・「千尋の闇」/ロバート・ゴダード
失職中の私をマデイラ島に招いてくれた友人。彼はそこで観光者向けの雑誌を刊行していて、幸いビジネスは上手くいっているという。彼は私にある人物に引き合わせてくれた。雑誌の出資者ともいうべき人物で、その老人は私にある依頼を申し込んできた。
老人の依頼とは、この館の前の持ち主でもあるエドウィン・ストラフォードという、あまり名の知られていない政治家について。彼は1910年のアスキス内閣で入閣し、チャーチルなどと肩を並べた政治家である。閣僚の中では最も若く、見た目も悪くない好青年風の男だが、この内閣で2~3年内務大臣を務めた後、突如として政界を去っている。しばらくのブランクを経て第一次大戦に従事した後はマデイラのこの館に移り住み、晩年はイギリスに戻り列車に轢かれて死んでいる。
老人はこの館に残されていたというストラフォードの手記を見せてくれた。手記を読むうちに私は歴史学者としての興味が急に沸いてくる。図書館の味気ない資料ではなく、今まさに活きている歴史。私はこのストラフォードの手記に夢中になり、調査を始めることにする。青年時代のストラフォードの謎の失踪、そして謎の晩年…。彼は一体何を考え、何を思い生きたのだろうか…?
うららかなマデイラ島で読み進められる、歴史の闇に葬られた知られざる人物の、知られざるサスペンス。あらすじだけ見ると、何だか地味でつまらなそうな感じを受けるけど、実際読んでみるとすごく面白くて引き込まれるんだなこれが。ストラフォード氏が地元で当選を果たして、それから閣僚としてどんどんキャリアを重ねて…と、本当にまともに政治家活動やってるんだけど全然退屈な感じはしなくて、どんどん手記を読み進めたくなる。
手記は200ページほどで終わり、それから先は主人公のフィールドワークによってストラフォード氏の謎が少しずつ明らかにされていく。と同時に、主人公の周りでは何かきな臭い雰囲気が漂い始める。下巻からは隠された晩年の手記が発見されて、これによって晩年の謎が解明されると共に、意外な人物との関連が浮かび上がってくる。ストラフォードの真の敵とは、一体誰だったのか!?
歴史によって語られる過去の事件が、現代にも継続されていく…というこの立体構造が何とも魅力的な作品。その中でも印象深いキャラが、物語の焦点でもあるエリザベス夫人。ストラフォードの元婚約者にして主人公の親戚でもある、すべてを知る者。そんな老夫人が主人公を最大の友人と認め、ラスト近くで誇り高い天寿を迎える姿に、ちょっと感動。
失職中の私をマデイラ島に招いてくれた友人。彼はそこで観光者向けの雑誌を刊行していて、幸いビジネスは上手くいっているという。彼は私にある人物に引き合わせてくれた。雑誌の出資者ともいうべき人物で、その老人は私にある依頼を申し込んできた。
老人の依頼とは、この館の前の持ち主でもあるエドウィン・ストラフォードという、あまり名の知られていない政治家について。彼は1910年のアスキス内閣で入閣し、チャーチルなどと肩を並べた政治家である。閣僚の中では最も若く、見た目も悪くない好青年風の男だが、この内閣で2~3年内務大臣を務めた後、突如として政界を去っている。しばらくのブランクを経て第一次大戦に従事した後はマデイラのこの館に移り住み、晩年はイギリスに戻り列車に轢かれて死んでいる。
老人はこの館に残されていたというストラフォードの手記を見せてくれた。手記を読むうちに私は歴史学者としての興味が急に沸いてくる。図書館の味気ない資料ではなく、今まさに活きている歴史。私はこのストラフォードの手記に夢中になり、調査を始めることにする。青年時代のストラフォードの謎の失踪、そして謎の晩年…。彼は一体何を考え、何を思い生きたのだろうか…?
うららかなマデイラ島で読み進められる、歴史の闇に葬られた知られざる人物の、知られざるサスペンス。あらすじだけ見ると、何だか地味でつまらなそうな感じを受けるけど、実際読んでみるとすごく面白くて引き込まれるんだなこれが。ストラフォード氏が地元で当選を果たして、それから閣僚としてどんどんキャリアを重ねて…と、本当にまともに政治家活動やってるんだけど全然退屈な感じはしなくて、どんどん手記を読み進めたくなる。
手記は200ページほどで終わり、それから先は主人公のフィールドワークによってストラフォード氏の謎が少しずつ明らかにされていく。と同時に、主人公の周りでは何かきな臭い雰囲気が漂い始める。下巻からは隠された晩年の手記が発見されて、これによって晩年の謎が解明されると共に、意外な人物との関連が浮かび上がってくる。ストラフォードの真の敵とは、一体誰だったのか!?
歴史によって語られる過去の事件が、現代にも継続されていく…というこの立体構造が何とも魅力的な作品。その中でも印象深いキャラが、物語の焦点でもあるエリザベス夫人。ストラフォードの元婚約者にして主人公の親戚でもある、すべてを知る者。そんな老夫人が主人公を最大の友人と認め、ラスト近くで誇り高い天寿を迎える姿に、ちょっと感動。