S.W.ヘイターは1901年ロンドン生。地質学者として歩み始めますが、美術の分野に転向しました。1930年ごろまでは具象的な絵画制作を行っていましたが、1930年以降は線のオートマティズムによる作品や流動体のイメージの作品を生み出していきました。銅版画の制作において「一版多色刷り」という画期的な技法を生み出し、その技法は現在でも「ヘイター法」として現代版画の有力な技法となっています。
S.W.ヘイターの版画工房「アトリエ17」(パリ、ニューヨーク)には、カルダー、エルンスト、ジャコメッティ、ミロ、ピカソ、ポロック、シャガール、ダリ、タンギーなども通い、その顔ぶれは20世紀美術の中心的存在といえます。
日本人としては、具体美術協会の新人であった松谷武判がパリにわたり、ヘイターの元で学び、現在も現代日本美術を代表する作家として、ヨーロッパと日本を中心に活躍しています。
この作品は1976年作の銅版画「Sea Serpent(海蛇)」エディション55/75です。
オートマティズムな線の表現と、流動的な色面分割が見事に調和した深い作品です。空間がどこまでも深く視る人の視覚を引き込んで生きます。S.W.ヘイターの銅版画作品の中でも代表作といってもいいものだと思います。
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