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おとぎのお家と青い鳥

本ブログでは、主に人間が本来持つべき愛や優しさ、温もり、友情、勇気などをエンターテイメントの世界を通じて訴えていきます。

青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 6

2008-04-09 21:52:42 | Weblog

bellあなたは、青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind  総集編 6を見なければ、一生後悔するかもしれません。それは、本作品が、“愛する人”の死のために、真実の涙を流したり真実の心の痛みを感じたりする、人としての本当の優しさや温もりを、あなたに間違いなく教えてくれるからです。

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第8話/ 永遠の別れ
~ひとりぼっちの通夜~


アメージンググレイス・・・
もう泣くのはやめて 愛しき我が子よ
眠りなさい このみ胸で
その涙と 傷の痛みが
心やすらぎ 消えるまで
天子の子守唄 聞きながら



日比谷花壇 母の日 フラワーギフト 通販 カーネーション アレンジ 花束



――♪ただ、キミを愛してる・・・・・――


大学のゼミの授業中に、大輝の携帯電話の着信音(着歌/中島美嘉の「雪の華」)が教室中に鳴り響き、百合子から愛の症状に急激な異変が起こり、彼女の死を知らせる電話が入ったのは、彼が“風のある町”に帰ってから三日後のことだった。
「か、亀梨さん、あ、愛が今日の十三時二十五分に亡くなりました・・・」
「えっ!えっ!!えっ!!!」



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「い、いったい、あ、愛ちゃんに何があったんですか?」
「亀梨さんには申し訳ありませんが、“いくら愛の望みを叶えてあげる”ことだとはいえ、やはりあの日スカイダイビングに行ったことが、愛の外部の雑菌に対する抵抗力がない躰には、かなり負担だったようで・・・」
「あの日、あなたが帰った後からすぐに高熱が出してしまい、その後もずっとそのまま熱が下がらなくなって・・・」
「す、すみません。ぼ、僕が愛ちゃんの“大空を飛んでみたい・・・”という望みを叶えてあげたいなどと、余計なことを言ったばかりに・・・」
「もういいのよ・・・今さらどんなことを言ってお互いに反省してみたところで、愛が生き返ることはないのだから・・・」
「それに、愛の命がけの訴えに負けて、私たち家族もそうだけど主治医の堂本先生だって、あの子の望みを叶えてあげることには賛成したのだし・・・」
「そういう意味では、決してあなただけのせいじゃありませんから・・・そんなに自分だけを責めて、気にしないくださいね・・・」
そう言葉では言いながらも、電話口の向こうからは愛の死を悲しんですすり泣く、百合子の声が聞こえて来た。
さらに、その後百合子に話を詳しく聞くと、やはり結果的に愛の死を早めたのは、普通の人のように正常の血液細胞が造れない躰のために、無菌室に入って治療を続けているのにも拘わらず、今回無理をして外出してしまったことが、まったく外部の雑菌に対して抵抗力のない彼女の躰に、彼女の主治医である堂本ですら想定外の、予想以上に負担を掛かったのが原因だったようだ。
逆の見方をすると、愛は自分の命と引き換えにしてまでも、「大空を飛んでみたいと・・・」という望みと、「大輝と結婚式を挙げたい・・・」という、ふたつの望みを叶えたかったことになる。
否、愛が亡くなった今となっては、その真相は誰にも分からないことだが、もしかしたら彼女の気持ちの中の本心は、「大空を飛んでみたいと・・・」という望みは、あくまでも“大輝と結婚式を挙げる”ためのひとつの口実で、泰三や百合子、それに主治医の堂本を説得するためには、それが一番いい方法だという彼女なりの計算があったのかも知れない。
ただ、その真相はともかく、それだけ“愛が大輝を本気で愛していた”ということだけは真実であろう。
「あのう・・・これから僕、愛ちゃんに最後の別れを言うために、会いに行こうと思いますがいいですか?」
「いや、それだけは止めてください。おそらく来て貰っても、愛には会えないと思いますので・・・」
「それはまた、どうしてですか?」
「石坂が、あなたの口車に乗ったために、愛を早死にさせてしまったとカンカンに怒っているからです・・」
「石坂はそう言っていますけど、私には決してそうではないということは分かっていますから・・・」
『愛自身も息を引き取る前に、「今回のことは愛が望んでやったことだから、今回のことであなたを責めるのだけはしないで・・・」と、そう私に言っていましたから・・・』
「あ、愛ちゃんが、息を引き取る前に、そ、そんなことを・・・」
「そうです・・・」
百合子のその言葉を聞き、大輝は愛のために何もしてやれない今の自分が腹立たしくて、手のひらでは拭い切れないほどの悔し涙が、いつまでも止むことなくボロボロ落ちて来た。
「や、やっぱり会いに行っては駄目ですか?」
「はい、そうお願いします。その代わりに愛から預かったあなた宛の手紙を送らせて貰いますから・・・」
「それで、あなたに最後にひとつお願いがあるのですが、聞いていただけないでしょうか・・・」
「愛ちゃんに会うことも出来ずに、最後の別れも言えない僕に願いごとって、それは一体なんですか?」
大輝は、自分が愛に会えないという悔しさを、まだ我慢することが出来ないという未熟な部分が残っているからだろうが、自分自身の中ではどうしても抑えきることが出来なくなり、その気持ちを言葉にして遠まわしに百合子にぶつた。
だが、逆に彼女は彼と愛のとの関係を一番よく知り、彼の気持ちの苦しみを十分に理解していただけに、もしも彼が愛に会いに来て彼女に会えずにこれ以上傷つかないようにするためにも、あえてその場では彼の言葉に何の反応も見せることもなく聞き流し、自分の気持ちを淡々と伝えた。
「今日は、学校の授業やアルバイトなどでお忙しいとは思いますが、愛が天国に無事に旅立てるように弔ってやっていただけませんか・・・」
「そ、それは当たり前のことじゃあありませんか・・・」
「じゃ、お願いしますね・・・」



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百合子はそう言って電話を切ったが、まだ大輝の気持ちの中には、もんもんとして迷いがあった。
それは、今、愛に会いに行かないと、もう彼女と永久に会えるのがないことを、大輝自身自分で分かっていたからである。
しかし、その一方では今回の百合子の気持ちや、愛が亡くなった原因などを考えたりすると、そういつも子供じみた自分勝手な行動ばかり取り、百合子に迷惑かけるわけにも行かないという気持ちも強くあった。
結局、大輝は悩みに悩んだあげく、自分ひとりで愛の弔いをやることにした。
そして、コンビニに行って蝋燭と線香を買ってくると、いつも机の上に飾っている二人が写っている結婚式の写真の前に、蝋燭と線香に火をつけて燻焼具の代用の灰皿の中に立てると、愛が無事に天国に辿り着けることを心から祈って、蝋燭や線香の火を一晩中絶やすことなく夜伽を行った。


「愛、ごめんね。僕が馬鹿なことを言い出したばかりに、君を早く死なせることになってしまって・・・」
「・・・・・」
「今度、君が生まれ変わって“風のある町”にやって来たら、また僕たちめぐり逢えるかなあ・・・」
「・・・・・」
大輝がどんなに話し掛けても、ただ愛は写真の中で笑っているだけで、大輝の問い掛けに何も答えることはなかった。



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青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 5

2008-04-08 21:27:27 | Weblog

bellあなたは、これまでに真実(ほんとう)に自分の健康の大切さを考えたことがありますか?あなたは、これまでに真実に自分の命の尊さと向き合ったことがありますか?青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編5が、すべてその答えを教えてくれます。

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第7話/ 最後の肌の温もり
~愛の突然の死~

アメージンググレイス・・・
いつも僕のために 歌ってくれた
君の歌が もう聞こえない
あの大空に 君が旅立ってから
だけどこの瞳(め)を 閉じれば
いつも僕のそばには 君がいる

「それにしても、私たちが現実に空を飛んでいるって、考えてみると凄いことだよね・・・」
「そうだね、頬はブルブル震えて痙攣を起こしだそうだし、躰全体も海老反っていてかなり痛いけどね(笑う)・・・」
大輝と愛が、なんだかんだと話し込んでいるうちに、四人の躰は地上千五百メートルほどの距離まで降下していて、相葉と稲垣の合図ともにパラグライダー(パラシュート)が開かれた。
さすがに、パラグライダーを開く瞬間はもの凄い衝撃が躰全体に走ったが、フリーフォールのうつ伏せの状態から、人間本来の二足歩行の縦の状態になると、随分と身体も安定し楽になった。
そして、落下速度がゆっくりになったぶん、それほど風圧も感じられなくなると同時に、地上の景色が余裕を持って、よく眺められるようになった。
インストラクターの相葉と稲垣が、大輝と愛にパラグライダーの操作をしてみないかと声を掛けてくれたので、二人はすごく興味があったのでふたつ返事でOKし、大空の散歩を心の底から楽しんだ。
『大輝、私の「空を飛んでみたい・・・」という望みを叶えてくれて、本当にありがとう・・・』
『僕は、何もしていないよ、愛の「空を飛んでみたい・・・」という強い情熱が、みんなの心を動かしたんじゃないか・・・』
「そんなことはないわよ。もし大輝に、私の望みを叶えてあげたいという本当に信念がなかったら、きっとこんなふうに私の望みは叶ってなかったと思うわよ・・・」
「愛、ありがとう・・・君にそう言って貰えるだけで、僕は嬉しいよ・・・」
「私の望みは叶えてもらったから、今度は大輝の望みが叶うといいね・・・」
「僕の望み?もう叶っているじゃないか、こうして君と結婚式が挙げられたんだから・・・」
「本当にそう思ってくれいるの・・・」
「もちろんだよ・・・」
大輝のその言葉を聞いた瞬間、愛の目は自然に涙でいっぱいになっていた。
ただ、そんな幸せのひとときも長くは続かなかった。
それは、すぐ眼下に最初4千メートルの大空に向かって飛び立った、TOKIOスカイダイビングクラブの滑走路がハッキリと見えるようになり、だんだん目的地の着地場所に向かって高度を下げて近づいて行く度に、「大空を飛んでみたい・・・」という、愛が命がけで訴たえた大輝との空の上での至福の旅も、もうじき終わろうとしているからだった。


四人の乗ったパラグライダーは、大輝と愛にはかなりゆっくりとしたスピードで、目的の着地場所に向かって高度を下げているように感じたが、二人の空の上での至福の旅がもっと続いて欲しいと願う気持ちとは裏腹に、わずか十分ほどの間にもう地上にいる人たち姿がハッキリと見える、二百メートルか百五十メートルくらいの距離まで降下していた。


そして、地上までの距離が二十五メートルほどの所くらいまで来ると、最初は大輝がインストラクターの相葉に言われて、着地時の用意のために両足を前方に投げ出すような格好で、ランディング(上半身と下半身が直角になるような形を取り、尻で滑るようにして着地すること。)する準備をとった。
すぐに、愛も大輝に続いてインストラクターの稲垣に指示をされ、同じようなポーズを取った。
そして、着地時に多少の衝撃があったこともあり、慣れてないせいで前方につんのめりそうになる場面はあったものの、無事に二人とも無傷で目的の着地場所に、予定通りに降り立つことが出来た。
地上に到着し、大輝と愛がジャンプスーツを脱いでみんなが待っている場所に向かうと、泰三と百合子を始めに今日の結婚式に出席してくれた親戚や、TOKIOスカイダイビングクラブのスタッフたちが、大きな拍手で二人を出迎えてくれた。
その中には、さっきまでセスナ機を自ら操縦していた、このTOKIOスカイダイビングクラブのオーナー兼インストラクターの谷口の姿もあった。
その後、TOKIOスカイダイビングクラブの事務所に行くと、通常のホテルでの披露宴時のようにはいかないものの、それなりに大輝と愛の二人の今日の結婚式のために、わざわざ百合子が東京にあるホテルから取り寄せた、祝宴用の料理や飲み物類が用意されていた。
まず結婚披露宴を始める前に、“祝 亀梨大輝・石坂愛様ご結婚おめでとう”書かれた看板の前で、みんなで記念撮影を行うことになったが、大輝と愛が一緒に並んで写真を撮ることに対して、泰三は相変わらず不愉快な顔を見せたが、みんながいる手前もあったからだろう。
そのことを口に出して、いっさいそれ以上に何か小言などを言うことはなかった。
記念撮影が終わると、泰三が愛の父親として家族を代表して、今日の二人の結婚式に出席してくれたみんなに謝辞を述べた後、泰三と百合子の関係の親戚代表や、TOKIOスカイダイビングクラブのオーナーの谷口ら何人かが、大輝と愛に対して次々に婚礼の祝いの言葉を伝えた。
そして、最後は愛の主治医であり今日セスナ機の機内で、大輝と愛が仮の結婚式を挙げるときに神父の代役を引き受けてくれた、堂本誠の乾杯の音頭で結婚披露宴が始まった。
だが、そんな和やかな会場のムードとは一変し、愛本人に立ちくらみがするほどのかなり疲労感が見られたことから、急遽堂本の視触診の結果“すぐに病院に帰って精密検査をする必要あり”と判断されたために、わずか大輝と愛の結婚披露宴は一時間ほどで打ち切られた。
その結果を受けて、大輝は今日世話になった谷口や、TOKIOスカイダイビングクラブのスタッフの皆に礼を言うと、愛を泰三や百合子らと一緒に慶都病院まで送り、その日の夜行列車で“風のある町”に帰った。
愛は、大輝と別れるその瞬間まで、絶対に片時も彼の手を握ったまま離そうとしなかった。
きっと、愛にはこれが大輝の躰の温もりを直接肌で感じる、最後の時間(とき)だと分かっていたからかも知れない。

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青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 4

2008-04-07 21:18:23 | Weblog

bellあなたは、この~青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind  総集編 4~を見なければ、一生後悔することになるかもしれません。それは、本作品が人の命の大切さや人としての真実の優しさの、その答えを教えてくれるからです。


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第6話/ 生きていることが一番の幸せ
~愛のスカイダイビング~

どんなに淋しくたって 生きていることが一番の幸せだと
誰かが言っていた
どんなに悲しくたって 生きていることが一番の幸せだと
誰かが言っていた
どんなに苦しくたって 生きていることが一番の幸せだと
誰かが言っていた
それは、きっと本当だろう・・・
だって生きているからこそ 笑ったり
だって生きているからこそ 泣いたり
だって生きているからこそ 怒ったり
だって生きているからこそ 楽しんだり
この両手で抱えきれないほどの いっぱいの感動に出会えるのだから・・・



「お二人さん、もう愛の交換タイム(時間)はもう終わりましたかね?」
みんなが搭乗しているセスナ機を操縦している、TOKIOスカイダイビングクラブのオーナー兼インストラクターでもある谷口が、ちょっと大輝と愛をからかうふうにそう言うと、機内は拍手とともに爆笑の渦となり、二人はお互いに顔を見合わせて照れ笑いした。
その姿は、まるで新婚生活を迎えたばかりの、本当の夫婦のようだった。
「どうやら見たところ、愛の交換タイムも終わったようだし、そろそろスカイダイビングの準備に入ってもいいですかね?」
「はい、大丈夫です・・・」
大輝が谷口に向かってそう答えると、愛も「はい、私も大丈夫です・・・」と、結婚式を挙げた時と同じように、大輝に同調するかのように言った。
早速、二人は二千回以上のスカイダイビング歴を持つという、ベテランインストラクターの相葉浩と稲垣健一の指示に従って、結婚衣装の上にジャンプスーツを着込むと、ヘルメット、ゴーグル、手袋などのスカイダイビングに必要な防寒具を身に付けた。
そして、二人は防寒具を身に付ける準備が終わると、インストラクターと体を固定しジャンプするための、ハーネス(パラシュートを装着するための器具)と呼ばれるベルトを背負った。
大輝は相葉と、愛は稲垣と、それぞれにパートナーを組むことになった。
二人が感激したのは、谷口の粋な計らいで大輝と愛が空中で話が出来るように、ヘッドホンマイクを用意してくれていたことだった。
ただ、このハーネスと呼ばれるベルトは、思ったより躰を強く締め付けるものだったので、大輝が愛に“大丈夫か?”と聞くと、笑顔でピースサインが返って来たので一安心した。
このハーネスを強く締める理由は、空中でパラシュートを開いた瞬間に、その空圧でベルトが強く肩にくい込んだり、その反対に躰からすり抜けたりしでもしたら危険だという、安全性上の問題からだという。
「さあお二人さん、いよいよお待ち兼ねの空の散歩に、出掛けることにしますかね・・・」
谷口のその言葉で、大輝と愛が大空に飛び出すための、セスナ機の乗降口が開かれた。
もちろん、初めての体験だということもあったのだろうが、その予想以上の風圧の強さと空気の冷たさに、きっと突如として恐怖感に襲われたのだろう。
乗降口が開かれたそのとたん、ついさっきまでスカイダイビングの準備が終え、自信満々に笑顔を見せてはりきっていた大輝の顔色が、まるで全身から血の気が引いたように青白く豹変し、彼は思わず腰砕けしてしまったように後ずさりした。
「ち、ちょっと待ってください!」
そんな大輝の、子供のようなへっぴり腰になって言い訳をする態度を見て、最初はクスクス苦笑していた愛も、最後は思わず吹き出してしまい大笑いをした。
「アッハッハハハ・・・」
「あ、愛、な、何がそんなに可笑しいんだよ!」
「だって、大輝がそんなにビビっているところ、初めて見たんだもの。なんだか、子供がお医者さんに注射をされるとき怖がって、無意識に自分の中だけで注射は痛いものだと決め付けて、駄々をこねている姿を見ているみたいで可笑しくて――アッハッハハハ・・・」
「そ、そんな、子供が注射を怖がる話と、今のことを一緒にするなんて・・・」
「愛、それってちょっと酷くない・・・」
「まあ、まあ、お二人さんもう夫婦喧嘩は止めて、やることやらないとね・・・」
「旦那がそんなビビリじゃ、奥さん行く先大変だね・・・」
「そうですね。みなさん、家の主人がご迷惑をお掛けしてすみません・・・」
谷口の言葉に愛がそう答えると、機内中が大爆笑となった。
それに釣られて、いくらか大輝も気持ちが解れたのか、右手で頭をかきながら照れ笑いするくらいの余裕を見せた。
その瞬間だった。
大輝が、相葉に「躰の力を抜いて大きく深呼吸して・・・」と言われ、相葉の言葉に従って躰の力を抜いて深呼吸していると、いきなりドンと背中を強く押されたかと思ったら、もう気が付いたら機内の外に飛び出して大空の中にいた。
「あっ!」
おそらく、その機内から機外まで外に飛び出すのに要した時間は、一分も掛からなかった。
「うわーっ!たすけて~」
「耳が痛いよ~」
「神様、僕はまだ死にたくないよ~」
ただ、大輝がどんなに喚こうが騒ごうが、もう機内の外に出て空中に飛び出した以上は、どうすることも出来なかった。
ただ、大輝が喚き散らして騒いだように、初めてスカイダイビングを体験する人にとっては、人間が自然の理屈に逆らって時速約二百キロで降下するということは、見た目以上にかなりの風圧や息苦しいほどのスピードを感じ、これまで我々が地上では味わったことがない、独特の恐怖感に襲われるのかも知れない。


「大輝、大丈夫よ。ねえ、ねえ、隣を見て私も一緒だから・・・」
突然、愛の声がヘッドホンを通じて聞こえて来たので大輝は驚いたが、確かに彼女が言ったとおりに隣を見ると、彼女が彼の方を見て手を振っていた。
それにしても、まったく愛の度胸は大輝とは違い、大したものだった。
大輝は、これまで確かにスカイダイビングの未体験者ということがあったが、四千メートルの上空での風圧の凄さや空気の冷たさに対する、その恐怖心からなかなか機外へ飛び出す決心がつかずに、半ば強制的にスカイダイビングを実行させられたのに対して、まったく愛の場合にはその逆で、彼女のパートナーであるインストラクターの稲垣も驚くほど、自らが進んで自分が鳥にでもなったかのように、大空に向かってジャンプして行った。
そしてまた、時速約二百キロという猛スピードで降下しているのにもかかわらず、大輝のことを気遣って声を掛けたり手を振ってあげたりするなど、まるでその姿にはスカイダイビングのかなりの体験者と思わせるような、精神面での余裕さえあるように感じられた。
もしかして、これは愛自身がこれまで常に死の恐怖と隣り合わせに生きて来て、いつしかその死に対する恐怖感を彼女なりに物凄い努力をして、自分の中で乗り越えられるようになっている、ひとつの強い気持ちの現われでもあるのかも知れない。



だが、この行動が愛の死を早めることになろうとは、このときの彼女自身はもちろんだが、大輝を含めた彼女に係わっている周囲の人たちのすべてが、まだ誰一人として気付いていなかった。



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青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 3

2008-04-07 14:48:01 | Weblog

みなさんも、YahooやGoogleなどの日本を代表する主なプロバイダーで、検索サイト第1位の作品が、どんな内容なのかを、ぜひその目で確かめに来てくださいね。

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第5話/ 最後の愛の儀式
~空の上の結婚式~


「大輝どうもありがとう。愛の願いごとをふたつも聞いてくれて・・・」
「そんな願いごとなんか、愛の病気に比べたらなんでもないことだよ・・・」
愛が「大空を飛んでみたい・・・」という望みと、彼女がもうひとつ大輝に頼んだことは、最後の二人の愛の証として結婚衣装を身に着けて、スカイダイビングをしたいということだった。
例え、それが仮の結婚式だとしても、自分が「大空を飛んでみたい・・・」と望んでいる空の上で、大好きな大輝と結婚式をあげられることは、あと四ヶ月あまりの限られた命しか残されていない、彼女にとってはこの上ない最高の幸福だった。
大輝は白ピケの蝶タイに薄いワイン色の燕尾服(衿は拝絹)、愛は真っ白なフリルの付いたシルクの生地に、彼女の生まれた六月の誕生花にちなんだ淡いピンクのバラの花の刺繍がされた、ウェリングドレスだった。
すべて、この日の二人結婚衣装は、「愛の、大輝との愛の証の思い出を残すために、仮でいいから結婚式をあげたい・・・」という、“最後の願いごと”になるかもしれない我が娘の希望を聞き入れて、わざわざ百合子が知人の衣装店にオーダーメイドして、新しく作らせたものだった。
愛と百合子は、この二人の結婚式の催しを心から歓迎していたが、泰三は「自ら世間に恥をさらすようなもの」だと、当初から猛反対していた。
だが、“愛の命がけの訴えがあった”あの出来事以来、もうどんなに不満があっても泰三は愛が望むことに反対するような言葉を、彼女の前では一切口にしたり態度に出したりするようなことはなくなった。
逆に言い方をすると、おそらくどんなに頑固な父親であろうと、たった一人の愛娘があと数ヶ月しか生きられないという現実に直面すると、実際にはいつも見せるあの傲慢な態度とは正反対に、父親として泰三の心の中にも何とも言えない苦悩があったのは間違いないだろう。






この日のために、泰三が小型のリムジンバスをチャーターし、大輝、愛、百合子、その他に泰三と百合子の親戚10名を乗せたバスは、成城の自宅から慶都病院がある信濃町に向かった。
この日の愛は、外部からの雑菌の進入を防ぐためにスカイダイビングの会場に着くまで、まるでウエディングドレスの上に宇宙服でも思わせるような、雑菌防止用の空調服を身に付けていたが、やはり愛の体調のことを心配した主治医の堂本誠が、自ら彼女に付き添うことを志願したからだった。
日曜日のせいか、いつもとは段違いに車の数が少なく高速道路が空いていたために、三十分ほどで堂本との待ち合わせ場所である、慶都病院の門の前に着いた。
慶都病院の門の前に着くと、主治医の堂本と一緒に愛の担当看護師である、吉田由美子も待っていた。
「堂本先生、吉田さん、今日はわざわざ休日だというのに、愛のために出て来ていただいてありがとうございます・・・」
愛が満面に笑みを浮かべてそう言うと、二人とも口を揃えるかのように「ご結婚おめでとう・・・」
と、今日の大輝と愛の結婚式があくまでも虚偽のものだと知っているにもかかわらず、笑顔で祝福してくれた。
今の愛にとっては、それが真実のものであろうが虚偽のものであろうが、そんなことなどにまったく関係なく、自分が生きているうちに大輝と結婚式が挙げられるということが、何よりもこの上もない幸福を感じ嬉しかった。
堂本と吉田がバスに乗り込むと、バスは関越自動車道がある練馬ICに向かった。
そして、練馬ICから関越自動車道に乗り、大泉、新座、所沢、三好、大井ICを通り越し、川越ICの出口を降りて国道17号線のある高崎線桶川駅方面に向かい、太郎右衛門橋を渡って二、三分すると、目的地のTOKIOスカイダイビングクラブに到着した。
バスが到着し、燕尾服姿の大輝とウェリングドレス姿の愛がバスから降りてくると、この日のために大輝と百合子が何度も足を運び、今回のいきさつの事情を細かく説明していたために、このクラブのオーナーでもありインストラクターでもある谷口大輔が、数十人のスタッフと共に拍手で二人を出迎えてくれた。
そして、愛の誕生花にちなんだ彼女のウェリングドレスの刺繍と同じ、ピンクのバラの花束を二人に手渡してくれた。
そしてその後、大輝と愛はちょっとした休憩を挟み、当クラブスタッフから三十分ほどのスカイダイビング関する簡単なレクチャーを受けると、オーナー兼インストラクターでもある谷口自らが操縦桿を握る、真っ白なボディーに青空をイメージしたブルーのラインが両翼の上に描かれているセスナ機に乗り、主治医の堂本誠や担当看護師の吉田由美子、ベテランインストラクターの相葉浩、稲垣健一らと一緒に、合計七名で四千メートルの上空へと向かって飛び立った。
やはり、親として気になるのだろう・・・大輝と愛らが乗ったそのセスナ機を、泰三と百合子は滑走路の横にある芝生の上に立って、ずっと目を離すことなく心配そうに眺めていた。







そんな二人の親心とはまったく逆に、愛は久しぶりに空の上から見る街や海、山並みの景色に、大感激し、機内で大はしゃぎしていた。
「大輝、やっぱり空の上に来ると、いつもくよくよしている自分が馬鹿らしく思えるほど、気持ちが晴れやかになり最高の気分になるわね・・・」
「これは、もしかしたら、私が今!“生きている”という実感から来ることであり、きっとその証拠だよね・・・」
「僕にも、そんなに難しいことは分からないけど、きっとそうだと思うよ・・・」
「じゃあ、やっぱり死んでしまったら、こんな気分は味わえなくなるんでしょうね・・・」
「愛、今日はそんな湿っぽい話はやめようよ・・・」
「だって、二人の結婚式じゃないの・・・」
「そうだよね。大輝の言うとおり、いくら仮の結婚式とはいえ、今日は二人の一生に一度の結婚式だものね。楽しくいかなくちゃあね・・・」
愛がそう言ったとたん、このセスナ機に同乗していた全員が彼女の言葉に同調するかのように、二人の結婚式を祝うために長渕 剛の“乾杯”を歌い始めた。







♪かたい絆に 想いをよせて・・・

そのとたん、大輝と愛の目には自然に涙が溢れ出して来た。







そして、みんなの歌が終わると、主治医の堂本誠が神父代わりになって、愛が自分の命を賭けても望んでいた、大輝との空の上での仮の結婚式が挙げられた。
「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「はい、誓います。」
堂本の言葉に二人とも、何のためらいを見せることもなく、結婚を誓いあった。
そして、誓いの言葉が終わると、百合子が二人のために用意してくれていた指輪の交換が行われた。
さらにまた、堂本を始めとし今日二人の結婚式に出席してくれたみんなが用意してくれた、ウェディングケーキへの入刀式が行われた。
ウェディングケーキ自体、本物の結婚式の会場で挙式をあげる時のようなにはいかず、かなり誕生日の時のような小さなものだったが、ずっと大輝と愛の二人とっては本物の挙式の時のケーキよりも大きく、価値のあるものに思えた。
今回の空の上での挙式のことは、まったく二人には知らされていなかったために、指輪の交換を終えケーキの入刀式が終わる頃には、もう二人の目の色は真っ赤に変色してしまうほど、みんなの暖かい気遣いで胸がいっぱいになり、まったく自分たちの照れくさいという意志とは関係なしに、勝手に涙が溢れ出して来て止まらなくなっていた。





 



それからの大輝と愛は、いつの間にか周囲に人がいるのも忘れてしまって、二人だけの世界に入り込んでしまい、ボロボロと頬を伝って零れ落ちるお互いの涙を拭いあいながらい抱きあっていた。
そして、知らず知らずのうちに二人の唇は、まるで一心同体でもなるようかのようにひとつになって重なり合っていた。
だが、それは愛にとって大輝との最後の口づけであり、最後の愛の儀式でもあった。









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青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 2

2008-04-04 22:06:58 | Weblog

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第3話/ 愛の願い
~大空を飛んでみたい・・・~


二人は、ほんの数十センチという近い距離にいながら、ガラスの壁に阻まれて直接言葉が交わせないぶん、日記帳と大学ノートを使って会話をすることにした。

「また会えてよかったね・・・」
「ありがとう」
「どうして僕に、本当のことを教えてくれなかったの?」
「・・・・・」
大輝が書いたその言葉に、突然愛の表情が悲しげになったので、彼はすぐに話題を変えた。
「早く君が元気になって、また二人で“風のある町”に帰りたいね・・・」
「そうね・・・」
「いつまでも、僕は君が帰ってくるのを待っているからね・・・」
大輝が、大学ノートに書いたその文字を見たとたん、また愛の目頭には薄っすらと、涙が浮かんで来た。
「ごめん、変なこと書いちゃって・・・」
「ううん、大丈夫よ・・・」


二人の、日記帳と大学ノートを使った文字での会話は、よほど感情が高ぶっていたのか、決して休むことなく三十分以上も続いた。
だが、そのうち愛の担当看護師の吉田由美子がやって来て、「もういいでしょう。これ以上無理やり話を続けて、もしも愛さんに何かあったらどうするんですか?」と、大輝に向かってそう言うと、半ば強引に二人の会話を打ち切らせた。
その担当看護師の吉田由美子の言葉を聞いて、愛自身は“自分は大丈夫・・・”だと強引に訴えたが、吉田由美子が彼女の言葉を一切受け入れてくれることはなかった。
大輝のすぐ横にいて、二人の会話のやり取りをずっと見守っていた百合子も、さすがにそう思ったのか?吉田由美子の言葉に一切口出しをすることはなかった。
最後に、大輝が愛に今一番何がしたい?と尋ねると、彼女の口からは彼が予想もしていなかった言葉が飛び出した。
「大空を飛んでみたい・・・」
「大空!どうしてまた?」
「どうしても・・・」
「大輝、私の最後の我侭だと思って、その願いを叶えてくれる・・・」
「ね、大輝いいでしょう・・・」
「わ、分かった・・・」
「愛の願いが叶うように、何とか、努力してみるね・・・」
「ありがとう・・・」


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愛には、彼女の気持ちを傷つけまいと何とか努力するとは答えたものの、大輝とってまだ自分さえ飛んだことがない大空を飛ばせてあげることなんて、とても自分の力で愛の夢を叶えてあげるのは、どんなに努力しても無理だと思った。
だがそれと同時に、あと半年間しか持たない愛の命のことを考えると、何としてでも彼は彼女の夢を叶えてあげたいとも思った。
その日、大輝は愛からその言葉を最後に聞くと、百合子と一緒に彼女の病室を後にした。
大輝が愛に別れを告げて帰る時、一瞬彼が後ろを振り返ると笑顔は見せているものの、彼女の目頭に薄っすらと涙が浮かび、「ありがとう・・・」という言葉を、ひと言ずつ口を大きく開いて、一生懸命にガラスの壁越しに伝えようとしている姿が見えた。
大輝は、夜行列車で“風のある町”に帰る途中の間も、自分が予想もしていなかった愛の言葉にすごく戸惑ったが、愛が生きていられる時間があと半年の間しかないことを思うと、何としてでも彼女の夢を叶えてやりたかった。

大輝が、愛と再会を果たし“風のある町”に帰って来てから、月日が経つのは早いもので、もう一ヶ月近くになろうとしていた。
ただ、大輝はその間学校へ行っている時も、アルバイトに行っている時も、片時も愛の「大空を飛んでみたい・・・」という夢を、絶対に叶えてあげたいということを忘れることはなかった。
しかし、残念なことに大輝のそう思う強い気持ちとは裏腹に、まったく未だにその名案は見つかっていなかった。


ある日、大輝が偶然に商店街の本屋の前を通りかかった時に、彼の目に一冊の本が目に留まった。
それはスカイダイビングの本だった。
大輝は、「大空を飛んでみたい・・・」という、愛の夢を叶えてやるのは「これだ!」思い、その本を夢中で読み漁った。
ただ、大輝はスカイダイビングで誰かが飛んでいるのを、これまでテレビのバラエティ番組の罰ゲーム一などでしか見たことがなく、彼の意識の中でのスカイダイビングはそのスピードやスリル感を楽しむ、ある種のレジャー楽しむための金持ちのひとつ遊びだというイメージが強かった。
だが、その本を読んでいるうちに、実際のスカイダイビングはパラシュートの操縦技術を競い合う、世界各国で大会が行われているれっきととしたスポーツ競技の一種だということが分かった。
その本によると、スカイダイビングで愛がいう大空の飛ぶことの体験が、ハワイやグァムなどの世界各地の様々な場所で出来るようが、彼女の躰の体調のことを考えると、日本の中でその体験が出来る場所を探すしかなかった。
運よく、その後もスカイダイビングに関する本をあれこれと読み漁っていたら、ちょうど都合がいいことに、愛が入院している慶都病院からさほど距離的に遠くはない、埼玉県の川島町にTOKIOスカイダイビングクラブという、スカイダイビングが体験できる会社が見つかった。
ただ、大空を飛ぶ体験が出来るスカイダイビングのクラブが見つかったことで、愛の望みである“大空を飛んでみたい・・・” という願いは叶えてあげられそうになったが、それを実行に移すためにはふたつの大きな問題があった。
それは、入会費や会費、受講料が大輝と愛の二人分を合わせると、大学生の彼にとっては今すぐにはとても用意は出来ない、大金の五十万円ほどの費用がかかることと、いくら愛の“大空を飛んでみたい・・・”という夢を叶えてあげるためだといっても、おそらく彼女の家族や病院側がそれを許してくれないだろうという、現実の大きな壁があった。


大輝は、まずはその第一の問題である金のことを、「大学を卒業して働くようになったら、必ず返すから・・・」と言って、田舎の両親に電話して必死で頼んだが、父親に「お前は大学生の身分で、なんでそんな恥知らずなことをやっているんだ!」
「それに家は、貧農家でお前を大学に行かせるだけで精一杯なんだぞ・・・」と、逆に大怒りされてあっさりと断られた。
父親の言葉通りに、大輝の実家は父親と母親が二人だけで農作業を行っている小農家で、彼自身も彼を“風のある町”にある大学に行かせるために、両親が農協から多額な借金をして苦労していることを知っているために、それ以上父親の言うことに強引に反論して、無理やり何かを言う気持ちには慣れなかった。
そうなると、頼みの綱はもうひとつしか残っていなかった。
それは、愛が入院している病院に一緒に同行し、彼女が大輝に対して“私の最後の我侭だと思って、その願いを叶えてくれる・・・”と、彼に頼んだことをその場で聞いていた、愛の母親の百合子に相談することだった。
大輝はそう決心すると、すぐに“風のある町”を出発して夜行列車に飛び乗り、愛の実家がある成城に向かった。
その時、愛に残されている余命は、あとわずか四ヶ月あまりだった。









第4話/ 愛の命を賭けた訴え

~私にはもう時間がないの・・・~


人にとって一番の 幸せってなんだろう
人にとって一番の やすらぎってなんだろう
ふとそう思って思い悩んだり苦しんだりしたとき ふっと心の中に浮かんだのは
それは手を伸ばすと・・・ 真実の優しさや温もりにすぐ触れられる
愛する家族や愛する人が いつも傍にいてくれることではないかと・・・



――ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン・・・――

大輝には都合よく、愛の成城にある実家を訪ねると、着いたのがもう時間が午前十時を回っていたせいか、彼女の父親の泰三は会社に出掛けていて、愛の母親である百合子が応対してくれた。
さすがに当初は何の連絡もない、大輝の突然の訪問に百合子は驚いていたが、彼と愛との真実の関係を一番良く知っている彼女は、彼の訪問を快く出迎えてくれた。
京都の寺などでよく見かける、日本庭園風の庭が窓ガラス越しに見える、二、三十畳はあろうかと思う応接間に通されると、例の大輝が愛の家を最初に訪問したときに会った、家政婦の有森恵子がいかにも高級そうなコーヒーカップに入ったコーヒーと、モンブランケーキを持ってきてくれた。

「ところで亀梨さん、今日は突然連絡もなしにいらっしゃるなんて、何かあったのですか?」
百合子は、大輝の不意の訪問を不思議がりそう尋ねた。
「実は、今日僕がお邪魔したのは、愛ちゃんの望みを叶えてあげたくて、ご相談に来たんです・・・」
「それに、すみませんが連絡をしないで来たのは、おそらく電話でその相談をすると、その時点で断られることが分かっていたからです・・・」
「愛の望み?」
『そうです。お母さんも一緒に病院に行ったときに聞いていたでしょう。愛ちゃんが僕に対して「大空を飛んでみたい・・・」と話していたことを・・・』
「実は、ずっと愛ちゃんに“大空を飛ばしてあげる”と約束したあの日から、彼女の望みをどうやったら叶えてあげられるかを考えていたのです・・・」
「そして、やっとその方法が見つかったのですが、今の僕の身分ではどうすることもできないのです・・・」
「その方法は、お母さんは知らないかも知りませんが、鳥や飛行機のように空を自由に飛ぶことが出来て遊覧飛行や空の散歩を楽しめる、スカイダイビングというものなのですが・・・」
「ですから、こうやってお母さんに相談に来たのです・・・」
「それって、一体どういうことですか?」
百合子は、大輝の話をじっと黙って聞いていたが、彼の言っている事情がまったく呑み込めず、再び彼に問い返した。
「愛ちゃんの“大空を飛んでみたい・・・”という望みを叶えてあげるためには、僕なりに考えたところこの方法が一番いい方法ではないかと思ったのですが、そのためにはふたつの大きな問題があって・・・」
「ふたつの大きな問題って?」
「そのひとつ目ですが、スカイダイビングを行うためには入会費や会費、受講料など必要で、僕と愛ちゃんの二人分の費用を合わせると、僕のような貧乏学生の身分ではとても今すぐには用意できない、五十万円近くもの大金が必要であるということと・・・」
「そして、そのふたつ目ですが、愛ちゃんにそのスカイダイビングをやらせることを、お母さんたち家族や病院側に許しが得られるかということなんです・・・」
「・・・・・」
さすがに、大輝の話を聞き終えて事の真相を理解した百合子も、いくら愛の望みを叶えることだとはいっても、彼の唐突すぎる内容には頭の中が混乱して、どう返事していいのか判断がつかずに言葉に詰まった。
ただ、だんだんと落ち着きを取り戻し心の整理がつくと、自分の率直な思いを明確な口調で大輝に伝えた。
「亀梨さんには悪いけど、お金のことならともかく愛の病気のことを考えると、とてもスカイダイビングなんてやらせられないわ・・・」
大輝は、当初から反対されることは分かっていたとはいえ、百合子の言葉を聞いて愕然となった。
それは、愛の“大空を飛んでみたい・・・”という望みを叶えてあげるためには、もう百合子に協力してもらう以外には、ほかに何の手段もなかったからである。
ただ、今ここで「はい、そうですか・・・」と引き下がってしまうと、愛が大輝に託した望みを彼女が生きている間に叶えてあげることはとても無理だという思いが、彼の心の中では強く働いていたので、彼は涙ながらに百合子に土下座して、何とかその返事を考え直してくれるように頼み込んだ。
さすがに、百合子もそんな大輝の姿を見ていると心を動かされ、しぶしぶ愛の父親である泰三や愛の主治医の堂本誠と交渉してくれることを承知してくれた。


百合子が、泰三に連絡を取り大輝から聞いた話の内容を伝えると、当初は彼女と泰三が電話で話す姿を見ていると、かなり泰三は彼女に対して怒りをぶつけているようだったが、どうやら最後は彼女に説得されてなんとか承諾したようで、愛が入院している病院の一階の受付の前で、会社の仕事が終わる午後七時に待ち合わせることになった。
そして、百合子は同時に緊急に相談したいことがあると言って、愛の主治医である堂本誠とも会う約束を取り付けてくれた。
大輝と百合子が、タクシーで病院に向かい病院に到着すると、約束の一階の受付の前で泰三が大柄な躰を、前後にイラつかせるように揺り動かしながら、彼の運転手の河本輝夫と一緒に待っていた。
「お前たち、遅いじゃないか・・・」
「すみません・・・」
まだ約束の時間の七時まで十五分も前だというのに、相変わらず泰三は横柄な態度で百合子に文句を言っていたが、さらに今回の大輝の計画には相当腹を立てているようで、彼が挨拶をしても一切無視し彼とは口を聞こうともしなかった。
愛が入院している七階の受付を尋ねると、百合子が連絡を入れていたこともあり、愛の主治医である堂本誠が待っていてくれて、診察室と隣接した場所にある入院患者や、その家族への病状の説明に使われるカンファレンス室を、今回の相談事の話し合いの場として用意していてくれていた。
堂本は、百合子の話を聞いたとたん、「そんなこと、本気で言っていっているんですか?」「もし、外部の空気に触れることにさえ、肉体的に何の抵抗力も持っていなくて生死にかかわる彼女に、いくら望みを叶えてあげることだからといってそんなことをやらせたら、無理やりみなさんで彼女を死に追いやるようなものですよ・・・」と言い放って、あっさりと百合子の申しれを断った。
そして、その堂本の言葉に同調するかのように、その話を隣で聞いていた泰三が、「こんな馬鹿げたことで、俺まで呼び出すなんて・・・」と、吐き捨てるように言った。
「せ、先生、な、なんとかお願いできませんか?愛ちゃんが僕に最後に託した望みなんです・・・」
「亀梨くん、君のようなド素人が何を言うのかね。だいいち、家族でもなんでもない他人の君が、先生にそんなことを話すなんて大変失礼ことだぞ!」
「まあ、まあ、そう怒らずに落ち着いてください。彼も彼なりに愛ちゃんのことを思って一生懸命やったことでしょうから・・・」
さすがの泰三も、愛の主治医である堂本には頭があがらないみたいで、いつものようにブツブツ小言は零していたものの、大輝に対してそれ以上何か愚痴を言うことはなかった。
これでもう、愛の「大空を飛んでみたい・・・」という望みを叶えてあげることは、すべて絶たれてしまうことになった。

「せっかくお見えになったんだから、愛ちゃんの病室を寄って行ったらどうですか?」
堂本の勧めもあって、もう通常なら面会の時間はとっくに過ぎていたが、堂本が同行するという条件で病院側から許可を得て、三人は愛の病室に立ち寄ることにした。
大輝たちが愛の病室を訪ねると、彼女は病気の治療のための点滴を受けている最中だったが、すぐに大輝の姿に気がつくと満面の笑みを浮かべながらベッドから起き上がり、点滴用のスタンドを片方の空いている左手で押しながら、彼の方に向かって近寄って来た。
そして、大輝に分かるようにひと言ひと言ずつ大きく口を開いて、「今日は、何をしに来たの?」尋ねた。
大輝は、愛のその言葉の意味を理解すると、ショルダーバッグの中から以前に彼女と会話した時と同じように大学ノートと取り出し、彼女の問い掛けに対して返事を書いた。

――今日は、君がこの前来た時に僕に話した「大空を飛んでみたい・・・」という、君の望みを叶えてあげたくて、君のお父さんやお母さんそれに主治医の堂本先生にお願いに来たんだけど、どうやら君の病気(体調)のことを考えると、とても難しいという結論になってしまって。だから、ごめんね。君の望みを叶えてあげられなくなってしまって・・・――

その大輝が大学ノートに書いた文章を読んだとたん、愛は泣き狂ったように点滴用の器具を自らすべて取り外して床に投げ捨てると、無菌室の扉を勝手に開けて四人がいる病室の外に飛び出して来た。
そして、泰三や百合子や主治医の堂本の制する言葉にも耳も貸さずに、自ら四人の足元に跪いて床に顔を押し付け、大粒の涙をボロボロ零しながら大声で訴えた。
「お願い、私にはもう時間がないの・・・」
「それは、本当はパパやママもそうだけど、先生だって知っていることでしょう・・・」
「だから、私は自分の命と引き換えにしても、大輝との残こされた時間を少しでも大切にしたいし、自分の望みを叶えたいの・・・」
「ねえ、パパもママも先生も、私のそんな気持ちを分かってくれてもいいでしょう・・・」
さすがに、愛のその行動を目の当たりにしたら、どんなに頑固な泰三であろうと、心を動かされずにはいられなかった。
もちろん、それは百合子も主治医の堂本も同じ思いだった。




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青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 1

2008-04-03 20:33:18 | Weblog

本日より、全国の青春うたものがたりシリーズ1~「風のある町」/ A town with the wind  のファンのみなさんや周囲の方々から、本作品を1冊の単行本と同じような形式で読みたいという強い要望があり~青春うたものがたりシリーズ1~「風のある町」/ A town with the wind  総集編を、すべて前回のあらすじの紹介なしで、全5回に渡って連載します。また、今回の連載に伴い、前回の内容比べてかな新たにリニューアルあるされている部分がありますので、ぜひその辺りも見逃さずに、本作品の総集編を楽しんでください。

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第1話/ 大輝と愛


風のある町を君と歩いたね 風のある町で君と話したね
(いつでも2人一緒に・・・Woo ooo)
今では何もかもが遠い日々の 記憶にかすむ出来事だけど
僕の生活(くらし)の中では まるで時計が止まったように
あの青春(ひ)の君が今でも なにひとつ色褪せもせず美しいままで生きている
歳をとったせいだろうか 意味もない自分探しをするのは
もう帰れないからだろうか あのときめきの青春(じだい)の瞬間(なか)には
心地よい陽だまりの中の 眠りから目覚めたら
何の輝きもときめきもない 時の流れに置きざりにされた僕がいた



突然、愛が地図にも名前が載っていない“風のある町”にやって来たのは、桜前線の話題がいっせいにテレビニュースで流れ始めた、早春の風の強い日だった。
愛が、風の町にやって来たときの格好は、スーツケースひとつと薄いグレーのロングパーカーに、洗いざらしのジーパンという質素のものだった。
大輝との出会いは、駅前の不動産屋の前で部屋を探すための貼り紙を見ている時に、偶然その場所を通りかかった彼が、声を掛けたことがきっかけだった。
やはり、大輝の遊び目的の軟派と思われる行動に、最初はすごく警戒し彼が何を言っても無視をしていた愛だったが、彼が真っ黒に日焼けし顔でひょっとこ面や、明石家さんまなどの芸人の真似をして笑わせてくれる姿に、やがて少しずつ彼女の警戒心も解けいき、笑顔を見せるようになった。
大輝が愛と出会った時には、まだ彼は地元の大学に通う学生だった。
愛が、大輝と出会ったその日なかなかいいアパートが見つからずに、彼の部屋に泊めて貰ったのをきっかけに、2人は正式に自己紹介をし合い付き合うようになった。
その結果、愛のほうがもうすでに大学を卒業し、大輝より2つ年上ということが分かった。
つい最近まで、東京駅南口の丸の内のある一流商社に務めていたらしが、別に彼女のほうもその理由を積極的に話すことがなかったので、その理由まで深く聞くことはなかったが、どういうわけか辞めたということも分かった。
そして、その日から2ヶ月も経たないうちに「いつも一緒にいるのに、アパート代がもったいね・・・」という話から、二人は愛が借りた部屋で同棲するようになった。
大輝と愛は一緒に住むようになってから、以前にも増して二人で将来の夢を語り合ったり、映画を見に行ったりショッピングに出掛けたりするなどして、二人の交友時間を楽しむようになった。
そして、二人は生活費を稼ぐために、大輝が大学に出掛けている間は、愛はファーストフードの店でアルバイトをし、大輝は大学の授業が終わると以前から働いていた居酒屋で、それぞれにアルバイトを続けた。
そのせいで、普段の日はアルバイトをする時間が昼と夜というすれ違いはあったが、そのぶん毎月二回は日にちを合わせて必ず休日を取っていたので、たまに喧嘩はするものそんなに生活に不自由を感じたり、男女の中に生活に不便さを感じたりすることはなかった。
ただ、大輝には凄く気になることがひとつだけあった。
それは、愛がしょっちゅう熱を出したり、めまいを起こしたりすることだった。
大輝は愛の体のことを心配して、そのことを彼女に事あるごとに聞いたが、いつもその話になると何故か?話をはぐらかされた。

それから事件が起きたのは、そのごひと月ほど経ってからだった。
「ママが体調を崩したみたいだから、ちょっと家に帰って来るね。でもすぐに帰って来られると思うから心配しないでね・・・」
突然、大輝がアルバイトを終えて帰宅すると、そうメモ帳に伝言を書き残して、愛の姿が消えていたのである。
だが、愛のそんな言葉とは裏腹に、彼女はひと月以上が経っても、決して帰って来ることはなかった。
愛のことを心配した大輝は、たとえ一緒に住んでいても彼女のプライバシーを盗み見るようで、なんとなく悪い気がしたが、彼女の整理タンスの中から彼女の母親から彼女宛にときどき来ていた手紙を探し出し、やっとその住所を頼りに東京の成城にある彼女の家を探し出した。
大輝が家を訪ねると、今まで愛から一度も聞いたことはなかったが、かなり彼女の家は金持ちと思われる豪邸だった。

大輝が愛の家を訪ね、インターホーンを通じて自分の名前を名乗ると、家政婦らしき女性が応対に出て来たが、彼が愛のことについて尋ねると、何故だか?大慌てして2階に繋がっている螺旋階段を駆け上がって行き、やけに大柄で恰幅のいい中年の男性と、まるで女優のように品格のいい中年の女性を伴って3人で階段を降りて来た。
その姿を見た瞬間、大輝には家政婦らしき女性が呼んで来たのが、愛の両親であることがすぐに判断できた。
大柄な恰幅のいい中年の男性は、自分が愛の父親の石坂泰三であることを名乗ると、いきなり大輝に向かって、声を荒げて怒りだした。
「お前のおかげで、愛の病気は家にいるときよりも、ずいぶん酷くなったんだぞ!!」
「それって、いったいどういう意味なんですか?」
「お、お父さん、やめてくださいよ。亀梨さんに会えて愛だってあんなに喜んでいたじゃないですか・・・」
「お、お前は何を馬鹿げたことを言っているんだね!」
「ほ、本当じゃないですか・・・」
『「愛ちゃんはお母さんが体調を崩したので、しばらく家に帰ります・・・」と伝言をを書き残していましたが・・・』
「愛ちゃんに何かあったんですか?」
「そ、そ、そんなことを、あ、あの子が・・・」
そう呟くように言うと、愛の母親百合子の目からは、ハンカチでも押さえ切れないほどの大粒の涙がぼろぼろと、彼女の頬を伝って床に零れ落ちた。
「お、お父さん、もういいでしょう。あの子がこんなに、嘘まで付いて心配掛けまいと気遣っている人ですよ。亀梨さんに本当のことを話してあげましょう・・・」
「もういい!お前がそういい気持ちなら、もう好きにしろ!!」
愛の父親の泰三は、そう言った後もなおも怒りが収まらずに、ぶつぶつと愚痴を零しながら螺旋階段を早足で上がり、とっとと自分の部屋に帰って行った。
家政婦らしき女性は、その煽りを受けてどちらに付くか困り果てた顔で、泰三の方を向いたり百合子の方を向いたりして迷っていたが、百合子が泰三の様子を見に行くように伝えると、ホッとした表情で泰三の後を大急ぎで追い掛けて行った。


「実は・・・亀梨さん、愛は今病院にいるんです・・・」
「えっ?!」
「い、いったいそれはどういうことなんですか?」
「誰にも話さないと思っていましたが、亀梨さんあの子の命はもう半年しかもたいないんです・・・」
「そ、そ、そんなことを急に言われても、ぼ、僕には何がどうなっているのか、分かりませんが・・・」
「そうですよね。突然こんなことを話しても、何がどうなっているのか分かるわけがありませんよね・・・」
よほど辛いのだろう。
百合子は、勝手に溢れ出す涙をハンカチで抑えながら、悲しみに満ちた表情で話をし続けた。
「愛は・・・今重い白血病に掛かっていて、もうどんな治療を受けても治ることがないのです・・・」
「じゃあ、お母さんが病気というのは嘘で、本当は自分が病気だったんですね・・・」
「そ、それも半年間ほどしか命がもたないという・・・」
ようやく大輝は百合子の話を聞き、しょっちゅう愛が熱を出したり、めまいを起こしたりしていたことの、初めて本当の理由が分かった。
また同時に、その真相を百合子に聞かされたとたん、逆に今度は自分がめまいがして倒れてしまいそうなくらいに、心に大きなショックを受けた。





第2話/ 愛の病気
~限りある命(白血病)~


風のある町を君は去って行った きっともう帰れないと知っていたから
(片道切符一枚で・・・Woo ooo)
知らず知らずにいつか 二人の間を急ぐように時間が駆け抜け
知人(ひと)を通して聞いてた 君の噂も聞かなくなったいつからか
あのまま君が生きていてくれたら 二人にとってどんな人生があっただろう
歳をとったせいだろうか こんなにも涙もろくなったのは
もう帰れないからだろうか 君と過ごした思い出の場所へ
どこまでも青く澄み切った 星空を見ていたら
子供のように夢を見る とても惨めな大人の姿の僕がいた

歳をとったせいだろうか 意味もない自分探しをするのは
もう帰れないからだろうか あのときめきの青春(じだい)の瞬間(なか)に
心地よい陽だまりの中の 眠りから目覚めたら
輝きもときめきもない 時の流れに置きざりにされた僕がいた



実は、愛がふらりと偶然にも風のある町にやって来たのは、彼女自身が天国に旅立つための自分に残された、最後の時間を楽しむためだったのである。

「あ、愛ちゃんに会わせて下さい・・・」
「・・・・・」
大輝が必死で頼んでも、愛の母親百合子はなかなか首を縦に振らなかった。
おそらく、大輝の気持ちの中では愛の父親である泰三が許さないからだろうという、強い気持ちがあった。
しかし、実際の理由はそれだけではなかった。
それは、今の愛の本当の姿を知ると、百合子の心の中に大輝の気持ちに大きな動揺が起こり、彼の気持ちが愛から離れていってしまうのではないかという、かなり母親としてその問題に対する恐れがあったからだった。
愛は、高度の白血球の減少に伴う化学療法や造血幹細胞移植術等の血液疾患により、外には一歩たりとも出ることが出来な健康状態になり、ずっと大輝と別れて“風のある町”を去ったその後は、病院の無菌室で集中治療中を受け続けていた。
そして、その副作用で髪はすべて抜け落ち頬はこけ目は窪み、その姿にかつての彼女の清楚な面影は、もう何ひとつとして残っていなかった。

百合子は、“大輝の愛に会いたい”という話を聞いた後も、しばらくその真実を大輝に話すかどうか迷っていたが、彼の話を聞くにつれ彼が本心から愛を愛してくれていることを知ると、ついに彼にすべてを打ち明ける決心をした。
そして、やはり泰三は大輝と同行することを嫌がったが、大輝と百合子は愛が入院している新宿の信濃町にある慶都病院に向かうことになった。
車は、いつも泰三が通勤に使っている黒塗りのクラウンロイヤルを用意して貰い、泰三の運転手の河本輝夫が二人に同行した。
慶都病院は、かつて日本を代表するアクションスターの石渡裕一郎が入院したり、初めて日本人の女性宇宙飛行士として有名になった、向田千秋が医師として勤務していたりしたことでも、有名な病院である。
二人を乗せた車は成城の自宅を出ると、世田谷通りから環八に入り、用賀から首都高に乗って、首都高速道路4号新宿線外苑出入口で降り、慶都病院に向かった。
慶都病院は、同大学のキャンパスにあるせいか、意外に若い人の姿も多く見かけた。
一階で受付を済ませると、大輝と百合子は愛が入院している無菌室がある七階に、通路のちょうど中ほどにあるエレベーターで向かった。
愛が入院している病室に付くと、彼女はじっと身動きひとつせずに、ベッドの上から淡いピンクのパジャマ姿のままで、ずっと青くどこまでも晴れ渡った大空を見つめていた。
ただ、愛の姿が以前の姿とまったく違っていたのは、百合子が彼女を訪ねる前に話していたように、白血病の治療の副作用のせいで髪の毛はすべて抜け落ち、頭にベージュ色のニットの帽子を被り、躰全体が拒食症患者のようにやせ衰えていたことだった。
さすがに、大輝は百合子に話は聞いていたもの、現実に愛のその変わり果てた姿を見た瞬間は、あまりにも彼女が可哀相すぎて、何とも言えない複雑な気持ちになった。

――コン、コン、コン コン、コン、コン・・・――

大輝が、硬い透明のガラスで仕切られた壁をノックすると、愛はビックリした表情で立ち上がり、最初は照れくさそうに笑っていたが、やがて彼女の目には大粒の涙が溢れ出していた。
それは、大輝も同じだった。
大輝が自分自身で気付いた時には、彼の目からも愛と同じように大粒の涙が、自然に勝手に溢れ出していた。
そして、しばらく二人は見つめ合ったまま、決して何かを語ろうとはしなかったが、まるで久しぶりの再会をひとつひとつ確かめて喜び合うかのように、だんだんとガラス越しにふたつの躰は近づくと、もう気付いた時には両手と両手がひとつになって重なり合っていた。
その姿を横で見ていた、愛の母親の百合子も思わずもらい泣きして、しばらく三人の涙が止まることはなかった。
また、それは、大輝と愛の真実から愛し合っている、決して偽りのない究極の姿ともいえた。



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月岡貞夫先生のアニメ作品『あそぼトイちゃん』の絵コンテを、インターネット上で初公開!!

2008-02-10 16:24:54 | Weblog
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イソジンかばの親子



★本日は、特別企画としまして本ブログ及びOCNの「おとぎのお家」で、NHKのおかあさんといっしょ“こんなこいるかな”や“北風小僧の寒太郎”“富士通のタッチおじさん”などのアニメーターやキャラクター作家としてよく知られている、月岡貞夫先生のテレビ東京放送のアニメ作品『あそぼトイちゃん』の絵コンテ(線画)を、インターネット上において初公開します。アニメや漫画ファンにとってはたいへん必見の価値があるとても魅力的なものだと思いますので、ぜひお見逃すことなくご覧になってください。尚、本作品の前編に関しましては、OCNの「おとぎのお家」でご覧ください。
また、同時に楽天ブログにおいても、これまでの月岡先生の主な作品をご紹介する『月岡貞夫作品展』を開催します。懐かしいレナウンのCM作品から、NHKみんなのうたのアニメ作品やその他テレビアニメなどのさまざまな作品が登場しますので、本作品同様にお見逃しすることなく、ぜひご覧ください。

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「あそぼトイちゃん」

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「あそぼトイちゃん」の作品内容の紹介

「あそぼトイちゃん」は“歯をみがく” “お昼ごはんです”“かくれんぼ”“おふろだよ ”“おえかき”などのタイトルを見てもすぐに分かるように、NHKお母さんといっしょの「こんなこいるのかな」の、動物版といってもいい作品です。「こんなこいるのかな」は、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、当時登場キャラクターのすべてが、子供の普段の生活の中での姿を参考にして、“いやだいやだの「やだもん」”とか“いたずら坊主の「たずら」”とか、名前がつけられています。そのせいか、すごいNHK始まって以来の人気作品になり、子供たちやそのお母さんたちだけではなく、女子大生などまでが、そのキャラクターグッズ(Tシャツやキーホルダー、帽子など)の商品を愛用していたことを覚えています。





トイザらス・ベビーザらス オンラインストア


 

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キッズステーションの物販サイト“キッズセレクト”






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★月岡貞夫プロフィール



新潟県出身。高校を卒業と同時に、小学校の頃から文通をしていた憧れの手塚治虫氏のもとへ上京、アシスタントになる。その手塚をして、“彼は天才だよ”と嘆ぜしめるほど高い才能を早くから発揮する。その間、手塚氏の代理として東映動画(現東映アニメーション)に出向。演出助手、キャラクターデザイナーを勤める。東映にアニメーターとして在籍中、「安寿と厨子王丸」「シンドバッドの冒険」「ねずみの嫁入り」初の作画監督兼演出。その後、東映動画初のオリジナル作品「狼少年ケン」のシナリオ、キャラクターデザイン、総監督を努める。また、手塚氏の要請により、虫プロダクションの設立に協力、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」などの作品制作において演出家として参加。

主な作品として、NHKおかさんといっしょの「こんなこいるかな」を始めとし、NHKみんなのうたの「北風小僧の寒太郎」、富士通CMの「タッチおじさん」、明治製菓CMの「イソジンのかば」など、数多くの作品がある。
現在は、宝塚造形大学教授、日大講師を務める傍ら、さまざまなCM制作や携帯電話用のモバイルコンテンツ(アニメーションなど)づくりを手がけている。



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