教育のとびら

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presented by 福島 毅

映画”荒野に希望の灯をともす”から考える平和

2022-08-17 | 番組、記事、書籍コメント

映画 ”荒野に希望の灯をともす” を観てきました。

「アフガニスタンとパキスタンで35年に渡り、病や貧困に苦しむ人々に寄り添い続けた、
医師・中村哲。戦火の中で病を治し、井戸を掘り、用水路を建設した。なぜ医者が井戸を掘り、用水路を建設したのか? そして中村は何を考え、何を目指したのか?(公式サイトより)」

中村氏の活動は、いままでの平和の作り方という概念とは一線を画すものであったことが、この映画を観ることにより、実感として視聴者に伝わる内容でした。

従来、人が目指してきた平和活動は、テロリストや不穏分子を排除する、撲滅する、敵にまわして戦争をする、敵視政策するというもの。これは主に武力行使や諜報活動などにより行われてきたわけです。しかし、何が正義で何が悪か、はっきり区別がつかない場合も多く、敵側から観ればそれがまた正義といったことや、昔から続く報復の連鎖から対立がいつまでたっても解消しないということ。新しい力で統治したとしても、それが緩めばまた元のふるい力が台頭し、それが永遠に続くといったことを人類は繰り返してきたわけです。

しかし中村氏やその支援者グループによる現地活動は、あくまで「人の命を救う活動に徹する」というところにブレがありません。医療活動はもとより、用水路を引き、大地に緑を再生し、そこに農業や付随する産業が生まれる。それは現地の人の命や生活を第一に優先した活動です。このようなサポートを真摯に行えば、活動に対する怨恨・対立などが生じる必要もなく、長期的な感謝の循環、命の循環につながっていくのです。映画の中の1シーンで、用水路が引かれる前と引かれた後の同一場所を写したアングルが出てきます。緑ひとつ見えなかった大地の水平線が見事なまでの緑地に変身する・・・

そして、中村氏は常に現地の人目線で行動し、自分が指導者のようにふるまうのではなく、過酷な肉体仕事も一緒に行ったり、現地の雇用を積極的に確保し、ボランティアもそこに加わり、施す側・施される側という垣根も取った人間同士が対等に関われるシステムをつくっていったことも映像から伝わってきました。

敵をつくりだして懲らしめるのではなく、人と命と生活をつないでいくことを人類として手を差し伸べる。それを愚直にひたすらやっていく。この姿勢こそ、これから人類がもとめていくべき平和活動のひとつの見本ではないかと強く思いました。


この作品は、劇場版ですが、DVDでも販売されています。
一人でも多くの方が目にされることを祈っています。

DVD 荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~

DVD アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く~治水技術 7年の記録~ (中村哲)

DVD アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和(中村哲)

DVD アフガンに命の水を ~ペシャワール会26年目の闘い~(中村哲)

 

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