タイ国経済概況(2023年12月)

1.景気動向
(1)タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の11月20日発表によると、2023年第3四半期の経済成長率は前年同期比+1.5%で、今年第2四半期の同+1.8%からさらに減速した。第3四半期の伸び率は東南アジア主要6ヵ国の中で5番目(伸び率の高い順からフィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポール)だった。部門別では農業が前年同期比+0.5%、非農業が同+1.5%で、非農業のうちサービス業が同+3.9%(うち宿泊・飲食は同+14.9%)、工業が同▲2.8%だった。NESDCは、サービス業の伸び率低下と、輸出不振を今回のGDP伸び率低下の理由にあげた。2023年通年の成長率については、今年8月に発表した同+2.5~3.0%から、+2.5%に変更した。

(2)タイ商務省の発表によれば、2022年10月の輸出額は前年同月比+8.0%の235.8億米ドルで、3ヵ月連続で前年同月を上回った。輸入額は同+10.2%の244.1億米ドルで、貿易収支は8.3億米ドルの赤字。10月の品目別輸出額は、自動車・同部品が同+3.6%(33.6億米ドル)、電子製品・同部品が同+5.5%(37.5億米ドル)、農産物・加工品は同+9.3%(39.4億米ドル)、天然ゴムは同▲28.5%(36.4億米ドル)だった。米国・中国向けの輸出が好調で、日本向けとEU向けは微減した。中国向けは、ドリアンとマンゴスチンが急増した。商務省は、2023年の輸出額を前年比1%縮小見込みだと先月発表した。

(3)タイ工業連盟(FTI)が11月23日に発表した10月の自動車生産台数は、前年同月比▲7.0%の15.9万台だった。内訳は国内向けが同▲11.7%の6.4万台、輸出向けが同▲3.6%の9.4万台。新型コロナ前の2019年10月の生産台数15.3万台を上回った。また、10月の国内新車販売台数は同▲8.8%の5.9万台で、輸出台数は同+12.2%の10.6万台。新型コロナ前の2019年10月の販売台数が7.7万台、輸出台数が8.6万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(4)FTIが11月23日に発表した10月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲20.6%の17.3万台で、4ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年10月の生産台数は21.9万台であり、新型コロナ前の水準を下回った。内訳は完成車(CBU)が同▲18.4%の14.0万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲28.8%の3.3万台。また、10月の国内販売台数は同▲0.7%の13.5万台、輸出台数は同▲21.2%の3.4万台だった。2019年10月の販売台数が14.2万台、輸出台数が2.5万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。


2. 投資動向
(1)2023年1~9月のBOIへの新規投資申請額は前年同期比+22%の5,168億バーツ、申請件数は同+31%の1,555件だった。そのうちFDIは、金額が同+43%の3,985億バーツ、件数が同+49%の910件だった。国別では、首位が中国の974億バーツ(264件)でFDI全体の24%を占めた。これに、シンガポールの802億バーツ(133件)、日本の431億バーツ(176件)、台湾の361億バーツ(63件)、韓国の326億バーツ(15件)が続いた。タイ政府が指定する重点産業への申請は全体の71%を占め(3,662憶バーツ)、787件だった。産業別では、首位が電気・電子の申請額2,082億バーツ(171件)、2位が農業・食品加工の557億バーツ(213件)だった。

(2)今月のタイ株式市場は、米国債10年物利回りの低下により市場が押し上げられた。また、追加利上げはないという見方が広がる一方、タイバーツの対米ドル上昇は株式市場への資金流入の制限要因となった。こうした背景から、相場は明確なトレンドを示すことなく横ばいに推移した。SET指数は10月21日の1,399から、11月22日の1,423へと僅かに上昇した。11月21日のSET時価総額は17.51兆バーツとなり、前月から減少した。サービス分野が引き続きSET最大分野で、時価総額4.55兆バーツだった。資源分野の3.71兆バーツが続いた。予測される金利低下により、タイ株式市場の資源、金融、技術、工業分野に恩恵がもたらされることが予測される。今月の1ヵ月リターンは、工業、農業食品、資源分野で大きな上昇が見られた。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2023年の10月末時点で金融機関預金残高は24兆6,764億バーツ(前年同月比+1.2%)、貸金残高は30兆4,624億バーツ(同+1.8%)といずれも増加。また、9月27日にBOTは政策金利を2.25%から2.50%に引き上げた。


4. 政治動向、その他
(1)11月21日からMRTピンクライン(KhaeRai~MinBuri間)の無料試運転が始まった。また、タイ運輸省は10月16日からMRTパープルラインとレッドラインの運賃上限を20バーツに固定。大幅に引き下げた。11月30日からは同2路線を非接触決済カードで乗り継いだ場合、2路線を使っても上限20バーツで乗車できるようになった。金額を大幅に下げることで、乗客の増加を狙う。

(2)11月15日セター首相は米サンフランシスコで岸田首相と会談した。セター首相は、タイにおける日系自動車メーカーへの支援等を表明。また、南部のランドブリッジ計画に日本も参画してほしいと呼びかけた。岸田氏も、タイの経済回復のために日本からの出張時のビザ免除等を要望した。ランドブリッジ計画とは、タイ湾側のチュンポン県ラン・スワンからアンダマン海側のラノーン県ラノーンまでの89.35kmを高速道路、並行して走る鉄道で結ぶもので、旧政府から引き継いだ。マラッカ海峡を経由せずにマレー半島を横断する物流が可能となる上、所要日数を最大5日程度短縮できる、とされている。投資コストは計1兆バーツと見積もられている。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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