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draw_or_die

everything will be worthy but cloudy

体調悪くてお腹すいた

2007-05-23 05:52:34 | 最近読んだ本
・「魔法」/クリストファー・プリースト

 大胆なストーリー展開ですっかり魅了されてしまった『奇術師』のプリーストによる、「奇術師」よりも初期の作品。

 爆弾テロによって大怪我を負い、記憶喪失になってしまった主人公。そんな病院でリハビリ中にやってきたのは、一人の女性。彼女は自分のガールフレンドだったのだという。彼女の提示するキーワードに少しずつ記憶を取り戻していく主人公だったが、果たしてその記憶とは本当に現実のものだったのだろうか…?

 主人公、彼女、そして彼女の元ボーイフレンドだった青年・ナイオール。三人が三人とも別々の視点で、それぞれの出会いが描かれている。それぞれの視点から見えるもの、見えないもの、あるいは別の視点から見えるもの…。この「可視性」「不可視性」という性質が物語後半のキーワードになっていて、それがちゃんとストーリー最初から隠されているのが、この構成の妙というべきか。「奇術師」のダイナミックな作風とはまた異なる、私小説ふうの趣きをたたえた作品。

よく寝た

2007-05-19 15:06:30 | 最近読んだ本
・「永遠なる天空の調」/キム・スタンリー・ロビンスン

 宇宙時代に大いなる変革をもたらした科学者・ホリウェルキン。その彼の最後の発明ともいえる「オーケストラ」。これは巨大なパイプオルガンのような装置で、演奏者が指揮者のように全身を動かすことによって音楽を奏でるというものだ。
 主人公はそんなオーケストラの、伝統的な演奏者。しかしある日、麻薬の幻覚症状によってホリウェルキン本人との対面を果たす。「オーケストラは音楽を奏でるためだけのものではない。あれには無限の可能性が秘められている…」と。その言葉を信じるままに、今までの伝統的な演奏旅行を打ち破るツアーに出かける主人公だったが…。

 細かな世界の設定に文章の装飾、まわりくどい表現はさすがに本格SFといったところ…。とはいえ、言わんとしていることはわかるけど。こういうのを読むたびに、咀嚼してもっとテンポやエンターテイメント重視に再構成したくなるのはオレだけか。ラストももっとわかりやすい形にしたい。うーん、どちらかといえば皆が納得できるような形でのエンディングを。…とか批判してたら、自分の作品もこんな感じになっていたりする。気をつけないと。

GWは忙しくなりそうだ

2007-04-30 05:25:43 | 最近読んだ本
・「黄昏のハイスクール」/マーク・リチャード・ズブロ

 主人公は高校の教師。また同性愛者でもある。彼が朝教室に入ると、同僚の教師が殺されていた。事件が警察に預けられる傍ら、これは一体何が起きているんだと校長や理事長に聞き返すも、返ってくるのは妙にうさんくさい反応ばかり。
 と同時期にその教師の息子も家出してしまい、行方不明に。かくして彼と、彼のおホモだちの二人で息子の行方を捜すことになったのだが…。

 まあいわゆる探偵モノのミステリ、というところ。彼ら主人公の動機がもちろん「殺人事件を解決したい」というのもあるけれど、それ以前に「行方不明になった自分の教え子を保護したい」という、教育者としての強い使命感があるから、ちょっと印象的になるんだろうな。
 それから、ゲイ・コミュニティ。べつにいまさら錯倒した同性愛の世界にショックを受けたりはしないけど、そういうのを抜きにしても少年が非行に走っていく過程、っていうのは普遍的なものだしね。ラストのどうでもいいようなショタの兄弟愛…、はホントにもうどうでもいい。はいはい安いですね、という感じ。

a

2007-04-21 22:57:06 | 最近読んだ本
・「スペアーズ」/マイケル・マーシャル・スミス

 スペアーズ、というのはクローン培養された人間のことで、彼らは持ち主が怪我を負うと、その部分を切り取られ、持ち主の治療にあてられてる。主人公はそのスペアーズを管理する「農場」の雇われ管理者をしていた。しかしその惨状を見かね、ついに彼はスペアーズを連れ出して脱出を図ろうとしたのだが…。
 とまあ、こんな感じの話。煽り文を見て、よくあるクローン人間モノだなと思い、どんな展開でどういう落としどころに持っていくのかと、期待しながら読んでいた。

 どちらかというとこれは「持てるものと持たざるもの」のような、貧富の差の構図みたいなものだろうか。金持ちは怪我をしても、スペアーズがある。じゃあ何をやってもいいのか。くそったれな下層民は最悪な生活環境のまま、くそったれな人生を送るのか。
 それから殺人事件。話のメインはクローンよりもこっちだな。主人公とそのスペアーズを付け狙う、謎の事件。全体的にはサイバーパンクな世界を舞台にした、ハードボイルド小説といったところ。
 しばらくあんまり読んでなかった、機械油と薬品の味のするSFだった。

s

2007-04-13 02:13:04 | 最近読んだ本
・「氷の帝国」/ウィリアム・ディートリッヒ

 アラスカで一人、細々と定期飛行便の仕事をしているアメリカ人・オーエン。彼には苦い過去があった。持ち前の慎重な性格が故に途中で引き返してしまい、南極探検の名声を得ることができなかったのだ。そんなところへ、ドイツのある人物から新たな探検の依頼を受ける。南極への生物調査の探検だ。今ドイツはヒトラーの指揮の下、勢いに乗っているところ。それぞれに訳ありそうな調査メンバーをつとめて無視しながら、自分の役割だけを果たそうとするオーエンだったが…。

 とにかく二転三転する超展開に目が離せない。ナチスものということで、結局は悪役というポジションになってしまうSS隊員のユルゲン君だが、あくまで控えめな態度で中立的な立場を保とうとする、序盤の話し方。「そりゃ歴史的に見れば、どこの軍隊にだって悪趣味なところはあるだろう。黒いシャツに鉤十字…、これらは単に規律や秩序を示すものにすぎないよ」
 それから党のために、祖国のために策をめぐらし、巧みな話術で人々を操っていく後半。アクション部分も面白いけど、オレはこのキャラの魅力もこの作品の面白さに含まれていると思う。

 あと、裏表紙のあらすじでネタばれしすぎ。

その2

2007-04-07 01:42:39 | 最近読んだ本
・「黒十字の騎士」/ジェイムズ・パタースン

 勝利と自由を信じて参加した十字軍。しかしそこに待ってたのは一方的な殺戮、略奪。そこには宗教も、高貴なる目的など何も存在しなかった。絶望に打ちひしがれて岐路に着くと、自分の村は焼き払われ、住む家も、愛する妻も、何もかもを失っていたのだった…。

 前回に引き続きパタースンものの一冊。どうやらこの作者は、わりと何のジャンルでも書いてしまうらしい。でも基本的な作風は変わっておらず、話の進行はシンプルでわかりやすく、そして爽快だ(1章の区切りが短いのも相変わらず…)。

 悲しみに暮れる主人公、復讐を誓い戦う主人公。どれも生き生きと描かれている。懸命に生きて、時には傷つきながら、最終的に勝利を手にするさまに、ホント単純に感動する。やっぱりお話って元々こういうもんだよね。余計な伏線などなく、一本道で、聞いていてワクワクしてくるような冒険譚。600ページほどの厚い本ながら、一気に読めた。

不眠症

2007-04-03 01:40:05 | 最近読んだ本
・「翼のある子供たち」/ジェイムズ・パタースン

 まあ、そのまんまのタイトルでそのまんまの内容。
 少女。森の中にいる。少女は白いドレスを着ている。背中には天使のような翼が生えている。わかりやすいイメージだ。そして少女をつかまえようとする、悪い人間たち。少女はその施設で育った。

 いっぽうで少女を保護し、一緒に逃げようとする男女。翼の生えた少女と、男女二人、それから子犬の4人の、つかの間の逃走劇。割と日本のマンガのような設定で、そんな感じの話の運びかと思いきや、この4人(匹)のファミリーっぽいイメージは、やっぱりアメリカ的かなあって思ってしまう。

 たとえば日本のマンガなら翼の少女と、普通っぽい男との二人の逃走劇になるわけだしね。どちらかというとこの二人は恋人っぽい振る舞いで、所々に恋愛感情を思わせるような感じの…。

 とはいっても、この3~4ページで1章仕立ての細かい区切りはダメだな。話のつながり的には飛躍しすぎない程度で、まあじゅうぶん理解はできるんだけどさ…。
 それから、翼のある少女の生物学的な描写がされているのは面白いところかな。こういったモノの、なんとなくあいまいなファンタジーで済ませてしまうところを、うまく人間と鳥類の構造を取り入れて「実際に空を飛ぶことのできる鳥人間」として辻褄を合わせているのが、いい感じでリアリティを与えている。

2007-03-24 04:19:40 | 最近読んだ本
・「レギュレイターズ」/リチャード・バックマン

 平和な住宅街を襲った突然の銃撃。自閉症の子を持つ母親の手記。この二つはやがて絡み付いて、この惨劇の元凶が、自閉症の子供の中に眠る「心の闇」であることを知る…みたいな作品。

 序盤から、通りの住人がたくさん出てきてよくわからない。まあそれぞれにキャラの描き分けができているからいいとは思うんだけど、それだったら書き出しは母親の手記でもよかったんじゃねえの。手記でしばらく読ませておいて、それから場面変わって住宅街、新聞配達の少年が突然何者かによって射殺される…。オレならこうしたね。

 さてバックマンというこの作者、じつはスティーブン・キングの別名義らしくて、作品の構成もベテラン作家らしくテンポよく上手くまとまっている。キング作品を読んだのはたぶんこれが最初だと思う…でも割とマキャモンのほうが好きかな?住民同士が協力して戦う、みたいな同じネタなら「スティンガー」のような、アホアホしいともいえるスケールのでかさでやってほしいんだよね。

re

2007-03-09 13:20:00 | 最近読んだ本
・「ヴァンパイア・ジャンクション」/S・P・ソムトウ

 世界的な人気を誇るロックスター、ティミー・ヴァレンタイン。実は彼の正体は、ヴァンパイアでした!という話。まあこれだけじゃあすぐ終わってしまうか。
 彼は何千年もの間、人間の身体を取り替えながらその人生を歩んできた。そしてその長い人生の中で、ヴァンパイアの片鱗を目撃してしまった人間たち。彼は今、ロックスターという肩書きを手に入れ、つかの間の安泰な生活を送っている。そんな彼の下、人間たちは好奇心という本能のままに、彼の正体に近づこうとする…。

 序盤からスピーディで無駄のない展開で読み飽きない。所々に挿まれる小話もじゅうぶん面白いし。あと、吸血鬼にはあんまり性欲はない、という描写は意外に思った(その理由は後で語られるんだけど)。そりゃまあそうだよね、肉欲なら肉欲に特化した淫魔っていう悪魔がいるわけだしね。

最近やる気がない

2007-02-25 21:58:57 | 最近読んだ本
・「果しなき旅路」/ゼナ・ヘンダースン

 人生に何の希望も持てなくなり、とある寂れた街にたどりついた女性。小さな川を流れる橋の前に立ったとき、どこからともなく人物が現れて、夢のような不思議な世界に連れ込まれる…。
 そして夢の世界の住人たちは次々に話をはじめる。自分たちが地球人ではなく、遭難した宇宙の民であることを。

 …宇宙を渡航中に遭難し、ここ地球にたどり着いた「地球人ではない住人」たち。彼らは地球上で散り散りになった同胞を求めて旅をする。と同時に、彼らは地球人を刺激せぬよう、隔離された場所で、独自の規則に従ってコミュニティを形成して生活している…。


 女性作家らしいとてもやさしい雰囲気で、この「自分たちは異質なものである」という設定を違和感なく読者に浸透させているのが、いい感じ。
 そう、彼らの話の登場人物にたやすく感情移入できるように、我々はもともと「他人とは異質なもの」であるのだ。それが地球人であるとか、宇宙人であるとかといったものではなく、例えばそれが民族であったり、性別や容姿であったりで…。
 「普通の人間とは違う」ということへの苦悩、また、共感しあえる仲間に出会えたときの喜び。それは普通の人間なら、誰でも感じうる感情だ。

 そしてもう一つのキーワードとなる、「学校」。このお話の舞台には寂れた街の学校がよく出てくる。学校。それはよくあるギャルゲーのような楽しい雰囲気はなく、多くは埃臭くて、閉鎖されていて、とても退屈に思える空間。奇しくもそれは世間から別離し、ひっそりと独自の生活を送る異星人のコミュニティと似ている。
 つまり我々もまた、知らずのうちに異星人のコミュニティに暮らし、そして普通の地球人に溶け込もうと苦心してきたのだ。


 SFっぽい筋書きでありながら、その中身は日常のシーンの置き換えによって、誰もが持っている感情について深く描写されている、読んでいて心がやさしくなれる作品。っていうかまあSF小説なんだけどね。