お母さに言われて、
山にバンカイを取りに行った清っこが、
道に迷ってしまった。
遠くでカラスの声がするだけで、
山中に人の気配は全くない。
日が沈み、
当たりはどんどん暗くなっていく。
このままでは帰れなくて、山で一晩過ごすことになる。
へたすると、
山の化け物に食われるかもしれない。
あせった清っこが、薄暗くなってきた山の斜面を
つんのめるようにして駆け下りて、
ひょいと前方を見ると、
薄闇のなかに、何かが白く光っていた。
おそるおそる白い光に近づいて見たところ
それは満開のコブシの花だったと。
暗くなると、コブシの花は
白く光るものだと、
お母さに聞いていたけれど、
あれは本当だった。
コブシの木のそばに細い道が見つかった。
その道をたどり、
1本のコブシから、次のコブシへと、
淡い白光を目当てに道をたどって、
清っこはようやく村へ帰ることができた。
「あとでお母さに聞いたんども、
ワラシが山で迷子にならないように、
村では代々、道しるべのかわりに、
コブシの木を植えていたそんだ」
コブシに救われて、無事に家へ帰れた。
あの木々を植えた村の人たちの心づかいが
なんともありがたかった。
赤岳のふもとにある、
コブシが満開の村で。
お清婆さまは、そんな話をしてくれた。
★★★

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どうかよろしくお願い致しぁんす。
薄墨もようやく春が近づきました。
山にバンカイを取りに行った清っこが、
道に迷ってしまった。
遠くでカラスの声がするだけで、
山中に人の気配は全くない。
日が沈み、
当たりはどんどん暗くなっていく。
このままでは帰れなくて、山で一晩過ごすことになる。
へたすると、
山の化け物に食われるかもしれない。
あせった清っこが、薄暗くなってきた山の斜面を
つんのめるようにして駆け下りて、
ひょいと前方を見ると、
薄闇のなかに、何かが白く光っていた。
おそるおそる白い光に近づいて見たところ
それは満開のコブシの花だったと。
暗くなると、コブシの花は
白く光るものだと、
お母さに聞いていたけれど、
あれは本当だった。
コブシの木のそばに細い道が見つかった。
その道をたどり、
1本のコブシから、次のコブシへと、
淡い白光を目当てに道をたどって、
清っこはようやく村へ帰ることができた。
「あとでお母さに聞いたんども、
ワラシが山で迷子にならないように、
村では代々、道しるべのかわりに、
コブシの木を植えていたそんだ」
コブシに救われて、無事に家へ帰れた。
あの木々を植えた村の人たちの心づかいが
なんともありがたかった。
赤岳のふもとにある、
コブシが満開の村で。
お清婆さまは、そんな話をしてくれた。
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薄墨もようやく春が近づきました。