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ストライク ‐ペルー-

2007年07月20日 | Around the world 2005-2007
これが野球なら元横浜の五十嵐英樹投手ばりのガッツポーズを見たいところなんですが(マニアックすぎて誰もわからないか)、現実社会でストライクされるとそうもいかないです。はい、ストライクというかストライキ。今、ペルー全土では散発的なゼネストが起きています。


 
 プーノ、ティティカ湖にあるウロス島で。詳しくはこちら


     
     アレキパ、サンタ・カトリーナ修道院で。詳しくはこちら


スペイン語がわからないと社会で何が起きているかなどほとんどわからない。ゼネスト当日、何も知らず自転車タクシーに乗っていると、路上でおっさんが瓶を地面に叩きつけて割っていた。ガラスの破片で車が通行できないようするかのように道路一面に叩きつけ、なにやらギャーギャー騒いでいる。
なんだ、この酔っ払いはと思っていたが、この日のプーノの町はまるでマッドマックスか北斗の拳の舞台のように昨日に比べると一気に荒れ果てた印象になった。店はほとんど開いていない。路上のいたるところに置石で車用のバリケードがしてあり、交通量がほとんどないし、人通りも少ない。メルカドも開いていないし、あれ、なんかおかしいと思っていると、今日から2日間ストライキ(スペイン語でパーロ)だという。ということでまずちょうど出ようと思っていたプーノに足止めをされることになった。
ひとまず、ストは明け、アレキパに移動をすることになった。朝にプーノをでたバスは所々、昨日の置石の残骸が見られたが、順調に進んでいく。が、途中でバスは長時間停車した。なにが起きたのかと前方を見てみると、先に広がるきれいに舗装された道路には大量の置石がしてあり、車が走れないようにバリケードが施されている。そして、女子供を中心に嬉々とした笑顔でそれでもまだ道路に石をばら撒く連中がいる。
通行しようとする車のドライバー、乗客で石をどけ、道を迂回しながら進んでいったが、アレキパまであと1時間程度のユーラというところでバスは完全にストップした。ここから先はバリケードが激しすぎてアレキパまではいけないということだ。英語がわかるペルー人とカナダ人とそこから先は途切れ途切れ2度、車に乗りながら、結局は1時間強歩いてアレキパまで行くことになった。

アレキパまでの道中、警官隊と市民はにらみ合っている場面に何度か遭遇した。ペルー人の彼の話では今日はアレキパ市内で実際に衝突があり、市民側に一人死者が出ているとのことだった。これはやりすぎだろ、と思うくらい道路には置石で溢れかえっていた。さらにタイヤがいたる所で燃やされていて辺りはゴムが燃える臭いに包まれている。赤々と燃える炎に照らされて人影が揺らめき、けど上空には星が煌いている。なんともシュールなアレキパまでの道だった。

翌日、アレキパの町は閑散とした感じだった。中央広場であるアルマス広場周辺でデモ隊が歩き回っていた。その周りの広場の店はシャッターを下ろしているが、とりあえず営業はしている。大っぴらに営業をしなければいいという暗黙の了解の下に営業をしているらしい。ネパールでゼネストにあった時は確か本当に締めている店が多かったと思うが全国民的運動というわけではないみたいだ。
情報は錯綜していた。2日間パーロは行われないという話だったのに、夜また聞いてみると翌日から再び始まるとのことだった。ということはこのままここに居るとアレキパに計4泊しなければいけないことになる。ちょっとそれは嫌だ。近郊の温泉と渓谷に行こうと思っていたが、急遽、予定を変更して、夜行バスで次の目的地に向かうことにした。


 
 アレキパ市内で。角材片手に行進するデモ隊。


 


             
             政府関係施設を警備する警官隊。


 
 道で炊き出しをして、道路を封鎖している。


 
 炊き出し隊のおっさんたち。道行く人にお菓子を振舞っている。
 市内は別に物々しい雰囲気はなかった。
 店が閉まっていて、人通りが少なくて、逆にひっそりとした感じ。


けどね、どうなの、これ。
詳しいことはわからないのだけど、ペルーでは教職免許の試験による更新制度を導入するらしく、それに反発した教職員組合主導によるパーロらしい。行政側の発表によれば、更新のための試験で、多くの教職員が基本的な計算問題を解けず、簡単な文章読解問題もできなかったという。組合側の発表はないとのこと。行政側にしてみれば、教育者のレベルを上げることと、政策の意に沿わない職員をやめさせて教育、言論統制と教育予算の削減を目的としているのだろう。対して教職員にしてみれば、死活問題であるし、行政の強権的な姿勢に反対する意味もあるのだろう。
ペルーの教育水準はどれくらいなのだろう。おそらくそんなに高くはないと思う。だから基礎教育を充実させることは重要だと個人的には考える。でも、それが現実に合わないものだったら、社会に発生する歪みが大きくて意味がない。
発表によると、3割を超える教職員がその簡単な読解問題を解けなかったらしい。3割を超える人間が教える知識に不足しているというのは問題だと思う。けど、それが事実ならば、教職員の質というよりも、失礼だけど、国全体の教育水準がこの改革に適した段階ではないのじゃないのかとも思ってしまう。

詳しい事情がわからない自分には具体的な意見を出すことはできないけれど、どうなのこれ、と思ってしまう。ユーラから同行してくれたペルー人の彼は大学生で身なりもしっかりしている。片言の英語だったけれど、このパーロの背景も知っていて、そしておそらく社会的にも恵まれた地位にある彼はアレキパまでの光景に対して「Good」と答えた。そうかグッドなのか…。
正直なところ、自分には、一部の市民はただ暴徒と化して、ただ暴れているだけにしかには見えなかった。道路を使っているのは主に体制側の豊かな人間だ、塞いじまえ。日ごろの憂さ晴らしだ、パーロなのに働いている人間や店をいびれ。自分にはこれが国全体を豊かにするための行動には見えんのです。国の教育をどうこうの話じゃなくて、これって豊かな側と貧しい側が自分たちの側に利益を誘導するための闘いを繰り広げているだけなんじゃねぇのかって。まぁ、政治活動ってのは本質的には利益誘導のための行動なんだろうけど。でも、まだペルーは経済にしても、政治にしても、社会情勢にしても未成熟の国家だと思う。だからパイの奪い合いをするのではなくて、お互いどこかに妥協点を見つけて、全体のパイを拡大させることに力を注ぐことが重要だと思う。

アレキパではコレクティーボと呼ばれる個人経営のミニバスに乗った。ペルーでこれに乗るのは初めてだったので、値段はわからない。いくらかと聞くと「1ソル」だった。しかし、すぐさま他の乗客が「高い!!」と声を上げた。おお、このおばちゃん良い人だ~、と嬉しくなっていたが、本来50センティモ(1ソル=100センティモ)なのに、全ての乗客から1ソルを取っているらしい。パーロでバスの台数が減っているのだろう。便乗値上げが起きている。車掌と乗客は延々と「1ソル」、「高い」の闘いを続けていた。自分は50センティモだけ渡して、バスを降りたが、んん、これじゃまずいだろ、ペルー人…。

最近書いたことのまた繰り返しになるけど、この人たちにはこういった行動でしか、自分たちの意見や主張を訴える方法は無いのかもしれない。それにこれはもちろんパーロや道路封鎖をしている人たちだけの問題ではなく、おそらく妥協というものをしない交渉相手にもかなり問題があると思う。
他民族からの過酷な支配を受けた歴史を持っていて、闘いで独立を勝ち取った民族には力の論理こそが意味を持つのかもしれない。そういった他民族からの過酷な支配や占領体験を持たない日本人だからやはり理解ができないのだろうか。理解ができない、違うと思うし、そう思いたい。だって力の論理でやり続けていたら憎しみの連鎖が延々と続くだけでしょ。

で今はワカチナというところにいます。ここは砂漠の中にあるリゾート地で、きな臭い話とは無縁のところです。きな臭くは無いけど、またここにも変人が一杯いて面白い。南米各地では中南米の人たちがアクセサリーを作りながら稼いだ金で旅をしていて、ワカチナにも多くの旅人、もう死語かもしれないけどヒッピーが集まっている。そんな奴らとサッカーをしたり、昼間からビールを呑んで笑い話をして、挙句、夜になって酒を奢れだ奢らないだのくだらない話でつかみ合いの喧嘩をしたりしている。
スペイン語と日本語で訳のわからない会話を繰り広げているけど、いいね、こいつら人間臭くて、楽しんでいて、いっしょにいて面白い。

ペルーの見どころといわれるところを外しまくって、次はリマへ、そして多分、一気にエクアドルまで。


タグ:ペルー、アレキパ、ストライキ

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (shigeru)
2007-07-20 09:21:20
ストライクってストライキかい!!
ハイそれハットトリック!!
なんちゃって。
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Unknown (takuya)
2007-07-21 00:55:07
つくずく、ストと縁があるねえ。
でもポカラのときみたいに1ヶ月もはまらなくてよかったじゃん。
あれはあれで面白かったけど。
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Unknown (naomi)
2007-07-25 01:04:09
ストライキか。そして横浜の五十嵐・・・。元気そうでなにより。ペルーでも教員免許更新すんのか・・・。
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久しぶり! (Motoharu)
2007-07-25 01:40:16
ルーマニア編にさりげなく登場してて驚き・・!
もうあれから半年以上経つんやね、早いもんだ。
元横浜の五十嵐ね、豪速球が懐かしい今日この頃やね。
ペルーか、中学時代にペリーとペルーを間違えたあの頃が懐かしい・・・
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 (テッペイ)
2007-07-29 02:33:18
>shigeru
相変わらず意味不明のコメントありがとう。

>takuya
ポカラみたいな環境なら長引いてもいいけどね。
マージャンないしここ。。。

>naomi
はっきり いって、この人たちアホだね。。。
狩猟民族、バリバリの自己中って感じ。

>Motoharu
おひさしぶりです。
つんつん具合のために登場してもらいましたww。
つか、半年前のことを最近更新したんですけどね。。。
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