
果たして、その作品はとてもアヴァンギャルドな作品だった。宗教的、幻想的な映像美の中に、血も涙もない残酷なストーリーを織り込んでいる。ジョージアはグルジア正教会と言う古いキリスト教の国である一方、周辺をトルコやペルシャと言ったイスラム教国に囲まれる。他にもアゼルバイジャンのゾロアスター教など、異教徒との争いが絶えない国。いや、それ以前の問題だ。敵を討って来た兵士に、敵の右腕を取って来なかったから意気地なしだ、と罵られ、町を追い出されるとか。
なんと言うか、ジョージア映画である前に、これはソ連映画。共産主義から見た、宗教批判と言う面もありそうである。ただ、テンギス・アブラゼ監督としても、宗教の無情さは看過できないものであったに違いない。
ある意味、カルト映画として観ると、強烈なインパクトがある。西アジアの大自然が、まるでこの世のものとは思えないアヴァンギャルドな美しい映像(モノクロなため、緑溢れているはずの大地がまるで火星に降りたかのようだ)になっていて、ゴダールのような無機質な残酷さはクールでもある。悲しい物語である一方、大人のおとぎ話でもある。

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