後、セレクトに入る予定だ。

「エゴサイス・グループ写真展」

2006-03-09 23:57:28 | 写真集・写真展
今日はワークショップ2B繋がりのグループ展「エゴサイス・グループ写真展」を見に銀座に出かける。2Bの「オフィシャル」(?)なグループ展は渡部さとるプロデュースだが、こちらはすでにオフィシャルなグループ展を経験した者6名による裏番グループ展だ。

結論から言ってしまえば、みんな嫌になるくらい旨いねえ、ということ。プレゼン(展示)や構成の仕方にそれぞれ工夫があり、ゆっくり見ようという気になるグループ展だった。どうせなので一人ずつ簡単にコメントすると……。

Mさん:まずCDケースに入れての展示、というので意表をつかれる。彼女の日常的な視線はぼくにはまずないものなので、その辺りはさすがという感じ。

Fさん:オフィシャルなグループ展のやるせない(?)写真とはちょっと変わって、素人のモデルを使ったポートレートによる構成。うまいがちょっと普通になってしまったか。個人的にはT氏とのコラボ作品や前回の作品の方が好みかな。今度はぜひ男のモデルを使った作品を撮って欲しいような(笑)。

Oさん:写真集的な見せ方では2B内でOさんに勝る人はいないと思う。いつもながらOさんの優しい視線が印象的(これもぼくにはないものだと思ふ)。

Kさん:モノクロ・バライタも良かったが、ブックについては今回の出品者の中では一番面白かった。ローアングルに拘ったり、ある被写体を必ず写し込んだりと、ブックの写真に共通項を持たせているところがミソ。でも、ローアングルに拘った理由は何かあったのだろうか。聞くのを忘れた(笑)。

Tさん:Tさんのアンダー目の暗い写真、実は結構好きだったりして。これはFさんにも少し言ったことだけれど、TさんとFさんの写真、ちょっと似ている。暗い情緒への嗜好性という点で。いいねえ。

Hさん:正攻法で行った大人のモノクロ作品といった感じ。小手先に頼らず何気ない日常を何気なく切り取った写真だけに、ある意味今回のグループ展の中では最も異色であったかも。今月下旬から始まるという個展に期待大。

 ざっとこんな感じだけれど、最後に一言だけ苦言を呈するならば、それはみんな旨すぎる、ということだろうか(笑)。特にこれは自分もカラーを撮るので良く分かるのだが、カラーを撮ろうとすると、どうしてもスタイル優先という感じになりやすく、スタイリッシュではあるのだが、被写体が本質的に持っている力というのを生かし切れなくなってしまう場合が多々あるのだ。俗にヘタウマという言葉もあるけれど、スタイリッシュで旨すぎる作品よりも、下手なんだけど思わず目が吸い寄せられてしまう作品もあると思う。……なんて、偉そうなこと言っているけど、実は全部自分に返ってくる言葉だったりしてね(苦笑)。

いずれにしても、本日は充実したひとときをありがとうございました。

小国の魅力・チェコ(1)

2006-03-07 23:45:12 | チェコ
というわけで、実は少々時差ぼけなのであるが、とりあえずチェコについて日記風にあれこれと。

2月25日(土)
ソウルにて大韓航空を乗り継ぎ、夜遅くにプラハ国際空港に到着。日本から大韓航空を利用してチェコに行く人はあまりいないせいか、日本人の姿はほとんど見かけない。

チェコは旧社会主義国だけれど、ロシアとは違って未だにバウチャーシステムなんて古くさいことは言わず、何と入国カードすら記入の必要はない。したがって、当然入国審査もスムーズに進むものと思っていたらこれが大間違い。待てど暮らせど、我々(ぼくと妻)の番が回ってこないのだ。旧社会主義国の官僚主義的態度をさんざん見てきたぼくは、チェコよお前もか、と一瞬思ったが、いざ自分の番が回ってくると、手のひら返したようにすんなり通してくれてちょっと拍子抜け。そう言えば、ぼくらの前にはロシア人の団体がいたからひょっとすると意地悪されていたのかも(あくまで推測です)。社会主義時代にはロシア人は特権的な立場に立っていたから、まあ思えば時代は変わったものである。

さて、空港からはミニバスを使い、新市街にあるイビス・シティ・ホテルへ直行。到着から二泊と帰国直前の一泊のみ、日本からホテルを予約しておいたのだ。ところが、ホテルのフロントでカード型の電磁式キーを貰い、エレベーターに乗ったところ、停止階を押してもいっこうに動く気配がない。まさかいきなり故障か、と一瞬思ったが、よくよく見れば階数ボタンのすぐ横に何やらスリットのようなものが付いていて、そこへ電磁式キーをスライドさせるよう英語で書いてある。なんとこのエレベーター、部屋のキーを使わないと客室にも行けない仕組みになっているのだった。こんなん日本でだってお目にかかったことはないぞ(あるいはぼくが無知なだけなのか)。技術力に関してはどうせチェコって旧社会主義国だろ、くらいの認識しかなかったぼくはいきなりカウンターパンチを食らわされた気分だった。意外とやるじゃんチェコ。明日からがいよいよ楽しみになってきた。

(この項、続く……たぶん)