
元東急5000系が発車を待つ約25年前の岳南鉄道吉原駅の光景です。この時代は貨物輸送も多かった事が留置している貨車の多さからうかがい知れます。 84,01,18 岳南吉原 5000系
17日は岳南鉄道の機関車祭で我々他県民の鉄ちゃんは浮かれていましたが、その裏で富士市を中心として発行されているローカル新聞の「富士ニュース」に”岳南鉄道事業撤退も視野”と言う記事が掲載され、地元の方は「来るべきものが来た!」と激震が走ったそうです。
その内容は16日に岳南鉄道の申し出で「市公共交通協議会」が開催され、畠山健二岳南鉄道社長から”既に赤字経営が続いている岳南鉄道の現状に加えて来年3月には貨物連絡運輸廃止により鉄道収入の1/4が減となり、岳南鉄道の運行を続ける事は困難だ”と申し出を受けたと報道されています。また記事の中では社長より「鉄道事業を続ける事が適切とされるなら市民の足を確保するため地域で岳南鉄道を支える仕組みづくりをお願いしたい。」と社長より協議会側に岳南鉄道を存続させるのであれば援助が必要と公的支援の要請があったともされています。
実は富士市は大手自動車会社の下請け工場やその下請け(孫請)工場が多数存在し、全国でも有数の自動車依存社会(地域)であり、かねてより公共交通機関の脆弱さが指摘されてきました。そのため、岳南鉄道が廃止された後の代替輸送機関となるはずバス輸送の提案さえない現状です。従って岳南鉄道沿線の住民は岳南鉄道廃止→公共交通機関を失うと言う環境にさらされる事になります。また、たとえバス路線があったとしても採算が取れないと言う理由から運行時間帯が7時~18時に限られて早朝、また夜の運行は全く無い路線が多いと聞いております。この様な地域性の中で22時台まで列車が運行されている岳南鉄道は貴重な地域の足であることは間違いなく、岳南鉄道廃止と言う現実は実は富士市の公共交通機関の崩壊と言っても過言ではないと思います。
なぜこんな状態になったのか?それは自動車依存社会のために公共交通機関が公的支援がないかぎり立ち行かなく図式が出来上がっているからで、現行路線も本数削減や路線廃止が続いているのが現状です。このため自動車を運転できない学生や老人等を中心にバス難民さえ出て社会問題化していますが地域として抜本的な解決策を見出だせないままに今に至ったと言う行政の無策・怠慢が生んだ歪みとも言えます。事実、前述の富士ニュースに記事に付帯した解説欄にも公共交通が脆弱な富士市の現実を踏まえて「なぜ、みんなのためにあるはずの公共交通機関が経営危機に陥ったのか。この日の協議会で、岳南鉄道を不要だとする意見は一言もなかった。公共交通機関が発達した欧州では当たり前となったと言う公費投入の新しい仕組みづくり、市民の手で支えていくべきではないか。」と締めくくっています。
ただ一方で岳南鉄道沿線に住む方から聞いた話ですが16日の協議会に参加した市議会議員によると”現状では岳南鉄道より廃止の意向を受けて、それを覆すだけの世論と公的支援費用を捻出する事は極めて厳しく、このまま岳南鉄道廃止の言う方向で動いてしまう可能性が大きい”と言う話をしてくれたそうです。やはり現実は極めて厳しいと言うことには変わりないようです。ここしばらくは岳南鉄道の貨物の連絡運輸廃止と言うものではなく、岳南鉄道廃止になるか、否かの次元で注視していきたいと思います。