・鉄の吸収Iron absorption てつのきゅうしゅう
食品中に含むミネラル(無機質)は、一般に胃液の塩酸により、イオン(電気を帯びた原子)となって消化管、壁を通し血流に吸収されていきます。
鉄の吸収は、他のミネラルの吸収の仕方と異なり、鉄分の不足があると吸収率がよくなります。
そして貯蔵鉄を使い果たし、ヘマトクリット(Ht基準値:成人女性34~45%・成人男性40~50%)およびヘモグロビン[血色素]値(Hb基準値:女性12~16g/dl・男性14~18g/dl)の低下がみられています。
また二価の鉄(Fe2+:ヘム鉄)は、吸収されますが、食品中の鉄は三価の鉄(Fe3+:非ヘム鉄)が多く三価鉄では、そのままで吸収されずに、たんぱく質やビタミンCなどで還元され二価の鉄となってからの吸収です。
鉄分には、ヘム鉄(Fe2+)と非ヘム鉄(Fe3+)があり、ヘム鉄(動物性食品の40%と概算、平均鉄摂取量の1割:吸収率40%)は、体内への吸収率が非ヘム鉄(植物、動物性食品に含まれる:吸収率5~10%)に比べ5~10倍も高くなります。吸収率は、正常人で8~25%(平均12%)、貧血の人は、3~80%(平均40%)としています。
東京工科大学(東京都八王子市)応用生物学部の斉木博教授らの研究チームによって、ヒトの腸内細菌が鉄分の吸収を助ける働きを持っていることを明らかにしていました。
研究の内容は、2013年3月に「日本農芸化学会」での発表になります。
鉄分は生物にとって必須の元素ですが、自然界では多くが3価の鉄(非ヘム鉄)として存在しており、水にはほとんど溶けないため、生物への体内への吸収率の折り合いがあまりよくありません。
自然界では微生物が2価の鉄に還元することで水に溶けるようになり、植物等はこれによって生育に必要な鉄分を調達していることが判ってきています。
食物中には、水に溶け吸収され易いタンパク質に結合した形で鉄分が含まれていますが、消化の過程で遊離し、再び3価の鉄となり戻ってしまいます。人間の腸には、これを2価の鉄に還元して吸収する機構が備わっていると考えられています。
マウスを使った実験では、3価の鉄を還元する機構を遺伝的に失くしても生育に影響が出ないことが判っています。
つまり研究で哺乳類は、自身が3価の鉄を還元する以外にも鉄分を吸収する機構を持っていると考えられるのです。
そこで今回、腸内細菌の鉄還元の能力が調査し、小腸内に存在する4種の腸内細菌について、鉄の還元能力が調べられました。その結果、大腸菌・酪酸菌・乳酸菌・ビフィズス菌のいずれにおいても、腸内の酸素の無い条件で、3価の鉄を還元し2価の鉄とし、微生物の増殖が促進されることが判明したのです。
腸内細菌は、哺乳類の腸内の環境を一定に保ち、腸における消化吸収を助けていますが、今回の研究により鉄分の吸収にも一役かっていることが新たに判明しました。
鉄の吸収を促進する栄養素としては、ほかにもビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンC、クエン酸、コハク酸などがあります。
野菜に多い食物繊維やフィチン酸、タンニン、リン酸(加工食品)などにより吸収阻害を受けやすくなります。厳格な菜食主義者では、欠乏症が多いといわれています。
今回、新たに腸内環境をよくすることが、鉄分の吸収率にも関与していることが分かりました。
特にビタミン類(緑黄色野菜)、時にはレバーで、日頃からのバランスの取れた食生活が望まれるようです。
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