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南魚沼~わが故郷から~

四季折々姿を変える豊かな自然を次世代に
活き活きとした顔が溢れる元気なまちをつくろう

雨にも負けず~小泉堯史 

2008年08月20日 | Weblog
  お盆休みも終わり、またいつもの毎日が始まっている。
ことしも坪池は、子ども御輿と祭り屋台が村の中を練り歩き、夜は盆踊りの予定だった。
途中から大雨に見舞われ、みんなずぶ濡れ、これで終わりかと思ったら、そうではなかった。
雨上がりの神社の境内では、「予定通り」盆踊りが始まり、出店のテントや神社の中では、
いつもと同じように飲ミュニケーションで盛り上がった。
ことしもみんなが楽しんだ祭りであった。

 さて今日も映画の話、南魚沼とはあまり関係ない話で恐縮なのだが・・。
タイトル:「阿弥陀堂だより
監督: 小泉堯史 原作: 南木佳士  悪い映画であるはずがない。

 奥信濃、飯山市や野沢温泉付近が画面に出てくるので、遠いところの話ではなく、むしろ身近に感じる
舞台設定。
画面いっぱいに広がる圧倒的に美しい四季の山々の移ろいを観るだけでも、リフレッシュされる。

 「阿弥陀堂だより」は、山深い村の広報誌に連載される記事のタイトルから。
阿弥陀堂に暮らす96歳の老婆が語る言葉が綴られている。
 「畑にはなんでも植えてあります。
 ナス、キュウリ、トマト、カボチャ、スイカ・・・・。
 そのとき体が欲しがるものを好きなように食べてきました。
 質素なものばかり食べていたのが長寿につながったとしたら、
 それはお金がなかったからできたのです。貧乏はありがたいことです。
 
 雪が降ると山と里の境がなくなり、どこも白一色になります。
 山の奥にあるご先祖様たちの住むあの世と、里のこの世の境がなくなって、
 どちらがどちらだかわからなくなるのが冬です。」
 
 主人公をはじめ何人かの登場人物の1年間の移ろいを描いていますが、観終わった後に何とも
言えない清々しさを覚える映画。
原作者南木佳士氏は長野県で地域医療にあたる医師。
主人公夫婦の妻も医師の役を演じている。

 淡々と描かれる登場人物のそれぞれの物語の中に、自然や自身の運命を素直に受け入れて生きる
ことの大切さを感じさせてくる。
それは、各々決して楽な生き方ではなく、むしろ苦しいのかもしれないが、当たり前のこととして
受け入れる潔さ、強さ、謙虚さへの感動である。

 小泉堯史氏は黒沢明氏の後継者と言われる監督、「雨上がる」では信念を貫く痛快な浪人夫婦を
描き、「博士が愛した数式」は、事故の後遺症で80分しか記憶が持たない教授と家政婦親子の人間らしい
優しさを描いた。

 そして最新作の「明日への遺言」は、太平洋戦争のB級戦犯の裁判、被告岡田資(たすく)中将を描く。
部下を守り、堂々と戦勝国に裁判で挑み、散っていく姿は、ドラマが静かな展開であるだけに
余計に心に残る。
最後の死刑台の階段を一歩一歩上っていくシーンには勇気をもらった。

 どの作品でも、曇りなくまっすぐに生きる人間の強さ、優しさ、清々しさに感動させられる。
小泉堯史氏の作品はどれも素晴らしい。