お陰様で、生かされている日々を、丁寧に過ごしています。ご縁に感謝します。

作家、看護師の岡本理香、肺がんの母を看取り、自身のリンパ性白血病ステージⅣ診断。活動休止、コツコツ療養しています。

向日葵コラムより抜粋

2010年06月11日 | 
7月29日正午、太陽が力いっぱい照りつける快晴の日。
母親は、丸々した我が子の誕生に「ひまわり」と名づけた。
庭で、大きなひまわりが咲いていた。

すくすく育ち、6歳の誕生日、母親は、やはり「ひまわり」がぴったりくると呟いた。
大人への階段を上る17歳、自己主張の強い黄色が似合う「ひまわり」は、大地を求めて、太陽を求めて、旅立とうとしていた。

「ひまわり」は、知っていた。
大地に根を張り、太陽の光を浴びないと、いつまでも花が開かないことを。

「25歳になれた夏、26歳に向かって始まる。苦悩の日々を生きるひまわりへ」
大好きな先輩にもらったひまわりの写真とメッセージ。

「え?」
蕾のまま、空ばかりを見つめて、30歳の手に届かぬ太陽を掴もうとしていた。
庭で大きなひまわりが咲いていた。

「あんたの誕生日に、雨が降ったん、初めてやわ」と微笑む母親。
「え?」
33歳、晴れの日も雨の日も、変わらぬ拡がる大地の存在を初めて見つめた。
大地に根を張り、大空を高く飛ぶ。ひまわりは、わかった。
「ひまわり」は「ひまわり」であることが。
そして、穏やかに、堂々と、44歳のひまわりは微笑んだ。
庭で咲く大きなひまわりに、微笑んだ。

「視線は永く、視野は拡く、心のアンテナは大空に伸ばして」

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