この世界で生きてゆくために

ありふれた毎日を繰り返し、時は過ぎていってしまう。
でも、どんな小さい事でも、優しい瞳で世界を見つめたい

世界にひとつだけの花

2008年02月14日 15時50分03秒 | メルヘン
この記事は一昨年、11月末に書いた物である。
あまりにもショッキングな私のブログになってしまった。
だから一服の清涼剤として、みんなに読んで欲しい。
タイトルは「世界にひとつだけの花」であった。
以下、当時の記事。

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ぼくは半分、嫌気がさしていた。
ひねくれていたのかもしれない。

花屋の店先に並ぶ花が、綺麗なのは当然じゃないか。
どの花だって綺麗だから、花屋さんに並ぶんだ。

明日から12月。
だからアスファルトの上を吹きぬける風は刺すように痛い。

ひとりでボヤいていたら
エクサさんという人が立ち止まって、ぼくを見た。

雑草の君だって、二酸化炭素を吸ってくれて酸素を作ってくれる。
だから大切な自然の仲間なんだよ。

そう言ってくれた。
でもぼくはもっと、ひねくれてしまった。

人間のために光合成をしている訳じゃない。

そりゃそうだ、とエクサさんは微笑んだ。
そして、昔に活躍したプロ野球の投手の話をしてくれた。

「草魂」
そうこん、と読むらしい。

雑草のように強く生きる。
ぼくの事を例えにした人がいるんだ、と驚いた。

夕暮れの歩道に傾いた太陽の光が、オレンジ色の空へと染めていく。
誰が忘れたのか、一枚のハンカチが折りたたまれたまま落ちていた。

豊かになると、忘れてしまう事が多いんだよ。
エクサさんが、ポツリと呟いた。

でもエクサさんは、そのハンカチを拾う事もしない。

落とした人が探しに、道を遡って来てくれるカナ。
もったい無いと、違う人が拾って洗濯をし、また使ってくれるカナ。

それとも、雨が降り、泥まみれに汚れて、いつかは捨てられてしまうのカナ。

未来の事は、誰にも分からないんだよ。
そういってエクサさんは、遠い目をして夕日を見つめている。

そうそう、人間の世界でも「花屋に並ばない」花のような人が居ると話してくれた。
憲法に保障された、健康で文化的な最低限度の生活が、どうたらこうたら。

ぼくには、意味がよく分からなかった。
ただ、人間の世界でも格差が広がり、生きてゆけない人。
小さい体に虐待を受ける人。
長い間、がんばってきたのに、ひどい仕打ちを受ける人。

問題は沢山あるらしい。

また風が吹きぬけると、
七色に染まった落ち葉が、アスファルトの上で舞う。

エクサさんは、綺麗だな。
そう言って自分の車へ乗り込み、走り去っていった。

後日談

2006年12月01日 21時44分58秒 | メルヘン
昨日のメルヘン、お楽しみいただけましたでしょうか?
Tシャツの時と違い、少し世相や社会問題など。ちょっと掘り下げたお話になってしまいまいた。

それでも師走に向けた街並みや、夕暮れ時の光景が出せたと自己満足しています。

前半に登場する擬人化された雑草は、フィクション(近鉄の某投手の話は実話)です。それに対し、後半に出てくるハンカチは実際に街の歩道に落ちていた忘れ物を、いつかメルヘンの話にしようと、暖めてありました。

ハンカチが落ちていた場所。
母が腰と足の膝痛の為、車で一緒に整形外科へ通院しに送り迎えしたときに、歩道に落ちていました。
母の体を心配して、車で送り迎えしたんですから、その時の私の気持ちは、おそらく優しい心だったんでしょう。

歩道に落ちていたハンカチ。私は拾う事もどうすることも出来ませんでした。
ハンカチ一枚に、それだけ思いを込めても仕方ないのですが(笑)

そしてふっと、昨日の夜。思い浮かんだんです。
12月を前に、街は師走のあわただしさとクリスマスのイルミネーションが交錯する。
そんな年の瀬と、夕暮れ時の歩道。そこに名曲「世界に~」の歌詞が一致して。

「世界に~」の歌は名曲です。それを「ひねくれて」雑草の話へ持ち込むところが、エクサさんらしさかな。
素直じゃないと言うか、なんと言うか。

私はやはり何処かで、この世界を斜めから見てしまうんでしょうね。

ぼくはTシャツ

2006年11月08日 20時17分27秒 | メルヘン
ぼくはTシャツです。
もう随分昔に、エクサさんの家に買われて来ました。

卸し立てのぼくを、エクサさんが気持ち良さそうに袖を通した、あの日を今でも覚えています。

夏の暑い日はエクサさんと一緒にびしょぬれになり、冬の寒い日はインナーとしてアウターの中に隠れてエクサさんと一緒に歩いてきました。
あ、ぼくはパンツでは無いので「歩いてきた」のでは無いですね、腕を振って来ました。

あれから何年も経ち、ぼくの首周りや裾は、ボロけて来てしまいました。

そうして、ぼくはエクサさんとお別れしなければなりませんでした。
でもぼくはエクサさんとお別れしませんでした。

本当ならリサイクルで印刷業者に引き取られ、インクの汚れを落とす第二の人生を歩く、いや腕を振る筈でした。

ぼくは今、エクサさんの愛車、インプレッサのトランクの中で、ワックス汚れ、ホイールのブレーキダスト汚れになってドライブしてます。
こんなぼく、汚れちゃったけど、一緒にドライブできるのは、とっても嬉しいです。

今日は秋の終わり冬の始まりエクサさんは、ぼくで「ゴシゴシ」インプレッサを磨いています。


 いきなり「新」カテゴリ。「メルヘン」題一話でした(^^)byエクサ。