島本理生の「ファーストラブ」。机上に積んだ何冊かをパラパラめくっていたが、この作品は2、3頁で引きこまれて手放せなかった。
女子大生が包丁で父親を刺殺した事件について、ノンフィクションの執筆を依頼された臨床心理士が、弁護士と相談しながら女子大生と面会を重ね、事件の真相を明らかにしていくハナシ。
この女子大生が健全な精神を育むことができなかった性的虐待、歪んだ家庭環境や夫婦関係がしだいに明らかになっていく。
文章も構成も素晴らしく、心理学や法律のディテールも興味深かった。子供の虐待や妻へのDVといった重い問題についてもいろいろ考えさせられた。
今年になってハートとの別れや大学ゼミ同期の山本くんの急死などがあって、私の中で何かが変わって小説を読むようになった。
私はこの作品をあまり中断することもなく完読した。面白く読めた、楽しめたということだろう。古典ではない、現代文学をいま私が必要としているということでもあるのだが。
だがあらゆる作風の、ジャンルの作品を面白く読める、楽しめる気はしない。そうとは思えない。
なにを求めているのだろう。
私は。
小説に、現代文学に。