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draw_or_die

everything will be worthy but cloudy

neuro

2007-11-30 19:03:27 | 最近読んだ本
・「スパンキイ」/クリストファー・ファウラー

 場末のクラブで出会った、スパンキイと名乗る奇妙な男。彼はダイモーン(いわゆる悪魔とも違うらしい)で、人生をより良いものに変えてくれるという。初めは懐疑的な主人公だったが、自分の平凡で退屈な人生を振り返り、これが人生を変えてくれる最後のチャンスなんだと思い、彼の申し出を受けることにする。
 そんなわけで主人公と精霊のスパンキイのコンビ。彼のユーモアを交えたアドバイスに文句を垂れながらも、それを実践していくことによって、主人公はとんとん拍子に出世していく…と、これが前半の話。

 ある日異世界から主人公のもとへ使者がやってきて、使者の力によって主人公が変わっていく…というストーリーはむしろ日本っぽい感じ?がする。とはいっても結局人生を変えるのって、魔法少女の呪文よりも主人公の行動力だったりするじゃない?むしろ魔法だとか、そういうのは所詮はきっかけにすぎない、ということをこの小説で再認識させてくれる。

 それから面白いのはスパンキイの軽妙なトーク。時に冗談めかしたり、皮肉っぽかったり、エキセントリックな部分も見せるけど、主人公の更生のために、よりよい生活を送るために、中々タメになることを言ってくれる。
「人生で待つという行為は、ほとんどの場合衰退である」
「人生の中には、その人のために無償で身を投げ出してくれるという者が一人はいるもんだ」

 どんなに出世して、いい家に住み、いい女と一緒にいて、いい車に乗っても、やっぱり最後は愛しい者の愛には敵わない…まあそんな感じでしょうか。

ロスプラ体験版を何とかクリア

2007-11-11 01:35:40 | 最近読んだ本
・「神は銃弾」/ボストン・テラン

 ある街で起きた惨殺事件。家族を殺され、娘を誘拐されたのは、冴えないヒラの警察官。絶望のままに手がかりを探していると、一人のヤク中の女に当たる。彼女は過去にその犯人の集団の中にいて、どういう集団なのかを知っており、もしかしたら彼女を救い出せるかもしれないという。ただし警察も誰も信用せず、二人だけで行動すれば、の話。
 まるで無謀な賭けだが、彼の人生はすでに死んでいて、その道を選ぶ以外考えられなかった。こうして二人は、危険な麻薬組織に立ち向かうことになるのだが…。

 こんな筋書きだからコテコテのアクション小説というわけではなくて、むしろ全編に漂ってくるのは社会の悲惨さ、あるいはクスリに依存する人間たちの弱さ。ここに登場してくるパートナーの女も、ときどき幻覚症状に襲われて支離滅裂なことを言い出し、むかっ腹を立てる。かといって主人公の男もタフガイではなく、ただの頼りない普通のおっさんだ。
 そして相手は、何を考えているのかわからない狂人集団。まったく勝ち目はない。それでも、娘を救いたいという気持ちから、女のほうは自分の過去に落とし前をつけるために、孤軍奮闘する。

 娘を救出してからも話は終わらない。無事救出したからこの事件はハイ終わり、ではなくて、延々と煮え切らない幕引きが。…というストーリーの構造よりも、とにかく主題はタイトルの「神は銃弾」なんだろうな。いかれた頭の中の、唯一信じられる宗教。サイケデリックな宗教観。みたいな。

 場面やキャラが色々とゴチャゴチャしているのは、読みにくかった。

s

2007-11-05 13:05:39 | 最近読んだ本
・「古い骨」/アーロン・エルキンズ

 フランスにある屋敷に親族たちを呼び寄せた老ギヨーム卿。しかし彼は親族の来る前に、事故で溺死してしまった。不慮の事故に心を痛めながら葬儀が行われていると、今度はの地下から白骨化した人間の骨が見つかる。そして次は、ワインに毒を盛られて殺される親族の一人。この一連の事件を結ぶものは、一体何なのか?

 骨を専門とし、人骨の状態から様々な推理を働かせるギデオン教授の、人呼んで「スケルトン探偵」シリーズのひとつ。推理小説としては前フリ→事件→聞き込み…、と、王道とも言うべき展開で、どこかのんびりとした、まったりムードさえ感じられる。こういうお決まり的な展開がいいという人もいるけど、今はこういうのは読みたくない気分だったかな。どちらかといえば、オレはハードボイルドものが好きらしい。

 こういったお気楽な雰囲気は舞台となっているのはフランスだから、というのもあるかも。陰気な館を調査するかたわらで、昼飯時には郊外のカフェに行ってゆったりと時間を過ごす。あるいは登場人物の間で交わされる、陽気な会話など…。
 やはり最後はキッチリと謎が締めくくられるのはいいよね。推理小説の醍醐味とも言うべきか。まあ、たぶん続きのシリーズを読むことはないだろうと思うけど。

アラニス

2007-10-28 15:15:19 | 最近読んだ本
・「翼ある者のさだめ」/ジェイムズ・パタースン

 研究室に閉じ込められていた、翼のある少女。彼女はフラニーとキット、二人の善良な人間によって助けられて、おぞましい研究室から脱出することができた。彼女の仲間、5人の幼い有翼人間も連れて…。
 と、ここでハッピーエンドでは終わらない。前作が好評だったんで続編が出ることになったという近作、これぞパタースンの真骨頂とも言うべき、読んでいて清々しくなるようなストレートでまっとうな続編。

 人体改造を受け、飛行能力と人並みはずれた知性を得た子供たち。これまで子供たちは研究室の中しか世界を知らなかった。それが開放された今、彼らは親元へと帰されるのだが、そこでも彼らは色々な障壁に直面する。彼らを好奇の目で見、差別してくる人間社会。やはり我々は人間社会には馴染めないのか?
 それから子供たちに襲い掛かる、新たな敵。フラニーとキット、翼を持つ少年少女たちの新たな戦いが繰り広げられていく。

 続編ということで変に斜めになったり、全然違うことをはじめたりと、そういうことはまったくしない。まさにこの流れで、この展開しかないといった感じのストーリー。改めて感心しちゃうよな。
 翼を持つ人間ということで何となく天使のイメージがあるけど、実像としては鳥人間、と表現したほうがいいかもしれない(これは前も書いたかもしれないけど)。じっさい彼女らの行動パターンに、鳥類のしぐさが出てしまうのが微笑ましいところ。まあそこらへんは読んでからのお楽しみということで。

 あとラストの悪役の、あまりものあっさりとしたやられっぷりはどうかな~と思ったけど、おとぎ話的なハッピーエンドで終わらせるパタースンらしいや、とも同時に思った。

DarKno

2007-10-21 21:09:05 | 最近読んだ本
・「キノの旅」/時雨沢恵一

 世界を渡り歩いている旅人のキノ。その相棒は、言葉をしゃべるモトラド(バイクみたいなの)のエルメス。この二人が、様々なルールに縛られた国々を訪れる話。

 まあラノベだし、それなりに知名度もあるから(当然のごとく)色眼鏡で見てしまうんだけど、なんつーかなあ。キノとエルメス、この二人のキャラは似通っているんだよな。例えば道を走っているとして、「(キノ)あ、あそこに家があるね」「(エルメス)うん、そうだね」で、会話が終わってしまう。これじゃ後の話に続かないでしょーが。

 たとえばオレだったら、エルメスを極端に喋るキャラにすると思う。キノがぼそっと喋ったら、それに対してものすごい勢いでまくし立てるように、言葉を乱射する。つまんねーお下劣な冗談とかも交えながら。
 あるいは、まったく喋らないキャラにするか。何となく「エルメスはこう思っている」と、キノだけが感じられるようなテレパシーで繋がっているとか。まあべつにオレが作者じゃないからどうでもいいけど。

 ちなみにこの本、後半あたりから作者の腕が上がったのか、少しずつ小説らしい広がりや重厚感みたいなものが出てきている(まあ、本当に、少しだけ)。それができるんだったら最初のほうもちゃんと書き直せよ、と思いたくはなるが。

1月20日

2007-10-20 00:56:46 | 最近読んだ本
・「半身」/サラ・ウォーターズ

 中央に塔が立ち、その周りを五角形の壁が囲んでいるミルバンク監獄。父を失った悲しみから何か仕事を始めようと、マーガレットはここで女囚の慰問を始める。様々な罪を犯した女達を訪れていくうちに、ある一人の女囚に興味を惹かれる。ドーズという名の少女、彼女は霊媒師で、聞くところによればまったくの冤罪でここに入れられたという。今までかたくなに心を閉ざしていたドーズだったが、マーガレットとの出会いにより、彼女は少しずつ自分のことを話していくようになる…。

 以前に読んだ「茨の城」の作者の、それよりも前の長編小説。舞台は同じく19世紀のイギリスだ。「茨の城」もそうだったけど、この世紀末イギリスの、寒々として汚いロンドンの生活描写が特にリアルに感じられる。「茨」が二人の主人公による大冒険物語だとすれば、こっちは心の中の「見えざるもの」を描く「静」の物語だろうか。…とここまで書いて、クリストファー・プリーストの「奇術師」「魔法」の二編の作品を思い出した(というか、読んでいてそう思わずにはいられなかった)。

 やっぱりエンタテイメントとして、大きな目的に向かっていく冒険物語、「動」のストーリーはわかりやすいもの。加えて、こういったモノはある意味作りやすい、と言ってしまっていいのかもしれないが…。しかし物語の面白さは「静」にも存在するものだ。
 プリーストで言えば「奇術師」の衝撃度もすごいけど、「魔法」の、読んだあとからじわじわと効いてくる複雑な設定もまた、「ああ、よく考えればアレって面白かったよな」と思わせてしまうのが、作家の力量というものだろうか。

 ちなみにこの作品、プリーストの「魔法」が頭の中にあったから、主題は霊的なテーマなのかと思ったら大間違い。あんまりスッキリと終わらない感じの結びだけど、それよりも「○○は実は○○じゃなかった!」みたいな、だまされたという虚無感が何よりの狙いだと思うから、まあいいか。

2007-10-15 09:51:56 | 最近読んだ本
・「人狩りの森」/サリー・ビッセル

またひとつ事件を片付け、休暇に故郷に戻ってきた女検事の主人公。彼女は女友達を誘って、地元の森の泉を訪れる予定だった。しかしそこで彼女らは、次々と追跡者に追われることになる。森の奥深くに住むレイプ魔、裁判に敗訴して復讐に燃える男…。こうして深い森の中で、彼女達のサバイバルゲームが始まる…。

 書き出しが裁判シーンなので、全編こういったサスペンスものというわけじゃなくて、メインは至ってわかりやすいサバイバルアクション。まあ、見たまんまのわかりやすいエンターテイメントだな。って、「わかりやすい」という言葉を2回も使ってしまったけど。それぐらい、主人公ら女友達が山に入って、どんどん追い詰められていく、というのが読めやすい展開で読者をドキドキさせてくる。まあ本当に、ふつーに。

 それからこれは女検事のシリーズ物、ということらしい。冒頭で主人公の母親が何者かに殺されるシーンがあるのだが、その謎は今回は明かされないまま。きっと次のシリーズで核心に触れるんじゃないかと期待しながら、これまたわかりやすい(=特徴をつかみやすい)設定だったいくつかのキャラクターも再登場してくるんじゃないかな~とか思いつつ。

もうイヤだ

2007-09-30 03:44:18 | 最近読んだ本
・「ロボットの魂」/バリントン・J・ベイリー

 人間とロボットが共存する不思議な世界。意識を持ったロボットが生を受けた。ロボットは時に奴隷に、王に、旅人になりながら考える。「…僕はロボットだ。しかし人間と同じように考え、確かな意識を持っている。しかし人間達は僕をロボットとしか見てくれない。教えてくれ、人間とロボットの明確な違いは何なのだろう?人間には魂があるというが、魂とは一体何なのだろう?何故僕だけが、人間のような高度な意識を持ちえることができたのだろう?」
 かくして一体のロボットの、自分自身の探求の旅が始まる。

 これもまた興味深く、知的好奇心を大いにくすぐられる寓話だ。旅をしながら自分自身の存在を問う、というテーマは大好きなネタのひとつ。オレだったら、このテーマで短編をいくつか書いていたかもしれない。でもそれをひとつの長編にまとめ上げる…、というのはやっぱりそれなりに技量が必要だ、ということ。盗賊のアジトに、王宮に、近代化された都会に、宇宙戦争に…と、目まぐるしく変化する舞台を描き切るなんて、とてもオレにはできませ~ん。

 それでも一読者としてこの物語を読めば、これはとても面白くて、わくわくしてくるような冒険のお話。次々と現われてくる新しい世界に目が輝かせ、そこでのロボットのジャスペロダス君の活躍に心躍らせる。

 例えば被造物であるロボットが人間の上に立ち、支配をもくろむなんて滑稽な話だけど、それは人間にしてみてもそうじゃないだろうか!?ジャスペロダスは純粋に、自分の「意識(アイデンティティ…と言い換えてもいいかもしれない)」を模索するために王国を支配しようとし、軍隊を指揮しようと試みる。それは人間も同じこと。自分の存在を知らしめたいがために人は無謀にも偉くなろうとし、人を跪かせる。…ホラ、じゃあこの高度に意識化されたロボットは、限りなく人間に近いじゃないか!?

 それから、ロボット側としても忠実に仕事をこなす、完全無欠で潔癖な存在ではないというが面白かったかな。ロボットに備わっていなかった感覚――触覚を新たに得て、有頂天になって世界支配を夢見るジャスペロダス。脳に電流を流すことによって、まるで人間のように泥酔するロボットたち。アル中ならぬ、電流中毒になって身を滅ぼしていくロボットたち…。こういうところでも、ロボットの感じる感覚が人間に近づいていく。

 それじゃあますます、人間とロボットの境界って何だろう?と、我々読者に問いかけてくるわけですよ。

遍歴派、ロシアの異端的宗派のひとつ

2007-09-27 00:44:34 | 最近読んだ本
・「魂を漁る女」/レオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ

 軍隊の休暇を与えられ、故郷に戻ったツェジム・ヤデフスキ。母親との抱擁を交わし、幼なじみのドラゴミラを訪ねてみると、彼女は美しい女性へと変貌していた。だが同時に世間を寄せ付けないような、どことなく超然的な雰囲気も身につけていた。
 ほどなくして舞台はキエフへ。ツェジムの知らぬところでドラゴミラは自らの教団のために暗躍し、夜の街を駆ける。いっぽうでツェジムは令嬢・アニッタとのつかの間の恋に落ちていった…。

 物静かで、従順で、狂信的に邪教に身を染めていくドラゴミラ。まっすぐに彼女を愛する、礼儀正しい軍人のツェジム。純真無垢な令嬢・アニッタ。強欲にして傲慢、美男子の大貴族・ソルテュク伯爵…。基本はこの四人の四角関係の話だろうか。
 それに加えて上流階級の交流や、密教の祭壇のピリッとした空気など。これらのエッセンスが至る所に散りばめられていて、ものすごくカッコいい。とても120~130年前の小説とは思えないほどスピーディーでスタイリッシュ、とてつもなく美しくて残酷で悲しい、サイコ・スリラー。

 ご存知の通りマゾッホという作家は今で言う被虐嗜好、マゾヒズムの語源ともなった作家。といっても、この作家が一貫して被虐趣味の作品を書き続けたわけではなく、当時の大衆小説向けとして、このような作風のものを書かされていた…ということらしいが。なんだか他の作品も読んでみたくなるような、興味のわいてくる作家だ。

『…我々はみな罪人である。我々は罪を償うためにこの世に生まれた。よって、途方もない苦しみの果てに人生を終えたものだけが、天国の祝福にありつける…』
 もちろんマゾヒズムの代名詞となった作家だから、それっぽいモチーフも随所に登場してくる。引用を上げれば枚挙にいとまがないほどに耳に甘く、妖しく、マゾッホの世界に酔いしれてくる。おそらく今まで読んだ中で10本の指に入るほどの、美しい作品だ。

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2007-09-17 21:59:11 | 最近読んだ本
・「致死性ソフトウェア」/グレアム・ワトキンス

 最初はゲームに熱中する青年、次は自作の小説に没頭する女性。人々が次々とパソコンの前に向かって栄養失調や疲労によって倒れていく。そのすべての原因は、パソコンの中にインストールされている、あるプログラムだというのだが…。

 という、現代でいうパソコン中毒とかネトゲ中毒みたいな話を面白おかしく描いた話。これの舞台が95年だから、i386とか486だとか、あるいはウィンドウズとかマックとか…、いろんなプラットフォームが混在していた頃の話ですな。パソコン通信やインターネットが珍しかった頃の話だから、登場人物はイマイチパソコンのことが理解できないままに事件はどんどん発展していく。

 ただの人を殺すだけのウィルスではなくて、どんどん人工知能のように発展していって、ついには社会全体を混乱に陥れるウィルスになるというのも、風呂敷を広げてお話をダイナミックに見せる手の一つか。しかし、上下巻800ページも費やして語るネタなんだろーか。

 ソフトウェアが擬人化されて、電脳空間の中で戦い、そして倒されていく…。ちょっと敗者に対する哀れみとか、そういうのも含めてね。ジェイムズ・P・ホーガンみたいな、結局は文明批判みたいな流れになるのかと思ったらそうでもなくて、まあどことなく中途半端な感じ。