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draw_or_die

everything will be worthy but cloudy

とりあえず銀行に池

2009-09-11 14:45:04 | 最近読んだ本
・「イヴたちの聖都」/ローレン・バーク

 私立探偵のレイチェルは、弟の知り合いの上院議員の依頼を受ける。数年前に亡くなった娘を調査してほしいという依頼で、娘は最後の年に妊娠しており、もしかしたら孫が存在しているかもしれない、とのことである。依頼の背後に政治がらみのにおいを嗅ぎ取る彼女だったが、彼女は弟の顔を立てるために断ることはできなかった。それに、上院議員は見返りとして、亡くなった彼女の兄の情報を提供するという。
 レイチェルの兄はCIAで極秘の任務に就いており、作戦中に死亡したというわずかな情報しか知らされていなかった。死んだ兄に関する、もっと多くのことが知りたい。そんなわけで彼女は、議員の娘が通っていたという宗教法人のキャンパスに学生として潜入することになったのだった…。

 静かな郊外に建てられた謎の教団の大学…、というと何だかエロティックなシチュエーションだよね。もちろん期待通りにエロいシーンとかラブシーンもある。ここらへんは女性作家っぽい、ねちっこい感じの…。しかし最後のほうのレイプされかけてしまう所は、すぐ終わってしまうという。むしろページを割くのはそっちのほうじゃね。
 これを読んでいて感じるのは、キャラの行動理念が「弱さ」によるものという。ああ、確かにそういうのは一理あるかも。レイチェルにとって兄は弱点だから、兄に関することは無条件に受け入れる。あるいは女生徒達にとって教祖は弱点だから、教祖の言うことは何でも信じるという。

 あとラストでオチをつける必要はなかったかな…と思う。むしろ私立探偵・レイチェルシリーズとしての続きモノをやるなら死亡した兄の謎とか、色男のパートナー・イライジャとの恋の行方とか、そこらへんにカタをつける必要はないし、1巻の読みきりでもここら辺はぼかしておいたほうがいいんじゃないか?と思う。

8月はもう疲れた、これ以上働けん

2009-08-31 14:59:18 | 最近読んだ本
・「復讐」/ティム・グリーン

 今日もわたしは監獄の中で瞑想する。華やかりしあの時代のこと、最愛の彼女のこと。思いつく限りの知識や学問を頭の中で並べ立てる。それから狭い独房の中で身体を動かし、強靭な肉体を保つ。わたしは現実の世界なぞどうでもよかった。これからもずっとこの監獄の中で、静かに暮らしているだけで、それで十分だった。
 刑務所の中でわたしは一人の老囚と出合った。彼もわたしと同じように、この刑務所で多くの年月を過ごしており、わたしの良き話し相手となってくれた。が、この老囚のある言葉に、わたしの心は平穏から再び激しく燃え上がるのだった。
 ここから脱獄すること。外の世界に戻れること。

 そう、わたしは友人たちの裏切りによってこの監獄に放り込まれたのだった。かつて若くて、有能な弁護士で、下院議員への道も開かれようとしていた、あの夜。わたしは友人の頼みで、ある女のもとへ書類を届けに行くことになっていた。それがすべての始まりだった。翌朝その女は殺されていた。わたしはその女の殺人容疑で、懲役を言い渡されたのだった…。

 老囚はわたしに計画を打ち明けた。ある場所に、盗んだ財宝を隠した別荘がある。脱獄した後は財宝を回収し、それまでの事はすべて忘れて、新しく自由に生きようじゃないか。わたしたち二人は機を見計らって脱獄する。しかし生きて出ることができたのはわたし一人だった。わたしは老人の残した財宝を手に入れるも、すべてを水に流して新しい人生を送る気にはなれなかった。
 彼らに復讐してやらねば。「誰かにやられたら、必ずやり返す」…、老人が刑務所の中で教えてくれたことだ。彼の残した莫大な財産をもとに、わたしは今、壮大な復讐劇を始めようとしていた…。

 古典である「モンテ・クリスト伯」を下敷きに、現代の政界やショウビズ界などを取り入れてアレンジした作品。主人公が無実の罪から刑務所を脱獄して、罠に陥れた者たちへ復讐していき、最愛の彼女を取り戻す…という流れは同じようだ。前半の脱獄のスリリングさ、それから相手をじわじわと追い詰めていく後半と、まあまあ安定した面白さを見せる。ここら辺は特に特筆すべきところはないかな。
 それで少し目を引いたのは、この主人公が青年時代に何故か日本車のスポーツカーに乗っていること。最初は銀色のスープラに、その次は赤色のRX-7。なんかこれだけ妙に印象に残っているんだよな。なんでだろ。

ずっと腹が痛い、死にそう

2009-08-03 22:26:15 | 最近読んだ本
・「希望への疾走」/ジョン・ギルストラップ

 街の小さな自動車修理工場で働くジェイク。今日もまた、いつもと代わり映えのない一日が始まるはずだった。が…突然、事務所に機動隊が突入してくる。容疑は、ジェイクの麻薬取引だという。にわかに彼は凍りついた。もちろん麻薬取引なんてまったくの人違いなのだが、今警察に拘束されるのは非常にまずい…。幸いにして友人のコネにより容疑は晴れて釈放されたものの、彼はすぐ妻に計画実行の旨を伝えた。今すぐ学校から息子を取り戻し、隠れ場所に集合して、生活用具を積んだバンで逃亡する。
 何故彼らは、そんなにも執拗に警察から逃げる必要があるのか?そう、彼と彼の妻・キャロリンには、14年前に起きた史上最悪の毒ガス事故の第一級の容疑者として、全国に指名手配されていたのだった…。

 無実の罪を晴らすために逃亡を続ける、夫と妻とその子供。何ともアメリカのTVドラマ的なストーリーでスピーディーに進行していく。冒頭の、何が何やらわからず逃亡しなければならないという緊張感、それからしばらくして読者に知らされるジェイク夫婦の容疑、なんともきな臭い事件当時の出来事…。この序盤の滑り出しが最高だね。
 それで中盤から、この二人(と息子)は逃亡生活を続けながら14年前の事件をもう一度調べることになるんだけど…、何というか、逃亡の目的が分かってしまうと地に足が付いてくるというか、とたんに普通レベルの面白さに下がってしまうのは何故なんだろうか…?いや、もちろん物語を収束させるために事件を解決しなきゃダメですし、後半からもアクション分多めでちゃんと面白いんですけどね!

 世間から逃亡・偽装のプロとは言われているものの、所詮ジェイク夫婦は訓練を受けていない元一般人。しかも14年の時を経て、二人とも中年に差し掛かっている。そんな二人がFBIを相手に巻いたり、あるいは追いつかれたり…と、このハラハラ感が良い。一度は取り逃がしてしまったFBIのお姉さんが、キャリアを取り返すため逮捕に躍起になっているところもキャラ立ちしていて良いね。

っていうかさっさと寝たほうが疲れないよね

2009-07-26 00:30:08 | 最近読んだ本
・「ぼくが死んだ朝」/ロバート・コーミア

 夏のスクールバスがバスジャックされた。捕らわれたのは運転手の女性と子供16人で、過激な政治活動を続けているテロリスト集団の犯行によるもの。テロリストの要求は金と、服役中の幹部の釈放と、アメリカの秘密諜報機関・デルタ機関を一般に公開すること。彼らはバスの車内で、車のそばの森の茂みで、オフィスの机で、じりじりと事件の展開を待っている。果たして子供たちは無事に保護されるのだろうか…?

 と、まずはこんな風な舞台で、話は主にバスの運転手の女性・新米テロリスト・デルタ機関に勤めている父の視点で進められていく。こう書くとハリウッド的なスピード感のあるアクションもの…といった感じだけど、そういった感じじゃなくて何というか登場人物の内面を徹底的に描写している、ちょっと変わった雰囲気の作品。
 と書くとまた語弊があるかもしれないけど…、物語は立てこもり事件の心理戦がメインテーマじゃあないんです。じゃあどういう内容かというと、突然バスジャックされた運転手の女性のパニック、じわじわと広がっていく不安、拘束されている途中で頭に浮かんでくる、どうでもいいことの羅列…。そして新米テロリストのほうは、初作戦で緊張している自分、予定と違って少し戸惑いを感じているところや、リーダーからバスジャックの目的を知らされないでやきもきしている事など…。事件そのものよりも、たまたま出くわしてしまった他人同士の頭の中…といった感じでしょうか。

 それからこれに付け加えられているのが、もう一人の登場人物・デルタ機関で働く捜査官の息子。この父と息子との確執が事件とは別にポンと乗っていて、これまた不思議な印象を残す。別にこの要素いらないじゃんと言われればそうかもしれないけど。デルタ機関としてはもちろん機関を一般に公開するわけにはいかない、それでいて子供たちも無事に救出したい…。そんなデルタ機関のわがままが、ある種父親への反感になっているのかもしれない。

 とにかく、全体が短くまとまっていて、こういう長さだからこそ読後の不思議な余韻が残るおもしろい作品。

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2009-07-15 22:18:12 | 最近読んだ本
・「デジタルの秘法」/キャサリン・ネヴィル

 そのアイデアを思いついたのは、わたしの密やかな楽しみであるオペラを鑑賞しているときだった。ニーベルングの指環の一場面、ライン川の地底に眠る黄金を盗み出すシーン。そう、メガバンクの部長であるわたしが銀行のセキュリティシステムに侵入し、保守的で、傲慢な上層部の鼻を明かしてやるのだ。ほら、わたしの言ったとおり現在のセキュリティシステムには問題がありますよと。彼らはわたしが女であることを理由に、この提言を適当にあしらっているのだ。まったく腹が立つ。

 わたしは早速プロジェクトを始めることにした。社内の若手エンジニアを募り、それからわたしの友人でもあり、恩師でもあるコンピューターの天才・トールに助言を求める…すると、彼からは驚くべき答えが返ってきた。僕ならこのプランを使って10億ドル盗むことができるね。しかも、一切コンピューターを使わずにだ。
 彼は賭けを持ち出してきた。期限までに、どちらが多く銀行から金を盗むことができるか?社会人になりたての頃はお世話になったとはいえ、わたしはいつまでも彼に子ども扱いされているわけにはいかないのだ。こうして、巨大銀行を相手に、10億ドルを盗み出すという壮大な計画が今始まったのだった…。

 お役所的で頭のカタい金融業界を相手取り、奴らをとっちめてしまおうという中々に爽快なストーリー。まあ同じような業界にいるからわかるんですけどね、上層部というかこいつらエグゼクティブの融通の利かなさや汚さは随一で。そんな悪しき領域に我らが主人公たちが挑むという構図で、序盤から計画実現へ向けてサクサクとテンポ良く進んでいく。女流作家にありがちな、くどくどとした感情表現がなかったのがテンポ良く読めたポイントかな。

 舞台は銀行だけにとどまらず、オークション界や経済界にも展開していく。オークションハウスやら孤島のタックス・ヘイブンやらを転々として、ついに突き止めた、銀行界に潜む巨大な悪の正体は…?というのが結末で。
 さて、やっぱりこの小説でのポイントとなるのが、コンピューターの天才で、何でもこなせてしまう万能人間・トールのキャラクター。ここまできてしまうとあからさまにチートキャラでつまんなくなってしまいそうなんだけど、とても絶妙なところで主人公を助けてくれたり、根回しをしてくれたりする。ここらへんの「あまり前に出てこない慎ましやかさ」具合が、イヤミな奴か、魅力的なキャラかを分けるところなんだろうね。
 もちろん主人公側と違って銀行のセキュリティシステムに一切手をつけずに、アナクロな方法で金を盗み出す鮮やかな手口も見逃せないところ。

気付いてみれば、6月何やったか記憶がない…

2009-06-25 21:24:41 | 最近読んだ本
・「ディープ・ブルー」/ケン・グリムウッド

 かつてイルカ族と人間との間には交流があった。リンク能力と呼ばれるテレパシー、イルカ族は超音波によってお互いコミュニケーションしているのである。しかし「陸を歩くもの」、人間にはリンクやイメージを送る能力はない。それに人間たちは同胞を殺したりイルカを殺したりする。いつしかイルカ族は人間たちと間遠になっていき、限定的な遊び程度の接触にとどめるか、あるいは人間たちとの接触をまったく禁じるようになっていった。
 しかしイルカの長老は今こそ人間との接触を再開すべきと考えていた。イルカ族に伝わる「新たな教え」を実行に移すために。そのために、人間にリンク能力を植えつける「予備接触」が数十年前に密かに行われていた。いつか、どこかで、小さい頃イルカに触れた記憶…。彼らが大人になった今、彼らはイルカの声を聞くことができるのだろうか?と同時に、海の底ではある重大な危機が迫っていたのだった…。

 高等な知能を持ち、超音波によってコミュニケーションをしているといわれるイルカ。そんなイルカはSFにとっては格好のモチーフで、クラークの「イルカの島」なんかが代表作だったりする。でも「イルカもの」で印象に残ってるのがクラークよりもロベール・メルルによる「イルカの日」で、冷戦時代のイルカ研究がやがて破滅的な世界大戦へとつながっていく…という話(だったような気がする)。ハッピーエンドな話よりもこういう世界の滅亡、みたいなストーリーのほうがインパクト強かったりするので。

 さてこの作品のあらすじ(というか世界観)はざっとこんなもんだけど、序盤ではそれぞれの視点がかなりバラバラな感じで進行していく。と、こうなるとかなり読みにくくてダメな感じを受けるけど、ちゃんと面白く読めるのはやっぱり作家が上手いから…ということなんだろうなあ。イルカ学者の女性、風まかせなジャーナリスト、マグロ漁船の船長、石油掘削技師…。彼らは次第にイルカの発する声に気づき始めていく。最初はバカバカしいと全く取り合わないものの、次第に彼らはその声を確信していくことになる。そう、なぜなら彼らはイルカ族によって「予備接触」を受けた、選ばれし者だから…。

 とりあえずすごく感動、とまではいかないけどハッピーエンドだよなという感想。もうちょっとラストの危機を乗り越えるところにボリュームが欲しくなるところだけどね。

いつか終わりは来る

2009-06-18 02:02:08 | 最近読んだ本
・「ストレートタイム」/エドワード・バンカー

 若い頃から麻薬と強盗に明け暮れ、裏社会ではそれなりに名の知られる存在となっていたおれ。あの頃はまさに夢のような暮らしだった。しかしその代償が今の8年間の刑務所暮らし、というわけだ。こんな糞みたいな刑務所で身につまされたのは、これからはまっとうに働き、麻薬や犯罪になんか絶対に手をつけない、ということ。そうだ、おれは出所して新しい人生を歩むんだ。8年ぶりに味わう娑婆の空気は、とてもまぶしいものだった。
 保護観察付きの釈放なので、おれは就職先を見つけながら保護監察官に会うことになっていた。しかし前科者はなかなか職にありつくことはできない。次第におれはあせりを感じていた。何とか昔のコネを使って糊口をしのいでいるものの、おれの監察官はあまりいい顔をしない。仕方ねえじゃねえか、働き口が見つからねえんだから。
 そんな事をしているうちに、監察官はおれが密かにヤクを打っていると疑い、更正施設にぶち込みやがった。誓って言うが、おれはヤクなんて打っていない!間違って拘束されていたにも関わらず、奴は謝罪の一言もない。もうこれでわかった。おれにまっとうな仕事なんてできない。こんな仕打ちをされるのなら、社会に徹底的に反抗し、自由に生きて自由に死ぬ道を選んでやる。おれは帰りの車の中で保護監察官をぶっ飛ばし、再び裏社会へと足を踏み入れるのだった…。

 作者もまさにこの主人公と同じような経歴の持ち主らしくて、ある意味作者の自伝的小説…ともいえる作品(みたい)。まあとにかく読んでいて最初に思いついたのが、「あ、何かGTAっぽいな」というノリ。昔の仲間や刑務所仲間と再会しながら、気ままに強盗暮らしで生計を立てる。武器を調達したり逃走ルートを確保したり、あるいはプランを綿密に打ち合わせたり。そんなに一生懸命やるならちゃんと仕事しろよとツッコむけど、結局主人公のおれは盗みしかできないわけだし、これが天職ということになるわけ。お前らみたいに高等教育は受けていないんだ、と。

 こういったアウトローな生活、そして迎える破局…と、物語は最後まできちんと書かれているのが良い。逃亡生活のラストにたどり着いた、海の見える小屋。そこを「虹の橋の終点」と表現しているのが印象に残ったな。例えばの話、真面目に働いてお金を稼いで、ここにたどり着いたらこんな気持ちになっただろうか?いや、きっとそんな人生を送っていたら送っていたで、別の思いに囚われていたに違いない…。そういった感じの主人公のモノローグからかもし出される、「人生とは結局むなしいもの」…こんな作者の主義が見えるようだった。

うん、扶桑社はオレには向いてないわ

2009-06-07 05:56:34 | 最近読んだ本
・「わたしを愛した狼」/ケリー・アームストロング

 一般人のボーイフレンドもできて、ようやく人並みの人間生活を手に入れることができた人狼のエレナ。わたしがたびたび夜に出歩いたり、一人になりたがる性質にも理解してくれて、本当に彼には良くしてもらっている。むしろ申し訳ないぐらいだ。
 そんなある日、わたしのアパートにジェレミーから電話がかかってきた。かつて人狼として暮らしていた時の、群れのリーダー。あまり他人の生活に干渉しない彼がわざわざ電話してくるというのだから、よほど緊急事態なのだ。わたしはいとこが急用だから、という理由でジェレミーのもとへ里帰りする。

 ジェレミーが召集した理由とは、野良の人狼が街で殺しをしているという問題だった。大昔ならいざ知らず、法治国家の現代では我々人狼は人間とのトラブルを起こさないよう、ひっそりと暮らすようにしている。群れの秩序を乱す人狼は、すみやかに殺さなくてはならない。そこで、一番嗅覚がきくわたしが呼ばれたのだった。
 群れへの帰還、懐かしいメンバーとの再会。たとえ人間の姿をしていても、わたしたちは狼としての帰巣本能が染み付いている。いつの間にかわたしはすっかりくつろいでいた、そしてもちろんジェレミーの群れの中に「彼」もいた、わたしが人狼になった原因でもあるクレイ、かつてわたしが愛していた人狼…。

 あらすじは狼と人間のハーフのエレナが巣に戻って狼族の問題を解決しながら、元カレのクレイと再会するような、そんな話。まあとにかく何だろうな、つまんねー以前に無駄に文字が多くてテンポ悪いし文章も下手。文章量を書いてボリュームを出させようとする素人臭を感じる。これって上下巻にする必要ないよね。ホラ、かつて自分が同じようなタイプの文章書きだったから、余計に…。
 アクションもこの作家には向いてない。それよりも恋沙汰というか、最後のほうで出てくる元カレ・クレイと今の人間の彼氏との鉢合わせとか、そういうシーンはよく描けていて面白かったんだけどなあ。あとは特に語る必要なし、どうでもいい。落としどころもどこか変な感じだし、そもそも主人公のエレナの性格がどうもつかめなかった感があったね。読んでいて苦痛だった。

肌寒かったら素直に服を着よう、な?

2009-05-30 15:54:09 | 最近読んだ本
・「僕の心臓を盗まないで」/テス・ジェリッツェン

 救急で運ばれてきたのは、交通事故に遭った二人の子供を持つ女性。研修医のアビーは、この患者を何とか救い出したい気持ちだった。しかし状態は回復せず、脳死状態なのは明らか。アビーは周囲の先輩から説得され、泣く泣くこの女性の臓器を移植提供することになる。
 心臓の移植を待っていたのは、17歳の少年。アビーは今にも息絶えてしまいそうな少年の姿を見て、再び心動かされることになった。事故に遭ってしまったあの女性に代えて、この少年の命を救ってやらねば。そして移植手術は間もなく始められるはずだった。
 しかし間際になって、その心臓の新たな移植希望者が現れる。資産家の妻で、高い金を払って移植希望リストに割り込んできたのだった。少年の命が危ないというのに、これ以上別の心臓の提供を待つわけにはいかない。そこでアビーとその仲間の医師たちは少年を別の病院に移転させ、半ば強引に移植を完了させてしまう。

 この騒動に激怒したのは、有力者でもある患者の夫。心臓を盗んだ、とアビーを強く責め立て、裁判を起こす構えを見せている。幸いにしてその患者にもタイミングよく新たな心臓が届けられたものの、アビーに対する嫌がらせは日ごとに強くなっていく。病院側もまた、大それた行動をした彼女を辞めさせざるを得ないという動きになっている。そんな重圧に挟まれながら、アビーは今日もまた患者のために病院を駆け回るのだった…。

 最初からハードで重い、医療現場の大変さが染み渡ってくる空気。うーんもう本当に、24時間ぶっ通しで働き続けて命を救わねばならない医師はすごく大変だよね、という感想しか出てこない。もちろん外科ということで手術シーンもかなり克明に描かれていて(作者も医者のキャリアがあるということで)、これがいっそう病院のハードさを引き立てている。何ていうか、こういう血がドバドバ出てくるのって生理的にダメなんですよ。読んでいて気持ち悪くなってしまうほどで。それだけリアルに描写されてるってこと。

 中盤からはアビーは医療現場を離れ、さきの臓器移植の謎について駆け回ることになる(まあそこらへんは一応サスペンス物、ということなので…)。別の患者が金で移植希望リストの上位に上がったという事実。そして何故か都合よく適合する臓器がポンと出てくる不思議。それに並行するようにチームの過去の話、過去に二人も自殺のような不審な死に方をしているという事実。資産家の嫌がらせに代わって、今度は別の何かから圧力を受けるアビー。
 ということで、ラストは自らも臓器売買の餌食にされそうになってピンピンチ!という危機を脱して幕が閉じる。また時折挿入される、臓器を刈り取られることも知らずに、ただ船内で待っている孤児の少年の視点も面白かったな。

何かを手に入れるには何かを捨てなければならない、でしょ?

2009-05-13 04:15:06 | 最近読んだ本
・「ノアの箱舟の秘密」/ティム・ラヘイ&ボブ・フィリップス

 考古学者マーフィーは、ある人物から情報を提供される。情報提供者のままにその場所へ赴くと、そこには一つの木切れがあった。この木切れこそ、聖書に書かれていたノアの箱舟の一部分であった。ノアの箱舟が、本当に実在しているとは。
 さらに詳しく調査を進めていくと、驚くべき事実が浮かび上がる。通常検出されるはずの放射能物質が検出されないことから、「ノアの洪水」以前の人類はとても長寿だったのではないか?そしてあの時代に途方もない大きさの箱舟を建設したという事柄から、彼らは失われた超技術を持っていたのではないか…?マーフィーはチームを編成してトルコの奥深く、アララト山へ向かう。

 ノアの箱舟が実在したもので、そして今も残っている…というネタをもとに展開される冒険小説。前半は考古学者でもあるマーフィーの大学の授業を交えながら、世界各地に洪水の伝承が残っているという事実や、洪水が起こったとされる物的証拠の検証がなされる。そして後半からは、資料の上だけではなく実際のフィールドワークでついに現地へ乗り込む…という感じなんだけど。
 でも何というか、こういう魅力的な題材であるにも関わらず、どこか「軽い」感じがするんだよね。小説特有の重さというか重厚感というかそういうのが欠けていて、まるで「ハーディー・ボーイズ」を読んでいるようなライトな感覚。で改めてあとがきや解説を読んでみると、これはマーフィー教授のシリーズらしくて、その彼が戦っている相手が各国の有力者から成る、世界征服をたくらむ「ザ・セブンス」という組織。う~む…、この時点でどことなく漂うB級感覚。聖書や伝説に残る遺物をめぐって争われるシリーズモノ…みたいな感じなのかな?
 まあ確かにそういう軽い気持ちで読めばよかったのか、というのが読後の感想。決してつまらないわけではなかったけど、ちょっと拍子抜けしてしまった。