<塔ノ岳山頂から富士山を望む>
快晴・冷涼の秋を楽しむ丹沢;塔ノ岳(今年52回目)
(単独山行)
2012年10月10日(水) 晴
■早朝に2回も駆けっこでヘトヘト
秋も深まった.
5時10分,何時もの時間に家を出発する.東の空が漸く白みかけ始めているが辺りは真っ暗である.コーロギなど秋の虫の鳴き声は全く聞こえてこない.出掛けるときに,今日は寒いかなと思ったが,外は無風のためかそれほど寒くない.
暗い道を5分ほど歩いたときに,財布を持っていないことに気がつく.
「しまった! どうしよう・・」
ズボンのポケットの小銭入れの中身を確かめると,塔ノ岳を往復するだけのお金はない.途端に,もう今日は塔ノ岳に行くのを止めようかと思う.でも,金曜日から2泊3日で中山道の旅にでる予定があるので,今日,塔ノ岳に行っておかないと,丸々1週間も間が空いてしまう.
私は覚悟して,財布を取りに自宅へ戻る.勿論,全速力で走って・・・である.走ると背中のリュックが暴れるので実に草臥れる.「ままよ・・・」で,財布を取りに,靴を履いたまま2階の自室に駆け上がって,駆け下る.そして,その勢いのまま,湘南モノレールの駅まで走る.そして,何とか何時もの電車に間に合ったものの,朝から汗ビッショリになり疲労困憊.
そして,残念ながら今日は平日.小田原で小田急電車に乗り換える時間は,たった2分しかない.また,小田原駅で階段2段跳びで駆けっこ.やっと小田急電車に間にあう.朝の内に2回も駆けっこをしたので,登山を開始する前に,もうヘトヘトである.
“ハアハア”の荒い息遣いが治まる頃,電車は新松田付近に差し掛かる.今日は富士山がとても良く見えている.そうなると私の道楽で,富士山と矢倉岳が重なる写真が撮りたくなる.
「まるで,子供みたいだな・・・」
と自嘲しながら,シャッターチャンスを狙う.そんなことをしている内に,荒い息遣いも何時の間にか平常に戻っている.
<富士山と矢倉岳;小田急線の車窓から>
■意外に少ないご常連
渋沢発大倉行1番バスは,平日にしては沢山の乗客が乗っている.ただ北アルプスへ出掛けているご常連の方々がまだ見えないので,常連の数は少ない.韋駄天のTさん,三角髭のTさん,Y内さん,Y川さん,ホッシーさん,N村さんが乗り合わせている.
6時58分,バスは大倉に到着する.この頃は,全くウオームアップのストレッチもせずに,7時03分に韋駄天のTさん,三角髭のTさん,Y内さんの俊足お三方とご一緒に大倉から歩き出す.
私も勾配がそれほどきつくない間は,韋駄天さん達と一緒に歩くことにする.
7時24分,観音茶屋を通過する.この辺りは,まだまだ私も余裕を持って,お三方の後ろにピッタリと付いて登り続ける.つづいて,7時41分に見晴茶屋を通過して,見晴階段の急坂に差し掛かる.急傾斜のところに来ると,私はとてもお三方に付いて行けないので,見る見るうちにお三方と私の間の距離が開き始める.
負け惜しみではないが,私は流れるような汗をかいたり,ハアハアと呼吸困難になるような登り方は絶対にしない積もりである.そんな訳で,お三方と私の間の距離は見る見るうちに開き始める.それに今朝方の2回に渡る猛ダッシュで,どうも疲労感が出ているような気がしている.つまり早く歩こうとしても,正直,とても歩行速度を上げることが出来ない.
<見晴階段を登る>
■堀山の尾根の木道工事
駒止階段の急坂を登って,8時09分に駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間06分,まあ,まあ,私にはこんな所だろう.
堀山の尾根道に入る.緑陰のこぼれ日が心地よい.韋駄天のTさんは,もう,ずっと先を歩かれているんだろう.全く姿が見えないが,私のすぐ前を三角髭のTさんとY内さんが歩いている.平らな所では,私も歩行速度を上げられるので,歩く速度を少し速めてお二方に追い付く.
道すがら三角髭のTさんとは,コンピュータ黎明期のアセンブラだの仮想記憶装置などの雑談をする.恥ずかしながら,古い古い汎用コンピュータ時代の特種情報処理技術者の認定資格は取得しているが,このようなシーラカンス的な知識は,最近のパソコンやインターネットでは殆ど役に立たないので,技術の驚異的な発展には,ただ,ただ,たじろぐばかりである.
次いで,“ゆっくり歩く”が話題になる.私の山の持論は,“とにかく安全に”,“とにかくユックリ登る”がモットーである.これは私のオリジナリティではなく,私が師事した某山岳ガイドの受け売りである.お二方にも応分の参道が得られたような気がしている.
ところが,これを守るのが結構難物で,他人に追い越されれば,結構,向きになって追い返したくなったり,目の前に登山者が居ると追い抜きたくなったりする.毎回,まだまだ修行が足りないなと実感している.
つい,ここ数日の間に,堀山の尾根の一部の改修が進んで,何時も抜かっていた場所に木道が設置されつつある.新しい木道の工事が今日も続けられている.一部開通した木道を,”これは良いな,今年の冬は泥んこにならずに通れるな”と思いながら通過する.
<堀山の尾根の木道工事>
■堀山からの富士山
8時16分,富士山が良く見える場所で,富士山の写真を撮る.肉眼ではとても良く見えているのに.デジカメで写すと,この写真のように富士山が空の中に溶け込んでしまい,殆ど撮ることができない.何でだろう・・・
多分,空の明るさのために露出オーバーになっているに違いないが,カメラの露出を調製するのは面倒だし,平素,デジカメのそんなところを弄ったことがない.良く写らないのはカメラの制にして,
「この馬鹿カメラ・・・ちょっとはオレの言うことを聞いてまともな写真を撮れよ・・」
とカメラに向かって無言の悪態をつく.
それにしても,今日は富士山がとても良く見えている.
8時31分,下山してくるY沢さんとすれ違う.何時もと違って,今日は歩いておられる.
<堀山からの富士山>
■“ヤア,ヤア・・・今日は気持ちが良いよ”
堀山の案内標識付近で,元気に下山しているKシゲさんとばったり.
「ヤア,ヤア,・・今日,山頂はとても気持ちが良いですよ・・・」
で握手.序でに写真を撮る.
「あなたのブログで『オレを見た』という人に話しかけられたよ,ワッハハ・・・」
「どうもすみません・・」
お許しを得て,また,ツーショット写真を掲載しよう.
■萱場平
7時26分,堀山の家を通過する.
小草平からも富士山が良く見えているが,ここから富士山の写真を撮ってもどうせ写りっこないので,無駄なことはしたくない.意地になって富士山の写真を撮らないことにする.
ここからは,マイペースでユックリ登りたい.ここまでご一緒してきた三角髭のTさんとY内さんに,
「どうぞお先に・・・私は花立山荘まで38分くらい掛けてユックリ登りますので・・・」
ということで,お二方に先に行ってもらう.瞬く間にお二人との間が開いていく.
私の心の奥底に巣喰っている意地悪なもう一人の私が,
「なんだ! 格好付けやがって.どうせお二人には付いていけないくせに.何がユックリだよ.精一杯,歩いても付いて行けないんだろ」
と私に悪態をつく.
「ま,そりゃそうだよ.お二人には付いていけないのは分かっているよ.でも,絶対に流れるような汗はかかないで,余力のある状態で歩くつもりだよ・・」
と私はもう一人の私に必死に抗弁する.
私は向きになって,”汗は一粒も流さずに登るぞ”と意地を張りながら登り続ける.そして,8時45分,萱場平に到着する.先を行くお二人の姿は当然見えなくなっている.
萱場平には人の気配はなく,秋の柔らかい日射しが降りそそいでいる.実に気持ちが良い.私は木道の間に自生する大きなアザミの写真を撮りながら,
「もうすぐ冬だけどがんばれよ」
とエールを送る.
<静まり返った萱場平>
■花立山荘
その後も,有言実行で,マイペースを守る.
私の前後には,まったく人影がない.一人でノンビリ登るのも良いものだなと思いながら登り続ける.ユックリ登っていると,道すがら首位の風物を楽しむ心の余裕ができるのが良い.
今,気温がどの程度か分からないが,暑くも寒くもない.従って汗は全くかいていない.実に好い気分で登り続ける.まるで近所の公園でも散歩しているような気分である.
やがて後7分坂(花立階段)に登り口に到着する.ここからの富士山の眺めも最高である.早速立ち止まって富士山の写真を撮る.
背中に暖かい大洋の光を受けながら,後7分坂も,7分に拘らずにノンビリ登れば,結構楽しい坂道である.
坂道を半分ほど登ったところで,下山してくるN村さんとすれ違う.相変わらずの俊足に驚嘆する.
「今日は良い天気ですね・・・」
と一言二言挨拶してすれ違う.
7時10分,花立山荘を通過する.大倉を歩き出してから,ここまでの所要時間は2時間07分.ノンビリ歩いたにしては,案外良いラップである.ただ,堀山の家から花立山荘まで44分も掛かっている.是はいくら何でもノンビリしすぎである.せめて40分程度にしなければ・・・と反省する.でも,この4分の差は,たかだか後7分坂の半分程度にしかならない.ならば,4分の差なんてゴミみたいなものだ.
花立山荘前から富士山が良く見えている.
<後7分坂の登り口から富士山を望む>
<花立山荘からの眺望>
■花立山
今日の青空は素晴らしい.
花立山荘を過ぎて花立山に近付くと,見晴がとても良くなる.私は周囲の風景をデジカメに収める.花立山荘から花立山まで12分も掛けて道草を楽しむ.
馬瀬付近から見る鍋割山稜も美しい.まだ紅葉の見頃には間があるが,十分に秋の気配が感じられる.
<花立山からの眺望>
■山頂直下でバッタリ
9時20分,金冷シを通過する.
今日はユックリペースで登ってきたので,ここまで来ても全く疲労感はない.まるで,自宅近くの鎌倉中央公園を歩くような感覚で,金冷シから最初の長い階段を上り詰める.ついで2番目の階段もルンルンである.余力を残しての登山がこんなに楽しいものかと再認識する.
金冷シから3番目の階段に差し掛かる.そして,山頂直下の木道が切れたところで,下山してくる三角髭のTさんとバッタリ.立ち話をしていると,韋駄天のTさんも降りてくる.早速,お二方の写真を撮る.
<韋駄天のTさんと三角髭のTさん>
■塔ノ岳山頂
今日はちょっと道草が多かったが,9時42分,塔ノ岳山頂に到着する.気温12℃.無風.暖かい日射しが心地よい.
大倉からの所要時間は2時間39分.道草をしたり,ノンビリ登山と決めつけた割には案外納得のいくラップである.山頂には数名の先客が休憩を取っている.その中にY内さんの姿も見える.どうやらY内さんを山頂に到着して間もないようである.
今日の山頂からの見晴は素晴らしい.勿論富士山も良く見えている.後ろを振り返ると大山から横浜,東京方面も良く見えている.ただ東京方面はいくらか霞んでいてスカイツリーは見えないようである.
周囲の写真を儀式として撮ってから,尊仏山荘に向かう.
<塔ノ岳山頂から大山方面を望む>
<塔ノ岳山頂から相模湾を望む>
■尊仏山荘
Y内さんとほぼ一緒に尊仏山荘に入る.今日の小屋番はオーナーのH立さんとW林さん.
W林さんがお茶の急須を持ち上げて,ボデーランゲージで,
「これでいいか・・?」
と私に確認する.勿論OK.300円也のお茶を賞味する.
営業部長のもー君は,どこかへ行っていて不在.
お茶を飲みながら,Y内さんと,ユックリ登山について,暫くの間,雑談する.
Y内さんは,丹沢山方面を散策するとのことなので,10時21分,私一人で下山することにする.私が尊仏山荘を出るとき,入れ替わりにホッシーさんが尊仏山荘に入ってくる.
■出来たての木道
今日は実に心地よい小春日和である.こんな日に急いで下山するのも勿体ないので,ゆっくり下山して,大倉発12時52分のバスに乗車しようと思う.
ときどき登ってくる登山者と擦れ違いながら,10時49分,花立山荘を通過する.後7分坂の階段脇に青いシートにくるまった工事用の材料が沢山置かれている.どうやら花立階段の改修工事が始まるようである.有り難いことである.
11時25分,堀山の家を通過する.小草平のベンチでは数名の登山客が休憩を取っている.
堀山の尾根道では,道路の改修工事が進めれれている.登るときには通行不可になっていたところが,たった今,通行可能になったようである.ブランドニューのピカピカ木道を初歩きする.随分と歩き易くなった,有り難いことである.
<出来たての木道>
■途中からW林さんと一緒に下山
11時44分,駒止茶屋を通過する.尾根道をノンビリと歩いて一本松に差し掛かる.そのとき,後ろから,
「FHさん・・・」
と誰かが私に声を掛ける.尊仏山荘の小屋番W林さんである.
W林さんは,私が勤務していた会社と同業の大手メーカ出身.某美大で油絵を専攻している.私が絵を出展した会場にも数回足を運んで頂いている.そんな関係から共通の話題が結構あるので,大倉まで雑談しながらご一緒する.絵のこと,私の学位のテーマのことなど話題はいろいろ.
12時38分,予定通りの時間に大倉に到着する.下り所要時間は2時間17分.
大倉発12時52分渋沢駅行のバスに乗車する.順調に乗り継いだのは良かったが.東海道本線の電車が大船駅のホームに停車する直前で,何があったのか分からないが急停車する.降りようと思っていた私は,リュックに振り回されて,車内で転倒する.身体の右側を床にたたきつけられる.同時に,”emergency stop”と英語のアナウンスが車内に流れる.
電車の扉が開いたので,一寸痛かったものの何ともないので下車する.ところが帰宅してから右足の付け根付近に鈍痛がある.まあ,大した痛みでもないのだが,乱暴な運転に,少々腹が立ってくる.
<ラップタイム>
7:03 大倉歩き出し
7:24 観音茶屋
7:41 見晴山荘
8:09 駒止茶屋
8:26 堀山の家
9:10 花立山荘
9:30 金冷シ
9:42 塔ノ岳山頂着(12.0℃)
10:21 〃 発
10:34 金冷シ
10:49 花立山荘
11:25 堀山の家
11:44 駒止茶屋
11:49 見晴山荘
12:19 観音茶屋
12:38 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:03
塔ノ岳 着 9:35
(所要時間) 2時間39分(2.65h)
水平歩行速度 7.0km/2.65h=2.64km/h
登攀速度 1269m/2.65h=478.9m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:21
大倉 着 12:38
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
水平歩行速度 7.0km/2.28h=3.07km/h
下降速度 1269m/2.28h=556.6m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/51645253d6649e2ec05cc2d63a3ab8d6
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/2e4e96c8bcf3cc810c33de0ab21371e8
最新の画像[もっと見る]
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前