日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

最近口内から血臭がする…

2012-05-19 20:38:55 | Fate系
咳き込んだら真っ赤な痰が!!
多分喉を怪我したんでしょうけど、さっぱり原因が思い当たらない。
そもそも喉に怪我って、どうやるんだろうか?
不思議!!
ほい、聖戦ものですよーぅ。

Fate/Zero。
私の好きなキャラは蟲おじさんですが、この人はおじさんだからこそああなるのであって、おばさんだったらああはならないんだろうなーと思うのですが個人的にはおばさんでもいいじゃないか!って心底思う。
……そんなに性転換もが好きってわけでもないのにな。不思議ー。

おじさんに酷い話。
出来れば幸せになって欲しいけど不幸であってくれれば胸がきゅうんとする不思議!


失墜する軌跡


目が覚めたとき、滲む視界に映ったのは豪奢な天蓋。
それをぼんやりと見詰めたまま、雁夜は二度三度と瞬いた。
寝惚けた思考が意味を為すまでの数瞬、肌触りの良いベッドにまたとろとろと瞼が下がりそうになり――気付く。
慌てて起き上がろうとして、それは身を捩るだけの動きに留まった。
己の身体の異常。
後ろ手に拘束されている。口に布がかまされている。
既に感覚の死んだ左はわからないが、右手首に当たるのは柔らかなもの。
数度動かしてみてもどうにもならないほどしっかりと拘束されているらしい。
一体ここは何処なのか。
あちこちにしつらえられた燭台に灯る蝋燭の灯りだけが、頼りなく室内を照らし出す。
随分と広い部屋だが窓は無く、扉が一枚だけ薄闇に浮かび上がる。
磨き抜かれた家具は皆美しく木目模様を波打たせ、完璧な配置によりまるで芸術品の様に調和をもってそこにある。
薄暗さに慣れた目はそれらの輪郭をはっきりと捉えた。
ここは何処なのだろうか?
自分はなぜ此処ににいるのか?
昨夜の記憶を辿る。
そうだ、自分は激しい戦いに消耗し一度屋敷へ戻ったのだ。
休むためではない。
蟲蔵へと赴き、魔力を得るために。
吐き気がするほどおぞましかったが、それでも耐えた。
これもすべて桜のためだと言い聞かせた。
その後、這いずる様に自室へと戻り点滴を射ち、そのまま硬く冷たい床で眠りに付いた気がする。
だから今、柔らかなベッドにいることは可笑しい。
屋敷には幾人かの使用人はいるが、彼らは皆間桐の最高権力者である臓硯に逆らった雁夜を遠巻きにしており近付くことは無い。
誰かが己をベッドに運んだということは考えられない。
それにこんな部屋は見たことが無い。
長く家に戻らなかったが、それでも雁夜の生家だ。
己の知る場所であるかどうかの区別くらいはつく。
何より、この部屋からはあの独特な、陰惨ともいえる湿った空気がないのだ。
香を焚いているかの様な甘い匂いがどことなく漂っている気さえする。
雁夜はベッドへ横たわったまま周囲を睨む。
ここが何処であろうと、拘束されているということは敵に捕まった可能性が高い。
屋敷にいたからといって油断した。
もしかした襲撃でもされたのかもしれない。
殺されていなのはなぜなのか? 尋問でもするつもりなのか?
嗚呼、桜ちゃんは無事だろうか?
バーサーカーを呼んだところで拘束が解けなければ意味は無い。
蟲を召喚しようか、それとも様子を見るか。
そんな風に思案している雁夜の耳に、規則正しい足音が響く。
聞こえよがしなそれに、一瞬身体が硬直し、警戒も露に扉を睨みつけた。
音も立てずに開いた扉。
現れたのは雁夜がこの世で最も憎む男――遠坂家当主遠坂時臣。
「んっ!? んぅ~!!」
口を封じる布の存在を忘れ、雁夜は叫んだ。
彼が知る限りの罵倒を。
拘束されたまま、口を封じられたまま。
もがく雁夜の姿に時臣は僅か目を細め、息を吐いた。
それは憐憫に近く、同情に近く。
そんな態度がますます彼の心に油を注ぐ。
喚くことを止めた雁夜は、しかし睨みつけることは止めはしない。
視線に物理的な力が働くというのなら、きっとそれだけで命を奪えるだろと言うほどにきつい眼差し。
けれど時臣はそれに取り合うことは無く、いつもながらの気品溢れる動作でベッドの端へと腰掛けた。
反射で、雁夜の身体が下がる。
少しでもこの憎い男と距離を取るために。
だがそんなことはお構い無しとばかりに男の手は雁夜へと伸ばされた。
そのままは温かな掌は彼の歪んだ左頬を滑っていく。
久方ぶりに触れた人の温もりに確かな心地良さを感じ、慌ててそれを振り払った。
毛を逆立てる猫を思わせる雁夜の様子に、時臣は笑みを漏らしそうになったけれど口の端を歪めるだけに留める。
頬を撫でた手でぱさつく白い髪を梳き、ゆったりと言葉を紡ぐ。
雁夜にとっては到底認められない現実を。彼の努力全てを無に帰す残酷な真実を。
「臓硯氏から君のことを頼まれたんだよ。魔術師としての自覚を持つ様躾けてくれ、と。自分の言うことは決して聞かないだろうから、とも。
交換条件として今回の聖杯戦争は降りるとおっしゃったよ」
微笑みと共に突きつけられた言葉に、雁夜は愕然と目を見開く。
彼の様子に一切構うことは無く、時臣は優雅を体現する口調で続けた。
「君はマキリの直系にして、間桐の純血の魔術師だ。そんな君を聖杯戦争で失うのは惜しくなったのだろうね。
可能ならば桜との間に子を生したいと考えておられるらしい。
あの子には葵の血も流れているからね、きっと素晴らしい魔術師が生まれるだろう」
一体この男は何を言っているのだ?
雁夜は時臣の薄ら寒いほどの蒼さを誇る双眸を見上げた。
「……!? っうう゛! ん~!!」
男の言葉がじわじわと脳内に染み込んで行く。
理解した途端身を捩り激しい抗議を示す雁夜に、時臣は苦笑を浮かべて覆いかぶさる。
「無駄な足掻きは止めなさい、雁夜。
もう君に令呪は無い。結界を張っているから蟲の召喚も行えない。そもそも君の蟲と私の炎では相性が悪すぎる」
諦めなさい、と。
神の様な慈愛に満ちた声が耳元を這う。
その感覚に嫌悪しか沸くことは無く、唯一自由に動く右足を使い男から離れようとするけれど、そんな抵抗などいとも容易く抑え込まれる。
自分は桜を、あの可哀想な子供を救わなくてはいけないのに。
己が目を背け、逃げ出した所為で犠牲になってしまった子供を、愛しい人の娘を――この命を賭して救わなければ、償わなければいけないのに!!
腹の底から湧きあがるのは憤怒であり侮蔑であり、絶望。
時臣はこれを臓硯の指示と言った。
あの化け物は雁夜の願いを、なけなしの交渉を踏み躙った。
期待していないと言っていたが、聖杯戦争そのものには手を出してこないと勝手に思い込んでいたのだ。
――ゾォルケン!!
目も眩むほどの憎悪。
人がもがき苦しみ血反吐を吐く様を極上の愉悦とする外道。
ならば文字通り身体を命を魂を削り紛い物の魔術師として立つ雁夜の僅かな希望を、無残に奪うことだってするだろう。
「んん! んぅ~~~っ!!」
怒りのあまり狂った様に身を捩る雁夜に、それでも時臣は余裕の笑みを崩さずに。
「ああ、興奮させてすまないね。少し眠った方がいい。
大丈夫、君の身体の治療も行うよ。君が心配することは何も無い。
お休み、雁夜」
右目を覆う、男の掌。
抗うことの出来ない睡魔に、意識は沈んでゆく。
――桜ちゃん!!
悲痛を訴える心は救いたかった少女を思い描き。
それを最後に、雁夜の瞼は未来と共に閉じた。


星に願いを、月に祈りを。この切なさが全て滑稽に成り果てる!!

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