22日、写真家渡部さとる氏を筆頭にモンゴル・ツアー参加者六名がウランバートルの空港から日本へ向けて飛び立っていった。7泊8日の短い旅だったが、それぞれが旅の内容の濃さに満足してくれ、旅をコーディネートした者としてもとても嬉しく思っている。
今回のツアーでは絶対演出なしの、生のモンゴルを体験して貰おうと思っていた。演出なしであるから、ツーリスト・キャンプを利用した以外は当然すべてホテルの予約もなしのリスク・テーキングな旅。ところが本来事前に何の予約も入れていない旅なのに、実際はイベント続出の毎日だった。
初日に草原でホーミー(二つの声を同時に出すというモンゴルの民族音楽)を聞いたのに始まり、壮麗な虹が出現するわ、横綱朝青龍のご両親と一緒に写真を撮らせてもらうわで、参加者の誰もが嬉しい悲鳴をあげていた。
そんな中で、今回のツアーのクライマックスは、やはり偶然出くわした遊牧民のゲルにお邪魔して一緒に酒を飲み交わし、歌を歌いあったことだろう。そこで出された料理もまた、今回のツアー中で一番味わい深かったはずだ。
モンゴルの伝統料理、中でもいわゆるもてなし料理の中にボートクとホルホグというのがある。この二つは良く似ていて、どちらも焼け石を使って肉を調理するのだが、ボートクが金属タンクにお湯と調味料、それに肉と焼け石を交互に入れて肉を蒸し焼きにするのに対し、ホルホグの方は肉を切り出した家畜の胴体に、やはり肉と焼け石を交互に入れて調理した後でさらに外側からバーナーで加熱するというところが違う。つまり、ボートクは金属タンクを使って家畜の肉を蒸し焼きに、ホルホグは家畜の胴体を使って肉を丸焼きにするのだ。
今回食べさせてもらったのは羊のボートクの方だった。当然のことながら、調理はまず家畜をし、解体するところから始まる。
ごくごく一般的に言って、ぼくら日本人は家畜をするシーンなどまずお目にかかったことなどないだろう。したがって、日本人旅行者の中にはシーンを正視できなかったり、泣き出してしまったりということも多くて、旅行社主催のツアーではこうしたプログラムは組み入れないのが普通だ。
ところが、恐るべしは2Bワークショップのメンバーで、何とこの人たちは目を背けるどころか食い入るようにシーンに瞠目し、あまつさえは断末魔の羊をモデルにしてバシバシ写真を撮り始める始末(笑)。
もちろん、モンゴル人にしてみれば、お客の目の前で家畜を・解体してみせるのは最高のもてなしであるから、この場合、どちらかと言えば2Bワークショップのメンバーの態度の方が正しい(とはいえさすがにあれだけ写真をばんばん撮っていたのには呆れていたけれど)。
調理が終わった後、草原の中で、モンゴル人とともに熱々の肉にむしゃぶりつき、肉のうま味あふれるスープを飲んだ時の、あの何ともいえないワイルドで、生きていることを実感できる充実したひとときは、恐らくツアー参加者にとって一生忘れられない想い出になったことだろう。
人間は生の存在であると同時に死の存在でもある。死を確かに実感した瞬間が、実は最も生を実感する瞬間でもあるわけだ。「生」を受け入れると同時に「死」を直視し、それを受け入れること。モンゴルのワイルドな料理は、ぼくたちが日常の中で忘れかけていた感覚を深く揺さぶり、呼び起こしてくれるのだ。
*渡部さとる氏のホームページhttp://www2.diary.ne.jp/user/178978/に関連記事あり。
今回のツアーでは絶対演出なしの、生のモンゴルを体験して貰おうと思っていた。演出なしであるから、ツーリスト・キャンプを利用した以外は当然すべてホテルの予約もなしのリスク・テーキングな旅。ところが本来事前に何の予約も入れていない旅なのに、実際はイベント続出の毎日だった。
初日に草原でホーミー(二つの声を同時に出すというモンゴルの民族音楽)を聞いたのに始まり、壮麗な虹が出現するわ、横綱朝青龍のご両親と一緒に写真を撮らせてもらうわで、参加者の誰もが嬉しい悲鳴をあげていた。
そんな中で、今回のツアーのクライマックスは、やはり偶然出くわした遊牧民のゲルにお邪魔して一緒に酒を飲み交わし、歌を歌いあったことだろう。そこで出された料理もまた、今回のツアー中で一番味わい深かったはずだ。
モンゴルの伝統料理、中でもいわゆるもてなし料理の中にボートクとホルホグというのがある。この二つは良く似ていて、どちらも焼け石を使って肉を調理するのだが、ボートクが金属タンクにお湯と調味料、それに肉と焼け石を交互に入れて肉を蒸し焼きにするのに対し、ホルホグの方は肉を切り出した家畜の胴体に、やはり肉と焼け石を交互に入れて調理した後でさらに外側からバーナーで加熱するというところが違う。つまり、ボートクは金属タンクを使って家畜の肉を蒸し焼きに、ホルホグは家畜の胴体を使って肉を丸焼きにするのだ。
今回食べさせてもらったのは羊のボートクの方だった。当然のことながら、調理はまず家畜をし、解体するところから始まる。
ごくごく一般的に言って、ぼくら日本人は家畜をするシーンなどまずお目にかかったことなどないだろう。したがって、日本人旅行者の中にはシーンを正視できなかったり、泣き出してしまったりということも多くて、旅行社主催のツアーではこうしたプログラムは組み入れないのが普通だ。
ところが、恐るべしは2Bワークショップのメンバーで、何とこの人たちは目を背けるどころか食い入るようにシーンに瞠目し、あまつさえは断末魔の羊をモデルにしてバシバシ写真を撮り始める始末(笑)。
もちろん、モンゴル人にしてみれば、お客の目の前で家畜を・解体してみせるのは最高のもてなしであるから、この場合、どちらかと言えば2Bワークショップのメンバーの態度の方が正しい(とはいえさすがにあれだけ写真をばんばん撮っていたのには呆れていたけれど)。
調理が終わった後、草原の中で、モンゴル人とともに熱々の肉にむしゃぶりつき、肉のうま味あふれるスープを飲んだ時の、あの何ともいえないワイルドで、生きていることを実感できる充実したひとときは、恐らくツアー参加者にとって一生忘れられない想い出になったことだろう。
人間は生の存在であると同時に死の存在でもある。死を確かに実感した瞬間が、実は最も生を実感する瞬間でもあるわけだ。「生」を受け入れると同時に「死」を直視し、それを受け入れること。モンゴルのワイルドな料理は、ぼくたちが日常の中で忘れかけていた感覚を深く揺さぶり、呼び起こしてくれるのだ。
*渡部さとる氏のホームページhttp://www2.diary.ne.jp/user/178978/に関連記事あり。