goo blog サービス終了のお知らせ 

draw_or_die

everything will be worthy but cloudy

銭湯が最近アツい

2008-04-22 02:17:46 | 最近読んだ本
・「ヴァンパイア・バスターズ」/ジョン・スティークレー

 人々を襲うヴァンパイアを退治する、ジャック・クロウをリーダーとする、チーム・クロウ。そんな彼らが仕事の打ち上げで酒場に寄った晩、突然倒したはずのヴァンパイアが彼らに逆襲する。命からがらその場から逃げ出すクロウ。彼はチームのメンバーを失った。それでも彼はヴァンパイアを退治し続けなければならない。彼は新メンバーとして、昔知り合った麻薬密売人の男を迎え入れることにする…。

 とまあこんな感じの、ストレートで娯楽系の小説。怪物を相手に十字弓や銃で挑む、命知らずの野郎達…といった外見頼もしいイメージではなくて、いつ死ぬかわからないという不安に常に付きまとわれている、どちらかといえば怯えていて病的な主人公像なのが特徴なのか。
 ヴァンパイアに対する攻撃方法もちょっと変わっている。銀の銃弾や十字架はヴァンパイアに効果があっても、それで死なすには至らない。だからワイヤーアンカーで敵の身体を撃ち抜き、そいつを自動車で引っぱって太陽の下にさらして死なす…という力技。ここの部分のアクションは読みごたえはある。

 でも後半になってくるといかにもアメリカ的FPSというか、何だかバリバリ撃ちまくるだけで怪物に対する恐怖感が薄れているのはどうかな。構成とかテンポ的には可なんだけど、やっぱキャラのノリとかそういったのが日本人には受けないよなー。あとなんでこの表紙なんだろう。もちろん建物に潜んでいるヴァンパイアを引きずり出していく、というシーンはあるけど、もうちょっとアクションっぽい表紙絵でもいいんじゃねーんですか。

やっぱカローラって運転しづらくね?

2008-04-12 19:27:17 | 最近読んだ本
・「日陰者ジュード」/トマス・ハーディ

 田舎町に育ったジュード少年。彼は都会にあこがれ、大学に勉強して司教になることを夢見ていた。熱心に本を読む傍ら、石工として働き、着実に夢に向かっていくところだったが、彼の未来は決して明るいものではなかった。望まなかった結婚、都会での苦難…。そもそも金も学もない田舎の若者が大学に入れるわけもなく、彼には街で石工の仕事を細々と続けていく道しかなかったのである。
 そこで出会った、彼の従姉妹のスー。彼女に運命的な結びつきを感じつつ、決して幸せになれぬとわかっていても、彼は彼女と一緒になりたい気持ちを抑えられなかった。そして案の定、前妻と別れてスーと結婚する段になると、次から次へと困難が沸いてきて、二人はますます不幸になっていくのであった…。

 とにかく全編に渡って書かれているのは、「結婚は人を不幸にする」という主張。それから、主人公はどんなに頑張っても夢はかなえられずに、相変わらずの底辺の生活を続けている…というのも、ストーリーとして全然面白みがない。
 正妻がありながら、また従姉妹でありながら…とかいった禁断の愛だからこそ、二人は駆け落ちによってさらに愛し合うようになる…という面白い展開になるのかと思いきや、そういう場面でスーは妙に常識的になって、ジュードとの結婚の間に揺れ動く。それで結局、元の亭主の下へ帰ってしまう。何だか煮え切らない結末。
 「チャタレー夫人」じゃないけど、「ある一定の距離に近づきすぎると、男女間は嫌悪になる」といった感じなんだろうか。ただし「チャタレー夫人」の場合はセックスで、この「ジュード」の場合は結婚…、という具合で。

 この小説は男女間の結婚というテーマのほかに、夢をかなえられなかった男の物語、としての側面も持っている。夢に夢見て、夢に近づくためにむなしい努力をして、そしてある時悟って、夢をあきらめていく…やっぱり人生ってそんなものなの!?

久しぶりにマズい酒を飲んだ

2008-03-30 02:48:50 | 最近読んだ本
・「楽園の涙」/ノーマン・カタコフ

 事件の始まりは男女間の不倫のもつれだった。男の子供を身ごもった女性、彼女がしつこく男につきまとうので、海兵隊員の男、彼はついカッとなって女を殴り、瀕死の重傷を負わせてしまう。正気に返った男は、すぐさまその現場から逃げ出す。
 それを救ったのは現地の若者4人だった。彼らは彼女を病院へ運ぶ。病院のベッドで事件の真相を聞いた母は、自らの保身のためにその4人をレイプ犯に仕立て上げてしまう。無罪を叫び続ける彼らだったが、1930年代のハワイにおいては白人と現地人との間に強い人種差別が根付いており、一旦かけられた疑いを晴らすのは容易なことではなかった。
 裁判の弁護人を務めることになったのは、若者たちの友人である新米の弁護士。そしてその様子をじっと見つめる、一人の刑事…。幾重にも重なった虚偽の中で、果たして彼らは無罪を勝ち取ることができるのだろうか?

 「迷宮の愛」のノーマン・カタコフの、これまたかなりのボリュームを持つ長編。どんどん入り組んでいく事件の中で、疑いをかけられた若者たちがいかに逆転勝利を勝ち取っていくか…、というのがまさに文字通りの逆転裁判。そして事件はそれだけにとどまらず、白人による報復や、アメリカ本土からの政治的圧力などが加わって、現地人と白人との大きな軋轢に発展していく。まあこんなふうに一つの事件が大きな民族的問題へと発展していくところが、この作者らしいところだろう。

 しかしカタコフの文章というか、もちろん内容はすごくスリリングなんだけど、妙なところにフックがあってどうにも文章に没頭できないというか、集中できないところがある。「迷宮の愛」もそうだったんだけど、本当にこの点だけはすごく気になったんだよな~。
 あと、キャラクター同士の恋愛ははっきりいって蛇足だ。特にヒステリーを起こす女性陣が、ことごとくストーリーの進行をジャマしていく。

スゴかった本シリーズその2

2008-03-22 19:50:36 | 最近読んだ本
・「ブラッドタイド」/メルヴィン・バージェス

 昔に読んで震えた本その2。これはすんごくカッコいいです。カッコよくて、グロテスクで、悲しいダークファンタジー。
 打ち捨てられ、魔物がはびこるロンドンの街。その闇の世界に生きるギャング、二つの一族は長年対立していた。その関係を修復するために嫁がれた双子の姉。政略結婚だと知りながらも、まだ幼い双子の弟はそれを許すことができなかった。姉が裏切って向こうへ行ったのだと。

 両家の婚姻にも関わらず、妻を娶った当主はまもなく双子の一族を皆殺しにする。双子の弟の逃れた先は、魔物たちの住む最下層のスラム。彼はそこで固く復讐を誓う。と同時にそこの住民たちと暮らすことで、その傲慢だった性格もなくなり、清い心を持った正義感にあふれる少年へと成長していくのであった。

 同じく双子の姉も、当主に対する復讐を身の内に深く持っていた。当主との間に生まれた異形の子供、彼女はこの赤ちゃんを弟へ託す。弟は子供を最強の暗殺者として仕立て上げる。水面下で進みつつある双子の復讐。そして訪れる最後のとき、二人は何を思い戦うのか…?

 これを分解していくとまず弟のパート・傷つきながらスラムで一人前へと成長していく物語と、姉のパート・当主の妻として子供を育て、復讐のために裏から画策する物語の二つに分かれる。もちろん両方ともスリリング。そして別れ別れになった双子の姉弟が再会を目指す、というのも大きな目的の一つであもある。それに加えて、母としての姉の葛藤。いくら憎くとも、自分の子に親殺しをさせるのか…?その葛藤がラストまで続き、衝撃のエンディングへ直結していく…という感じ。こんな感じで大雑把なところを書き出していくだけで、すごい密度になってくる。この構図に思わず震えた。

 解説を読むとこの構図はアイスランドの神話、ヴォルスンガ・サガを下敷きにしているそうで。それをベースにした作者の大胆なアレンジが見事。それからこの作者はジュヴナイル系の作家だそうで、この双子が活き活きと輝いているように見えるのはなるほど、と思わせた。これを読んで他の作品もぜひ読みたい!と願うのだが、この本以外にバージェスの作品はなかなか見つからないのであった…。

スゴかった本シリーズその1

2008-03-22 19:12:10 | 最近読んだ本
・「賢者の石」/コリン・ウィルソン

 昔に読んで、思わず震えた書のひとつ。
 脳を研究している主人公は、ある研究をしていた。脳の中に金属片を埋め込む手術を施すことによってその人間の脳を活性化させ、創作に対するインスピレーションを増大させるというもの。彼は被験者の協力を得て、何人かの人間に金属片を埋め込むことにする。被験者は大方予想通りの反応を示すものの、しばらくして「何か気持ち悪い」と言い出す。どうやら何かが「見える」らしい。一体手術をすることによって、何が見えるのか?主人公はついに自分の脳に穴を開け、金属片を埋め込む決意をする。

 埋め込み手術(実際は金属片を埋め込まずとも、頭蓋骨に穴を開けるだけで効果があった)によって彼が得たものは、モノに触れることによって、そのモノの過去の歴史を見ることができるという超能力だった。彼は友人に呼びかけ、二人でこの超能力を使い、図らずも人類の起源に踏み込んでいくことになる。人類最古のモノに触れることによって、そこには何が「見える」のだろうか…?

 そして古い遺物を集めていくうちに、ある一群のモノに出会う。それはモノを「見た」とき、そのモノから見ることを「拒絶」するという反応。もっと深く調べていくうちに、彼らの周りで不可思議な事が次々と起こるようになり、彼らは少しずつ恐ろしい仮説に達する。それは我々人類の遠く及ばない、異星人のようなオーバーテクノロジーを持つ何者かが存在していて、彼らにアクセスすることを禁止しているのではないのだろうか?、と。そしてこうしている今も我々を監視しているに違いない、と…。

 この一連の実験の経過を読んでいるだけで面白かったし、また能力を手に入れてからの探求の旅も面白い。知的好奇心というものだろうか。何気なく始めた遊びが、最終的には人類を脅かすような禁忌の扉へ手をかけようとしているところだった…みたいな。ラストで描かれる、正体の知れない恐怖が読後じわじわと効いてきて、思わず震えてしまった。

 ちなみにこの本は現在中央図書館の現在地下書庫に移動されているので、カウンターで取り寄せてもらいました。

u5

2008-03-22 09:20:59 | 最近読んだ本
・「九年目の魔法」/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 子供の頃のおぼろげな記憶。確か昔、黒い服を着て誰かのお葬式にこっそり潜入して、そのときに出会った男の人。その人と一緒に空想遊びをして、それから度々文通するようになって、本もいっぱい送ってきてくれた人…。それなのに、友達の誰も彼を覚えていないのはどうしてなんだろう?本当は存在しない人だったんだろうか…?

 表紙だけ見ると何だかホラーっぽい雰囲気だな、と思って読んだらけっこう甘々な感じの少女の成長を綴ったお話だった。子供の頃に良くありがちな、いろんなものに自分だけの名前をつけて、空想の物語を作り出していった日々。でもそれはいつかは忘れ去られるもので、大人になって卒業していくもの…といった悲しいものではなくて、あくまで「ファンタジー(空想)はすばらしいもの」という前向きな姿勢になっているのがポイントなんだろうか。

 色んなファンタジーの古典を読みながら、文学少女一辺倒になっていくのではなくて、ちゃんと部活動も勉強にも打ち込んでいって、主人公の少女は成長していく。メインはもっと別のところ(謎の一族の正体とか、謎のお葬式)にあるんだけど、こっちのほうをメインに読んでも楽しめる。

 でもやっぱりこういうミルクティーにたくさん蜜糖を入れたような感じの、甘々な小説はちょっと苦手だ。

最近暖かくなった!

2008-03-12 00:14:29 | 最近読んだ本
・「銀色の恋人」/タニス・リー

 タニス・リーを読んだのは高校のとき以来かな。現代の人にも受けるように、表紙も現代風のイラストになっているみたい。

 お金持ちで、美人で、何一つ不自由なく育ったお嬢様のジェーン。それ故に未熟で、あいまいで、臆病な性格だった。しかし新製品として世に登場した、ギターを奏でる美しいロボットの彼…シルバーを一目見たときから、彼女の世界は大きく変化したのだった。
 彼と一緒にいたい。彼を手に入れたい。しかし母親から与えられた毎月のお小遣いでは買えるわけもなくて、彼女は自分の部屋のものをすべて売り払い、理解の得られない母親からも離別して安アパートに移り、ただ二人で暮らす道を選ぶのだった…。

 年頃の少年少女らしい、ちょっとセクシャルでみずみずしい感覚にあふれるキャラクターがいい。やっぱりこの甘酸っぱさこそ、タニス・リーの魅力だと思う。すべてを受け入れてくれる天使のようなロボットのシルバーはもちろん、恋をしてどんどん成長していく主人公もいいし、彼女のよき理解者である親友のクローヴィスもいいキャラ。同性愛者で、背徳的で、いつも洒落たセリフをしゃべる(彼もまだ子供なんだけどね)。

 まるでフォークソングのような四畳一間の貧しい生活、そして逃避行、そしてあっけない幕切れ。それからラストに感動的なシチュエーションで訪れる、ただ一度だけの再会。ここでもクローヴィスは涙をポロポロ流すジェーンをよそに、こいつは驚いたとおどけた態度をとる。
 わたしはあなたの一部であり、あなたはわたしの一部でもある…。う~む、愛する者へ送る言葉として、こんなにふさわしい言葉もないね。

生卵を服にこぼした

2008-03-07 17:36:24 | 最近読んだ本
・「暗号機エニグマへの挑戦」/ロバート・ハリス

 大学の寮にて療養中にて、再び召集された暗号解析者の主人公。一度は解読できたドイツの暗号「エニグマ」がコードを変え、再び解読不能になってしまったのだった。何ヶ月もの解読作業で疲労もまだろくに回復しきっていない状態だったが、訪ねてきた上司に説得され、彼はもとの古巣に戻ることになる。
 現場の情報処理棟に復帰するとまもなく、彼の意中の女性だった同僚・クレアが謎の失踪を遂げる。彼女の家を訪れると、床下より処理棟から盗んだとみられる暗号文が発見された。まだ解読作業のされていない敵側の電文、一体これには何の情報が隠されているのか?また主人公は、パターンを変えた新たなエニグマを解読することができるのだろうか?

 第二次世界大戦、そして暗号。このわくわくさせられる要素が二つも絡んでいるのだから、もちろん面白くないわけがない。序盤から暗号の歴史的エピソードやエニグマ暗号機についての説明がふんだんに語られていて、あんまり知識や興味のない読者でもすぐに暗号が好きになってしまう(だろう)…、という寸法だ。
 新エニグマ暗号との対決、それから彼女の隠し持っていた暗号文…。これらの二つの謎解きが、目下主人公の大きな目的ということになる。全編を通して飽きさせず、なかなか楽しんで読めたと思う。

 たとえばの話、仮に敵側の暗号が解読できてしまっても、なんでもかんでも解読して反撃に出てしまうと敵側もそれを察知して、また暗号コードを変更されてしまうのでマズいらしい。第二次大戦の歴史で言えば、イギリスのチャーチルが空襲を知っていながらもロンドンに空襲を許したのは、そういった政治的な・戦略的な配慮に基づくものだと言われている。もしかしたら真珠湾もそうなのかもしれないね。やっぱりそれは、さすがに一人の人間では到底及ばないことであって…。
 そういうわけだから、適度に問題を解決させ、適度は政治的背景があるということで明かせない…というような終わり方は、暗号という世界の一面を表しているような気がした。

最悪なんだけど

2008-03-01 03:22:07 | 最近読んだ本
・「ヘルファイア・クラブ」/ピーター・ストラウブ

 夫の一族の経営する出版社には、カルト的な信者を持つ作家がいた。ヒューゴー・ドライヴァーによる「夜の旅」という作品、多くの殺人鬼やロックスター、果ては夫の一族までもが熱心に信奉しているというこの文学だが、妻のノラは正直なところあまり興味はなかった。
 しかし彼女は殺人犯に誘拐され、男の計画に無理やり加担させられることになる。それは「夜の旅」にまつわる証言者を一人残らず消してしまうという計画。「夜の旅」が成立した知られざる背景…そこには夫の出版社の謎、自分が狙われている謎、すべてが深く関連している。ノラは妙にウィットに富む殺人犯と共に、その謎に迫っていくことになるのだが…。

 ストラウブは純ホラー系の作家としてのイメージがあったんだけど、特にこの作品に関して言えば、ごく普通のミステリのというな気がするな。幾重にも重なった階層の、深みを感じさせる構成はさすがにベテラン作家の…という文句が浮かんできそうだけど、残念ながら「ここがすごく面白い!」とか、「ここがすごく熱中した!」という最大瞬間風速的な面白さは特に見出せなかったかな。むしろ、過去の話がややこしくて読みにくいほど。

 それから、次から次へと彼女への協力者が沸いて出てきて、まるでお姫様扱いされているのはどうなんだろう。主人公はあんまり見た目よりも苦労していないような気がするんだけどなあ。

眠い、ダルい

2008-02-20 18:14:49 | 最近読んだ本
・「あなたをつくります」/フィリップ・K・ディック

 田舎の小さな電子オルガン製造会社。ライバル会社の製品によってまったく電子オルガンが売れなくなってしまった今、会社は新製品を開発する。過去の偉人のデータをロボットにインプットし、偉人そっくりなロボットを作り出すというものだ。かくして会社はそれを大富豪の実業家のもとへ売り出しにいくのだが、そこで社員が寝返ったり、はたまた精神病になってしまったりと、一体この話は何…?

 ディックの面白さって、アメリカの中部のどこにでもいるようなおっさんの描写がすごいリアルなんですよ。とにかくごく普通の、冴えない生活をしているおっさんや、青年の主人公。それから、破天荒な少女。世の中がどうなろうと興味ないような、自分と自分に属するものしか愛さない、不思議な女の子。といっても漫画的なものではなくて、何というか「フィリップ・K・ディック的な雰囲気の…」としか表せない感じの。

 この話の焦点は偉人を再現したシミュラクラ…というわけではなくて、あくまで主人公はオルガン製造会社のいち社員。その彼が一人の女子社員に恋をして、なぜかロボットに励まされながら、愛を得るお話。その後会社がどうなったのか?とか、主人公は彼女と結婚できたのか?とかは、想像に任せる…という感じなのでしょう。