ゴールデンウィークの日射しは思ったより強かった。
踊っているロッパは、汗びっしょりだ。
「おーい、先生、汗ふき」
大声で呼ばれ、カメキチはロッパのもとに駆け寄る。
腰にぶら下げていたタオルを差し出すと、
「いや参った、ぬく過ぎる」
ぜいぜい言いながら、ロッパはタオルをとり、代わりに「これ持って、ちっと踊っていてくれ」と打出小槌を差し出した。
「え、俺が踊るのか」
「なんも、適当にそこらへん動いていればいいんだ」
仕方なく、カメキチは小槌を手にして、あっち向いて振り、こっち向いて振りしてみた。
どちらを向いても、拍手が起き、笑い声がわく。
おろおろすれば余計に拍手が大きくなった。
照れて、立ち往生すると、またそれが受ける。
「ほれ、カメキチ。タドコロ君を見ろじゃ」
汗をふいたので頬の赤丸が変に広がったロッパが、近づいて来て言う。
指さすほうを見ると、鶴太夫のタドコロ氏が、幟を手に、見事な大黒舞いを始めていた。
いやさかの さてもよい
さても さあ
と、ここで、踊りをぴたりと止め、くるりとカメキチのほうに顔を向けて、
「先生、福入れだ。小槌、小槌」
大声で叫んだ。
慌てて、カメキチが打出小槌を持って、タドコロ氏のほうに駆け出す。
「ほれ、先生、振って振って」
言われて、カメキチは見物人に向けて、派手に小槌を振った。
薄墨高校の卒業生なのか。
あちこちから、「亀掛川せんせーい」「カメキチがんばれー」の声援が飛ぶ。
あっちに走り、こっちに戻り。
汗だくになりながら、カメキチは福入れを繰り返す。
いったい、俺はなんで、こったらことをしてるんだべ。
人に福を分け与えながら、ぼんやりと思ったりもしたが、そんな考えもじき歓声にかき消され、カメキチは無になった。
踊っているロッパは、汗びっしょりだ。
「おーい、先生、汗ふき」
大声で呼ばれ、カメキチはロッパのもとに駆け寄る。
腰にぶら下げていたタオルを差し出すと、
「いや参った、ぬく過ぎる」
ぜいぜい言いながら、ロッパはタオルをとり、代わりに「これ持って、ちっと踊っていてくれ」と打出小槌を差し出した。
「え、俺が踊るのか」
「なんも、適当にそこらへん動いていればいいんだ」
仕方なく、カメキチは小槌を手にして、あっち向いて振り、こっち向いて振りしてみた。
どちらを向いても、拍手が起き、笑い声がわく。
おろおろすれば余計に拍手が大きくなった。
照れて、立ち往生すると、またそれが受ける。
「ほれ、カメキチ。タドコロ君を見ろじゃ」
汗をふいたので頬の赤丸が変に広がったロッパが、近づいて来て言う。
指さすほうを見ると、鶴太夫のタドコロ氏が、幟を手に、見事な大黒舞いを始めていた。
いやさかの さてもよい
さても さあ
と、ここで、踊りをぴたりと止め、くるりとカメキチのほうに顔を向けて、
「先生、福入れだ。小槌、小槌」
大声で叫んだ。
慌てて、カメキチが打出小槌を持って、タドコロ氏のほうに駆け出す。
「ほれ、先生、振って振って」
言われて、カメキチは見物人に向けて、派手に小槌を振った。
薄墨高校の卒業生なのか。
あちこちから、「亀掛川せんせーい」「カメキチがんばれー」の声援が飛ぶ。
あっちに走り、こっちに戻り。
汗だくになりながら、カメキチは福入れを繰り返す。
いったい、俺はなんで、こったらことをしてるんだべ。
人に福を分け与えながら、ぼんやりと思ったりもしたが、そんな考えもじき歓声にかき消され、カメキチは無になった。