「なあ、カメキチよう、相談にのってくれねえか」
教え子ロッパが、いい年をして半泣きでそんな電話をよこした。
恩師カメキチとしては、これを断るわけにはいかない。
そこで。
今夜もまた居酒屋「伝助」で、いつものように師弟が、顔をつきあわせることに相成った。
「して、相談ってのはなんだ」とカメキチ。
ロッパは浮かない顔で、先日の大黒舞い騒動を説明した。
ちっと調子にのって、薄墨よさこい踊りと、薄墨春太鼓を揶揄したこと。
春祭りの実行委員会のメンバーが、なかでも市役所の商工観光課の「気の強い女ご」が怒ったこと。
そして、大黒舞いの格好でパレードに出ろと言われ、やむなくそれを引き受けたこと。
「ほりゃあ、したらロッパ、お前、パレードに出て、大黒舞いをやるのか」
こりゃいい、と馬鹿笑いする恩師カメキチを、ロッパはうらめしそうに見つめた。
「先生、俺が大黒舞いなんぞ踊れるわけないべ。踊りはどうでもいい、したけど衣裳をどうにかせんとならん。大黒の格好して、パレードで歩けば、あの連中も文句は言わない」
そこでだ、とロッパは身を乗り出した。
「なあ、先生のツテでどっかで大黒さんの衣裳を借りられんか」
ふーむ、とカメキチは考えたが、すぐにひとつ思い当たった。
「教育委員会の文化財保護課の奴を知ってる。いろんな芸能保存会の連中と仲がいいから、そいつから文展の大黒舞保存会にたのんで、衣裳貸してもらうべ」
いやあ、カメキチ先生、助かった。
ロッパは大喜びして、カメキチの盃に酒を注いだ。
「今晩は、ロッパ、お前のおごりだな」
カメキチはそう言って、気分良く、教え子の酌を受けた。
これが発端となり、薄墨春まつりで自分が大変な目に遭うことになるとは、カメキチ先生、まだ夢にも思わなかった。
教え子ロッパが、いい年をして半泣きでそんな電話をよこした。
恩師カメキチとしては、これを断るわけにはいかない。
そこで。
今夜もまた居酒屋「伝助」で、いつものように師弟が、顔をつきあわせることに相成った。
「して、相談ってのはなんだ」とカメキチ。
ロッパは浮かない顔で、先日の大黒舞い騒動を説明した。
ちっと調子にのって、薄墨よさこい踊りと、薄墨春太鼓を揶揄したこと。
春祭りの実行委員会のメンバーが、なかでも市役所の商工観光課の「気の強い女ご」が怒ったこと。
そして、大黒舞いの格好でパレードに出ろと言われ、やむなくそれを引き受けたこと。
「ほりゃあ、したらロッパ、お前、パレードに出て、大黒舞いをやるのか」
こりゃいい、と馬鹿笑いする恩師カメキチを、ロッパはうらめしそうに見つめた。
「先生、俺が大黒舞いなんぞ踊れるわけないべ。踊りはどうでもいい、したけど衣裳をどうにかせんとならん。大黒の格好して、パレードで歩けば、あの連中も文句は言わない」
そこでだ、とロッパは身を乗り出した。
「なあ、先生のツテでどっかで大黒さんの衣裳を借りられんか」
ふーむ、とカメキチは考えたが、すぐにひとつ思い当たった。
「教育委員会の文化財保護課の奴を知ってる。いろんな芸能保存会の連中と仲がいいから、そいつから文展の大黒舞保存会にたのんで、衣裳貸してもらうべ」
いやあ、カメキチ先生、助かった。
ロッパは大喜びして、カメキチの盃に酒を注いだ。
「今晩は、ロッパ、お前のおごりだな」
カメキチはそう言って、気分良く、教え子の酌を受けた。
これが発端となり、薄墨春まつりで自分が大変な目に遭うことになるとは、カメキチ先生、まだ夢にも思わなかった。