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山峡に暮らして見れば…

変り行く四季の移ろいを、過ぎ去りし日々の追憶と共に…
 日常感じたことも…

(シネマ雑記帳) 映画 「北の零年」

2006-12-28 00:19:21 | 映画
 かねてから気になっていた映画「北の零年」を、テレビでやっと見ることが出来ました。
 これは明治初期…お家騒動の影響で新政府の命により、淡路島から北海道への移住を命ぜられた稲田家の人々の苦闘の物語です。
 武士の意地と面目にかけても、極寒の不毛の土地に根付こうとする努力は、容赦ない自然の猛威と冷酷きわまる、明治新政府の政策により遅々として進みません。
 果てしない重苦しい北海の空の下…新しい希望に燃えて新天地に夢をかけた人々に次々と襲い掛かる過酷な運命…
 寒冷地に適した稲の新品種を求めて札幌に旅立ち、そのまま消息を絶った夫(渡辺謙)を待つ妻の志野(吉永小百合) 新天地の建設に情熱を燃やす稲田家の家臣(柳葉敏郎)などを中心にこの壮大な物語は展開して行きます。

 明治維新は旧武士階級に何をもたらしたか…身命をかけて主家に尽くした代償は…維新政府の命による「廃藩置県」であり、「版籍奉還」でした。
 旧主君は「時代の流れはどうにもならなかった…許せ…」と云う一言で家来の前から去って行きます。主君からも郷里の国からも見捨てられた…この絶望感…これは彼らに残っていた武士としての最後の意地…マゲも刀も捨てて、鍬と土と共に力強く立ち上がって行くことを決意するのです。

 育て上げた農作物を容赦なく食い尽くすイナゴの大群に、命を賭けて取り組む農民たちの衝撃的な場面に心が痛みました。サルやイノシシに少しばかり食われたからと云って、大騒ぎしている自分が恥ずかしいぐらいでした。
 志野の前に再び姿を現した夫に娘(石原さとみ)は、「こんな人は父じゃない…」と言い放ちます。新政府の役人に今まで育てて来たたウマを、奪取されそうになって村人達が見せた勇気…助太刀に現れた謎の男…元会津藩士(豊川悦司)…彼らの好演には心を打たれました。
 偶然ですがこの日はあのディーブ・インパクトが、力走して最後のレースで勝利を収めて日本全土を感動の渦に巻き込んだ日でした。
 
 この映画は昔は石炭の生産地として戦後の復興を支えた町…近年はメロンで知られる夕張市近辺でロケされたとい云います。 
 今…いや、これから苦難の道が待ち受けている…と、思われる夕張市民の皆さんがこの映画の人々のように、幸せな未来に向かって力強く歩まれることをお祈りします。
 人と土…そして動物とのかかわり…こんなことを、考えさせられるオススメの一編です。

      http://www.toei-video.co.jp/DVD/sp21/kitanozeronen.html
     
 製作年度 2004年    上映時間 168分    監督 行定勲
 出演  吉永小百合 渡辺謙 、豊川悦司 、柳葉敏郎 、石田ゆり子 、香川照之



 〔シネマ雑記帳〕「追悼…名脇役ジャック・バランス」

2006-11-13 00:04:21 | 映画
 黒づくめの異様な扮装で現れると押し黙って酒を飲む不気味な男…
 牧場主への恩義と友情のために、彼と対決する覚悟で酒場に現れた流れ者シェーン…0.6秒と云うシェーンの早業が一瞬早く彼を倒す…
 なにか、こんなシーンだったっけ…なんでも、半世紀以上も前に見た映画ですからねぇ…記憶も曖昧でいい加減なものなんですね…
 でも、確かなのは…あの映画「シェーン』で、悪役を演じた名脇役のジャック・バランスさんが11月10日に、カルフォニア州の自宅で87歳で他界されたと云うことです。
 新聞によれば…
 本名 ウォルター・ジャック・パラホニック 1919年 ペンシルバニア州 生まれ
ノースカロライナ大学を中退プロボクサーとなる。第二次大戦中は爆撃機のパイロットとして従軍、戦後はスタンフォード大学に再入学し演劇部を勉強、卒業後も舞台を経て50年に映画デビュー。53年「シェーン」でアカデミー賞にノミネートされる。91年「シティ・スリッカーズ」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
だそうです。

 1950年「暗黒の恐怖」から1953年「シェーン」「第二の機会」ぐらいまでは私も記憶が僅かに残っています。この中の『第二の機会」は雪の中でのロープウェイ上での決闘場面が、見せ場だったような記憶があるのですが…
 相手役はルース・ローマンかそれともリンダ・ダーネルだったか…中堅スターになるとガクンと記憶力が落ちます。 
 
 晩年の彼についてはあんまりよく知らないのですが、91年に助演男優賞でオスカーを射止めたことから見て、映画においては終世にわたって 脇役に徹したように思われます。
 テレビ・ドラマにて主演もしていますが、人生の大半を脇役でしかも個性的な悪役としてほんとに地道な芸道を歩んだようです。
 主演スターのように華やかな脚光を浴びることもなく、目立たない存在でした。
 しかしあの詩情に溢れた名作「シェーン」にのアラン・ラッドにしても、彼やヴァン・ヘフリンなどの助演陣なくしては彼の名声も、あそこまで高まることはなかったのでは…と思います。
 それにしても50年代を彩ったスターたちが、姿を消していくことに限りない愛惜の念を感じます。
 
 
 


〔シネマ雑記帳〕スター…ジョーン・フォンティーン「忘れじの面影」(2)

2006-11-07 00:03:16 | 映画
 ジョーン・フォンティーンとルイ・ジュールダン主演の、映画「忘れ寺の面影」ですが…
 十代の頃から恋焦がれた彼に、大人になってから身も心も許した彼女ですが、彼にとっては今まで通り過ぎて来た女性の一人に過ぎませんでした。
 彼の子供を生み育てて子連れで結婚して、それなりに幸せな生活の筈だったのに彼との再会で彼女の運命は、思いがけない悲劇的な結末を辿って行きます。
 夫にもすべてを話して夫の制止を振り切って訪れたのに…彼が彼女のことを、全く覚えていないことを知った時の絶望感…ほんとにやり切れない物語でした。
  
 理解ある夫や成長した子供もいるのに、昔の初めての男性が忘れられずに、まだここまで命を賭けて尽くす女性って、ほんとにいるのかな…と少し現実離れしていているような気がしました。
 でも悲劇のヒロイン役のジョーン・フオンティーンは、自然な形で演じていたように思いましたし「旅愁」と共に、彼女の女優として最盛期の代表作の一つになりそうに思います。
 一方でプレイボーイの彼から見ると、今までお付き合いして来た数多くの女性のことを記憶することもなく、お互いの相手に対する思いには大きな落差があったようです。
 「旅愁」の彼女はラストでは良識を取り戻して、子供達のところへ帰って行ったので、なにかほっとして救われたような気がしましたが、この映画は最後まで持って行きようのない息苦しい作品のように思いました。

 女優としての彼女は姉のオリヴァー・デ・ハヴィランドへの対抗意識があったのか、生涯を通じて強気の生き方を貫いたように思います。
 「風と共に去りぬ」でスカーレット役を熱望する余りに、メラニー役を姉に取られたり、「レベッカ」出演のための必死の売り込みやオスカーへのノミネート…
 そしてケイリー・グラントと共演した「断崖」での、姉妹でのオスカー争い…など、この二人の姉妹は強烈なライバル意識を持って生きて来ましたが、これが彼女達の演技力を磨く良い機会になったのかも判りません。
 
 私のシネマ熱も冷め始めていた1957年には映画「日のあたる島」で「バナナ・ボート」の歌手ハリー・ベラフォンテとのラブ・シーンを演じるなど彼女の勇気ある行動は、差別意識が強かったハリウッドに大きい衝撃を与えました。
 私生活でも「恋多き女」エリザベス・テイラーにも負けずに、結婚と離婚を繰り返ししていましたが、彼女のこういった生き方は、私にとってやっぱり強烈で個性的で生き方だったかな…とも思います。
 彼女については芸能界や私生活でのゴシップめいた話が先行していますが、彼女のホントの魅力を知るためにはやっぱり出世作のレベッカ」と、オスカー受賞作の「断崖」を見なくては判らないないのでは…などとも思いました。
 サスペンスは少し苦手なんですが…頑張って見て見よう!
 

(シネマ雑記帳)「スター…ジョーン・フォンティーン…忘れじの面影」(1)

2006-11-03 00:08:01 | 映画
 私が青春初期に見た映画女優は大抵は見るなり、最初から好きになることが多くて、一体誰のフアンなのか自分でも判らなかったことがありました。「ヴァレンチノ」のエリノア・パーカー、「哀愁」のヴィヴィアン・リー「陽のあたる場所」のエリザベス・テイラー「クオ・ヴァディス」のデボラ・カー「雨に唄えば」のデビー・レイノルズ…など…いずれもそうでした。
 ところがその中でもビング・クロスビーと共演した、「皇帝円舞曲」のジョーン・フォンティーンについては、不思議なことに殆ど印象に残っていないのです。 彼女の映画を観たのはその後に三番館で上映していた古ーい映画「旅愁」でした。この映画は…ナポリやカプリ島などの美しい風光と、主題曲「セプテンバー・ソング」のあの哀調を帯びたメロディと共に、メロドラマとしては特別に忘れられない映画になりました。
 それと共に今まで全く見落としていた、女優ジョーン・フォンティーンの存在が私の意識の中に、大きくクローズ・アップされて来ました。
 今から考えて見ればこの映画に出た頃が、彼女の人気のピークの時期だったのかも判りません。その後は良い作品に恵まれないまま、オードリー・ヘップバーンはじめ若手スターのデビューで、ジョーン・フオンティーンの存在は次第に影が薄くなっていったのは寂しいことでした。。
 「旅愁」が製作された前年の1949年に作られていたのが映画「忘れじの面影」ですが、彼女の美しさが全面に溢れた作品…と、云う作品のように聞いてはいましたが、内容については詳しく知らないまま現在に至っていました。
                            (続く)

 

(シネマ雑記帳〉「グリア・ガースン…心の旅路」

2006-10-24 00:11:00 | 映画
 1925年生まれの私の姉が敗戦後に見た映画で、最も印象的な作品として挙げたのはヴィトリオ・デ・シーカ監督のイタリア映画「自転車泥棒」と、グリア・ガースンとロナルド・コールマン主演の「心の旅路]でした。
 「自転車泥棒」は私も戦後数年も立ってから見たのですが、余りにもやり切れないリアルな描写は好きになれなかったし、関心は華やかなミュージカルや現実離れしたメロドラマに向かいました。
 戦後間もなく公開された「心の旅路」を見た当時の姉は、まだ二十二歳でしたが戦時中を必死に生きた姉の心の奥底になにか訴えるものがあったのでしょう。
 私は長い間見る機会はありませんでしたが、映画雑誌などで見かけたグリア・ガースンが抜群に綺麗で印象的でした。
 前にも記事で書いたように思いますが、戦後の映画しか知らない私たちの世代では…「お嫁さんにしたいスターNo1」はジューン・アリスンでしたが、戦前に生まれた人が憧れたのはグリア・ガースンだったと云います。
 また淀川長治さんだった…と思いますが取材に訪問した彼に、とてもキラクに応対してくれるなどマスコミ受けも良くて、彼女は私から見てもプラス・イメージのスターだったよう
です。
 昔は美人スターの彼女に対する憧れ…みたいな気持でしたが、近年はやはり年齢に応じてこの映画の主題になっている「記憶喪失」など映画の中身に関心を持つようになりました。
 
 この半世紀前から気になっていた映画を、やっと観ることが出来ました。
 第一次大戦休戦に沸き立つイギリスのメルブリッジの街中での、戦争で記憶喪失になったスミス(ドナルド・コールマン〉と、踊り子のポーラ(グリア・ガースン)の運命的な出会い…
 これはパリ解放の日…「雨の朝巴里に死す」のヴァン・ジョンスンとエリザベス・テイラーの出会いの情景を想起します。
 また戦争が招いた悲劇は悲恋メロドラマの原点「哀愁」の一場面みたいでもあり…などと思っていたら、それもそのはず…監督がマーヴィン・ルロイで同じ監督でした。
 忘れ去られていたスミスの古い記憶が事故により突然甦り、その代わりに今までのポーラの三年間の愛と献身の記憶がどこかへ消えてしまいます。
 スミスは再会したポーラと過ぎ去った三年間…結婚して共に暮らしていたことすら忘れていました。この三年間の記憶を捜し求める二人には、愛と苦しみの心の旅が…
 あの感動的なラスト・シーン…二人が新婚生活を送ったあの日のことが、スミスの脳裏に甦ってきて…思わず涙がこぼれそうになりました。
 二人が初めて出会ったのは1918年11月11日…この日は私にとっても、なにか忘れられない特別な日になりそうです。
 
 
 
 


 

 

(シネマ雑記帳) 映画「汚名」

2006-10-11 22:34:07 | 映画
 この映画はイングリッド・バーグマンが最も輝いていた時代…と云うよりもハリウッドに訣別する前後の作品だったと思います。
 相手役のケイリー・グラントはなんて又「若ーい」と見違えました。
 それもそのはず前に見たアノ映画「めぐり逢い」は1957年でしたから、十年ほども若いのですから当然ですね。
 
 ナチのスパイの容疑で反逆罪の罪で服役中の父を持つアリシア(イングリッド・バーグマン)は、父の汚名をそそぐためにFBIの捜査官のデブリン(ケイリー・グラント)に協力して、ナチの残党の内情を探ることになり、一味のセバスチャン(クロード・レインズ)に接近していきますが…

 セバスチャンと彼女は元恋仲…デブリンは彼女を思っているくせに、職務優先でとなかなか愛を囁けない…こんな彼にイラついた彼女は「セバスチャンと一夜を共にした…」と告白します。
 それでも一向に感じない彼に、痺れを切らして彼女はセバスチャンと結婚してしまいます…

 これから後はヒッチコックの世界です。ワインや鍵の束などが重要な役割を果たしながらストリーは進行していきます。
 それにしてもケーリー・グラントは「めぐり合い」や「シャレード」などの軽妙さに比べて、重苦しい感じでしたが愛と職務に挟まれて、仕方なかったのかな…とも思います。
 事件の成り行きも気になりましたが、それよりも彼女達の愛の行方の方が心配になりました。
 
 セバスチャン役のクロード・レインズは「カサブランカ」での警察署長役で、とても格好良かったのでこの映画でも楽しみにしていました。
 少しマザコン的で気の弱そうなイメージで、思っていたのと少し違っていたのですが、それでも脇役として好演だったと思います。
 サスペンスとは云え私はラブ・ストリーとして、見ていた部分も多くて結構楽しい映画だったように思います。