goo blog サービス終了のお知らせ 

ドクトル アインスの小部屋

関東エリアの某病院の勤務医です。大学病院のいろいろや医療の事、日常の事を気ままに書かせて下さい。

ピル実験の話

2006年04月01日 | 医療のこと

  実は、この記事、だいぶ前に書いていたのですが、アップし忘れていましたのでアップしますね。  季節柄 記事とは無関係に桜を載っけて見ました。

 いつも1時間前に職場に着くようにしているため、睡眠時間も少ない毎日(4時間弱)です。

 早くついて『医学会新聞』なるものを見ていると ピル治験 というお話がありました。(ボストン在住の 李先生のはなし)  

 話を要約すると  

 「そもそもピルの治験は、1954年ロックという医師の下、「避妊」研究が目的であることは患者さんに隠され、表向きは「不妊治療」の研究ということで始まったようです。

 プロゲステロン単独20日間投与、1週間休薬」の方法で毎日被験者から尿を採取。治験は大成功を収め、プロゲステロンが完璧に排卵を抑制するという結果を得るのに時間はかからなかったようです。

 しかし、正式にFDA(米国の新薬を認可する機関)の認可のために、大規模な臨床試験を実施する必要があった。米国では、避妊法を広めること自体が違法だったため、それを米国ではできない。行ったのは、 米国自治領である プエリトリコ。 当時、貧困対策の一環として人口抑制の必要が叫ばれ、ちょうどよかったのだ。 結果、きちんと薬を飲み続ける限りは、避妊効果は100%だったが、被験者の17%に嘔気、頭痛などの副作用が見られたらいい事実を、問題視しなかった。 」

 というものです。

 昔は、患者さまに本当の説明なんてせずにいろいろな治験や研究が行われていたんですよね。おそろしい事です。この事例は、成功例でしたけれど、もし、逆の方向にでも行っていたら。考えただけでも身の毛がよだちます。でも、副作用が多いことを問題視しないというところが問題だったのですね。 また、大規模実験は、やはり、米国ではやらず(できず)、その支配下の貧しい人たちを使ってという非道徳なやり方を当然のようにやっていたなんて。ほんと信じられませんね。今ではありえませんから。                                                                    応援してくださる方ここをクリックしてくだされば嬉しいです


放射線科医のくせに その三

2006年03月13日 | 医療のこと

  でも、こういう形をとらないと医療の質は低下してしまう可能性もあります。いま、すべての病院に放射線科医がいるわけではなく、臨床医の先生だけで読影がなされているという病院がいっぱいあります。大学病院に放射線科医を送ってほしいといっても、大学自体も人が足りなくて出せないのが現状です。

  ただ、ちょっとだけ光明もあります。遠隔医療のいいところは自宅でも診断ができる事です。女医さんが子供を生んで子育てをしながらでも何とか家で仕事が出来る可能性を持っているからです。今までなら、結婚してからは、とても臨床医を続けていけなくなったという女医さんはいっぱいいらっしゃいます。しかし、この遠隔医療はそういう女医さんに協力していただける可能性を持っているという事なのです

  私の夢にひとつは、出来る限り多くのの日本のCT、MRIに質の高い報告書(質が高くなければ報告書をつけても意味はありません)をつけたいという事なのです。

  そうすれば、手術する必要のない患者様は、手術をせず、また、即刻手術をしたほうがよいと思われる患者様に手術を勧めたり、

あるいは、無駄な検査をし続けたりしないよう影で患者様を支えていけると思われるからです。私たちは、第三者的な見方から患者様を診ているため、診断が思わぬ方向へ行ってしまわぬための監視役

のような役割を担っていると考えています。そういう放射線科医

を皆様、ご理解いただけることを切に願っています。

今後ともよろしくお願い申し上げます。                                          応援してくださる方ここをクリックしてくだされば嬉しいです


放射線科医のくせに その二

2006年03月11日 | 医療のこと

 そこで、臨床医(画像を依頼される先生方)がもっとも必要としているCT

とMRI

に絞って読影という形に移行して行ったのです。それでも、読影の量は膨大です。しかも、放射線科医に好んでなろうとする人は少なく(患者様を直接診ないため、医者っぽくない)、放射線科医の不足が私たち医者の中でも深刻化しつつあります。新聞には、麻酔科医や小児科医のことがとりだたされています。たぶん患者様にとっては直接感じられる部分なのでそうなるのは当たり前だと思います。しかし、現実的には、忙しい臨床医にはこの膨大な写真を逐一見て解釈している暇はそうはないのです。ましてや忙しい外来の中でなんてほぼ不可能に近いのです。そこでわれわれが、彼らの肩代わりをして写真を裏で解釈しているのという事なのです。

 実は、私の今勤務している一般病院も4月からは、私を含めて3人いた常勤医のうち二人が大学に帰る事になり(決めているのは大学病院の教授とその幹部たちが主観的に)、たった一人となってしまう事になりました。つまり、今までの3倍の仕事量が私にのしかかる事になったのです。その対策として、遠隔画像診断という手段がクローズアップされてくるのです。遠隔画像診断とは、病院にはいませんが、自宅あるいはどこかの事務所で待機している医者が、ネットで病院から送られてくる画像をさながら病院にいるかごとく写真をみて、解釈を加え、報告書をネットで返すというシステムです。

 4月からは、このシステム導入をせざる終えないのですが、結局日本中にいる放射線科医そのものの数が限られているので、このシステムもどのくらい持続していけるかは未知数です。また、画像が病院外に流出するというセキュリティ的な問題点を抱えています。もちろんセキュリティ対策は建てますが絶対というものは存在しません。必ず巧妙なハッカーがいるからです。また、この遠隔画像診断で行われた一連の作業は、電子的に行われるのですが、必ずしも病院の電子化と連携できないという大問題も抱えています。今これについては、何とか方法を模索しているところですが、かなりお金のかかることのようですし、今までのような便利さからは遠のく事になります。

その三へ続く

*遠隔画像診断の情報 

http://www.nmed-center.co.jp/remote/index.html  

http://www.doctor-net.co.jp/  

http://medical.secom.co.jp/hospi-net/

 なお、現在、私の病院で接続予定のシステムと上記情報サイトとは何の関連もありません。一応、この三つは、遠隔画像診断の大きな会社ということで紹介しさせていただきました。                  応援してくださる方ここをクリックしてくだされば嬉しいです


放射線科医のくせに その一

2006年03月11日 | 医療のこと

 私は、放射線科医のくせに忙しいのです。  

 何故と言われても忙しいんです。  

 よく、放射線科医は9時5時と言われて、他の臨床医からいい目で見られていませんでした(実際そういう放射線科の先生もいらっしゃる)。

 しかし、私が、大学病院にいた頃は、「砂の権威」にも書いているように膨大な量の白黒写真の大洪水に流され続ける毎日でした。 なにせ、病院で撮像されたすべての単純写真、CT,MRI、その他すべての写真に報告書(写真を解釈して依頼医にレポートを書く書類)を添付していたのですから。

 あまり時間がないからそのための工夫として、私たちが、カセットテープに音声という形で録音し、それを専門のタイピストの方がタイプしてくださるというシステムでした。 彼女たちも膨大な量のカセットテープを少ない人数で処理するため、英語での報告書を作成していました。 英語なら漢字変換などのややっこしい作業が省けるから作業が効率化できるのです。 しかし、CT、MRIの日進月歩の発達で、さらに膨大な量の写真が作成されるようになり、もう、放射線科医が大量の写真のすべてに報告書をつけるということは不可能になってきました。  

その二に続く。       応援してくださる方ここをクリックしてくだされば嬉しいです


カンファランスの画像の答え

2006年03月05日 | 医療のこと

  こんばんわ。 久しぶりのゆっくり出来る日曜日。前日は9時半に就寝してしまったので珍しくいつもの睡眠時間の約3倍の10時間寝る事ができました。心の余裕が出来たので 以前の症例の解説をいたします。

  「カンファランス」で登場した症例。  これは、体の肝臓という臓器を輪切りにしたものです。 肝臓の部分のみを切り取っているので大体からだの右半分よりの肝臓のレベルを輪切りにしたと思ってください。 撮影した機械は、MRIという機械(図)で、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。 MRIという大きな磁石の中に人間が入って、ラジオ波という特殊な電波を流し、体の臓器(肝臓やら、腎臓やら、骨やら、肺やら)がそれに対して反応する違いによって白黒の色分けをして絵にします。 ラジオ波を当ててからの撮像時間の違いによっていろいろな画像を作る事ができるのですが、そのうち代表的なのものが「T1強調画像」 ティーワンきょうちょうぞう と読みます。 と「T2強調像」 ティーツーきょうちょうぞう があります。 このうち、問題として出ていたのは、「T2強調像」です。 一番外側の白い帯状部分が皆さんの大敵である脂肪です。 その内側に筋肉があって、その内側が腹腔といっていろんな臓器が入っている袋というか入れ物です。 この絵の中で一番多くを占めているものが、肝臓です。 肝臓は、いろいろな役割を担っていますが、胆汁といって脂肪を分解する液体を作ったり、毒素を解毒したり、みなさまが毎日飲まれているアルコールを分解するのがここですね。 この肝臓の向かって左下(医学的には肝臓の右葉)に もこもこした白い部分がありますね。 ここが異常な部分で、腫瘍です。 あ、驚かないで下さいね。 腫瘍には良性と悪性がありますので。 この病変は、良性病変で、「血管腫」といいます。 はい、ですから答えは、血管腫となります。 血管腫は、血管の奇形のようなもので血管で構成された良性腫瘍です。 基本的には治療の必要はありません。 この撮像されている「T2強調画像」では、血管腫は、とっても白く写ります。 形は、様々なのですが、辺縁といって、腫瘍の端っこをなぞっていくときれいな線でなぞる事ができて、これを医学的には「境界明瞭」と読んでいます。 つまり、腫瘍の境界線がはっきりしているということですね。 血管腫は、まず、ほとんどの症例が「境界明瞭」です。 そして、学生さんには教えときますが、血管腫の特徴として、信号域が非常に高いという特徴があります。 MRIの「T2強調画像」でもっとも白いものは「水」ですが(体の中の水ってのは、消化管の中の水、膀胱の中の尿、胆嚢の中の胆汁など)、その水の次に白いのが血管腫と思っていただいて結構です。 それくらい白いものです。 もうひとつ、形ですが、真ん丸い形もありますが、大きくなるとこの症例のように分葉状といって外周がもこもこしてきます。 これは、他の腫瘍にあまりない特徴です。 ですから、T2強調像で

 1. 水の次くらいの白さ

 2. 境界明瞭

 3. 分葉状

の所見が認められたら、血管腫の可能性がかなり高いということです。

 わかりました?難しいですかね。

 もし、放射線科医の専門医を目指す人がいたらもうひとつ通の特徴をお教えします。 それは、隔壁です。 隔壁といえば、肝臓癌の特徴とも言われていますが、血管腫は、大きくなると多くの場合は隔壁を生じます。 あ、これは、ちょっと難しすぎですね。

 腹部単純写真の勉強は、また、3日以内にはアップする予定です。

 応援してくださる方ここをクリックしてくだされば嬉しいです


放射線科医って?いったい何?

2006年02月12日 | 医療のこと

  今日は、ちょっと放射線科医という存在についてお話します。われわれは、患者様とは点でしか接触する事がないため、ほとんどの患者様にはなじみがない医者と思います。われわれの業務は大きく分けて三つあります。それは、 

   1)画像診断(レントゲン写真やCTやMRIという検査結果に解釈を加える作業) 
   2)血管造影やそれに類似した手技をもちいて患者様を非侵襲的(内科の薬による治療と手術治療の中間と思ってください)に治療する。
  3)放斜線治療(癌を殺すために大量のレントゲン線を体に当てる) の3つです。  
   いずれも、内科医や外科医その他の先生方から依頼を受けて行う、まあ、下請け業務のようなものです。ですから患者様を点で支えても持続的に支える事は通常ありません。ですが、内科、外科にとどまらず、泌尿器科医、産婦人科医、耳鼻科医、などなどほとんどすべての科の先生方と接点があります。そして第3者的な立場で上記の1)-3)の仕事にかかわります。 この3つの仕事のうち、放射線科医の業務の7-8割を占めているのが1)の画像診断です。 「え、内科の先生や外科の先生はレントゲン写真」を解釈する事ができずに、あんまり聞いた事のない放射線科の先生が実は、解釈してたんですか?」  と思われると内科、外科の先生に失礼なので、言いますと、彼らもレントゲン写真などを読む事はできるのですが、CTやMRIは日進月歩で新しい撮影方法がそれをつくる業者によって開発されています。ですから新しい撮影方法に精通していないと取られた写真の意味を間違って解釈してしまう可能性もあるのです。また、彼らもきわめて忙しいので、十分に写真を見る時間が取れない場合もあります。ですから、彼らを放射線科医という画像の専門家がサポートする必要があるのです。ただ、あまり厚生労働省は、放射線科医の価値を認めておらず、私たちが、CTに解釈を加えてもたったの870円の価値しかありません。これによって、診断を180度変えてしまう可能性もあるのにです。では、一例を示します。54才男性が盲腸炎、医学的には虫垂炎疑いにてCT検査を施行しましたが、明らかに虫垂は正常で、尿管結石(おしっこの出る道に石みたいな塊が出来てそれが引っかかり尿が出なくなり、激しい痛みを呈す)である事がCTにて簡単に診断できるのです(図)。どうです?臨床的には盲腸炎と思ったものがこのCTに解釈を加える事で診断が全く異なってしまうのです。もちろん、その後の治療は全く異なります。盲腸炎(医学的には虫垂炎)で手術 ではなく、水をたくさん飲んでください。で終わるのです。 いかがですか?もし、私の言っている内容が難しければ、ご意見ください。では、今日はそろそろ就寝します。午前2時なので。おやすみなさい。